こんにちは!TECH Street編集部です。
連載企画「ストリートインタビュー」の第55弾をお届けします。
「ストリートインタビュー」とは
TECH Streetコミュニティメンバーが“今、気になるヒト”をリレー形式でつなぐインタビュー企画です。
企画ルール:
・インタビュー対象には必ず次のインタビュー対象を指定していただきます。
・指定するインタビュー対象は以下の2つの条件のうちどちらかを満たしている方です。
“今気になるヒト”柴田さんからのバトンを受け取ったのは、株式会社GameHint CEO 島袋 光音さん。
ご紹介いただいた柴田さんより「私の後輩にあたるしまぶーさんをご紹介します。彼は技術に対するこだわりが強く、常に最新の情報を自ら取りに行き、それを自分の言葉で丁寧に発信しています。フォロワー12万人以上のエンジニア系YouTuber活動も行っており、「まさかり」などにも彼は臆することなく、積極的に自分の意見を発信していて、本当にすごいと思っています。」とご推薦のお言葉をいただいております。

島袋 光音 氏
株式会社GameHint / CEO
神戸大学経営学部卒。2016年、ヤフー株式会社のアプリケーション開発エンジニアとして新卒入社。新規事業開発の部署で開発の経験を積んだ後、2018年に株式会社GROOVEに唯一のエンジニアとして入社し、社内のシステム開発を一手で担った。その後、2019年に株式会社GameHintを創業し、複数の自社アプリケーションの運営を行う・・・がまだ全然うまくいってないので、現在進行系で頑張り中です。YouTubeチャンネル「しまぶーのIT大学」を運営しており、現在12万人に迫る登録者数を誇っています。
エンジニアとしての島袋さんの原点
ーーまずは、現在の島袋さんを形作る原点をお聞かせください。
エンジニアとしての最初の経験は、大学2年生の時に始めたアプリ開発です。きっかけは、スマホアプリで収益を上げている個人開発者の話を聞いて影響を受けたことでした。大学では経営学を専攻していたため、プログラミングは学んでいませんでしたが、オンラインゲームを楽しむなどPCに触れる機会が多かったため、アプリ開発もできるのではないかという自信はありました。ただ、実際にやってみると、アイデアをアプリとして形にするのが難しく、一度は挫折してしまったのです。
ーーアプリ開発の難しさに直面した後、どのような行動をされたのでしょうか?
その後、就職活動が始まり「本当にやりたいことは何だろう?」と考えたのです。そして、アプリ開発は挫折したものの、「興味のあるIT業界で働きたい」と思いがあり、大手IT企業の企画職や営業職を志望しました。この時は、残念ながら第一志望の会社とは縁がありませんでした。
改めて自分の将来を考え直したとき、本当にやりたいのは企画や営業ではなく、「自ら手を動かしてプロダクトをつくること」だと気付いたのです。そこで、開発スキルを身につけるために勉強をし直す決意を固めました。大学は4年間で卒業しましたが、就職活動はあえて1年遅らせ、エンジニアになるための学習期間を設けました。その時間を活用し、エンジニアとしてプロダクト開発に関われる企業を目指すことにしたのです。
ーーIT業界でのキャリアを再考した後、どのようにしてスキルを身につけていったのでしょうか?
まず一般的なWebアプリケーションの学習をしようと考えました。当時は動画で学習できる機会がそれほど多くなかったのですが、「ドットインストール」という学習サイトを見つけ、そこで動画学習をメインにひたすら勉強しました。大学の授業もすべて終えていたので、1日10時間ほど学習に費やしていたと思います。
学習を進める中で、自分の趣味でもあるブレイクダンスに関連したサービスを作りたいという思いが芽生えました。そこで、ブレイクダンスに関する記事や動画を集め、仲間募集などの機能も備えたキュレーションサイトを立ち上げ、運用を開始したのです。
その結果、当時ブレイクダンス関連のWebサイトの中でも最も多くのアクセスを集めるまでに成長し、就職活動における強力なアピール材料となりました。この実績をもとにヤフー株式会社(現:LINEヤフー株式会社)へ応募し、無事採用される運びとなりました。
サービス開発の難しさと起業への決意
ーー数ある会社の中で、なぜヤフーに興味を持たれたのですか?
自分のアイデアを形にして、サービスとして世の中に届けたいという思いがありました。ただ、特定の事業に特化した会社だと、そういった機会が限られてしまうのではないかと感じていたのです。
その点、ヤフーは幅広い分野で多様なサービスを展開しており、チャレンジできる領域も多いと感じました。だからこそ、自分のアイデアを活かせる環境があるのではないかと思い、ヤフーを志望したのです。
ただ、ヤフー在籍中に自分のやりたいサービスを実現するまでには至りませんでした。アイデアもあり、ビジネスとしての構想も描いて社内で提案を重ねましたが、それだけでは足りなかったのです。経営層を動かすためにはより強い推進力や説得力が求められることを実感しました。
今振り返ると、自分にはその力がまだ十分ではなかったと思いますし、社内で新規サービスを立ち上げるにはある程度の時間とポジションも必要だと感じていました。そうした経験を通じて、「自分でスピード感を持って挑戦できる環境をつくりたい」という思いが強まり、起業を意識するようになりました。
ーー起業の想いは以前から持っていたのでしょうか?
「いつかは起業したい」という気持ちは学生時代から抱いていて、就職活動を1年遅らせてスキルを磨いていた頃には、「ものづくりで起業したい」という思いがより明確になっていました。自分のアイデアを形にしてビジネスにするには、自ら意思決定できる立場で進めた方が、スピード感を持って挑戦できると感じたからです。
実は、ヤフーに入社する前から「5年以内に自分でサービスを立ち上げられなければ、辞めることも視野に入れて入社したい」と人事の方に伝えていたほどで(笑)、それでも受け入れてくれて感謝をしています。
GameHint社設立の背景と新しいサービスへのチャレンジ
ーー起業にあたって、どのような準備を行ったのでしょうか?
1人での起業は失敗率が高いことが分かっていたため、共に挑戦できる仲間を探す必要がありました。そこで思い浮かんだのが、大学時代の友人であり、ヤフーでも後輩にあたる人でした。お互いに情熱を持って取り組める「ゲーム」や「eスポーツ」の領域で起業することを決めたのです。
会社設立に向けて準備を進める中で、ファンド探しや法人登記の手続きなどを行い、約1年間の準備期間を取りました。その間、私はヤフーを退職し、知人の起業家のもとで働きながら資金を貯めることにしました。
ーーその後、現在のGameHint社を起業されたのですね。
2019年、投資ファンドからの資金調達が決まり、GameHintという会社を設立しました。最初はeスポーツ領域に特化したサービス開発を目指していたのですが、マネタイズの難しさから、残念ながらそのサービスはクローズすることになりました。
その後は、受託開発で資金を確保しながら、自社サービスへのチャレンジを続けてきました。現在は受託開発事業に加えて、Slackをより便利にするオールインワンアプリ「Assort」などの自社サービスの開発・運営を行っています。
わかりやすいプログラミング教材不足から始まったYouTubeチャンネル
ーー島袋さんといえば、もう一つの顔としてYouTuberとしての活躍がありますが、どういうきっかけでYouTubeを始めたのでしょうか?
ヤフーを退職したタイミングで、少しだけゲーム解説のYouTubeを始めてみました。本格的に取り組むようになったのは、起業準備の頃からです。
もともと独学でプログラミングを学んでいたときに、「分かりやすい教材が少ない」と感じていて、特に動画コンテンツはほとんど見当たりませんでした。「自分だったらこう教えるのに」という思いがあったので、試しにそのスタイルで動画をつくってみたのがきっかけです。
すると、その動画が思いがけずバズりました。当時はエンタメ系YouTubeが主流で、ビジネス系コンテンツはまだ少なく、現役エンジニアのYouTuberもごくわずかだったこともあり、多くの方に見てもらえたのだと思います。
ーー島袋さんのYouTubeチャンネルではどのようなことを扱っているのですか?
私のYouTubeチャンネルでは、IT全般を幅広く扱っています。プログラミングに関しては、自分自身が日々学び続ける必要があると感じており、その学びの過程をコンテンツとして発信しています。
また、「エンジニアになるためにどんなことをしてきたのか」といった自身の経験も共有していて、これから目指す方の参考になればと思っています。
そのほかにも、海外のIT関連ニュースを中心に、注目トピックをピックアップして分かりやすく解説するなど、内容は多岐にわたります。難しいテーマに限らず、気軽に楽しめる話題も取り上げており、何より「ITって面白い」と感じてもらえるようなコンテンツづくりを心がけています。
日本のエンジニア環境の現状と発信活動の意義
ーー発信活動をされる中で、日本のIT業界について色々感じられることも多いかと思いますが、日本でのエンジニアの待遇や技術に関する現状について、どのように感じていますか?
日本のIT技術者の待遇は、国際的な水準と比較すると相対的に控えめであると感じられることがあります。
日本のIT現場では、比較的レガシーな技術が多く使われているケースが見られます。海外で主流となった新技術の導入が1〜2年遅れて国内で広がる傾向もあり、これが競争力やサービスの差につながる可能性も指摘されています。
そのため、私は発信活動を通して、世界で流行っている技術やこれから流行るだろう技術を日本のエンジニアに伝え、最新技術を扱える人を増やしたいと考えています。
一方で、これからエンジニアを目指す初心者の方には、途中で挫折してほしくないという思いがあります。特につまずきやすいポイントは、できるだけ丁寧にわかりやすく解説するよう心がけています。
また、技術だけでなく、エンジニアとして成長していくうえで大切なマインドセットについても率直にお話ししています。軽い気持ちで目指すと続けるのが難しい仕事でもあるので、「覚悟を持って取り組んでほしい」というメッセージも正直に伝えています。
初心者から中堅層まで、さまざまなレベルのエンジニアに向けて情報を発信し、業界全体の底上げにつながればと思っています。
エンジニアからの鋭い指摘に対する受け入れ方
ーーご紹介いただいた柴田さんから、「YouTubeをはじめ様々なチャンネルで発信されていると、エンジニアからの鋭い指摘(マサカリ)をいただくことも多いかと思うのですが、そういったときのメンタルコントロールはどうされていますか」という質問が寄せられているのでご回答いただけますか。
私は台本を用意せず、その場で話すタイプなのですが、例えばプログラミングの解説をするとき、その内容に少しでも齟齬があると(内容的に95%は正しいけれど5%間違っているなど)マサカリが飛んでくることがあります。
しかし私としては、エンジニアの方の投げるマサカリは人格攻撃などではなく、正論が多いと感じていてメンタルコントロールを意識しているわけではありません。学びにつながると感じています。
私がYouTubeを始めたのはエンジニア歴でいうと3~4年目くらいの時期だったので、私よりも技術に詳しい方々は沢山います。もちろん自分にとっても学びの途中ではありましたが、「完璧であること」よりも、「自分の言葉で学びを伝えること」の方が大切だと考えていたので、あまり気負わずに取り組めました。
エンジニアとして変化を受け入れる
ーーありがとうございました。最後に、これからの時代にエンジニアとしてどのように立ち回るべきか、読者に向けてメッセージをお願いします。
柔軟性が非常に重要だと思います。私の好きな言葉に「change」があります。これは自分自身が変わるという意味での「change」もありますし、自分が他者に何か良い影響を与えたいという意味での「change」の意味があると思っています。私自身、常に「今の状況で本当に良いのか?」と自問し、必要に応じて変化を取り入れています。
例えば、YouTubeを始める際も「何か変わらないといけない」という思いがあり、実行しました。YouTubeのスタイルも、サムネイルやタイトルの付け方など、細かい部分まで多くを変えています。また、技術面では、フロントエンドからバックエンド、デザインのスキルまで幅広く学び続けています。
AI技術が進んだ今、人がやるべきことも変わっていきます。例えば、フロントエンドやバックエンドの区切りがなくなり、私はITのモノづくりが簡素化されると予測しています。これにより、エンジニアには総合力が求められるようになると感じています。そのため、どちらに転んでも対応できるよう、多様なスキルを身に付けることが重要です。
ーー貴重なお話をありがとうございました。それでは、次回の取材対象者をご紹介いただけますか。
今回は、令和トラベルという勢いのあるスタートアップで活躍されているエンジニア・松本さんをご紹介します。彼は大学の同級生であり、私の後輩としてヤフーに入社してきた方です。
エンジニアとして非常にスキルが高いだけでなく、コミュニケーション力にも長けていて、話し方もとても上手です。私自身、常に刺激をもらっており、尊敬しているエンジニアの一人です。
今回はぜひ、「大切にしているソフトスキルは何か?」について聞いてみたいと思っていますし、普段あまり話す機会のない将来の展望についても、深掘りしてお聞きしたいです。
以上が第55回 島袋 光音さんのインタビューです。
ありがとうございました!
今後のストリートインタビューもお楽しみに。
(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 編集:TECH Street編集部)
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