
※こちらの登壇レポートは2025年4月10日時点の内容のものになります。
- dodaダイレクトとは?
- 「dodaダイレクト」におけるプロダクトマネジメントの立ち位置
- 「dodaダイレクト」プロダクト戦略
- 戦略推進のマインドセット
- 戦略推進における3つの鍵
- まとめ:私自身が感じていること
登壇者はこの方

真崎 豪太 氏
パーソルキャリア株式会社
dodaダイレクト プロダクトマネジメント部
ゼネラルマネジャー
新卒でソフトバンクに入社し、DXプロジェクトマネージャー(PjM)やMysoftbankのプロダクトマネージャー(PdM)を担当。その後、正社員としてAkerun Pro、タクシーアプリGO、メルカリの新規事業のPdMを担当し、フリーランスとしてスタートアップ数社に携わる。2024年よりパーソルキャリアにて「dodaダイレクト」のゼネラルマネジャーを務める。
真崎:パーソルキャリアで「dodaダイレクト」というサービスのプロダクトマネジメント部 ゼネラルマネジャーを務めています。
これまで、1社目の大企業でプロジェクトマネージャー、プロダクトマネージャーとしてキャリアをスタートし、スタートアップやメガベンチャーを約10年経験しました。今年でPM歴は14年目になります。
以前、タクシーアプリの開発に携わっていた頃には、いくつかの勉強会で登壇させていただいたこともありますので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、私が現在担当している 「dodaダイレクト」というサービスに焦点を当てて、プロダクトマネジメントの取り組みをご紹介します。
dodaダイレクトとは?
dodaダイレクトは、企業がdodaに登録された転職希望者に対して直接スカウトを送ることができるサービスです。

「dodaにプロダクトマネジメントのイメージがない」という方もいらっしゃるかもしれません。実は私自身も入社前にはそう思っていました。
しかし、ここ数年で社内の状況は大きく変わりつつあり、プロダクトマネジメントの重要性が急速に高まっています。
「dodaダイレクト」におけるプロダクトマネジメントの立ち位置
まず、dodaダイレクトにおけるプロダクトマネジメントの立ち位置についてお話しします。
プロダクトマネジメントの分布イメージ
一般的にプロダクトマネジメントは、テック企業を中心に新規事業や一部の基幹事業で活用されるケースが多いと思います。一方で、非IT領域の大企業の基幹事業にまでプロダクトマネジメントが浸透している例は、まだまだ限られています。

しかし、弊社には以下の2つの条件が整っており、それがプロダクトマネジメントの浸透を後押ししています。
- 経営トップの理解と支援があること
- 社内に約130名のプロダクトマネジメント人材(PdM系職種)が在籍していること
これらが、組織全体でプロダクトマネジメントを文化として根付かせるための土壌となっています。

また、企業やプロダクトのフェーズによって、PMのやり方も変わると言われますが、弊社は下図で言うところの一番右のフェーズにあります。動きの速さという点では遅めの部類に入るかもしれませんが、グロースのかなり後半のステージにあり、スピードや学びを重視しプロダクトマネジメントを進めようと試みています。

「dodaダイレクト」プロダクト戦略
続いて、dodaダイレクトのプロダクト戦略についてご紹介します。
私たちは「自分でできて決められる。Recruiting Ownership with Tech」というスローガンのもと、事業を推進しています。
従来の採用活動は、エージェントや採用代行に依頼して候補者を集めることが一般的でした。しかし、dodaダイレクトでは、企業の採用担当者や現場の責任者が自ら候補者を探し、アプローチするスタイルを重視しています。
「本気で採用に取り組む企業」に対して、自律的に動ける仕組みとプロダクトを提供するという考えのもと、プロダクトを設計・改善しています。

dodaダイレクトの戦略構造とKPI
プロダクト戦略の中核にあるのは、「いかに採用数を増やせるか」という問いです。
dodaダイレクトでは、この課題を構造的に分解し、KPIとして明確に設定しています。
- 戦略図では、採用数に影響を与える各要素を変数として明確化
- それぞれにわかりやすい名前を付け、全社的に共通言語化
- 大規模な組織でも誰もが戦略を理解し、行動に落とし込めるように設計
これにより、戦略と現場が一致する組織運営を実現しようとしています。
また、戦略の右側では、「dodaダイレクトを通じて、採用市場全体に変化を起こしたい」という私たちの意志も示しています。これは、今後さらにチャレンジしていきたい領域です。


戦略推進のマインドセット
ここからは、本日のメインテーマである「戦略をどのように推進するか、そのマインド」についてお話しします。
弊社は大企業の基幹事業を担うプロダクトであるため、当然ながらレガシーな仕組みや技術的課題も数多く存在しています。
たとえば、アーキテクチャの古さや、モダナイゼーションの遅れなどがその代表です。
一気に変える姿勢
こうした課題に対して、「徐々に変えていく」のではなく、一気に変革を起こす必要があると考えています。
スライドの右下で示しているトライアングルの図のように、小さく始めて徐々に広げるのではなく、最初から大きく踏み出すというマインドで取り組んでいます。

生成AIの活用と技術戦略
最近では、皆さんもご存じの通り生成AIが大きな潮流になっています。弊社でも、
- 業務改善でのAI活用
- プロダクト自体へのAI導入
この両面から、本格的な活用を目指しています。ここでも「徐々に様子を見る」のではなく、どうすれば大胆に導入できるかという視点で日々検討を重ねています。
その一例として、最近、弊社エンジニアがあるイベントで登壇しました。そこで語られたのが、アーキテクチャ全体をAIフレンドリーな構造に刷新するという大胆な構想です。
また、生成AIとの親和性が高い技術(例:グラフデータベース)も積極的に検討しており、プロダクトの中核にどう取り入れていくかをチーム全体で議論しています。
戦略推進における3つの鍵
ここからは、プロダクト戦略をどのように推進しているかについてお話しします。
私たちのような大規模な企業においては、次の3つの課題にどのように向き合うかが極めて重要です:
1.スピードの向上
2.プロダクトマネジメントの浸透
3.ケイパビリティの強化
それぞれの取り組みについて、順にご説明します。

① スピードの向上
スピードについては、ディスカバリー(探索)とデリバリー(提供)の2つの観点から課題があります。
- ディスカバリーでは、「どこに価値があるのか」「何を優先すべきか」が見えづらく、どう動くべきか迷う場面も少なくありません。
- デリバリーでは、長年運用されてきたサービスゆえの技術的負債があり、社内調整も含めて多くの工数がかかります。さらに、当社は7,000人規模の組織で、かつウォーターフォール型の開発文化も残っているため、新しい方法論を導入するには一層の工夫が求められます。
これらに対して、私たちは「段階的に変える」のではなく、「一気にモダンな手法を導入する」というアプローチをとっています。
具体的には、以下のような取り組みです:
- ダブルダイヤモンド
- バリュープロポジション
- バリューストームによる改善
- グラフデータベースを用いたアーキテクチャ刷新
- LeSS(Large-Scale Scrum)の導入
これらのキーワードが示すように、従来の開発文化から一新し、テック企業でも一般的な方法論を一斉に取り入れている状況です。

② プロダクトマネジメントの浸透
次に、プロダクトマネジメントを社内にどう浸透させるかについてです。
以前は、プロダクト戦略自体が明確に存在していなかったり、戦略と個々人の業務がつながっていなかったりという課題がありました。
また、
- 社内にPMの知識や意識がまだ十分でない
- 顧客と継続的に接点を持つ文化がなかった
- 意思決定が感覚的になりがちだった
といった課題もありました。
こうした状況に対して、現在は以下のような施策を進めています:
- OKRの導入による目標と戦略の接続
- プロダクトマネジメント組織の強化
- Prod Ops/Research Ops/DevOps)といった横断的な視点の導入
- 海外の文献や最新トレンドの積極的なキャッチアップ
これにより、少しずつですがPMが“あたりまえ”に存在する文化づくりが進んできています。

③ ケイパビリティの強化
最後に、戦略を実行する上で不可欠な「個と組織の能力=ケイパビリティ」についてです。
新しいフレームワークや概念をただ導入するだけでなく、一人ひとりがそれを理解し、実践できるかどうかが肝となります。
ここを疎かにすると、どんなに良い戦略も形骸化してしまいます。
また、私たちは大企業の基幹事業を扱っているという特性も強く意識しています。
これは「攻めのモダン化」だけでなく、「守りの堅さ」や「事業の持続性」をしっかり維持していく必要がある、ということです。
つまり、攻守のバランスを取りながら進めていく必要があるのです。
加えて、今日はテック企業から参加されている方も多いかと思いますが、技術的な先進性の面では、まだまだ追いつけていないという自覚もあります。
オンプレミス環境も一部残っており、クラウド化ひとつとっても、「ただのモダン化」ではなく、次の一手を見据えた進化を目指しています。

まとめ:私自身が感じていること
このスライドで一番お伝えしたいことがあります。
私はこの10年間、スタートアップやIT業界に身を置いてきましたが、今のような大規模企業でのPMは、これまでにない難しさとやりがいがあります。
テック企業にいたときは、モダンな考え方や情報が周囲から自然に入ってくる環境でした。
一方で、今は自分から学び、チームで意識的に取り組まなければ前に進めない環境です。
その分、成長機会も多く、自分にとって大きなチャレンジになっています。
dodaダイレクトのようなエンタープライズ環境でプロダクト戦略を推進するのはとてもやりがいがあります。
しかし、だからこそ、ここには新しいプロダクトマネジメントの可能性があると、私は感じています。
以上で、発表は終わりです。
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