こんにちは!TECH Street編集部です。
今回の「CTOインタビュー」は、株式会社GENDA CTO 梶原さんです!
梶原さんから聞いた、エンタメ業界の中のアミューズメント領域に関する課題やその業界ではたらくエンジニアの特徴などについてお届けします。
梶原 大輔さん
株式会社GENDA 執行役員 CTO 兼 IT戦略部部長
2006年、ヤフー株式会社入社。2007年、グリー株式会社入社。2014年同社執行役員に就任し、開発本部長、事業本部長を歴任。2021年10月、株式会社GENDA入社。CTOに就任。株式会社GENDA SEGA Entertainment(現 株式会社GENDA GiGO Entertainment)において、執行役員 CTO 兼 IT戦略本部本部長を兼任。2023年9月、執行役員に就任。2023年11月より現職。
- 「どんなお客様がそのゲーム機で遊んだのか」のデータ取得が難しい
- 人の経験や勘に頼る意思決定から、データを用いての意思決定へ
- お客様が実際にゲームセンターで遊んでいる姿を見られる、それがエンジニアのやる気に繋がる
- 店長の頭の中をアルゴリズム化して、GiGO流のゲームセンター運営方法を浸透させる
ーーまずはじめに株式会社GENDAについてお聞かせください。
梶原:弊社は「世界中の人々の人生をより楽しく」というAspiration(大志)の実現のため、グローバルにエンターテイメントのネットワークを構築し、世の中に流通する「楽しさの総量」を増やすことを目指すエンターテイメント企業です。
全国で「GiGO」等のアミューズメント施設やカラオケチェーン店「カラオケBanBan」合わせて約700店舗、ミニロケ(無人のゲームコーナー)を約900箇所運営しています。その他、キャラクター・マーチャンダイジング、フード&ビバレッジ、コンテンツ&プロモーションなど、エンターテイメントにおいて幅広く事業を展開しています。
「どんなお客様がそのゲーム機で遊んだのか」のデータ取得が難しい
ーーありがとうございます。では、世界一のエンタメ企業を目指しているGENDA CTO 梶原様の視点から業界のトレンドや課題についてお聞かせください。
エンターテイメント業界と言っても広いので、その中でも私たちの主力事業であるアミューズメント領域について話したいと思います。アミューズメント領域のトレンドで言いますと、プライズゲーム(景品を獲得できるゲーム)が非常に人気です。そのプライズゲームの中でも、クレーンゲームにおいては、近くにゲームセンターがないというお客様でも遊んでいただけるように、アプリ版も提供しています。
一方、アミューズメント業界の技術的な課題としては、お客様の行動データの取得が難しいという点です。ECやメディアなどのインターネットビジネスでは、お客様のデータを元にした価値提供を行いますが、ゲームセンターではそれがとても難しいです。
例えば「どんな人がそのゲーム機で遊んだのか」ということは分かりません。そしてその人が、複数のゲーム機で遊んだとしても、その流れも分かりません。これが課題だと私は捉えています。
ーーお客様の行動データの取得が難しいというのは、業界全体の課題なのでしょうか?
はい、業界全体の課題だと思います。けれど、業界全体としてはもっと手前のところが課題となっている場合も多いです。例えば、ゲームセンターで使われている機械にPOSが標準導入されておらず、「100円玉がどれくらい入っているのかをメーターで集計している」など、売上管理のところが自動化できていなかったりします。
ーー業界全体としてもそのような課題があるのですね。お客様の行動データの取得が難しいという課題に対して、GENDAとして取り組んでいることはあるのでしょうか?
ゲームセンターにいるお客様の行動データの収集のために、ただのPOSではなく、お客様のIDと紐づけられるようなID-POSの導入をしています。また、データを蓄えられる基盤づくりも行っています。
人の経験や勘に頼る意思決定から、データを用いての意思決定へ
ーーアミューズメント領域において、具体的にどのような場面でデータの活用がされるのでしょうか?
例えば、プライズゲームの景品は毎月数千品目ほど出てくるのですが、その中から厳選した品目に絞ることや、その景品を300店舗にどう配るのか、といったことはデータを用いて意思決定するようにしています。これまでは本社や店長の経験や勘で決めていたことを、現在はなるべくデータを用いるようにしている感じですね。
またGiGOの会員アプリでは、現在67万人ほどの会員がいますが、最近はお客様データの収集が可能になり、再来店を促すような仕組みもできてきました。お客様とのデジタル接点がようやく生まれたので、それを元に様々なマーケティング施策にも活かせるようになっています。
ーー景品決めやマーケティング施策をする上でもデータ活用されているのですね。ところで、アミューズメント領域以外でテクノロジー活用を進めようと思っている領域はありますか?
「カラオケBanBan」を運営しているシン・コーポレーションが最近グループインしましたが、カラオケ業界はテクノロジーが入る余地がたくさんあると思っているので、今後は注力していきたいです。それに、カラオケもゲームセンターと同じ施設事業なので、GiGOで取り組んだことを展開できる部分があると感じています。
お客様が実際にゲームセンターで遊んでいる姿を見られる、それがエンジニアのやる気に繋がる
ーーここからは、エンターテイメント業界ではたらくエンジニアについてお聞きしたいと思います。まずGENDAには、どのような種類のエンジニアがいるのかお聞かせください。
データを用いた事業運営に力を入れているので、データエンジニアやゲームセンターのDXを進めるためのシステム開発を行うエンジニアもいます。また、私たちはアプリ上からクレーンゲームができるサービスを提供しているので、その運営を行うエンジニアやGiGOの会員制アプリの開発を行うエンジニアもいます。
ーーそのような職種のエンジニアがいるのですね。エンターテイメント業界、もしくはGENDAではたらくエンジニアの特徴などありますでしょうか。
元々ゲームセンターが好きだったり、「いつかエンタメ領域ではたらきたい」と思っていた人は多いです。また、弊社のテックチームはGENDAという純粋持株会社側にいるため、各種グループ企業のグロースのサポートに携わっています。単純に事業会社のプロダクトを担当するのではない、という点に面白さや喜びを感じている人もいます。
昨年までGENDAにいた人にとっては、まさかカラオケ店やポップコーン屋さんがグループに入るとは思っていなかったと思います(笑)
そういった点でも、広大なエンターテイメント領域のいろんな事業にチャレンジできることを楽しみに働いている人も多いと思っています。
ーーアミューズメント領域ならではの、はたらいて感じる面白味ポイントなどはありますでしょうか。
例えばアミューズメント施設運営事業のDXに関わるエンジニアは、店舗に行って作業を行うことがあります。そうすると、実際にお客様が遊んで楽しんでいる姿を見られるので、それが大きなやる気に繋がります。
私は、十数年インターネットビジネスに携わってきましたが、アミューズメント施設運営事業のように常にお客様が現場に来なければ楽しめないサービスというのは初めてなので、実際にお客様が楽しんでいる姿を見ることができるというのは、良い意味でカルチャーショックでした。しかしそこがモチベーションに繋がっていると感じますね。
店長の頭の中をアルゴリズム化して、GiGO流のゲームセンター運営方法を浸透させる
ーー今後のGENDAで取り組む技術的チャレンジや挑戦があればお聞かせください。
生成AIに代表されるAIの取り組みは進めていきたいです。生成AIをサービス全面で使うかはまだ分かりませんが、サービスの裏側だったり、業務を楽にするところでAIの活用を模索しています。
また、店長の頭の中を上手くアルゴリズム化したいと考えています。それによって、M&Aでグループインした企業にそのAIを使えば、スムーズにGiGOのやり方をインストールできる、ということを目指しています。
それと、1万人以上の従業員がいる中で「普段の業務でITが使えていない」となってしまうとよくないので、従業員の方々が仕事をしやすくなるようなITの提供や環境づくりをしていきたいです。
ーー最後に、エンジニアへのメッセージをお願いいたします。
GENDAは本気でエンターテイメントをテクノロジーの力で改善させようと考えています。ゲームセンターや映画、カラオケなどいろいろなエンターテイメントがありますが、それらにいつか携わりたいと考えている人はぜひGENDAに来ていただきたいです。
GENDAにはテックチームとM&Aに携わるチームが半分ずついるので、いろいろなバックグラウンドの人たちと一緒に働くことで、一丸となって世界一へのエンターテイメント企業を目指していけると考えています。
以上が株式会社GENDA CTO 梶原さんのインタビューです。
ありがとうございました!
今後のCTOインタビューもお楽しみに。
(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき / 編集:TECH Street編集部)
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