
※この記事は、2025年6月に開催されたイベントでの発表内容をレポートしたものです。
- 「PMM完全解説ガイド」とコミュニティについて
- PMMとPdMの有機的な連携について
- PMMが必要になった背景
- PMMとは何か?
- PdMとPMMそれぞれのミッション
- PdMとPMMの業務内容
- PdMとPMMの関係を映画制作に例えると
- PMMが果たすべき3つの役割
- プロダクトの状態に合わせたPMMの関与レベル
- PdM/PMM組織のベストプラクティス
- 本日のまとめ
登壇者はこの方

吉澤和之氏
株式会社アイスリーデザイン
取締役
ライター、クリエイティブデイレクターを経験後、外資系MarTech企業に転職。新規事業開発やマーケティングなどに従事。その後、個人で事業コンサルティングを行う傍ら、ニューヨーク発IT企業の日本進出支援、Repro株式会社にてCBDOなどを歴任。2020年6月からは台湾発AIテックのawooに参画し、日本市場開発責任者として日本法人の立ち上げとグロースを成功させる。
吉澤:本日、皆さんにお伝えしたいことは「PdM/PMM体制とは何で、どう機能するのか」です。
下画像の従来の体制とPdM/PMM体制の違いをまとめたマトリックスをご覧ください。

従来の組織体制は、職能別組織です。たとえば、「マーケティング部」「カスタマーサクセス部」「開発部」のように部署が分かれていて、昔ながらのプロダクト開発を進めます。
一方、PdM/PMM体制は、プロダクトを起点として、あらゆる職能の人々が部門を横断して関わり、プロダクトの成長を目的として活動します。
この2つの体制は、視点、関係性、働き方などが大きく異なります。
- 従来の体制:点で捉える、断続的、納品物ベース
- PdM/PMM体制:線で捉える、持続的、成果ベース
今回の発表でこの内容を理解してもらうことが、今日のゴールです。
「PMM完全解説ガイド」とコミュニティについて

今回登壇している重松氏、真崎氏、道家氏と吉澤氏の4名で、先月「PMM完全解説ガイド」をリリースしました。
PdM(プロダクトマネージャー)は広く認知されていますが、PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)はまだ認知度が低いのが現状です。また、PMMに関する明確なフレームワークもありませんでした。そこで、まずはPMMのフレームワークを作ろうと開発がスタートしました。
プロダクトを成長させるには、PdMとPMMの両方が重要な役割を担います。海外にはフレームワークがありますが、日本独特の文化に合わせたものは存在しませんでした。そこで、日本の商習慣に合わせたフレームワークとして、この「PMM完全解説ガイド」を作成しました。
「PMM Japan Community」も設立したので、ご興味があればぜひご参加ください。
PMM Japan CommunityのSlackコミュニティはこちらから(誰でも自由参加OK)
PMMとPdMの有機的な連携について
ここからは、PMMとは何か、そしてPdMとどう連携してプロダクトを成長させていくか、そのためのフレームワークをご紹介します。
今回の発表は、「PMM完全解説ガイド」の内容をさらに深掘りするものです。ガイドに興味がある方はコミュニティに参加するとPDFが自動で送付されますので、後でゆっくりご覧いただけます。
本日の発表を通じて、ご自身の会社でどのように体制を構築していくか、具体的な事例や実務的なヒントを得ていただけると思います。
PMMが必要になった背景

PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)が必要とされるようになった背景は、以下の3つが挙げられます。
- 技術依存の限界:プロダクトの技術力のみに頼る「プロダクトアウト」だけでは、成長が難しくなりました。市場のニーズを捉える「マーケットイン」の視点がより重要になっています。
- デジタルシフト:「2025年の壁」に象徴されるように、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)対応が急務となり、デジタルを活用した事業成長が求められています。
- 市場理解力の重要性:顧客視点に立って、市場の動向やニーズを深く理解することが不可欠になりました。
私の感覚では、2018年頃のSaaSスタートアップバブルがきっかけでした。当時、シリコンバレーからPMMの考え方が日本に伝わり、勢いのあるスタートアップがプロダクトグロースのために積極的に取り入れ始めました。
そして近年、「2025年の壁」問題が顕在化し、DX対応の必要性が改めて叫ばれる中で、PMMの役割が再認識されています。
PMMとは何か?

従来のPdMは、開発、UX/UI、製品企画、セールス、マーケティング、カスタマーサクセスなど、プロダクトを成長させるためのあらゆる業務を担っていました。しかし、これらすべてを一人で担うには限界があります。
そこで、PdMの役割を分解するためにPMMが必要とされました。
- PdM:プロダクトの品質、ビジョン、UI/UXなど、「なぜプロダクトを作るのか」といった本質的な部分に焦点を当てます。
- PMM:営業戦略、マーケティング戦略、カスタマーサクセス戦略など、顧客との接点を持つ部分に特化します。
PdMはプロダクトを深く理解し、PMMは顧客の声を最も理解しているという関係性です。
PdMは開発やUI/UXに集中するあまり、顧客の声が届きにくくなるという課題を抱えがちですが、PMMがその役割を担うことで、顧客視点を取り入れ、プロダクト成長を加速させます。
PdMとPMMそれぞれのミッション

PdMとPMMは、それぞれ異なるミッションを持っています。
- PdMのミッション:「なぜ作るのか」「どう作るのか」を定義すること
- PMMのミッション:「何を作るべきか」を定義すること
PMMは、市場が求めるものを見極め、それを言語化し、市場に受け入れられる状態を作り出すという、非常に重要なプロセスを担います。
PdMとPMMの業務内容

次に、PdMとPMMそれぞれの具体的な業務内容について見ていきましょう。
PdMの主な業務内容
- プロダクトビジョンを策定し、方向性を示す
- 開発の優先順位付けと要件定義を行う
- ユーザー・顧客を深く理解し、インサイトを抽出する
- ユーザー体験(UI/UX)を最適化する
UI/UXはPMMの仕事ではないかと質問されることもありますが、一般的にはPdMの担当領域です。
PMMの主な業務内容
PMMの業務は企業によって異なりますが、主に以下のビジネスサイドの領域を担い、ユーザーとプロダクトをつなげます。
- GTM(Go-to-Market)戦略の策定
- 価格戦略の策定
- マーケティング戦略の策定
- アライアンス戦略の策定
PMMは、開発者、顧客、ビジネスの三者をつなぐ重要な役割を果たします。
ただし、これらの業務内容に必ずしも完璧に当てはめる必要はありません。大切なのは、PdMとPMMそれぞれのスキルセットを補完し合うことです。
たとえば、PdMがマーケティングに強ければ、PMMは別のスキルでPdMをサポートします。逆に、PMMがデータ分析に長けていれば、PdMはプロダクト開発に専念できます。お互いのスキルが重複するのではなく、足りない部分を埋め合う関係性が重要です。
PdMとPMMの関係を映画制作に例えると

PdMとPMMの関係性は、映画制作の「監督」と「プロデューサー」に例えると分かりやすいでしょう。
- PdM:監督(例:スタジオジブリ 宮崎駿さん)
「どういうものを作りたいか」というプロダクトのビジョンを明確にし、作品そのものを作ることに注力します。 - PMM:プロデューサー(例:スタジオジブリ 鈴木敏夫さん)
監督のビジョンを理解し、それを世の中にどう届けるかという戦略を立てます。例えば、最新作『君たちはどう生きるか』のように、事前の告知を一切しないというプロモーション戦略は、まさにプロデューサーの役割です。
このように、監督とプロデューサー、つまりPdMとPMMは、どちらも欠かせない存在なのです。
PMMが果たすべき3つの役割

PMMが果たすべき、より具体的な3つの役割について説明します。
1. 市場が求めるものを見定める

この役割は、難しく考える必要はありません。まず、営業、マーケティング、カスタマーサポートなど、さまざまな部署からVoC(Voice of Customer:顧客の声)を収集する仕組みを作りましょう。
- ターゲット市場の分析
- 見込み客からのフィードバック
- 既存顧客の声
- 解約した顧客の解約理由
このようにあらゆる接点からVoCを収集し、データベースに蓄積・分析し、スコア化することが重要です。
このスコア化は、簡単ではありません。海外では、プロダクト開発の優先順位付けプラットフォームとして「Productboard」などのSaaSが普及していますが、日本ではまだあまり知られていません。しかし、このスコア化こそが、プロダクト開発の肝になります。
スコア化をしないと、「なんとなく良さそうだから」という感覚で開発の優先度を決めてしまい、プロダクトビジョンとの整合性が取れなくなるリスクがあります。VoCをしっかりとスコア化し、PdMとPMMが協議して優先順位を決めることが不可欠です。
2. 市場が望むものを言語化する

PMMの2つ目の役割は、市場が求めるものをプロダクトに落とし込み、言語化することです。
開発計画に基づいてリリース計画を立て、GTM(Go-to-Market)戦略を策定し、4P(プロダクト、価格、流通、プロモーション)を整理し、営業やマーケティングを支援します。
このプロセスの要となるのが、開発コンセプトを営業やマーケティングが使える言葉に落とし込む部分です。
- 開発サイド:「重要な機能を開発したのに、営業が全然売ってくれない」
- 営業サイド:「この機能は難しくて説明できない」
このような部門間の溝を埋めるのがPMMの役割です。
PMMは、今回のバージョンアップのコンセプトや、それがプロダクトビジョンとどう関連しているかを明確に言語化します。さらに、営業チームに対しては「このペルソナには、このトークスクリプトとキャッチコピーを使おう」といった具体的なアドバイスも行います。これは、映画制作におけるプロデューサーの役割と似ています。
3. 市場に受け入れられる状態を作る

PMMの最終的な役割は、プロダクトが市場に受け入れられ、トップライン(売上)に貢献することです。そのためには、経営指標にもしっかりコミットすることが非常に重要です。
プロダクトの状態に合わせたPMMの関与レベル

PMMに求められる役割は、プロダクトの状態によって変化します。
- 立ち上げ期(ゼロイチ)のプロダクト: PMMは深く関与し、必要であれば営業活動まで行います。
- 成熟したプロダクト: PMMは戦略策定に重点を置きます。
このように、プロダクトの成熟度や市場での立ち位置に応じて、PMMが何をすべきかは変わることを理解しておきましょう。
PdM/PMM組織のベストプラクティス

PdMとPMMが連携して動くためには、迅速な意思決定が不可欠です。
ベストプラクティスとしておすすめなのは、「プロダクト戦略ミーティング」の実施です。これは、PdM(開発サイドの責任者)、PMM(ビジネスサイドの責任者)、そして役員が同席する意思決定のための会議(ステアリングコミッティ)です。
このミーティングで決定された内容に従って業務を進めることで、組織全体のスピードが向上します。
本日のまとめ
最後に、本日お伝えしたかった内容をまとめます。
従来のプロダクト開発体制と、PdM/PMM体制は、「点」と「線」、「断続」と「持続」というように、根本的に異なります。
PdM/PMM体制は、プロダクトを成長させるための要です。多くの企業がその重要性を認識しながらも、うまく体制を構築できていないのが現状です。
そうした課題を解決し、PdM/PMM体制の構築を支援するために「PMM Japan Community(PJC)」を設立しました。キャリア育成やナレッジ共有を目的としていますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。
PMM Japan CommunityのSlackコミュニティはこちらから(誰でも自由参加OK)
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