【ブロックチェーン 連載#1】ブロックチェーンとは?ブロックチェーンの仕組みを解説

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「ビットコイン」で再び脚光を浴びたブロックチェーンはいまや仮想通貨の域をはるかに超え、資産管理や美術品の真贋証明、商品のトレーサビリティ、ゲームなど、幅広い産業の基盤技術として浸透しようとしています。それだけでなく、将来的には税の徴収や投票など、行政領域などでの活用や導入の検討が進められています。

そこで今回の記事を皮切りに全5回の連載で「ブロックチェーン」について学べる記事シリーズを展開!今回は、「ブロックチェーンの仕組み」「ブロックチェーン技術開発によるメリット」について分かりやすく解説します。

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンはデータそのものを価値として流通させる技術です。仮想通貨であるビットコインには明確な発行者はいません。改ざんが困難であることや参加者全員で取引内容を検証できる仕組みを有するシステムへの信頼が価値の裏付けとなっています。このような特徴を持つブロックチェーンは、「改ざんが困難」で「安価」「管理者不要」といった特徴から、さまざまな領域での活用及び検討がはじまってます。

「ビットコイン」の基幹技術として利用

「Bitcoin:A Peer-to-Peer Electronic Cash System」。2008年11月末、米国のメーリングリストに、Satoshi Nakamotoと名乗る人物から寄せられたこの1本の論文が、ビットコインとブロックチェーンの始まりでした。

論文はビットコインの特徴として、「第三者機関を必要としない直接取引の実現」、「非可逆的な取引の実現」、「少額取引における信用コストの削減」、「手数料の低コスト化」、「二重支払の防止」を挙げており、メーリングリストでの議論を経て、翌2009年1月に最初のブロックが生まれ、ビットコインの運用が始まりました。

日本では2014年に、仮想通貨取引所のマウントゴックス(東京都)が破綻したことで、仮想通貨を「一時的な流行現象」と見る人も多くいましたが、2015年にはブロックチェーンの活用が金融業界などに大きな変革をもたらすことが広く認識され始め、今では産業界全体へと広がり始めています。

台帳情報の共有で連携する新たなシステムの形

過去の取引情報を連鎖的に引き継ぐデータ構造と、それをP2P通信で共有し検証できる仕組みがブロックチェーンの改ざんを困難にしています。ブロックチェーン単体では新規性がありませんが、古い技術の組み合わせることによって、上述したような特徴をもつ革新的な機能を生み出しました。

ブロックチェーンで使われるのはP2P(Peer-to-Peer)型ネットワークです。パソコンがあってサーバー(基幹システム)にデータが保管されるという関係ではなく、ネットワークにつながるすべてのコンピューター(ノード)が互いにデータを要求し、提供し合うことで同一のデータを保存します。ブロックチェーンが分散型台帳技術とも呼ばれる理由です。

このため、いくつかのコンピューターのデータを書き換えられることはあっても、相互に検証する仕組みにより、改ざんを検知することができ、セキュリティが保たれるのです。さらに、「メンテナンスのための利用停止」(ダウンタイム)といったことも起こりません。ビットコインのブロックチェーンは運用が始まって以降、「ゼロダウンタイム」を実現し続けているのです。

ブロックチェーン技術開発によるメリット

ブロックチェーン技術のメリットは、情報の改ざんが困難というだけではありません。サーバーのような中央集権的な管理システムが不在なため、「管理システムが停止すればすべての機能が停止する」といった事態が起こらないのです。こういった従来システムにはないメリットも、ブロックチェーンの急激な利用拡大につながっている理由の1つです。

情報の改ざんがされにくい

情報の改ざんがされにくい理由には「台帳の共有」だけでなく、公開鍵暗号や電子署名といった技術にも関連があります。さらに、ハッシュ関数という暗号技術もあります。ハッシュ関数では、入力するデータが同じ場合は同じハッシュ値が出るのですが、少しでも異なるデータからは全く違うハッシュ値が出されます。結果、ハッシュ値から元のデータを推測するのは非常に困難になります。

例えば、ビットコインでは、「マイニング」と呼ばれる作業でハッシュ関数が用いられており、この作業では最新ブロックに記録されているデータにナンス(任意の値)を加えてハッシュ値を計算し、「特定の値より小さい値」を発見すると、ブロックを生成する権利が得られ、ネットワーク参加者の検証と承認を経て、正式なブロックとして追加されます。その後、定められたレートに基づいた報酬が得られます。

上述の仕組みが合意形成アルゴリズムの一種でProof of Work(PoW)と呼ばれるものになり、管理者不在で稼働するビットコインの根幹を支える重要技術になります。

情報の透明性が高い(ビザンチンノードの影響を受けない)

ビザンチンノード(ビザンチン将軍問題)とは、悪意をもってデータを改ざんしようとするノード(コンピューター)が、その目的を達成できるかどうかという問題です。多数決など集団の意思決定の問題で、ある都市を包囲したビザンチン帝国の将軍9人が攻撃か撤退かの意思統一を図ろうとするときに、悪意ある将軍がいればどうなるか、という命題です。8人の意見が攻撃と撤退で真っ二つに分かれていた場合、最後の1人が攻撃したい将軍4人に攻撃の意思を、撤退したい将軍4人に撤退の意思を伝えれば、4人が攻撃する一方で残り4人が撤退してしまい、都市への攻撃は失敗に終わります。

改ざんに成功するには、全体の50%より大きなマシンパワーが必要になるとされています。このため、敢えて強大なマシンパワーを用意して改ざんするより、発掘(マイニング)によって報酬をもらう方が得なので、改ざんに対する動機を弱めることができます。

非中央集権のシステム

サーバーを設置する一般的なシステムでは、サーバーが単一障害点となり、サーバーに障害が起きると、システム全体が機能不全になります。

しかし、ブロックチェーンにはサーバーという基幹コンピューターがなく、いくつものコンピューター(ノード)が参加し、同じデータを保有しています。このため、障害を来せばすべてのシステムがおかしくなるような「単一点」が存在しません。特定の個人や組織にすべての裁量がある「中央集権型」に対し、ブロックチェーンは「非中央集権型」のシステムで、大勢の人による意思決定がシステムに反映されるという特徴があります。

ブロックチェーンの階層構造

ブロックチェーンはWebサービスのようなアプリケーションを稼働させられるプラットフォームとしても利用することができます。基盤技術の領域であるプラットフォームは今も改善・発展が進められており、そのことでより便利なアプリの開発が促され、私たちの生活を大きく変えようとしているのです。

ブロックチェーンアプリケーション

ブロックチェーンの特徴である改ざんが困難であることや管理コスト削減などのメリットを活かしたアプリケーションの導入が、様々な産業分野で始まっています

例えば、送金の分野では、決済コストを大幅に低下させ、ごくわずかな手数料で少額送金ができるサービスなども生まれています。資産管理やクラウドファンディング、食品のトレーサビリティにも活用されるほか、輸出入などの手続きにも大きな影響を与えるとみられています。公共分野では将来的に投票や徴税にも使われるようになるとみられています。

さらに、「管理者がいなくてもよい」という特質も重要なポイントです。今は、宿泊施設と宿泊希望者を結びつけるといったマッチングアプリが盛んですが、宿泊施設と宿泊希望者がブロックチェーン上のサービスで直接つながれるようになります。そうすれば、コストの高いサイト運営者に支払う手数料がいらなくなり、コストの安いブロックチェーン上のサービスの利用が進むとみられています。

また、プラットフォームには「スマートコントラクト」という、「一定の条件になれば契約を実行できる」仕組みが存在し、将来起こる事柄を、それぞれの参加者が予測・投票し、予測結果が的中した際に報酬が支払われるようなサービスがすでに存在しています。

ブロックチェーンプラットフォーム

ブロックチェーンプラットフォームで有名なものはイーサリアムです。イーサリアムでは既にスマートコントラクトを活用した様々な種類のアプリケーションが存在し、活用が進んでいます。

一方、この階層で行われている改善・発展の中では、「中央管理者不在」というブロックチェーンの特質を敢えて外す方向の動きもあります。イーサリアムなど一般的なブロックチェーンは「パブリックチェーン」と呼ばれ、取引の承認(新たなブロックの生成)のプロセスに誰でもが参加できます。誰でも取引を行い、ブロック内のデータを閲覧することができます。

これに対し、「コンソーシアムチェーン」は取引の承認ができる参加者を信頼のおける一部に限ります。また、「プライベートチェーン」では、特定の組織内に限りますので、企業内だけでチェーンを構築できます。ただ、不特定多数の承認がないため、管理者である企業が恣意的にデータの改ざんを行う可能性が指摘されています。

まとめ

ブロックチェーンはインターネットがもたらした激変と同様かそれ以上の変化を社会にもたらすとみられています。しかし、その変化のスピードはインターネットのときをはるかに超えています。2014年のマウントゴックス破綻というショッキングな出来事がすぐに過去のものとなり、ブロックチェーンが基盤技術として社会を変革させ始めていることが、変革の速さの証左でしょう。ブロックチェーンのもたらす変化が身近なものとして感じられ、押し寄せてくるのはそう遠い話ではないでしょう。変化の波に乗るためにも、ブロックチェーンの動きから目を離すことはできません。 

今回はブロックチェーンの基礎についてみていきましたが、次回は【ブロックチェーン 連載#2】として「ブロックチェーンのプラットフォームにはどんなものがあるのか」を紹介していきます。お楽しみに!