【連載44】MIXI社CTO 吉野氏が語る『「心もつながる」場と機会の創造』を実現するために必要なエンジニアの多様性とは

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こんにちは!TECH Street編集部です。

連載企画「ストリートインタビュー」の第44弾をお届けします。

「ストリートインタビュー」とは

TECH Streetコミュニティメンバーが“今、気になるヒト”をリレー形式でつなぐインタビュー企画です。

企画ルール:
・インタビュー対象には必ず次のインタビュー対象を指定していただきます。
・指定するインタビュー対象は以下の2つの条件のうちどちらかを満たしている方です。

“今気になるヒト”岩﨑さんからのバトンを受け取ったのは、株式会社MIXI 執行役員 CTO 吉野 純平さん。

ご紹介いただいた岩﨑様より「株式会社MIXIの吉野 純平さんをご紹介します。JANOGという日本のネットワークエンジニアのコミュニティ運営を彼と一緒に長年やっていまして、僕は引退しましたが彼は会長をしており、エンジニアとしても新卒で入りネットワーク畑から開発トップでCTOに若くしてなった優秀な人材で、面白い話聞けると思います。」とご推薦のお言葉をいただいております。

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吉野 純平 さん

株式会社MIXI 執行役員 CTO 開発本部長 

2008年4月に新卒エンジニア職で株式会社ミクシィ(現 MIXI)に入社。SNS「mixi」のインフラを担当後、アプリケーションの運用に従事。その後、物理インフラ、サーバ運用、ネットワークから、映像処理や撮影などIP通信関連の開発を手掛ける。2019年5月にインフラ室の室長、2022年4月に開発本部 本部長就任。2023年4月 執行役員CTO就任(現任)

 

エンジニアとしての原体験とインフラを選んだ理由

ーーまずは、現在の吉野さんを形作る原体験をお聞かせください。

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私のエンジニアとしての原体験は、幼稚園の頃から始まります。幼稚園時代は、とにかく砂場で遊ぶのが大好きで、モノ作りにも興味がありました。

そして、中学生になると、ゲーム作りにも興味を持ちました。きっかけは、友達の将来の夢が「ゲームを作る人」だったので、私もそれを真似したんです(笑)

元々工作や電気回路は好きで、モノづくりにも興味があったので、自分に向いていると感じました。それから、プログラミングやコンピュータに関する本を図書館でたくさん借りて読みました。


ーー本を読んで、まずはしっかり知識をつけようと思われたのでしょうか?

当時はパソコンを持っていなかったので、「本を読むことくらいしか手がなかったから」というのが本音です。その後、1年かけて親を説得してパソコンを手に入れることができました。

説得するのに時間がかかった理由は、小学6年生の頃に電子回路作りに一旦ハマり、その後投げ出してしまっていたので、パソコンもすぐに飽きると思われていたのでしょう。なかなかすぐには買ってもらえませんでした(笑)

パソコンを手に入れたあとは、それまで本を読んで知識として頭に入れていたものを、実際に試したり、当時は自作のコンピューターゲームを投稿する雑誌があったので、それをひたすら模写するなどしました。

その後、大学では情報系の学部に入り、コンピューターを学んだので、それが生かせる仕事に就けたらいいな、と漠然と考えていました。


ーー大学ではインフラを勉強されたと聞いていますが、インフラを選んだ理由はありますか。

インフラを選んだ理由は、「ソフトウェアでは勝てないかもしれないが、インフラなら勝負できる」と思ったからです。この考えは、大学時代にすごいエンジニアに出会って、彼らには私が1日16時間勉強しても追いつけないと感じたのが影響しています。だから、私の人生戦略は「勝てない人がいる場所とは土俵を変える」というものです。自分に合った場所、つまり独自の道を見つければ勝てると考えました。そのような背景から、私はインフラを選びました。

SNS「mixi」のユーザーから社員へ、入社したきっかけ

ーーその後、就職先としてMIXIを選ばれたきっかけはありますか。

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友達とMIXIへ見学に行った際に、MIXIのエンジニアと話す機会があり、そこでの話がとても楽しかったのが一番のきっかけです。

私は学生の頃からSNS「mixi」のユーザーで、当時はガラケーとパソコンの両方で利用していました。当時は、ガラケーからSNS「mixi」を使うと、動作が重くなる印象があったのですが、そのような動作やシステム改善について、MIXIのエンジニアと話ができたのです。

私は、コンピューターを学んでいたこともあり、システム改善に興味があったので
「どのような考えのもとで、mixiのこのシステムを改善したのですか?」など色々質問しました。そして、とても面白そうな仕事だし、そこで働くエンジニアが楽しそうに働いていたので入社を決意しました。


ーーMIXIにおける現在の役割と、新卒からMIXIで長く働かれていて、現在どのような感想を持っていますか。

私の役割として、MIXIにはVPoEという役職はありませんが、CTOとVPoEの両方を担っていると思います。社内の調整やリソース配分、文化づくりなども行っていますし、CTOとして、ビジョンの提示や、エンジニア全体を活気づけるような役割も担っています。

私がこの会社に長く在籍している理由は、「やるべきことが変わっていく会社だから」だと思います。同じことをずっと続けていると飽きてしまいますが、MIXIでは大体3〜5年ごとに大きな変化があり、事業が変わるたびに、やるべきことも変わってきました。なので、同じ会社にいても、転職しているような感覚で、楽しく仕事ができています。

MIXIのエンジニア組織の全体像と雰囲気とは

ーーMIXIのエンジニア組織の全体像や、どのようなエンジニアがいるか教えてください。

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事業領域としては、ゲームやアニメを含むデジタルエンターテインメント領域や、公営競技や観戦事業を行うスポーツ領域があります。また、ライフスタイル領域では、「家族アルバム みてね」などを運営しています。これらの各事業部にエンジニアが所属しており、加えて私が本部長を務める開発本部も存在し、ここには全事業部を横断して活動するエンジニアが所属しています。

エンジニアとしてそれぞれ得意分野がありますが、それに囚われることなく多様な挑戦ができるエンジニアが多く在籍していると思います。社内には公募制度があり、興味を持った事業へ領域を越えて移ることも可能です。これは新たなキャリアに挑戦できるシステムでもあります。


ーーMIXIのエンジニアの組織文化や雰囲気はどんな感じでしょうか。

「優しい」という言葉がふさわしいかもしれません。組織全体に優しい雰囲気があるので、エンジニアにとって、心の余裕や考える余裕が生まれています。それはとても良いことだと思いますが、その一方でスピード感に関しては、もう一歩踏み込んで意識した方が良いケースがあります。

例えば、過去のプロジェクトを振り返ると、時にはスピード感を持って進める必要があり、「このプロジェクトは厳しいな」と思いながらも、全力でやってみて成し遂げられると、それは良い経験になりました。もちろん、常に全速力で走り続けるようなプロジェクトばかりだと疲弊してしまうので、バランスを取ることが重要だと思います。

MIXIの今後のチャレンジとエンジニアの多様性について

ーー今後の技術的なチャレンジについてお聞かせください。

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スポーツ領域では、映像技術をさらに高めていくことが必要だと考えています。また、「可視化」をテーマに、人の内面を科学的に解析する取り組みを進めています。これは私たちの会社のミッションである『「心もつながる」場と機会の創造』に直結しています。

これには、既存の技術だけでなく、異なる角度からのアプローチも検討しています。例えば、他社が開発した脳波計を利用させてもらい、「いかに良い感情を生み出すのか」やそれらを数値化する試みを行っているエンジニアもいます。

これを技術的に解明し、分析し、さらにビジネスに落とし込むことは、非常に難しいですが、新しいビジネスを創出するのは、私にとっては楽しいことです。


ーーMIXIでは、どういうエンジニアを求めているのでしょうか。

新しいビジネスを創出するためには多様性が大事だと思うので、色んな考えを持った人や得意分野が異なる人たちにきてもらえると嬉しいです。

例えば、「ちょっとこれが作れたら、いい感じのものができるけど、外部に頼むとかなり費用がかかる」というものがあります。そんな時にその「ちょっと」ができるエンジニアが社内にいるととても助かります。

3Dゲームの開発を例に挙げると、建築学科出身でコンピューター技術を扱える人が加わることで、その人が持つ建築知識を開発に取り入れることができて、更に良いものが作れます。このように、他の人と異なる能力を持つ人がいることは強みです。

JANOGの会長が語る、JANOGの魅力

ーーところで、吉野さんは社外活動として、JANOGの会長をされているかと思いますが(2023/11/17時点)、まずは、JANOGとはどういった団体なのでしょうか?

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JANOG(ジャノグ)では、インターネット運用に関する議論や検討、情報の共有を行っています。元々はアメリカのNANOG(ナノグ)に触発されて始まった日本版のグループです。現在JANOGには約7000人の会員(メーリングリストの登録者)がおり、年に2回、3日間のミーティングを開催しています。

これまでに52回ものミーティングを開催してきており、最近では約2000人が参加してくれました。非常に大きなイベントですが、実はJANOGには法人格はありません。ミーティングをホストしてくださる方やスポンサーなど何らかの提供をいただける方がいるお陰で成り立っています。


ーー吉野さんのJANOGでの役割や魅力に感じる点は何でしょうか?

現在は、JANOGの運営委員の会長を務めていて、継続性を考えて運営をしています。
JANOGの魅力は、困っている人同士が直接話し合い、問題を解決し、親睦を深めることができるところにあります。たくさんの人が参加しているので、適切な人に問題を伝えれば、問題解決に向けて動けるような環境が整っています。だからこそ私は、運営がいないと成り立たない状態ではなく、困っている人が気軽に助けを求められる場所づくりを大切にしたいと思っています。


ーー最後に、これからの時代にエンジニアとしてどのように立ち回るべきか、読者に向けてメッセージをお願いします。

「仕事をいかに楽しめるか」が重要だと思います。楽しめれば仕事で病むこともなく、たとえ大変な時でも乗り越えることができます。そのため「仕事を楽しめる」という人は強いですね。

楽しむための方法として、例えば「会社が携わっている事業の中で一番楽しそうなものに行ってみる」などでしょうか。

私の場合、MIXIに入るまでは、スポーツ観戦をそこまで多くはしていませんでしたが、仕事上関わりをもったことからスポーツを観る機会が増えました。それが非常に楽しいことだと知ったためです。やりたいことや楽しいことを仕事にすることで、より仕事のパフォーマンスも上がると思います。

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ーー貴重なお話をありがとうございました。それでは、次回の取材対象者を教えていただけますか。

長野 雅広 さんを紹介したいと思います。
私が新卒でMIXIに入った時の先輩の一人で多くのことを学ばせていただきました。
MIXIだけではなく多くの会社で活躍してきた方です。

 

以上が第44回株式会社MIXI 執行役員 吉野 純平さんのインタビューです。
ありがとうございました!
今後のストリートインタビューもお楽しみに。 

 

(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき / 編集:TECH Street編集部)

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