【連載48】メディカルフォース社 畠中氏が語る「自由診療業界の課題」と「産業の成長プロセスを合理化するための取り組み」

こんにちは!TECH Street編集部です。

連載企画「ストリートインタビュー」の第48弾をお届けします。

 

「ストリートインタビュー」とは

TECH Streetコミュニティメンバーが“今、気になるヒト”をリレー形式でつなぐインタビュー企画です。

企画ルール:
・インタビュー対象には必ず次のインタビュー対象を指定していただきます。
・指定するインタビュー対象は以下の2つの条件のうちどちらかを満たしている方です。

“今気になるヒト”宮川さんからのバトンを受け取ったのは、株式会社メディカルフォース 取締役CTO 畠中翔一さん。

ご紹介いただいた宮川さんより「株式会社メディカルフォースのCTOである畠中翔一さんを推薦します。彼は私と同い年のCTOで、同じくあまり経験のない状態からCTOになりましたが、私たちよりも大きな組織を見ていてとても尊敬しています。どのような学びや成長があったのかを聞いてみたいですね。」とご推薦のお言葉をいただいております。

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畠中 翔一 さん

株式会社メディカルフォース 取締役CTO 

学生時代からインフラの構築やWebアプリの立ち上げを多数こなす。2020年11月に株式会社メディカルフォースを設立し、現在のmedicalforceをフルスクラッチで開発する。開発の傍ら、深層学習を用いた研究が国際学会に採択されるなど、機械学習(AI)や最先端の技術にも精通する。

 

エンジニアとしての畠中さんの原点

ーーまずは、現在の畠中さんを形作る原点をお聞かせください。

畠中氏画像01

畠中:テクノロジーの世界へ進むきっかけとなったのは、大学受験の時に医学部に落ちてしまい、これを機に人生を考え直したときです。

今振り返ると、当初医学部志望だった理由は、本当に医者になりたかったというわけではなく、当時は「勉強を頑張って医学部に行くことが成功への王道ルート」だと思っていたんです。

そこで、「本当にやりたいことは何か」を考えました。そこで出した答えが、「人工知能」だったんです。人工知能については、小学生の頃に本を読んでからずっと興味を持っていたテーマだったので、人工知能について深く学びたいと思い、大学では工学部のシステムデザイン工学科に進学しました。これがテクノロジーの世界へ進む原点だったかもしれません。

 

ーー人工知能について学ぶために工学部へ進み、その後どのような道に進まれたのでしょうか?

大学では、1年生の時からエンジニアとしてインターンに参加し、実務を通してしっかりと実力をつけたいと考えました。最初にインターンとして入った会社は、広告運用の会社で、そこではシステムの機能追加などを行いました。

しかし、この時は「何を作っていて」「どのような価値があることをやっているのか」といったことを自分自身が把握できておらず、その仕事の面白みを感じることができなかったため、1年半ほど働いて辞めてしまいました。

そして、インターンを辞めた後、一時期プログラミングに対する興味を失ってしまったのです。この時は、プログラミングの代わりに「建築」に興味が移り、その分野について学びたいと考えていました。

 

大学の課題で「2048」というパズルゲームを作り、プログラミングの楽しさを再発見する

ーーその後はプログラミングではなく、建築について深く学ばれたのでしょうか?

畠中氏画像02

いえ、ある大学の授業を通して「やっぱりプログラミングは楽しい」と、その面白さを再発見する出来事がありました。

それは、大学の課題で「自分で何か1つプロダクトを作ってみる」というものです。その課題で、私は「2048」という同じ数字のブロックを重ねていくパズルゲームを真似して作りました。このゲームは内部のアルゴリズムが難しいので、高い評価をいただけたんです。この経験で、プログラミングに対する自信がつきました。

それと、大学入学の段階から「何かプロダクトを作って起業したい」という思いが強くあったので、そのためにはまず「強いエンジニアなりたい」と思い、開発色の強い企業でインターンをすることにしました。

 

ーー次のインターン先は、どのような会社だったのでしょうか?

次のインターン先はスタートアップで、事業サービスをいつくか持っている会社でした。その会社では、バックエンドのエンジニアは2人しかおらず、私はインターンでしたが任せてもらえる仕事の量も裁量も大きく、とてもやりがいを感じながら働くことができました。


ーーそれまでに十分な実務経験もない中で、いきなりスタートアップで働くのは大変だったのではないでしょうか?

はい、とても大変でした。ですが、あえてそのような辛い環境に自分を追い込んだ方が良いと思っていたんです。プログラミングの勉強だけをしているのでは、やる気が出ないことがあるので、「やらないといけない状況」を作りたいと思いました。

以前のインターンの時とは、全く異なる業務内容で、バックエンド周りの仕事を任せていただきました。初めは任せてもらってもできないので、できるようになるために必死に勉強しましたね。

 

大学在学中に4社でインターンをしてエンジニア力を高めた

ーーその後、畠中さんはどのようにスキルアップしていったのでしょうか?

大学4年生の時には、4社ほどの会社でインターンをしました。スタートアップの会社とAI系の事業をしている会社でインターンをし、残りの2つの会社は知り合いが起業するということでそのサポートをしたんです。

この時には、フロントエンドからバックエンドまでの実装、技術選定、データベース設計などある程度のことはできるようになっており、技術顧問なども任せていただくようになりました。


ーー学生時代から既に多くの会社でインターンをして、エンジニア力をつけていかれたのですね。ところで、メディカルフォース社を起業された経緯を教えてください。

メディカルフォースは、今のCEO大嶋とCOO組田、そして私の3人で共同創業しました。大嶋がメディカルフォースのビジネスのアイディアを持っており、私は、技術面を担当したんです。

メディカルフォースの創業以前に、私はこれまでにも何度か、自分の周りの人が起業する際に、技術サポートをしてきました。その度に私は「人生の全てをかけてもいい」という気持ちで手伝っていたのですが、本気で事業を伸ばそうとしていないなど、熱量の差を感じることもありました。

しかし、大嶋は本気でしたし、物事を決め、実行するスピード感も自分の感覚と合致していたので、ともに協力してここまでやってこれたのかと思います。

 

クリニックには「CRMとして活用するデータがない」という課題があった

ーーそのような経緯があったのですね。ちなみに『メディカルフォース』というプロダクトは、自由診療業界にどのような課題感があると思い、作られたのでしょうか?

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当初は、「自由診療の業界でCRMを展開する」という構想を持っており、それを実際に作るにあたって、お客様にインタビューをしてみました。すると、「CRMとして活用するデータがそもそもクリニックにない」という話になり、それならまずは、クリニック内のデータを貯めるためにも電子カルテを用意し、まずはそこから提供しようということになったのです。

そもそも自由診療の業界は、広告などを次々に出して活況ではありましたが、システム化がとても遅れている業界でした。需要は伸びているのに、供給が追いつかずに提供ができない。このような状態では成長が阻害されるので、クリニック業務の全てが統合されたオールインワンのSaaSを活用し、業務効率アップを図ることで、クリニックの成長を促したいと思いました。

 

「産業の成長プロセスを合理化する」というビジョンに向けて取り組む

ーー続いて現時点における、CTOとしての役割や取り組んでいることについて教えてください。

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CTOとして注力しているのは「2、3年後の未来をきちんと作る」ということです。「メディカルフォース」というプロダクトに関しては、ある程度できていますが、スタートアップとして成長率を維持する必要があります。

それと、私たちがやりたいのは自由診療業界の深耕ではなく、「産業の成長プロセスを合理化する」というビジョンを実現することです。そのため、医療業界だけでなく、別の業界にもサービスを展開し、挑戦するために、どの業界で挑戦するべきかを議論をしています。

 

ーー次のターゲットとなる産業や業界を決める上で、選定基準はあるのでしょうか?

それは「市場規模がそれほど大きくなく、需要は伸びているのに供給が追いついていないレガシーな業界」を考えています。

市場規模が大きくないところだと、ビジネスチャンスになりづらいため、その領域に挑みたい人は少ないと思います。これは事業側面でいうと、競合が少ないのでプラスですし、ビジョン的な側面でいうと、技術革新から置き去りになっている業界に対して、サービスを提供し業界のアップデートを促進できる点はとても意義があることだと感じています。

 

ーー医療業界以外にも、今後様々な業界でSaaSを提供するのは、技術的に難しいこともあるかと思います。それを可能にするメディカルフォース社の「強み」はどんなところにあるのでしょうか?

SaaSを提供する上で、技術的に難しいことは、新しいシステムに切り替えることで、「以前まではできていたことができなくなる」といった問題が発生し得る点です。

新しくできるようになった機能があったとしても、今までできていたことができなくなると、乗り換えようとするハードルが高くなり、特に基幹システムでは、少しでもそのようなことがあると乗り換えてもらえません。

弊社の場合だと、手前味噌ではありますが、「高い開発力がある」という自負があるので、今できていることを担保しながら、お客様からの新しい要望も機能として実現しております。

 

エンジニアは、お客様やチーム内のエンジニアにとって利他的であることが重要

ーー最後に、これからの時代にエンジニアとしてどのように立ち回るべきか、読者に向けてメッセージをお願いします。

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エンジニアは、プロダクトを提供するお客様やチーム内のエンジニアにとって利他的であることが一番重要だと思います。例えば、開発の生産性においてリードタイムを短くするために、できるだけメンバーがレビューの依頼を出したらすぐに見てあげるようにしたり、他の人が何か困っていたらすぐにカバーに入るなど利他的な行動によってチームのアウトプットは最大化されます。

また、利他的であるためには、相手がどのようなことをしたら喜んで、どういうことをしたら嫌なのかを理解しないといけません。それにはエンジニアリング以外のこともしっかりと勉強して、相手にとって何が良いのかを理解する必要があります。

弊社には、様々な産業で様々なプロダクトを作るビジョンがあり、それを小さいチームでやっていこうと思っているので、ここに来れば多様な経験ができると思います。「利他的」「好奇心旺盛」「成長マインドが強い」この3つマインドを持つ方と一緒にお仕事ができたら嬉しいです。

 

ーー貴重なお話をありがとうございました。それでは、次回の取材対象者を教えていただけますか。

株式会社カケハシのCTOである湯前 慶大さんを推薦します。同じ医療業界でVertical SaaSを提供している大先輩です。これまで開発組織のマネジメントを長くされている湯前さんからぜひ色々な話を聞いてみたいです!

 

以上が第48回 株式会社メディカルフォース 取締役CTO 畠中 翔一さんのインタビューです。
ありがとうございました!
今後のストリートインタビューもお楽しみに。 

 

(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき / 編集:TECH Street編集部)

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