
※この記事は、2025年6月に開催されたイベントでの発表内容をレポートしたものです。
- サービス概要
- なぜPMMを導入したのか?
- 2024年秋頃までの課題:ビジネス・プロダクト連携の状況
- まとめ:2024年秋までのPMM・PdM体制の課題
- 課題に対する解決策
- アウトプット(ドキュメンテーション):PowerPointからウェブ形式へ
- PMM・PdM体制 理想系と現時点の課題
- 現時点での課題
登壇者はこの方

真崎 豪太氏
パーソルキャリア株式会社
dodaダイレクト プロダクトマネジメント部
ゼネラルマネジャー
新卒でソフトバンクに入社し、DXプロジェクトマネージャー(PjM)やMysoftbankのプロダクトマネージャー(PdM)を担当。その後、正社員としてAkerun Pro、タクシーアプリGO、メルカリの新規事業のPdMを担当し、フリーランスとしてスタートアップ数社に携わる。2024年よりパーソルキャリアにて「dodaダイレクト」のゼネラルマネジャーを務める。
真崎:皆様、こんにちは。本日は、7,000名を超える人材サービス企業であるパーソルキャリアにおける、PMM・PdM体制構築の事例をご紹介します。
サービス概要

パーソルキャリアは、転職サービス「doda」を中心に事業を展開しています。多くの方がCMなどでご覧になったり、利用されたりしたことがあるかもしれません。
今回は、dodaブランドの中でも、私が所属する「dodaダイレクト」というサービスについてお話しします。
dodaダイレクトは、企業が転職希望者に直接スカウトを送ることができるサービスです。私たちは「リクルーティングオーナーシップ」を掲げ、企業の採用担当者自身が主体的に採用活動を行えるようなプロダクトを目指しています。

dodaダイレクトの戦略は、下図をご覧ください。(詳細については、改めて資料を展開する機会があれば、その際にご確認ください)

それでは、本題のPdMとPMMの体制について、ご説明します。
なぜPMMを導入したのか?
パーソルキャリアのようなIT企業ではない会社が、なぜPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)を導入したのかについてご説明します。

PMM導入の背景
PdM(プロダクトマネージャー)の導入から始まりました。以前は、開発を外部に委託し、プロジェクトごとに進めることが一般的でした。しかし、時代の変化に合わせて、私たちはプロジェクト開発から、より本格的なプロダクト開発とプロダクトマネジメントへ徐々にシフトしています。
このPdM導入の検討が始まると、必然的にPMMの必要性も議論されるようになりました。
体制の変化
かつて、ビジネス部門とプロダクト部門は、まるでウォーターフォール開発のように、発注者と受注者の関係でした。ビジネス部門が開発を依頼し、プロダクト部門がそれを受けて進める、という形式です。
しかし、現在は、ビジネスとプロダクトがアジャイルな形で連携し、二人三脚でプロダクトを成長させることを目指しています。私たちは、そのための組織体制を構築している段階です。
2024年秋頃までの課題:ビジネス・プロダクト連携の状況
PMMとPdMの組織は存在していましたが、連携においてまだ多くの課題が残っていました。

過去数年間、試行錯誤を繰り返してきた結果、2024年秋頃のdodaダイレクトの状況では、以下のような課題が顕在化していました。これは、当時の組織図を模したものです。
課題1:PMMが調整業務に追われ、企画工数が確保できない

組織図の中央に位置するPMM部門は、各営業やカスタマーサクセスといったフロント部門の窓口となっていました。しかし、その結果、PMMメンバーは調整業務ばかりに時間を取られ、本来の役割である企画に十分な時間を割くことができないという大きな課題を抱えていました。
課題2:PdM組織との連携が不十分

PdM組織との連携にも課題がありました。各現場の担当者が、PdM組織の特定の個人に直接「こんなものを作れないか」と相談するような属人的なやり取りが頻発していました。そのため、現場からのプロダクト開発要望を一元的に管理できていないという状況でした。
また、社内効率化を進めるDX企画部門も、ビジネスサイドと向き合う組織が不十分であったため、全体的にちぐはぐな体制となっていました。
まとめ:2024年秋までのPMM・PdM体制の課題
以前の発表でお伝えした、2024年秋頃までのPdM・PMM体制における課題を改めてまとめます。

1. PMMが調整業務に追われる
エンタープライズ企業では、部門数が多いため、社内調整は非常に煩雑です。ほんの少しのKPI低下が、数億円規模の売上減少につながることもあるため、社内調整は軽視できません。その結果、PMMが調整業務に忙殺されていました。
2. 属人化と連携不足
現場からの開発要望が特定の個人に集中し、属人化していました。また、PdMとPMMの連携体制が十分に構築されていませんでした。
課題に対する解決策
これらの課題を解決するために、私たちは以下のような組織改革を行いました。
解決策1:コミュニケーションパスの整理と「ミラー化」

組織図を再構築し、部署間のコミュニケーションパスを明確に整理しました。具体的には、対面する組織を設置したり、社内調整を担当する専任者を設けたりしました。PMM組織内でも、単純にPMMメンバーを配置するだけでなく、より細分化された役割を割り当てました。これにより、ビジネスサイドとプロダクトサイドが二人三脚で動けるような「ミラー化」した体制を目指しました。
解決策2:LeSS(大規模スクラム)を導入し、施策の優先順位付けを一本化

次に、LeSS(Large-Scale Scrum)という大規模スクラム手法を導入しました。LeSSを導入することで、PO(プロダクトオーナー)という役割が明確になります。
POが開発要望を一元的に集約し、優先順位を決定する仕組みを整えることで、PMMやビジネスサイドのメンバーは、誰に要望を伝えればよいかが明確になりました。この一本化された体制により、効率的なプロダクト開発が可能になりました。
新しいPMM・PdM体制への組織とシステム
新たなPMM・PdM体制の構築にあたり、私たちは2つの重要な取り組みを行いました。

1. コミュニケーションパスの整理と「ミラー化」
PMM組織とPdM組織が互いに連携し、二人三脚で動けるように、組織間のコミュニケーションパスを明確に整理し、「ミラー化」した体制を意識的に作りました。
2. 大規模スクラム(LeSS)の導入
LeSSを導入することで、プロダクト開発における施策の優先順位を一元化し、効率的な意思決定が可能になりました。

アウトプット(ドキュメンテーション):PowerPointからウェブ形式へ

私たちは、企画書をPowerPointで作成することをやめ、ConfluenceやNotionといったウェブベースのツールに移行しました。この変更にはいくつかの理由があります。
1. 情報の網羅性
PowerPointは詳細な情報を記載しにくく、情報が抜け落ちてしまうことが多々ありました。一方、Word形式のドキュメントなら、必要な情報をすべて網羅できます。
2. 最新版の管理
PowerPointのファイルは、どれが最新版かわからなくなることがあります。ウェブベースのドキュメントなら、常に最新版が共有され、バージョン管理が容易です。
3. AI時代の対応
将来的には、AIが過去の企画書を分析して新しい企画を提案する時代が来ると考えています。AIは、マークダウン形式のドキュメントをより正確に読み取ることができます。AIの活用を見据え、ドキュメント形式をウェブベースに統一しました。
私たちは、ビジネスサイドがMRD(市場要求定義書)を作成し、それをもとにプロダクトチームがPRD(製品要求定義書)を作成するというプロセスを定めています。これらのドキュメントフォーマットは、Confluence上で作成され、チーム内で共有されています。
MRDやPRDのフォーマットはインターネットで検索すると多数見つかりますので、ぜひ参考にしてみてください。

PMM・PdM体制 理想系と現時点の課題
理想形:逆コンウェイ的マトリックス組織
組織の理想形として、私たちはデジタル庁のマトリックス型組織を参考にしています。

補足:コンウェイの法則とは?

一般的な企業で見られる事業部制(事業部A、B、Cなど)では、それぞれの事業部が独自の業務システムを開発しがちです。その結果、複数の基幹システムが乱立し、データやプロセスが分断されてしまいます。
こうした状況は、いざビジネスモデルを変えようとしたときに、分断された大規模なシステムが足かせとなり、変革を阻む要因となります。これは「コンウェイの法則」として知られています。
逆コンウェイ的マトリックス組織

私たちは、この課題を解決するために「逆コンウェイの法則」という考え方を取り入れています。これは、組織の構造を先に変えることで、連携しやすいシステムが生まれるというものです。
これをビジネスサイドも含めた組織全体で実現することで、理想的な組織体制を構築したいと考えています。
理想的なPMM像

プロダクトマネージャーとして15年間、多くのPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)と一緒に仕事をしてきました。その経験から、理想的なPMMの要素は以下の通りだと考えています。
- ビジョンメイキングとビジネスメイクがうまい: 全体像を描き、ビジネスを成長させる能力に長けています。
- 全社横断的な組織: 会社全体を横断するPMM組織が存在することが理想的です。
- 高いスキル: テクノロジーへの理解が深く、データやリサーチに基づいた意思決定ができます。
- 密な連携: PdM(プロダクトマネージャー)と日常的に密なコミュニケーションを取ります。
現時点での課題
弊社の現状には、まだ多くの課題が残っています。

- ビジョンメイキングとビジネスメイクの強化: PMM組織全体として、このスキルをさらに高めていく必要があります。
- 全社横断組織の実現: 現在、PMM組織はdodaダイレクトのチームに限定されているため、全社的な組織に拡大することが今後の課題です。
- 育成と採用: 優秀なPMMを育成し、採用していくことも重要です。
- コミュニケーションの頻度: PMMとPdMの連携は定義されていますが、実際には週に一度の定例会議でしか話さない週もあります。より頻繁なコミュニケーションが必要です。
- 大胆な施策の実行: 細かいKPI改善だけでなく、ビジネスを大きく成長させるための大胆な施策を繰り出していくことを目指しています。
パーソルキャリアのdodaにおけるPMMの役割について、少しでもイメージを持っていただけたら幸いです。
以上で、私の発表を終わります。
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