
※この記事は、2025年6月に開催されたイベントでの発表内容をレポートしたものです。
- スタートアップと大企業のPMM
- スタートアップが競争に勝つためのポイント
- VC:スタートアップ投資のトレンド
- スタートアップにおけるPMM実践論:どう戦うか?
- スタートアップPMMモデルの特徴
- スタートアップPMMが関わるべき領域
- PMM実践事例から学んだ3つのポイント
- まとめ
- 最後に
登壇者はこの方

道家 俊輔氏
株式会社ギアソリューションズ
代表取締役
リクルート・消費財メーカー・小売系シンクタンクにて、事業戦略・DX戦略・事業開発に従事した後、2024年よりギアソリューションズを創業。1-10フェーズのグロースアウトソーシング事業を展開し、スタートアップから上場企業まで幅広いクライアントの事業成長を支援。
道家:株式会社ギアソリューションズの道家です。当社は、大企業の新規事業やスタートアップの1から10への成長フェーズを支援しています。具体的には、「作ったけれど売れない」「新しいことを始めたいけれど、どうすればいいかわからない」といった課題を抱える企業をサポートしています。
本日は、その一環として私が支援しているスタートアップ、株式会社JOYCLE(ジョイクル)の事例についてお話をさせていただきます。
スタートアップと大企業のPMM
まず、スタートアップと大企業の違いについてお話しします。私自身の考えでは、スタートアップはプロペラ機、大企業はジェット機に例えられます。

大企業は資金やブランド力、人材が豊富にあり、潤沢なリソースを活用して事業を推進できます。一方、スタートアップは常に資金不足で、人材も限られています。その代わりに、経営者の熱意やVC(ベンチャーキャピタル)からの支援といった「風」をうまく利用して成長していくことが重要です。
本日は、このような環境下で、PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)がどのように事業を成長させていくかについてお話しします。
スタートアップが競争に勝つためのポイント
スタートアップが成功するためのポイントは2つあります。

- 「風向き」に乗ること: 時代の潮流や外部の環境を味方につけること。
- 戦略と戦術の方向性を間違えないこと: その上で、プロダクトを柔軟かつアジャイルに調整していく役割をPMMが担うこと。
この2点を中心にお話しします。まず、現在の「風向き」がどうなっているのかを共有し、その上でスタートアップのPMMがどう戦うべきかについて掘り下げていきます。
VC:スタートアップ投資のトレンド

「風向きに乗る」という話をしましたが、スタートアップを取り巻く投資環境は、数値だけ見ると少し厳しい状況にあります。
- 世界的な傾向:スタートアップの調達社数や調達金額は減少傾向にあります。
- 日本のユニコーン企業: SmartHRやGOといった大きな成功事例はありますが、海外、特に米国と比較すると、まだユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場企業)の数は少ないのが現状です。

スタートアップ育成5か年計画
このような状況に対し、国はスタートアップへの支援を強化しています。
政府は「スタートアップ育成5か年計画」を策定し、スタートアップへの年間投資額を現在の約1兆円から10兆円へと大幅に増やす目標を掲げています。これは、スタートアップを応援するという強い「風」が吹いていることを示しています。
また、東京がスタートアップのエコシステムランキングにランクインしたり、SusHi Tech(スシテック)のようなイベントが増えたりと、スタートアップを支援する環境は着実に成長しています。

ただし、政府の投資額はまだ米国などと比べると差があるため、課題は残ります。
スタートアップは、資金や人脈が限られているからこそ、こうした支援の「風」を最大限に活用する必要があります。多くの人が日本でもスタートアップを応援したいと考えています。

事業を成長させ、PMF(プロダクトマーケットフィット)を実現するためには、そのような応援してくれる人たちに、いかにうまく関わってもらいながら事業を築いていくかが非常に重要になります。
スタートアップにおけるPMM実践論:どう戦うか?
ここからは、本題であるスタートアップでの戦い方についてお話しします。
スタートアップや新規事業の組織はシンプルです。

基本的には、CEO/事業責任者の下にPdMとPMMが配置され、この3人が連携して事業を推進する体制になります。
その下にBizDev(事業開発)、マーケティング、セールスなどのメンバーが加わりますが、アーリーフェーズの事業成功の鍵は、CEO、PdM、PMMの3人がどれだけ密に連携できるかにかかっています。
スタートアップPMMモデルの特徴

大企業とスタートアップを比べたとき、プロダクトマーケットフィット(PMF)を達成する難易度は、スタートアップの方が圧倒的に高いと考えています。
潤沢なリソースがないスタートアップは、マーケットを徹底的に理解し、「お金がない中でいかに工夫して勝つか」が最も重要です。これが、大企業との一番大きな違いと言えるでしょう。
スタートアップPMMが関わるべき領域

私が実際にスタートアップでPMMとして経験した中で、PMMが関わるべき領域は、主に以下の通りです。
- ビジネス戦略・事業戦略の策定: まず、CEOと一緒にビジネスや事業の戦略を考えることから始めます。
- 資金調達: お金がなければ何も始められません。事業を進めるための資金を確保します。
- マーケティング・セールス: 資金が集まったら、リード獲得や登壇、商談、カスタマーサクセスなど、さまざまな活動を通じて事業をグロースさせていきます。
これらのプロセス全体で重要なのが、VOC(顧客の声)です。特にスタートアップは、あらゆる場面に成長のヒントが隠されています。
- VCと話しても検討につながらないのはなぜか?
- 登壇後、商談につながらないのはなぜか?
- 商談をしても、決裁者になかなか会えないのはなぜか?
それぞれのプロセスにおける「率」を上げるために、VOCを徹底的に分析し、考え抜くことが、事業を成長させるための鍵となります。
PMM実践事例から学んだ3つのポイント

ここからは、私がCOO兼PMMとして関わった事例をもとに、スタートアップのPMMに特化した3つのポイントをお話しします。
- 戦略策定を迅速に行う: とにかく素早く戦略を立てることが重要です。
- 大局を見失わない: 日々の業務に追われがちですが、大局を見失わないための仕組みを作りましょう。
- 施策の効率と質を両立する: 当たり前のことですが、一つひとつの施策の効率を考えながら、質の高いアウトプットを追求することが大切です。
この3つのポイントについて、詳しくご説明します。
1. 戦略策定は迅速に

大企業での新規事業立ち上げでは、膨大な資料作成や複雑な稟議プロセスに多くの時間が費やされます。しかし、スタートアップでは、経営層が迅速に決断を下すことが可能です。
私の事例では、現状分析から対策案までを約2週間で作成し、実行に移しました。このスピード感こそが、アーリーフェーズのスタートアップの強みです。
2. 大局を見失わない仕組みづくり

スタートアップはリソースが限られているため、従業員一人ひとりの業務量が増え、目の前の仕事に追われがちです。その結果、戦略的でない業務に時間を費やしてしまうことも少なくありません。
この課題を乗り越えるためには、「やること」と「やらないこと」を明確に決めることが重要です。
私たちは、OKR(Objective and Key Results)を導入し、それを徹底しました。OKRは多くの企業で知られていますが、実行しきれていないケースも多いです。
- Objective(目標):創業初期は売上ではなく、資金調達を目標に設定しました。
- Key Results(主要な結果):プロダクト、営業、ブランディングなど、目標達成のためにやるべきことを具体的に落とし込み、着実に実行しました。

3. 効率・質にこだわる!

成果は「量」と「質」の掛け算で決まります。戦略ばかりを練ると行動が遅くなり、直感だけで動くと無駄な労力が増えます。このバランスを取ることが重要です。
例:戦略に沿ったピッチ登壇

JOYCLEは、ゴミ問題を解決するIoTアップサイクルプラントJOYCLE BOXを開発するディープテックスタートアップです。事業特性を踏まえた戦略を迅速に構築し、無駄の少ない実行推進を強化しました。
- 課題: JOYCLE BOXは高価で一定の導入ハードルが存在する。ごみを処理するために自治体や産廃業者との連携も重要
- 解決策: 地方のピッチイベントに積極的に応募・登壇し、魅力を訴求しながら共創パートナを見つける営業戦術を強化
これにより、効率的に多くの潜在顧客と出会うことができ、事業PRと案件獲得を同時に進めることができました。
例:PoCの中での施策磨きこみ

結果、多くの地方行政様との実証実験に着手できています。
例:商談確立UP×ファンづくりに向けた”現地見学会”

実機を見てもらい、そのうえで事業に共感してもらう場も設置しました。
成果
こうした地道な努力を続けた結果、2023年の創業からわずか数年で、IVSやB DASH CAMPといったスタートアップの登竜門イベントに参加の機会をいただき、また受賞やメディア掲載などの成果を数多くあげることができました。
アジャイルに、そして迅速に行動することの重要性を改めて実感しています。
まとめ
ここまでの発表内容を2つのポイントにまとめます。
1. スタートアップPMMの役割
スタートアップのPMMは、戦略策定から資金調達、リード獲得、商談、カスタマーサクセスまで、事業の成長プロセス全体に深く関わります。これらの各プロセスでVOC(顧客の声)を愚直に集め、事業改善に活かすことで、プロダクトは必ず良くなっていきます。

2. 事業成長のポイント
事業を推進する上で特に重要なポイントは以下の通りです。
- 戦略に時間をかけすぎない:もちろん戦略は大切ですが、時間をかけすぎないことが重要です。スタートアップでは、実行しながらすぐに方針転換(ピボット)するのが当たり前だからです。
- スピードと熱量:戦略に基づいて迅速に行動し、ユーザーの声をすぐに事業に反映させて改善を繰り返す。この「スピード」と「熱量」こそが、スタートアップの生命線です。

最後に
今回はスタートアップの事例を中心にお話ししましたが、私たちの会社では、上場企業からスタートアップまで、戦略策定から実行まで幅広く事業成長を支援しています。
もしPMMだけでなく、1から10への成長フェーズを経験したい方がいらっしゃれば、ぜひお声がけください。
以上で、私の発表を終わります。
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