「ビットコイン」で再び脚光を浴びたブロックチェーンはいまや仮想通貨の域をはるかに超え、資産管理や美術品の真贋証明、商品のトレーサビリティ、ゲームなど、幅広い産業の基盤技術として浸透しようとしています。それだけでなく、将来的には税の徴収や投票など、行政領域などでの活用や導入の検討が進められています。
そこでTECH Streetでは全5回の連載で「ブロックチェーン」について学べる記事シリーズを展開!今回は、ブロックチェーンにはどんなプラットフォームがあるのか解説します。
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様々なブロックチェーンプラットフォーム登場の背景
仮想通貨・ビットコインの中核技術として再び脚光を浴びたブロックチェーンは、その信頼性、管理者不要という特性などから先端的な人たちの注目を集めました。これらの人たちはブロックチェーンに社会変革の可能性を見出し、その用途を広げ、使いやすくしてきました。さまざまなモノやサービスを提供している企業にとっても、ブロックチェーンという基盤技術のメリット、革新性が認識されはじめました。企業のニーズに応じたアプリケーションを動かすことのできるさまざまなプラットフォーム(基盤)も出てきて、ブロックチェーンを基盤としたアプリサービスがユースケースとして登場しています。
ブロックチェーンの活用は当初、送金や決済という金融領域でのサービスが中心でした。ブロックチェーンに記されたデータへの絶対的な信頼性、送金や決済面の利便性から注目されたのです。しかし、その後は管理者不要という特長も相まってサプライチェーンなどの業界にも生かせることが認識され、さまざまな領域に向けたプラットフォームが開発、運用され、新たなサービスが生み出されています。
ブロックチェーンプラットフォームの種類
ブロックチェーンプラットフォームにはすでに、Ethereum(イーサリアム)やNEM(ネム)、Hyperledger(ハイパーレジャー)、 XRP Ledger(XRPレジャー)などが登場。仮想通貨のデータ分析企業・DataLightが2019年6月に公表したデータによると、スマートコントラクトと分散型アプリケーションを提供するプラットフォーム10種類のなかで、Ethereumが圧倒的なシェアを誇っていることがわかりました。Ethereumの特徴として、一定の条件が整えば契約内容や取引を自動的に実行するスマートコントラクトにあり、1193個のトークン(仮想通貨)に採用されていました。
2位集団には3つ。中国版イーサリアムと呼ばれているNEO(ネオ)は28のプロジェクトで、資産管理や送金が得意なWaves(ウェーブス)と国際送金が安価なStellar(ステラ)はそれぞれ24のプロジェクトです。採用状況を比較すると、Ethereumとの違いが一目瞭然です。
新たなプラットフォーム需要の高まり
数多くのブロックチェーンプラットフォーム出現の背景には、企業側のプラットフォームのニーズの高まりがあります。新たに誕生したブロックチェーンプラットフォームという概念に触れた企業が活用方法を見出し、プラットフォームへの需要がどんどん高まるという構図です。
例えば、ネットゲーム業界ではゲーム内のトークン(仮想通貨)を発行することにより、ゲーム内のアイテムや通貨をトークンに紐付けできるようになります。プレーヤーはアイテムを所有しているという実感をより強くもてるうえ、そのアイテムを安全に売ることもできます。
資産管理や送金が得意なWavesは、こうしたニーズに応えられるサービスを展開しています。さまざまなニーズに応えるツールを開発することで、プラットフォームの需要が高まり、さまざまなサービスが生まれているのです。
代表的なプラットフォーム
Ethereumを筆頭としたプラットフォームはそれぞれ、どのような機能を構築、導入し、どのように活用されているのか。主だった3つのプラットフォームを比較すれば、ブロックチェーンの今の動きが見えてきます。
Ethereum
Ethereumは2013年、ロシア生まれ、カナダ育ちのヴィタリック・ブテリンが19歳で考案したブロックチェーンプラットフォームです。スマートコントラクトが最大の特長ですが、送金、決済、ID認証など、さまざまなサービスがEthereumから開発、運用されています。
スマートコントラクトでは、仲介業者を通さずに、不動産や株式などのさまざまな取引がセキュリティを保ちながら処理できます。Ethereumで作られたアプリの1つ、Augur(オーガー)のサービスでは、翌日のサッカーの試合を予想し、Aチームが勝てばCさんに、Bチームが勝てばDさんに報奨金を支払うという契約内容を事前に作成することで、試合結果が決まった時点でその契約内容を自動で処理してくれるのです。さまざまな契約内容を盛り込めるうえ、処理コストが非常に安いことも人気の秘密です。
Bitcoin
Bitcoin(ビットコイン)は、代表的かつ最も知られた分散型の仮想通貨です。2009年頃から流通するようになったとされており、発行の上限は2100万枚に設定されています。通常の通貨とは異なり、中央銀行のような発行体は存在しません。
迅速かつ非常に低い手数料での送金が可能。その手軽さから、日本国内でもビットコインで支払いが可能な小売店が続出したり、投資先として人気を博したりと、一時社会現象を巻き起こしました。
Hyperledger Fabric
Hyperledger(ハイパーレジャー)はIBMやIntelなど、世界各国のIT企業が参加するオープンソースコミュニティにおいて、ブロックチェーン技術の社会実装など、幅広く最大限に活用することを目的にしています。このため、採用企業にとっては、専門性の高いコミュニティメンバーの協力が得られるメリットなどがあり、金融だけでなく、製造やサプライチェーン、IoTなどの分野でのサービスが始まっています。
Hyperledgerのなかで最も普及しているフレームワークがFabricです。Javaなどの汎用プログラミング言語を使ってスマートコントラクトを記述できるほか、ユーザーIDの発行や認証にも使われています。
ブロックチェーンプラットフォームがビジネスを発展させる
ブロックチェーンは、特定の管理者がいなくても非常に高い信頼性のあるデータを安いコストで世界中のどことでもやりとりできる仕組みです。そして、その仕組みがプラットフォーム(基盤)となって、さまざまなアプリケーションを機能させることができるようになったことから、金融だけでなく、モノやサービスにおいてもさまざまなビジネスが生まれ、発展しているのです。
書き換えられないことにより、情報の信頼性が高まる
「書き換えられない」という特長は、パソコンがあって基幹サーバーにデータが保存されるという既存の基幹システムではなく、P2P(Peer-to-Peer)型ネットワークを使っていることから生じています。P2Pにつながるすべてのコンピューター(ノード)は同じデータを保存しており、書き換えようとする悪意をもつ者でもすべてのデータを書き換えることは困難で、結果としてデータの改ざんがなされないとされています。
この「データが書き換えられない」というセキュリティ面での絶大な信頼性から、送金や決済だけでなく、高額な美術品の真贋証明、農産物のトレーサビリティなどにも活用され始めているのです。
ブロックチェーンプラットフォームの恩恵を受けるビジネス
ブロックチェーンプラットフォームを活用することによって、ビジネスの世界では様々な可能性が広がります。
例えば、製品情報の追跡を意味する「トレーサビリティ」は、その一例です。食品の場合、産地や消費期限の偽装などを改ざんできない状態にすることで、消費者に食の安全を提供できます。また、高級ブランド品の場合は、偽物の流通を防ぐことができるでしょう。
ブロックチェーン上で契約を記録・実行する「スマートコントラクト」は、第三者を介することなく不動産や金融などの契約が実行されます。確実かつ迅速な契約が可能となり、利用者にとっては手数料のコストを抑えることが可能となります。
今回一例に挙げた食品や金融、不動産だけにとどまらず、あらゆるビジネスがブロックチェーンプラットフォームを活用することで大きな恩恵を受けることができるのです。
まとめ
2008年にアイデアが出され、翌年にビットコインをもたらしたブロックチェーンという技術革新。すでにこの基盤技術は洗練されたものになり、決済業務や不動産などのさまざまな仲介業務、ゲーム、農産物のサプライチェーンなど多くのサービスに多大な影響を与え始めています。
今回はブロックチェーンの基礎についてみていきましたが、次回は【ブロックチェーン 連載#3】として「ブロックチェーンを活用したビジネスモデルの事例と課題」について紹介していきます。お楽しみに!
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