
※この記事は、2025年6月に開催されたイベントでの発表内容をレポートしたものです。
- 会社紹介
- SmartHRのサービス全体像
- 現在のPMM組織
- PMMが置かれた背景
- 事業構造と周辺組織
- 事業構造と周辺組織
- PMとPMMの役割分担
- PMMの増員背景
- PMMになるまでのキャリア
- PMMから派生したポジション
登壇者はこの方

重松 裕三氏
株式会社SmartHR
プロダクトマーケティングマネージャー
コンシューマー向けプロダクトを開発する企業で、プロダクトマネージャーとして新規事業の立ち上げを複数手掛ける。2019年、SmartHRにプロダクトマーケティングマネージャーとして入社。タレントマネジメント事業の立ち上げの後、現在はSmartHRのプロダクトマーケティング全体を統括。
重松:こんにちは、SmartHRの重松です。私からは、PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)の具体的な業務内容というよりは、PMM組織を6年以上運用しているSmartHRが、どのような体制で事業を推進しているのかについて、詳しくお話しします。
私は、7年間ほどtoC企業でプロダクトマネージャーを務めた後、2019年にSmartHRに1人目のPMMとして入社しました。厳密には、社内の異動でPMM組織が立ち上がった後、外部から初めて入ったメンバーとなります。
入社後は、タレントマネジメント事業の立ち上げ責任者を経て、現在はPMM組織全体の統括をしています。
この後PMM組織についてお話ししますが、その前に当社の事業構造を理解していただくと、より分かりやすいと思いますので、ご紹介させてください。
会社紹介

SmartHRは、企業の労務管理を効率化するソフトウェアを提供しています。当社の中心にあるのは、従業員のデータベースです。
このデータベースを基盤に、労務管理やタレントマネジメントなど、様々な事業を展開しています。
従業員の方は、SmartHRのサービスにアクセスすると、ポータル画面に遷移します。そこから、スマホアプリなどを使って、評価の入力、サーベイへの回答、年末調整の手続き、給与明細の確認といった業務を行います。
このようにサービスを利用していただくと、従業員のデータが蓄積されていきます。そのデータを組織づくりや離職防止に役立てていくのが、SmartHRのサービス全体の仕組みです。
SmartHRのサービス全体像
当社のサービスは、下図のように構成されています。中心に従業員データベースがあり、その下部に労務管理の機能群、上部にタレントマネジメントの機能群が配置されています。

「プロダクト」の単位
私たちが「プロダクト」と呼ぶのは、上図の四角い箱一つひとつです。これらのプロダクトは、それぞれが年間で数億円から十数億円規模の収益を生み出すこともあります。
今後、「プロダクト」という言葉を使う際は、この四角い箱の単位を指しているとご理解ください。
具体的には、以下のような単位でプロダクトが存在しています。
- 労務管理: 「年末調整」「勤怠管理」「給与管理」といった機能ごとに、一つのプロダクトとして扱われています。
- タレントマネジメント: 「従業員サーベイ(アンケートツール)」「分析サービス」「人事評価」などが、それぞれ独立したプロダクトとして、オプションサービスとして提供されることもあります。

SmartHRはもう10年ぐらいやっているのですが、今年ARRが200億を突破し、立ち上げたタレントマネジメント事業も50億円を突破しています。最近はそれ以外にもかなり事業を拡大してきています。
現在のPMM組織
SmartHRのPMMがどのような体制で業務にあたっているかをご紹介します。

1. 人事労務領域:6名
当社の祖業である人事労務領域には、6名のPMMがいます。
この領域はサービスが非常に大規模ですが、その中でも「年末調整」や「勤怠管理」といった個別のプロダクトを、担当PMMがそれぞれ受け持っています。最近では新しいプロダクトも増えているため、10から100のフェーズにある事業もあれば、0から1のフェーズにある事業もあります。
2. タレントマネジメント領域:4名
タレントマネジメント領域には、4名のPMMがいます。このチームは、タレントマネジメントに関連する機能全体を担当しています。
3. 従業員ポータル・情シス領域:6名
従業員が最初にアクセスするポータル機能や、新しく立ち上げている情報システム(情シス)関連の領域を、6名のPMMが担当しています。
4. 領域横断部:PMM組織の大きな特徴
SmartHRのPMM組織の最も特徴的な点として、「領域横断部」があります。
このチームは、特定の領域にとらわれず、複数の事業を横断する機能開発を担当しています。例えば、500名以上の大企業向け事業と500名未満の中小企業向け事業のTier別プロダクト戦略を策定したり、複数のグループ会社を横断して管理したいといった、幅広いニーズに対応する機能開発を行っています。
5. GTM(Go-To-Market)マネージャー:最新の取り組み
最近では、全チームのGTM(Go-To-Market)戦略を効果的・効率的に進めることを目的としたGTMマネージャーを設置しました。このチームについては、後ほど詳しくお話しします。
PMMが置かれた背景

PMMがSmartHRに設置されたのは2019年です。その背景を、創業者の宮田氏のブログ記事から引用してご説明します。
2019年に、労務管理サービスの基本機能に加え、初の有料オプションである「オンライン雇用契約」がリリースされました。この時、様々な課題が明らかになりました。
具体的には、以下のような課題がありました。
- 責任の所在が不明確: 新しいプロダクトの売上全体に誰が責任を持つのか、また、顧客向けのメッセージ(Webサイトや営業資料に記載する文言)を誰が決めるのかが曖昧でした。
- 機能開発の優先順位がつけられない: 特にビジネス側の視点で、顧客からのフィードバックを収集し、それを開発チームに伝える役割が明確になっていませんでした。
これらの課題により、営業、カスタマーサクセス、プロダクトマネージャーの間でタスクが宙に浮いてしまい、「誰がやるんだ?」という状況が生まれてしまいました。
こうした課題を解決するために、PMMが設置されたというのが、当社のPMM組織が生まれた経緯です。
事業構造と周辺組織
当社の事業構造は以下のようになっています。

プロダクトサイド
プロダクトサイドは、領域ごとにスクラムチームが存在します。例えば、人事労務の領域には、プロダクトマネージャー(PM)、エンジニア、デザイナー、QA(品質保証)、UXライター、カスタマーサポートといったメンバーで構成されるチームがあります。タレントマネジメントやその他の領域でも同様のチーム構成になっています。
このように、プロダクトサイドは「領域」や「プロダクト」ごとにチームが分かれています。
ビジネスサイド
ビジネスサイドは、主に顧客の規模で2つの事業本部に分かれています。
- エンタープライズ事業本部: 従業員500名以上のお客様を担当。
- グロースマーケット事業本部: 従業員500名未満のお客様を担当。
それぞれの事業本部の中に、インサイドセールス、セールス、カスタマーサクセス、そして全体の戦略を策定するプランニングチームなどが存在します。
このように、プロダクトサイドは「プロダクトごと」にチームがあるのに対し、ビジネスサイドは「すべてのプロダクト」を販売するという構造になっています。これが、現在のSmartHRの全体体制です。
事業構造と周辺組織
このような体制の中で、PMとPMMがどのように連携しているのかを説明します。

- PM(プロダクトサイド): PMは、特定のプロダクトを担当するスクラムチームに集中します。主な役割は、このチームと密に連携を取り、プロダクトの開発を進めることです。
- PMM(ビジネスサイド): PMMは、ビジネスサイドをメインに担当します。先ほど紹介したエンタープライズ事業本部、グロースマーケット事業本部、そしてマーケティングチームと連携を取り、プロダクトの販売や普及を推進します。
プロダクトごとの役割分担
このような役割分担が、プロダクトごとに存在します。
当社には約20個のプロダクトがあるため、このPMとPMMによる連携ラインが20本あると考えていただくと、全体像がわかりやすいかと思います。
PMとPMMの役割分担
具体的な役割分担と協業

当社のPMが書いた「夜道を共に歩むPMとPMMの二人三脚」というブログ記事が、この関係性をよく表しているので、ぜひご覧いただきたいです。
ある機能開発のプロジェクトを例に、PMとPMMがどのように協力したかをご紹介します。
PMの主な役割
• ユーザーの課題を整理し、開発の優先順位を決定する。
• ユーザーストーリーを作成する。
• 実際のユーザーへのヒアリングを行う。
• プロダクトロードマップに機能を組み込む。
PMMの主な役割
• ビジネスサイドへの展開計画を立て、期待値をすり合わせる。
• 機能が課題を解決できるかを測るための顧客アンケートを実施する。
• 機能実装後のフォローアップや利用促進を行う。
このように、PMはプロダクトに、PMMはビジネスやお客様に焦点を当てていますが、両者は完全に分業しているわけではありません。
たとえば、ユーザーヒアリングには2人で参加したり、ユーザーストーリーの作成は一緒に議論したりするなど、お互いに密に連携しながら、二人三脚で業務を進めています。
PMとPMMの視点の違い

ある機能を開発する際、PMとPMMは同じ機能でも異なる視点から捉えます。
- PMの視点: 主にプロダクトの改善に焦点を当てます。この機能が「お客様の業務上の負荷をいかに下げるか」といった、プロダクト自体の価値を追求します。
- PMMの視点: 主にビジネスの成長に焦点を当てます。この機能によって「今までできなかったことができるようになるお客様」はいないか、そしてその新しい価値をどのように世の中に広めていくかを考えます。
さらにPMMは、担当領域だけでなく、「タレントマネジメントのような隣接する事業領域でも活用できるのではないか」といった、事業全体の拡大という観点でも物事を捉えます。
このように、PMは「プロダクトをいかに良くするか」、PMMは「いかにビジネス上のメリットを生み出すか」という観点から、一つの物事を両面で見ています。この視点の違いが、両者の連携を面白くしているポイントです。
PMMは夜中の懐中電灯

先ほども述べた通り、PMとPMMの役割は明確に分かれているわけではなく、多くの部分で重なり合います。そのため、両者は「パートナー」と表現するのが最も適切だと考えています。
当社のPMの言葉を借りると、「自分の中で仮説がまだ具体化されていない段階でPMMが隣にいてくれるのは、まるで夜道を照らす懐中電灯を手に入れたような感覚です。不確実性に向き合う上で、非常に心強い存在です」という話がありました。
このように、小規模なスタートアップではPMがすべてを兼任することもありますが、組織やプロダクトの数が増えるにつれて、PMとPMMが協力することで、より解像度の高いプロダクト開発が可能になると考えています。
PMMの増員背景

当社のPMM組織がこれほど大規模になった背景には、プロダクトの急増があります。
上図のタイムライン(2024年2月〜数ヶ月後)を見ていただくと分かるように、当社のプロダクトは急速に増え続けています。
昨年の今頃は8つしかなかった有料オプションが、現在では18個にまで増えました。つまり、この1年で10個もの新オプションがリリースされたということです。
もちろん、ある程度の事業規模が見込めるプロダクトでなければ、有料オプションとして提供することはありません。こうした背景から、今後大きく成長していくと見込まれるプロダクトが増えたため、PMMの増員が必要となったのです。
PMMになるまでのキャリア

どのような経歴を持つ人がPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)になっているのかというご質問をよくいただきますが、当社ではPMMの経験者が増えていると感じています。
当社のPMMチームのキャリアパスは多様です。
- PMM経験者(4名): 以前の会社でPMMの経験がある人が最も多く、即戦力として活躍しています。
- その他: プロダクトマネージャー(PM)、カスタマーサクセス(CS)、コンサルタント、営業出身者など、様々なバックグラウンドを持つメンバーがいます。
特に注目すべきは、カスタマーサクセスと営業からの異動です。
- カスタマーサクセス(CS): 社内異動で3名がPMMになりました。彼らは顧客と密接に関わっているため、顧客の解像度が非常に高く、課題を拾い上げて開発チームにフィードバックする能力に優れています。
- 営業: 異動で2名がPMMになりました。顧客と直接交渉する中で、顧客やプロダクトに対する深い理解を培っているため、PMMとしてスムーズに業務を始められています。
このように、SmartHRのPMMは多様なバックグラウンドを持つメンバーで構成されています。
PMMから派生したポジション

SmartHRのPMM組織には、2つの新しい役割が派生しました。先ほどお話しした「領域横断部」や「GTMマネージャー」について、詳しくご紹介します。
1. Tier PMM(ティアPMM)
プロダクトの数が増え、戦略が複雑化する中で、各プロダクト戦略と、ビジネスサイドの販売戦略をうまく連携させることが課題となっていました。
そこで、当社では「Tier PMM」という役割を設置しました。彼らは、プロダクト全体の戦略を理解した上で、お客様の規模別(例:500名以上、500名未満)の事業部における販売戦略を明確にし、両者をつなぐ役割を担っています。
2. GTM(Go-To-Market)マネージャー
この1年で10個もの新プロダクトがリリースされ、各プロダクトのPMMが様々なビジネスサイドのメンバーとやり取りすることで、業務が非常に複雑になりました。
そこで、PMM組織内に「GTMマネージャー」を配置しました。彼らは、すべてのプロダクトのGTM(Go-To-Market)戦略が、より効率的かつ効果的に進むよう、最適化を推進しています。
これらの新しい役割が組織に加わることで、どのような変化が起きているか、具体的な事例でお話しします。

まず、TierPMMが入ることで事業本部側とのパスが一本化されます

TierPMMがビジネスサイドとのコミュニケーションのハブになってくれるので、かなり解像度の高い状態で事業のことを知ることができますし、各PMMもTierPMMと相談しながら他のプロダクトとつなぎ込みつつGoToマーケットしていくみたいなことができるようになっていきます。

もちろん、ここにTierPMMがいるからといってPMMがビジネスサイドと一切コミュニケーションを取らないかというとそういうわけではなく、必要に応じてPMMは商談にも出ますし、オンボーディングのプロセス設計のようなこともします。
TierPMMがいることで、より精度の高いGoToマーケットや各事業本部の戦略作りができるようになっています。

さらに、GTMマネージャーが入ることで、各PMMのGoToマーケットを下から支えてくれています。全体の体制としては上図のような感じになっています。プロダクトがこれだけ増えてきた組織におけるPMMの体制はあまりお話しする機会がないかなと思いますが、SmartHRを一つの事例としてご紹介をさせていただきました。
私からの発表は以上となります。
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