こんにちは!TECH Street編集部です。
連載企画「ストリートインタビュー」の第47弾をお届けします。
「ストリートインタビュー」とは
TECH Streetコミュニティメンバーが“今、気になるヒト”をリレー形式でつなぐインタビュー企画です。
企画ルール:
・インタビュー対象には必ず次のインタビュー対象を指定していただきます。
・指定するインタビュー対象は以下の2つの条件のうちどちらかを満たしている方です。
“今気になるヒト”佐藤さんからのバトンを受け取ったのは、Cloudbase株式会社 CTO 宮川 竜太朗さん。
ご紹介いただいた佐藤さんより「Cloudbase株式会社の宮川さんをご紹介します。
最近とても仲が良いCTOの友人で、クラウドサービスのセキュリティプラットフォームのCloudbaseを運営しています。若くしてCTOになられた方でお人柄もとても素敵な方なので、きっと面白いお話が聞けると思います!僕も今から記事が出るのを楽しみにしています!」とご推薦のお言葉をいただいております。
宮川 竜太朗 さん
Cloudbase株式会社 CTO
京都大学卒業後、サイバーエージェントに入社。広告系プロダクトのバックエンドエンジニアとして開発に取り組む。2022年3月よりCloudbaseにジョイン。現在はCTOとして開発組織を統括し、マネジメントや技術戦略、採用などを担当。
エンジニアとしての宮川さんの原点
ーーまずは、現在の宮川さんを形作る原点をお聞かせください。
宮川:プログラミングとの最初の出会いは、高校生の頃にiOSアプリを作りたい思ったのが始まりです。しかし、iOSアプリを作りたいと言っても、明確に作りたいアプリがあったわけではありませんでした。
「プログラミングができたら、かっこいいな」という単純な想いからの挑戦でしたので、少しPCを触ってやってみたものの、「これは無理だな」とすぐに辞めてしまいました。(笑)
その後、転機となったのは、大学で化学系の学部に進学して一年ほど経った頃です。
周りの学生たちは本当に化学が得意な人ばかりで、そんな彼らと比べ「この分野で戦っていくのは難しいな」と感じてしまいました。
またその一方で、プログラミングに対する憧れもずっと持ち続けていたので、だったら本当にやりたかったことを本気でやろうと思い、そこからプログラミングを独学しました。これが私の原点だと思います。
インターンでプログラミングの実務経験を積み、その後サイバーエージェントへ入社
ーープログラミングのどんな点に興味を持ち、どのような学習をされたのでしょうか?
情報科学などのアカデミックな勉強をしたいというよりも、プログラミングを用いてビジネスやプロダクトを作っていくことに興味がありました。なので、インターンに参加して、そこで働きながら学んだのです。
インターンに参加した当初は、おもちゃのようなものしか作れないレベルでしたが、1年半ほどのインターンを経て、世に出しても恥ずかしくないものが作れるようになりました。さらに、チームで開発する経験も積めたので、このときにプログラミングスキルと社会人としてのベーシックスキルを身につけることができたと思っています。
ーーインターンでは実践的なプログラミングスキルを身につけられたのですね。その後、宮川さんはどのような道に進まれたのでしょうか?
その後、新卒でサイバーエージェントに入社しました。きっかけは、メガベンチャーが主催する夏のインターンシップに参加し、そこでサイバーエージェントで働く優秀なエンジニアから刺激を受け、そんな人がいる環境で働きたいと思ったからです。入社後は、広告系プロダクトのバックエンドエンジニアとしてシステム開発を担当しました。
サイバーエージェントで働いた期間は2年ほどでしたが、多くのチャレンジをさせてもらい、たくさんの知見を得ることができました。そして、サイバーエージェントの後に、現在のCloudbaseへ転職したのです。
もっとチャレンジできる環境を求め、CloudbaseへCTOとして参画
ーーCloudbase社に参画した理由についてお聞かせください。
「もっとチャレンジできる環境に身を置きたかったから」というのが一番の大きな理由です。サイバーエージェントに限らず、メガベンチャーや大企業は、大きな組織としてロールモデルとなる存在が多く、自分の将来のキャリアについて、ある程度想像がつきやすい環境だと個人的には考えています。
私は、早くから事業やプロダクトを作りたいと思っていました。確かに安定した会社で先輩方を道標にしながら徐々にキャリアアップしていくことは魅力的ですが、私は「もっと早いうちからリスクを取ってでもチャレンジしたい」と思ったのです。
そんな考えの中で、Cloudbaseを選んだ理由はいくつかあります。1つは、代表の岩佐とは大学が同じで仲もよく、彼のプロダクトに対する向き合い方や人となりは良く知っており、信頼できる人間だと分かっていたので、そんな彼と一緒に働きたいと思ったからです。
それともう1つは、私が力を発揮できる場所は、岩佐のようなビジョンを掲げる人間と伴走をしながら、一緒にそれを実現する役割であると思ったからです。特に技術面で事業を伸ばしていく役割がもっともフィットすると思い、CloudbaseにCTOとして入社し貢献したいと思いました。
ーー宮川さんはどのようにCTOとしての役割を学ばれたのでしょうか。
それに関しては、「日本CTO協会」をはじめとするCTOのコミュニティにとても助けていただいています。このCTOコミュニティのイベントでは、他社の課題について共有していただくことがあります。例えば「エンジニアの人手不足の話」や「採用で失敗して、組織が上手く行かない話」などです。
正直、今だから言えるのですが、イベントに参加したての頃は、「みんながぶつかった壁には、自分はぶつからないだろう」という謎の自信を持っており、他社の課題について他人事のように思うこともありました。
しかし、月日が経ち組織が成長し大きくなる過程で、見事に私も同じような壁にぶつかったのです。そこでようやく先輩方の話を聞く大切さが身にしみてわかるようになりました。その後は、このコミュニティに積極的に参加することで、いろんなCTOの方々から、マネジメントの話などさまざまなアドバイスをいただきながら業務に活かしています。
ーー「ぶつかった壁」とは、例えばどんなものがあったのでしょうか。
例えば、Cloudbaseのメンバーは全員が「当事者意識」「やる気」「リーダーシップ」を持っていたので、「マネージャーは不要ではないか」という意見が社内であがりました。確かに不要かもしれないと思ったので、一度マネージャー不在で業務を進めてみることにしたのです。
しかし、そのように進めた結果、誰が何をしているか分からない状態になったり、最終的に「やっぱりマネージャーは必要だったね」という結論に至りました。今思うと、とても当たり前な話だと感じます。(笑)
「そもそもなぜマネージャーは必要なのか?」ということを深掘りして考えたり、CTOコミュニティに行って先輩方の話を聞いたり、相談しておけば事前に回避できたことかもしれませんね。
「自分ができないことであっても人に任せる」という宮川流のマネジメント
ーー現在はCTOとして主にどのような役割を担っているのでしょうか。
今は組織開発に注力しています。具体的には採用と、今いるメンバーのマネジメントをしており個々のキャリアを磨くことが私のミッションとなっています。また、経営面で事業の方向性を議論して決めていくということも並行して行っています。
「マネジメントも採用も難しい」と感じていた時期がありましたが、最近はようやく軌道に乗り始めたと感じています。
ーーメンバーのマネジメントをする際に、意識していることなどありますでしょうか?
私はマネジメントをするうえで「自分ができないことであっても人に任せる」というスタンスを取っています。これは、丸投げするのではなく一緒に伴走するというイメージです。
なぜなら、私よりも得意な人に任せた方が良いと思いますし、そうすると自分の成長がボトルネックにならないので、組織がより大きく成長できると思っているからです。
例えば、PdM(プロダクトマネージャー)をメンバーに任せたとき、私もその当時PdMの知識はほぼゼロの状態でしたが、一緒に伴走し成果を作ってきました。
今後もそのような「人に任せる」動きは加速させたいと思っていますし、私に任されてきたメンバーも同じ考えを持って、次の人に任せていってほしいです。そうしていって、みんなが成長していくと嬉しく思います。
「Unlock」「With」のバリューが浸透している
ーー次にCloudbaseのエンジニア組織についてお聞かせください。どのような組織分けや役割分担で活動しているのでしょうか。
現在、13人のエンジニアを2チームに分けています。1つがお客様のセキュリティを診断するチームで、もう1つは診断結果を表示するチームです。診断結果を表示するチームはSaaSを作り、アプリケーションとして提供します。
ーーどういったエンジニアのメンバーが多く在籍しているのでしょうか。
Cloudbaseには、「Unlock」「With」という2つのバリューがあるのですが、そのバリューを体現しているメンバーが多いと思います。
まずバリューの説明をさせていただくと、Unlockは、「前提や常識を疑い、思考を解放することで、昨日までとは違う明日を実現しよう」というものです。Withは、「Cloudbaseメンバーもお客様も、同じ方向に向かってともに成長しよう」というものです。
メンバーのUnlockな面として、できない理由を挙げて諦める人はいないので、「どうしたら出来るのかを考えよう」と活発に議論しています。そして、相手へのリスペクトがありつつも、自分の意見もはっきり言うことが出来るメンバーが多いと感じています。
メンバーのWithな面としては、企業名だけではなく、担当者様の名前までエンジニアが把握していて、お客様を大事に思っているメンバーが多いと感じます。そして、エンジニアがどういうものを作ればお客様に価値を提供できるのかを深く考えて、それを楽しいと思ってくれる人が多くいます。
意思決定の回数と自分のメンターを見つけることが重要
ーー最後に、これからの時代にエンジニアとしてどのように立ち回るべきか、読者に向けてメッセージをお願いします。
私がエンジニアとして成長するために、何よりも重要だと思っていることは「どれだけたくさんの意思決定をしたのか」ということです。
私自身がCTOとして業務してきた2年間を振り返ってみても、自分で意思決定をした経験は大きく成長に寄与していると感じます。責任逃れができない重要な意思決定をする中で、「自分が間違っていたな」と後悔する経験もしましたし、「自分がやったからこそ成功した」という大きな自信に繋がった経験もありました。これらの経験を2年という短期間で積むことができなければ、ここまで自分自身成長することはできなかったと思います。
なので、私はチャレンジをしたいと思っているエンジニアの方には、自分で意思決定できる状況や環境を作り、その中でたくさんチャレンジをして、成功や失敗の経験を積んでいってほしいと思います。
それと、エンジニアの中には「凄いエンジニアがいるから」や「この人の下で働きたいから」という理由で会社を選ぶ人も多いかと思います。確かに、アドバイスやフィードバックをもらうことは重要だと思いますが、その「凄い人」は、社内の人に限定しなくても良いと思います。私の場合はCTOコミュニティでしたし、CTOコミュニティに限らず、社外に出て、自分のメンターとなるような人を見つけることは十分に可能です。成長意欲のあるエンジニアの方ほど、自分で意思決定して責任を持ってチャレンジできる環境を探してみてもいいのではないでしょうか?
ーー貴重なお話をありがとうございました。それでは、次回の取材対象者を教えていただけますか。
株式会社メディカルフォースのCTOである畠中翔一さんを推薦します。彼は私と同い年のCTOで、同じくあまり経験のない状態からCTOになりましたが、私たちよりも大きな組織を見ていてとても尊敬しています。どのような学びや成長があったのかを聞いてみたいですね。
以上が第47回 Cloudbase株式会社 CTO 宮川 竜太朗さんのインタビューです。
ありがとうございました!
今後のストリートインタビューもお楽しみに。
(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき / 編集:TECH Street編集部)
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