【連載43】LIXILの岩﨑氏が語る「エンジニアが一番幸せに働ける環境を作るーヒエラルキー型組織からフラットな組織へ」(後編)

LIXIL後編記事FV

こんにちは!TECH Street編集部です。

連載企画「ストリートインタビュー」の第43弾をお届けします。

LIXILに入社した経緯

ーーLIXILに入社した経緯を教えてください。

まず、LIXIL の常務役員でマーケティング部門のリーダーである安井さんに強く誘われたのがきっかけです。 
安井さんとは、楽天時代にエンジニア同士で関わりが多くありました。お互いエンジニアとして認め合っていて、一緒に仕事をしていても阿吽の呼吸できるような、良いコンビネーションを築いていました。

そんな安井さんがLIXILでインフラを見るように言われたそうなのですが、安井さんはデベロッパーとしてガッツリとコードを書くことが好きな方です。そんなとき、安井さんの頭の中でインフラできる人間として、「そうだ、岩﨑さんにお願いしよう!」と思い、私に声をかけてくれたのです。
しかし、その当時の私は、DMMでIT部門の本部長を任されており、広い範囲のステークホルダーにもなれていたので、DMMを辞めるつもりは全くありませんでした。なので、安井さんからのお誘いは初め何度も断っていました‥‥(笑)

 

ーーそうだったんですね。それでも、LIXILに入社を決めたのには、何か理由があったのでしょうか?

LIXILの岩﨑氏が語る「エンジニアが一番幸せに働ける環境を作るーヒエラルキー型組織からフラットな組織へ」画像1

そのような状況ではありましたが、3つの転機があり、LIXILに入社を決めました。

1つ目は、DMMでは変革期を一通り経験しながらも、その当時にはなかった「情報システム部」というIT部門を作り、それがしっかり機能するところまで持っていけたことです。「組織を構築し、それが安定して動く」といったところまでのチャレンジはできたので、自分の中で区切りができました。

2つ目は、心のどこかで「安井さんとはまた一緒にどこかで働きたい」と思っていたことと、CDOの金澤さんやCEOの瀬戸さんと事前にお話させていただいたことです。そのような方々にも「ぜひ来てほしい」と言っていただけたので「自分にできるチャレンジがまだある」と感じました。

3つ目は、今まで扱ったことのない1兆円を超える規模の会社のインフラに携われることです。これは自分にとって今までにない大きなチャレンジで、それに挑戦したいと思うようになりました。
ITに差が生まれる要因の1つに社員数や予算などの「規模」が大きく影響しています。DMMは当時3,000人規模の会社でした。3,000人も十分に大きいですが、その当時のLIXILは60,000人を越えています。桁が変わるとITとしても出来ることが大きく変わってきます。

インフラは常に規模の大きさで出来ることが限られていて、私はそれまで小さなベンチャー企業を経験してきて、「この規模でそのインフラは高すぎて買えない」といった問題に常に直面してきました。LIXILのように大企業で、しかもグローバル企業となると今までとは違う世界が広がっているに違いないと思ったのです。
それら、3つが重なってLIXILに入社しました。

 

ーーお話の中で「安井さんとまた一緒に仕事したい」とありますが、なぜそう思われたのでしょうか?

それは「エンジニアとしてのリスペクト」です。楽天には「この人すごいな」と思える人はゴロゴロいましたが、その中でも安井さんの書くコードはとても綺麗で、アーキテクチャや考え方もリスペクトできて、エンジニアとして素晴らしいなと感じていました。それに、常にハイレベルなエンジニアディスカッションができる相手でもあります。

LIXILでの役割とグローバルのチャレンジ

――LIXILに入社してからは、どのような役割を担っていて、どういうことに注力していますか。

LIXILの岩﨑氏が語る「エンジニアが一番幸せに働ける環境を作るーヒエラルキー型組織からフラットな組織へ」画像2

LIXILのITは「SOE」「SOR」「インフラ」と、3つのセグメントに分かれています。顧客接点があるところをSOEと呼び、生産基幹に付随するところをSOR、そしてインフラという3つの領域がある中で、私はグローバル全体のインフラと日本のSORとSOEのリーダーとして役割を担っています。

SORのリーダーを務めるようになった背景としては、それまでSORを見ていた方が辞められて、SORのリーダーがいなくなってしまいました。代わりの人材を探したのですが見つからず、結果的に安井さんとCDOの金澤さんの推薦で私がSORのリーダーも担当することになりました(笑)

それまで私はずっとインフラをやっていたので、生産システムに関する知識は全くありません。しかし、せっかく製造業にいるのだからコアなところを見せてもらえるのはチャンスだと思い引き受けました。
インフラは100人規模でしたが、SORともなると1000人規模です。人数規模も予算規模もこれまで経験したことのない規模だったので、日々学びがありましたしとても良い経験になっています。
それと、グローバルへのチャレンジもしています。

LIXILは世界150か国で展開していて、デジタル部門は1つで全ての国を見ています。今私がやっていることは、「グローバルインフラ」という組織を作り、これまで国や地域で分かれていたものをワンストップで見れるチームを作り、より会社を進化させることです。

エンジニアが一番幸せに働ける環境を作る

ーーLIXILのエンジニア組織について教えてください。

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LIXILの一番の特徴でもあり、他社と比べて違うところは、「スクラムの考え方を根底において、組織設計やチーム評価や人事評価をしている点」だと思います。

私が入社したときのLIXILは、「役員がいて、本部長がいて、統括部長がいて、部長がいて‥‥」のような一般的なヒエラルキー型組織の会社でした。しかし、現在は、その組織構造をフラットなものに変更しました。ヒエラルキー構造というのは、スピードや変化の阻害要因となるケースがあります。環境変化も、「早くアタッチして早くサービスを出す」そういった考えをベースにして組織に変えていこうとしています。

そして現在は、国内で200近いスクラムチームがあります。今まで部長職にあった方などは人のマネジメントをする「ピープルマネジメントチーム」に入ってもらったり、その方の専門性をいかしたロールについてもらっています。「Scrum@Scale(スクラムアットスケール)」というフレームワークを使いながら、「エンジニアが一番幸せに働ける環境を作る」ということをコンセプトにしています。

エンジニアドリブンの評価制度

その結果として、年功序列の考え方がなくなりました。年齢に関係なく「こういうことができたら、こういうグレードになり、給料はいくらになります」と評価メジャーを極めて明確にしています。このように評価制度を根底から変えた結果、若手社員の方でもIT業界で普通にもらえるぐらいのレベルにアップした人もいます。若手社員だけではなく、ベテラン社員や中途採用の社員にも全員にチャンスがあります。

例えば、匠の技を持って基幹システムをしっかりと握れているベテラン社員の給料は上がっています。このように、エンジニアドリブンの評価制度に変更したことが、一番大きなポイントだと思います。エンジニアがコミットできる会社なので、誰でも臆することなく挑戦してほしいです。

 

ーーなぜ、エンジニアドリブンの会社を作ろうと思われたのでしょうか。

 製造業からみるとITやデジタルは遠い存在だと思われがちですが、今ではITやデジタルなしには語れない時代です。なので今後は、IT部隊がどうあるべきかを考える必要があると思います。

例えば「アウトソースする」「コンサルに頼む」「SIerに頼む」など、やり方はいろいろありますが、これだけ環境変化が激しい中で価値を出すためには、変化への柔軟性とスピードが大事だと思っています。

そしてそのスピードを出すためには「自社のビジネスを知っているエンジニアを内製でどれだけ抱えられるか」が重要です。ただ能力だけがあるエンジニアではなく、ビジネスプロセスを含めてよく知っているエンジニアがバリューを最大化できるので、そういう人には最大限活躍をしてほしいですし、守っていきたいです。なので、そういったエンジニアをきちんと評価するためにエンジニアドリブンな設計をしています。 

 

ーーそれだけ大きく変革を進めて軋轢や反対はなかったのでしょうか。

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 LIXILで大きな変革を実現できた理由は、LIXILの経営の特色でもありますが、CEOの瀬戸さんを筆頭に「我々の経営が極めて一枚岩でできているから」です。これにはもちろんリスクもありますが、LIXILの良いところは、取締役のマジョリティが社外であることです。執行と管理監督がしっかりと分かれており、そして執行側は一枚岩でできているので、あらゆるアクションが早いのです。

先ほどの人事評価制度に対して、例えば「異動したらどうするのか?」などといった問題はありますが、「会社全体のバリューを考えた時に、やった方が良い」と判断しました。要するに課題の場所と質は変わりましたが、得られるメリットが制度を変える前と後でどちらが良いかという視点で考えた結果、変えるべきと判断したんです。私たちが考えているのは価値の最大化です。

LIXILは、内製エンジニアを活用できていない企業のガイドラインになれる

ーー今後、LIXILとしての取り組みなど、差し支えない範囲でお聞かせください。

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製造業にはありがちですが、古いシステムが多くあります。しかし、我々は今新しい技術をどんどん使っています。私がアピールしたいことは、最先端技術を大きな規模感で使える会社としては、LIXILが一番いいと思いますし、それが出来る環境を作っています。なのでメンバーには、もっとエンゲージして頑張ってほしいですし、ビジネスサイドにはもっと利益を出せるように頑張ってほしいです。 

私はこれまでいろいろな規模の会社にいましたが、そのほとんどがエンジニアがリスペクトされる会社でした。そしてエンジニアがリスペクトされる会社で、我々が出せるバリューの大きさを実感しています。私のチャレンジは、LIXILという大きな会社に新しいITの考え方を持ち込んだときにどういうバリューが生まれるか。新しいITの考え方を持ち込んで、LIXILという会社がどれだけ成長する会社に変革できるか。それを見るのが楽しみですね。

それと、「LIXILは、内製エンジニアを活用できていない企業のガイドラインになれる」と思っています。「こういう意思決定をして、こういうアクションをすれば、LIXILでもこういうチームが作れて、会社の事業利益をあげる事に貢献できた」と伝えたいです。そして「会社は変われますし、良い人が集まってきて、さらに稼ぐことができます」と、大企業にはそれを示していきたいですね。日本の企業はもっと強くなれます。

何かを成し遂げるためには「ユニーク」であるべき

ーーありがとうございます。最後に読者に向けて、これからの時代にエンジニアとしてどのように立ち回れば良いのかなど、メッセージをいただけますか。

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「エンジニアとして頑張ろう」と考えるとWeb系に進む人が多いように感じますが、製造業で出来ることはたくさんあります。例えば、Web系よりも製造業が良いと思う点は「規模が大きいこと」です。リーダーシップがあれば、やるべきことやできることはたくさんあります。

日本のエンジニアに対しては、内製エンジニアとしてもっといろいろな企業に行くべきだと思います。自分で考えて、自分で作り、そして会社に対してバリューを出してほしいです。日本の企業に対しては、外注に頼るのではなく、もっと内製エンジニアを活用してほしいですね。内製エンジニアの強さを知ってほしいです。
それと、 自分のメンバーにも伝えていることなのですが「ユニークたれ」というキーワードは重要だと思います。

日本は、「周りと同じことをするのを良しとするカルチャー」が非常に大きいと感じます。人と同じことをしていたら、人と同じにしかなりません。何かを成し遂げるためにはユニークである必要があります。そのユニークポイントは様々あると思いますが、それを突き詰められるかどうかが、極めて重要です。
例えば、たくさんの経営者やリーダーを見てみても彼らは共通して、ユニークで変わっています(笑)

「変わっている」というのは最大限の褒め言葉で、それはバリューです。人と違うことをどれだけ突き詰められるか。それを全ての人に伝えたいですし、ユニークな会社でもあるLIXILはチャンスがたくさんありますよ。
 
ーー貴重なお話をありがとうございました。それでは、次回の取材対象者を教えてください。

株式会社MIXIの吉野 純平さんをご紹介します。
JANOGという日本のネットワークエンジニアのコミュニティ運営を彼と一緒に長年やっていまして、僕は引退しましたが彼は会長をしており、エンジニアとしても新卒で入りネットワーク畑から開発トップでCTOに若くしてなった優秀な人材で、面白い話聞けると思います。


以上が第43回LIXIL 常務役員 岩﨑 磨さんのインタビューです。
ありがとうございました!
今後のストリートインタビューもお楽しみに。

(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき / 編集:TECH Street編集部)

 

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