【連載46】「最高の企画を実現し、自分で会社を創業する」ファインディ共同創業兼CTO 佐藤氏のこれまでの取り組みとは

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こんにちは!TECH Street編集部です。

連載企画「ストリートインタビュー」の第46弾をお届けします。

「ストリートインタビュー」とは

TECH Streetコミュニティメンバーが“今、気になるヒト”をリレー形式でつなぐインタビュー企画です。

企画ルール:
・インタビュー対象には必ず次のインタビュー対象を指定していただきます。
・指定するインタビュー対象は以下の2つの条件のうちどちらかを満たしている方です。

“今気になるヒト”長野さんからのバトンを受け取ったのは、ファインディ株式会社 佐藤さん。

ご紹介いただいた長野様より「ファインディ株式会社の取締役 CTOの佐藤 将高さんを紹介します。ファインディ株式会社ではエンジニアのスキルをAIで解析する転職サービスやエンジニアチームの開発生産性を可視化し、向上を支援するサービスを開発しています。
また、さまざまなエンジニア向けのイベントや記事の掲載をしており、注目をしています。注目度の高いファインディがどのような開発チームを作っているのか、サービス開発の考え方など拝見させていただくのが楽しみです。」とご推薦のお言葉をいただいております。

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佐藤 将高 さん

ファインディ株式会社 取締役 CTO 

東京大学 情報理工学系研究科 創造情報学専攻(*)卒業後、グリーに入社し、フルスタックエンジニアとして勤務する。2016年6月にファインディ立上げに伴い取締役CTO就任。
*大学院では、稲葉真理研究室に所属。過去10年分の論文に対し論文間の類似度を、自然言語処理やデータマイニングにより内容の解析を定量的・定性的に行うことで算出する論文を執筆。

エンジニアとしての佐藤さんの原点とは

ーーまずは、現在の佐藤さんを形作る原点をお聞かせください。

エンジニアとしての原点は小学生の頃だと思います。
当時としては珍しかったのですが、小学生の頃から自宅にパソコンがありました。インターネットにも繋がっていて、当時は「ゲームの攻略情報をネットから印刷して、それを友達に配る」という情報屋のようなこともしていました。(笑)

また、私の両親は工務店を経営しており、その工務店のホームページがあるのですが、それを見て「私も自分のホームページを作りたい」と思うようになりました。それが、小学4年生の頃で、これが原点だと思います。

 

ーー小学生でホームページを作ろうと思われたのは凄いですね。当時、どのように情報収集をしたのでしょうか?

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とにかくネットで検索して調べて学習しました。なので全て独学です。最初は「リンクってなんだろう?」「なぜページが遷移するのだろう?」など、わからないことだらけでした。けれど、とりあえずやってみて手を動かして、徐々に知識を付けていったのです。

そのようにして、自分でゲームの攻略サイトを作ったり、カードゲームが流行った時には、カードを取引できる「トレード掲示板」も作りました。

 

ーーホームページ制作の原動力はなんだったのでしょうか?

自分の作ったホームページには「アクセスカウンター」というものがあり、その数字が増えていくことで、「たくさんの人が注目している」と実感でき、それが原動力になったのだと思います。そして、小学生から中学生までは、ホームページ制作が好きで、「作っては公開する、作っては公開する」といったことを繰り返していました。

祖父のようになりたいという想いから自分の進むべき道を決めた

ーーその後、佐藤さんはどのような道に進まれたのですか?

高校時代は部活が忙しく、またネットゲームにハマってしまったのもあって、エンジニアリングからは遠ざかりました。その後、大学では、情報系の学部に行き、情報の基礎を勉強しました。

そして、1つターニングポイントとなったのは大学生時代に、工務店の創業者でもある祖父が亡くなったことです。祖父の葬式には、本当にたくさんのお花が贈られていました。それを見て、「最期は、祖父のように、たくさんの人に慕われて、惜しまれて亡くなるのがベストだ」と強く思ったのです。

そこから、「ではどのようにしたら祖父のようになれるのか」を考え、そして自己分析をしました。その結果、「自分で会社を作ること」「自分で考えていることをきちんとアプトプットすること」が大事だと考えました。

 

ーー「自分で会社を作ること」と「自分で考えていることをきちんとアプトプットすること」が大事だと思われた理由をもう少し深掘りしてよいでしょうか?

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そのように思った理由は、「自分の一番の強みを伸ばすには、自分で会社を作った方が良い」と思ったからです。私の一番の強みは「最高に良い企画を生み出すこと」だと思っています。その最高の企画を実現するためには、自分で会社を作った方が、色々な物事を決めやすかったり、早く実行できるのでは、と思いました。

しかし、「ただ企画だけする人になってはいけない」と感じました。例えば「タイムマシンを作りましょう」と技術を知らない人が企画しても説得力がないからです。

今では、何かビジネスをしたり、サービス開発する際にエンジニアリングの知識は必須だと感じます。 そのために、まずは大学院にいってコンピューターサイエンスの知識を身につけたいと思ったのです。

 

ーーそのようなお考えがあったのですね。「最高の企画を生み出す」上で、考えるべきポイントはありますか?

私は企画を考える上で「それはターゲットユーザーにとって、本当に嬉しいものなのか」を常に考えています。どんな企画であれ「そのターゲットユーザーの喜んでいる顔が思い浮かぶかどうか」が大事です。

全くのオリジナルで「0から0.1」を作り出す企画においても、もしくはすでにタネとしてアイディアがあるものに付加価値を付けて「0.1から1」にするにしても、「ターゲットユーザーはどんな人なのだろう」「何が嬉しいのだろう」と、まずは想像します。そのようにして、企画を考えた後に、それは「自分が解決できそうなものなのか?」「プロダクトで解決できるものなのか?」「営業で解決するのか?」などと、どう実行するべきかを決めています。

 

ーー佐藤さんは、大学院生から社会人になるまでにどのように過ごされていましたか?

「自分で会社を作ろう」という思いはありつつも、社会人になる前で、まだ会社がどういうものかよく分からなかったため、まずは「最高の会社に入って勉強したい」という思いがありました。そして、その当時、最高の会社だと思っていたのがGoogleです。

Googleに入社するためには、まずは最低限英語を話せるようにならないといけないと思い、オンライン英会話のレッスンを受け始めました。英会話のレッスンを1000回受ければ、英語がペラペラになると思い、真剣に取り組んでいましたね。

しかし、オンライン英会話に取り組んでいる途中で、「自分だったらこのオンライン英会話のサイトのUIを使いやすくできるのにな」と思うことがありました。

一度そのように思い始めると、毎日使っているサイトだったので、改善したい欲が出てきました。そして「ここをこう変えたら絶対良くなるのに」という思いをどうしても抑えられず、最終的に、当時のその会社の代表に「ここでアルバイトさせてください」と伝え、その会社で働き始めることになりました。

元々はGoogleに入社しようと思って、取り組み始めたオンライン英会話でしたが、手段が目的化してしまった感じですね。(笑)
そのようにして、大学院生の時は、そのオンライン英会話の会社でアルバイトとして働かせてもらいました。

グリー株式会社に入社してからファインディ株式会社を共同創業するまで

ーーそうだったのですね。オンライン英会話の会社の後は、どのような道に進まれたのでしょうか?

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その後、大学院を卒業して、それと同時にオンライン英会話でのアルバイトも辞めて、グリー株式会社に入社しました。グリーに入社した理由は、「インターネットを通じて、世界をより良くする。」というミッションに共感したからです。それと、グローバル展開もしていたため、海外にチャレンジできる企業だとも思ったからです。

ところが、入社前のタイミングで、一時的にグリーの業績が悪化してしまう出来事が起き、そこで苦い経験をしました。

しかし、私は「ここからどういう風にまた成長していくのかを見ることができる」と思い、ポジティブに捉えました。辛いことを先に体験しておけば、あとは怖いことはありません。「あとはみんなで這いあがるのみ」なので、このときの経験は貴重だったと思います。

 

ーーその後、グリーを辞めて、ファインディ株式会社を起業したきっかけについて教えてください。

実は、現ファインディのCEOである山田さんとは、オンライン英会話時代に知り合っており、グリーに入社後も定期的に会っていました。
そして、ある時、山田さんは海外のHRテックカンファレンスに参加し、そこで「こういうアイデアがあるんだけど、日本だとどうだろう」と私に話してくれました。

私は、それまで、HR業界については何も知らなかったのですが「面白そうなことをしようとしている」と思い、HR業界の古い商風習を変えて良くしていきたいと思ったのです。そして、山田さんから「一緒にやる?」と声をかけていただいたので、ファインディ株式会社を共同創業しました。


ーーそのような経緯で共同創業されたのですね。では、現在の佐藤さんのCTOとしての役割や組織体制についてお聞かせください。

CTOとしては、エンジニアリングの観点から経営にコミットしていくことが重要だと思っています。新規事業においては、出てきたアイディアをどのようにそれぞれの事業に連携させるかについて考えています。また、出てきたアイディアを即時に「これはいける。これはいけない」と判断をして、それを形にするためのロジックを提示することも、私の役割です。

エンジニアの組織体制としては、プロダクト開発部の中に事業部向き合いの開発チームがあり、さらに機械学習エンジニアとデータ基盤を作るデータエンジニアがいます。

生成AIによる今後のエンジニアの働き方の変化とエンジニア職種の細分化について

ーー次に、佐藤さんから見て、HR業界における今後のテクノロジー動向についてお聞かせください。

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この1年の間に、CopilotやChatGPTのような生成AIやLLMが登場し、エンジニアの働き方が、一部ではすでに大きく変化しました。今はまだ関係ないと言っている人たちにも、今後、影響が出てくるのは間違いないと思います。

私は2013年に、新卒でグリーに入社しましたが、その時からエンジニアは、売り手市場で、「採用できない」という声が年々強くなっています。私たちも、エンジニア向けの転職サービスを提供していますが、エンジニアの採用が難しくなってきていると感じています。

それと、スタートアップ企業ではミドル以上のエンジニアが求められる場合が多く、そういったエンジニアの母数は増えていない印象です。

 

ーーエンジニアの採用が難しい中で、企業が求めるエンジニアの特徴も変化するのでしょうか?

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はい、変化すると思います。例えば、特にスタートアップでは、15年程前はスキルが高ければ採用するのが当たり前でした。

しかし、最近ではNetflix社も「No Brilliant Jerks(ブリリアントジャークを採用しない)」と語っているように「有能だけど協調性がない人」は採用しないという傾向が強くなっていると感じます。

協調性がない人が入ると、チームは壊れてしまうので、会社のカルチャーとマッチするかどうかの観点を重視する傾向が、昔よりも強くなると思います。単に技術力だけではなく、「人への伝え方」や「プレゼン力」などの能力も含む総合力が求められると思います。

 

ーーそうなると、エンジニアに求められるスキルも変化するのでしょうか?

今後は「生成AIによっていかに効率よく、そして少ない人数で価値提供ができるかどうか」が重要になり、それができるエンジニアが重宝されてくるかと思います。

その結果、ソースコードの生成などは、Copilotや生成AIが行い、最後に意思決定するのは自分(人間)になるという形になるでしょう。そして、この意思決定の回数が増えて、コードを書く時間やコードで悩む時間が短くなっていくことが、これからのエンジニアリング界隈で増えていくと思います。

また、生成AIを利用した分の、「その空いた時間で何をするのか」もポイントになると思います。エンジニアも人とのコミュニケーションは必要ですから、マネジメント系の業務を行う割合が増えたり、もしくは、空いた時間で、更にコードを書いて1人当たりの生産性を上げたり、様々な働き方が出てくるかと思います。

また、働き方だけでなく「エンジニア職種の細分化」も進むかと思います。
例えば、「ソフトウェアエンジニア」という呼び名しかなかったものが、2010年代くらいから「バックエンドエンジニア」、「フロントエンドエンジニア」などの呼び名が増えました。「PdM」も最近できた職種で、そこから更に「テクニカルPdM」という職種も海外から輸入されてきました。今後もそのような職種の細分化が進むと思います。
そうなってくると、「ここの分野に強い」という人が現れたり、一方で、細分化された職種の中にうまく当てはまらない人も出てくるかと思います。

「いかに自分を捨て続けられるか」、変化に順応する大切さ

ーー最後に、これからの時代にエンジニアとしてどのように立ち回るべきか、読者に向けてメッセージをお願いします。

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エンジニアリングにおいては、変化を楽しめるかどうかが最も大切だと思っています。年齢を重ねると、どうしても固執してしまうこともあると思います。しかし、固執するこなく、良い意味で「いかに自分を捨て続けられるか」が重要です。

そのためには、学習できるタイミングで、嫌がらず学習し、変化に順応することです。私たちは、エンジニアたちに向けてプラットフォームを提供していますが、そのような変化に順応し、成長意欲があるエンジニアが増えれば、さらに業界全体が良くなると確信しています。

 

ーー貴重なお話をありがとうございました。それでは、次回の取材対象者を教えていただけますか。

Cloudbase株式会社の宮川さんをご紹介します。
最近とても仲が良いCTOの友人で、クラウドサービスのセキュリティプラットフォームのCloudbaseを運営しています。若くしてCTOになられた方でお人柄もとても素敵な方なので、きっと面白いお話が聞けると思います!僕も今から記事が出るのを楽しみにしています!

以上が第46回ファインディ株式会社 佐藤 将高さんのインタビューです。
ありがとうございました!
今後のストリートインタビューもお楽しみに。 

 

(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき / 編集:TECH Street編集部)

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