【連載41】“自分の役割を越えて、共創しながら仕事をする”プラス株式会社山口氏の仕事観とは

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こんにちは!TECH Street編集部です。

連載企画「ストリートインタビュー」の第41弾をお届けします。

「ストリートインタビュー」とは

TECH Streetコミュニティメンバーが“今、気になるヒト”をリレー形式でつなぐインタビュー企画です。

企画ルール:
・インタビュー対象には必ず次のインタビュー対象を指定していただきます。
・指定するインタビュー対象は以下の2つの条件のうちどちらかを満たしている方です。

“今気になるヒト”進藤さんからのバトンを受け取ったのは、プラス株式会社の山口さん。早速お話を伺いたいと思います!

ご紹介いただいた進藤様より「山口さんは事業会社、ITベンダー、コンサルを経験し、現職のプラスにジョインされてからはシステム領域からデジタル領域まで幅広く経験、対応されています。そのバイタリティと鋭い視点は多くの方々にとって参考になると思います。」とご推薦のお言葉をいただいております。

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山口 善生(ヤマグチ ヨシキ)さん

プラス株式会社 
【役職】デジタル統括部門 部門長

音楽業界でマーチャンダイジングを経験後、ITベンダーに転職。システムコンサルタント後、2011年プラスに入社。基幹システムのクラウド化やマーケティング等の業務と管理を経験の後、2023年に全社横断のデジタル部門の創設と責任者を拝命。

 

新卒で外資系のレコード販売会社に入社

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ーーまずは、現在の山口様を形作る原体験をお聞かせください。

私のキャリアの一歩目は、IT やデジタルとは全く関係ないところから始まりました。新卒で外資系のレコード販売会社に就職し、そこでマーチャンダイジングを担当したのです。数千はあるサプライヤーから毎日のようにリリースされる音源を聴いて、その中から「売れる音源」を探しました。もともと音楽が好きだったので「この仕事は天職だ」と思っていましたね。

AppleのiPodの登場で音楽業界が変化

「たくさんの曲を外で持ち歩いて音楽を楽しみたい」という以前からあった音楽業界の課題をiPodが見事に解決しました。
今まではCD、MDに十数曲が限界で、違う曲を聴きたければ媒体を入れ替えなければなりませんでした。
一方、iPodは数千曲を手元で操作できます。そのうえ、「音楽をダウンロードする」という仕組みも新しい体験で画期的でした。

家ではレコードで音楽を聴く私からして、デジタル形式の音質の悪さを感じることはありましたが、それでも「これは売れるな」と思ったのです。

音楽業界からIT業界へ転向

まだCDは売れている時代ではありましたが「大きな変換点がきたな」と感じました。そこで「この業界を辞めて違う業界に切り替えるのか?」あるいは「この業界でデジタル技術をうまく活用して生き残っていくか?」と2つの選択肢を考えました。

私が選択したのは前者の「音楽業界を辞めて違う業界に切り替える」方で、新たに選んだのがIT業界だったのです。

IT業界を選んだ理由は、ITの仕事をしていた父の影響もありましたし、当時(2008年頃)は「エンジニアが儲かる」と言われていたことも理由でした。

プログラミングの猛勉強

最初はエンジニアの知識が全くなかったので、「こんなに難しいのか...」と驚きました。まず、専門書を購入しようと本屋に出向いて、プログラムの教科書を開きましたが、、、01の数字の羅列と横文字が私を襲ってきて瞬時に本を閉じてしまったほどです。(笑)
しかし、ここで諦めたらいけないなと思い、独学し、その後学校へも通いました。

当時は、学校に行って徹夜しながら死に物狂いで勉強しましたね。頑張って勉強した甲斐もあり、晴れてとあるSIerに入社しました。

SIerに入社

入社したSIerでは、設計部署に配属され、ベンダーとしてお客様先に訪問し、お客様の叶えたいこと、要求を丁寧に聞きながらシステムを構築していました。

私のエンジニアとしての出発点は、設計を行うことでした。つまり、書き物が中心です。私はエンジニアとプログラマーが同じモノだと思っていたので、設計書を書く人と実際にプログラムをする人が違うとは思っていませんでした。これにギャップを感じましたが、未経験の私の目には新鮮に映りました。

それと、好き嫌いなく、あらゆる仕事を引き受けました。なぜなら、案件をいただき、経験をどんどん積んでいけることに喜びを感じたからです。

例えば「LANケーブルを1本引く仕事」であっても面白く感じました。「実際に自分でケーブルを引いてネットワークの作り方を学び → それに自分が作ったシステムが乗っかり → そのシステムをみんなが使う」この一連を考えるだけでワクワクしたのです。

仕事の領域を広げるため、色んな技術を勉強した

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仕事の領域は自分で意識的に広げていきました。その根底には、「責任分界」の考え方に対する違和感があったように感じます。

例えば、システムを構築するときには、「ミドルウェアを設計する人」や「データベースを設計する人」「アプリを設計する人」などレイヤリングしますよね。

様々な人が絡んでいるので、もしバグや障害が起きると「誰に責任があるのか?」という話になることもありました。

そんな時に、私自身に深い知識がないと正しい判断ができません。正しい判断をするには、ソフトウェアの知識だけでは不十分で「データベース」「アプリケーション」「ネットワーク」「ストラテジー」など一つずつ勉強して深く理解する必要があったのです。

仮想化技術との出会い

SE業務もやりつつ、社内の情シスとして「ストレージ管理」「保守管理」なども行っていました。そこで「低コストであり、かつとても大きな容量のデータを保管する方法」を考える機会がありました。その時に思いついたのが「仮想化技術を利用する」ということです。

当時は、まだ仮想化技術についてよく分かっていなかったので、社内のサーバーを使って試してみました。すると、「リソースの無駄がかなり無くなる」と感じましたね。

それと同時に「これは商売になるのではないか」と思い始めました。そこで、当時の上司に「こういうサービスをやってみたらどうでしょうか?」と提案しました。しかし「それは無理だ」とあっさり断られてしまったのです。

プラス社に入社

今の環境で挑戦できないのなら「仮想化技術が必要な現場に行ってみたい」と思い、転職を考えました。事業会社だったら、今まで私が培ってきたプログラミングや設計のスキルを含めて、仮想技術に取り組めるだろうと考え、そのような思いで入社したのがプラス社でした。

転職先としてプラス社を選んだ理由は、ユニークネスを追及している会社だったからです。
0から1を生み出すことが根底にあるので、新しいチャレンジの過程で、様々な課題に直面したとしても、それを許容する会社だと感じました。

当時、仮想化技術(クラウドの原型)については世の中の理解があまりされておらず、「セキュリティが怖い」などの意見があふれていた時代です。そんな中で「クラウドって良さそうだね」という姿勢でいたのがプラス社でした。

事業やプロダクト、マーケティングのことを学ぶ

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プラス社の社内情シスとして、これまで培ってきた力を発揮しようと思っていたものの、まだ自分自身に足りないものがあると感じました。

事業の本質を知らずに、単純に情シスとして仕事を受けてしまうと、相手が欲しがっている仕組みを叶えるだけになってしまいます。しかし、それだと「共創」が生まれません。共創を生むには、事業の本質を知らないといけず、そのためには、プロダクトやマーケティングのことも学ばなければならないと思い、徹底的に勉強しました。

例えば、ネジ工場で、ネジを作っている人はそのネジが何に使われているのか、実は知らないという話があります。もしかしたらロケットの部品に使われているかもしれないのに、それを知らないというのが私は嫌でした。

社内DXプロジェクト

もともと社内課題を感じていて「これを直せばもっといい会社になる」と思うアイデアがあったので、それを社長に伝えました。そしたら「その技術で会社を変えましょう」と言っていただき始まったのが社内DXプロジェクトです。

 

――後から入ってきた山口さんが、どのようなやり方で、プラス社のDXを推進されたのでしょうか。

まず、私の仮説が本当に正しいのかという調査から始めました。マーケティングやシステムの仕事と並行しながら各組織にヒアリングして、業務を可視化したのです。

そして、業務が変革すると、どんな良いことがあるのかをまとめて報告し、経営に示しました。私はエンジニアから始まり、デジタルを使ってマネタイズすることを学び、今度はそれを経営に活かす立場になったので、財務や管理会計の勉強もしました。

無駄を無くして会社のスリム化を狙う

続いて、新たに部門を作るのですが、これがまた大変でした。我々の会社はカンパニー制をとっているので、プラス社の中に「ステーショナリーカンパニー」と「ファニチャーカンパニー」「ジョインテックス」という大きく3つの会社があり、それぞれに情シスや情報ストラテジーの部門があります。

それぞれの会社で同じようなことをしており、調達や物流などで無駄があると感じていました。そういった無駄を無くしていけば、会社がスリムになると思ったのです。

「企業体質の変革」と「カルチャーの変革」

まずは企業体質の変革から着手しました。柔軟性、俊敏性、それをローコストで支える体制を手に入れる必要があり、私たちはこれを「企業ダイエット」と呼んでいます。そして、何があってもやりたいことが叶えられるような「アスリート体質」な会社になろうともしています。

それと「カルチャーの変革」です。これは必ずしも、デジタルを使うためにリテラシーを上げるということではありません。

「ボトムアップでビジネスを始める体質を作るにはどうするべきか」や「社員がどのようなマインドを持てばこの会社が良くなるか」ということを十分に考えて、そのカルチャーを現場の人も含めて一緒に作っていくことが重要だと考えました。

デジタルカルチャー醸成部

私たちの組織に「デジタルカルチャー醸成部」という部門があります。それは、創造的な業務をしてもらうために、クリエイターやイマジネーターを育てることが重要だと考えているからです。

ここでは、各部門へ業務変更のPRをしたり、データの利活用スキルを伝授したり、マインドセットをするための事例紹介を現場にお届けしています。

次世代コアビジネス創造プログラム

また、「次世代コアビジネス創造プログラム」もスタートさせました。これはデジタルカルチャー醸成部の人が、「これからどういったシステムを作るか?」といった「DXの行先」を念頭に置きながら、年に一度新しいビジネスを創造しようという取り組みです。

そして良いものであれば、実際にビジネス化します。これがボトムアップからビジネスが生まれる土台になれば嬉しく思います。

「みんなのDX」とは

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――DXを推進される中で、DXに好意的ではない人もいるかと思いますが、そのような場合どのように対応したのでしょうか?

コストや効果の面で、DXが会社にとって良いというのは目に見えているのですが、中には理解を示さない人も出てくるかもしれません。

そこで、社長の案でこの取り組みを「みんなのDX」という名前にしました。これには「誰も置いてきぼりを作らない。社員一丸となって達成するプロジェクトだ」という想いがあります。

それを私が指揮するように言われたときに「絶対に置いてきぼりを作らないために何をするべきか」を考えて作ったのが「文化醸成部」です。

文化醸成部では、様々な取り組みを進めています。たとえば、「アフターDXの世界観」といって、私たちのDXが成功したとき、どのように仕事が変革するのか、という4コマ漫画を作りました。このように「アフターDXの世界観」を発信し、現場に「こういうDXをしたい」と働きかけ続けています。

またトップダウンで生産性を上げる動きをするだけではダメだと思っています。私たちのプロジェクトの根源には、現場の人たちの「気持ちごと変えていく」という気概があります。コンフリクトもあるかもしれませんが、それでも寄り添っていくという姿勢を持っているのは、社長が「みんなのDX」と名付けたからです。

「領域を超えろ」「コミュニケーションパスを越えろ」

今は、デジタル統括部門で責任者の立場にありますが、「領域を超えろ」「コミュニケーションパスを越えろ」と言い続けています。

どういう意味かというと、プロジェクトを成功させるために重要なことは、「それぞれの人が自分の役割だけをこなすのではなく、それぞれの役割を越えて他人の領域に行き、それを理解して、共に仕事していくこと」です。

「自分の担当業務が終わったから完了」ではないのです。自分の役割を越えて仕事をするというのがすごく重要だと思っています。

 

ーーありがとうございます。今後、山口さんはこの会社で、どのようなチャレンジをしていきたいとお考えですか。

まずは、DXの達成が大前提としてあります。今、カンパニー制だった部門を統合し、80人ほどの組織にし、そこの部門長を務めていますが、44社のグループのガバナンスも見ながら、DXの達成を目指しています。

その中核をなすのがデジタルエコシステムの構築です。そのコンセプトは「パートナーの人や顧客、社員、社会がつながる一大デジタルプラットフォーム」です。

また、私が一番やりたいこととして「誰にでも寄り添うシステムを作る」というのがあります。ここに来れば最高の体験ができて、あらゆるデータに触られて、あらゆるインサイトをもらえるようなデータプラットフォームにしたいですね。マーケティングやプロダクト、経営などの考えは、一旦置いて「ここに集まればみんながハッピー」という場を、みんなで共創したいです。

 

――ありがとうございます。最後に読者に向けて、これからの時代にエンジニアとしてどのように立ち回れば良いのかなど、メッセージをいただけますか。

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一言で言えば、興味関心を持つことだと思います。簡単なようで、なかなかできないことです。興味関心を持つことは簡単ですが、次に「それはどういうことなのか」と深掘りすることが重要です。

「楽しそうだな」と思うだけでは足りません。それをより楽しくするためにはどうすればいいのかを考える。それが創造性に繋がります。創造性を高めることが重要なのは誰もがわかっているとは思いますが、それを養うためには興味関心を持つことが重要です。

 

ーー貴重なお話をありがとうございました。それでは、次回の取材対象者を教えてください。

山口:日清食品ホールディングスの成田さんをご紹介します。
成田さんとはいくつかのコミュニティをご一緒していていつも貴重な意見をいただいています。
相手からしっかりと話を聞いた後、鋭くご自身の考えを伝えるスタイルがカッコよく、それがまた斬新でしっかりと辻褄があっていて、なにより体系だった物語としてグッと頭に伝わってきます。
成田さんが考えるITやデジタル、組織の構造やリーダーシップはエンジニアの方に大変刺激になると思います。
私が最も注目しているCIOのお話を楽しんで聞いてみてください!

 

以上が第41回 プラス株式会社 山口 善生さんのインタビューです。
ありがとうございました!
今後のストリートインタビューもお楽しみに。

 

(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき / 編集:TECH Street編集部)

 

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