U30エンジニアの成長と挑戦を後押し、 Developers Boost企画の裏側と目指す先とは

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こんにちは!TECH Street編集部です。

翔泳社主催、2018年より開催されている30歳以下の若手デベロッパーのための技術カンファレンスDevelopers Boost(デベロッパーズブースト:デブスト)。今年は12月11日(土)にオンライン開催されることとなりました。

本記事では、デブスト運営に携わる3名に、デブスト企画までの道のりや、今年のデブストの企画テーマの裏側まで伺ってきました!

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株式会社翔泳社
CodeZine編集部 編集長/Developers Summit オーガナイザー近藤 佑子(左)
CodeZine編集部 編集/Developers Boost オーガナイザー 鍋島 英莉(中央)
メディアプロデュース部 広告課 係長/Developers Summit オーガナイザー 鈴木 大介(右)

 

――まずは、お一人ずつ自己紹介をお願いいたします。

近藤氏:「CodeZine(コードジン)」というITエンジニア向けWebメディアの編集長をしています。また、2003年から開催されているソフトウェア開発者向けのイベント「Developers Summit(デベロッパーズサミット:デブサミ)」では、オーガナイザーという立場で、主に企画面を担当。2018年に「Developers Boost(以下、デブスト)」の立ち上げメンバーの1人となりました。

鍋島氏:近藤さんと同じく、「CodeZine」で編集をしております。2019年に入社し、2020年から若手デベロッパー向けのカンファレンスであるデブストのオーガナイザーとして企画を担当しています。主に若手デベロッパーの成長促進を目的としたテーマ設計やコンテンツの企画などを行っています。

鈴木氏:スポンサー営業とオーガナイザーという立場でデブサミに関わっています。近藤さん、鍋島さんは現場のエンジニアさんへの取材などを通して得た情報などからイベント企画を作っていきますが、私はご協賛を検討しているベンダーやブランディングや採用を検討している企業などから情報をもらい、それを企画に反映させる役割を担当しています。2018年に近藤さんとともにデブストの立ち上げメンバーとして参加しました。


――では、続きましてデブスト企画が立ち上がったきっかけを教えてください。

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近藤氏:まずは、「Developers Summit(以下、デブサミ)」の説明から入らせていただいたほうがわかりやすいかと思います。デブサミは、2003年から開催されている、歴史もあって規模も大きなイベントです。セッション数は2日間で80~90ほどあり、事前登録者数もオフライン開催では4000人以上、オンライン開催では6000人以上となりました。次回の2022年2月開催で20回目を迎えます。

鈴木氏:デブサミには良い意味で、“何でもあり”のごった煮感があります。普段はあまり関わりのないテーマでも“ちょっと聞いてみようかな”と気軽に参加しやすいですし、とにかく人がたくさん集まるので、参加者同士でコミュニケーションを取ることもできます。

近藤氏:デブサミ自体、活況を呈していたのですが、一方で参加される方の年齢層は30代~40代がボリュームゾーン、もっと若いエンジニアに参加してもらい、“こんな世界があるのか”と知ってもらいたいという思いもありました。ところが、イベントも平日に開催していることもあり、なかなか若い方が参加することが難しいという状況でした。

また、セッション内容も幅広いため、必ずしも若手の方の関心にフィットしているセッションばかりではなく、若手エンジニアも参加しやすいイベントを作りたいと思うようになったのが、デブストを企画するきっかけとなりました。

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鈴木氏:デブサミは、参加者だけでなく登壇者もベテランの方が多く、若手が登壇する余地があまりありませんでしたが、どんどん若手をフィーチャーし、彼らが登壇できる場を提供したいという思いがありました。そこで、デブストという若手の登竜門を設けて、デブストで評価が高ければデブサミにも登壇できる枠を用意する、というアイデアが生まれました。

近藤氏:“次のスター発掘”という感じですね。翔泳社としては出版事業も行っているので、幅広い層のファンを獲得できるのは嬉しいことです。

デブサミは基本的に平日開催なのですが、デブストは若手が参加しやすいように土曜日に開催しています。登壇時間も、デブサミは40分と長めの時間設定ですが、デブストでは20分に抑え、若手でも登壇しやすく、視聴者も聴きやすい環境を作っています。この20分という時間は、5分のライトニングトークよりはチャレンジングな時間設定で若手の成長に寄与できるように、という思いも込めて設定しています。また、デブストはイベントの後に懇親会も開催するのも特徴のひとつになっています。

 

――では、開催までの道のりで苦労したポイントをお聞かせください。また、どのように苦労ポイントを乗り越えたのか、教えてください。

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近藤氏:「登壇時間が20分」という枠組みはすんなり決まりましたが、どのようなコンセプトや場所であれば、若手の方が楽しめるのかという点に悩んでいました。そこで、実際に若手エンジニアの方に「どんな講演が印象に残っているか」と質問してみると、「自分と同世代で、自分ではやれないことを成している若手エンジニアの話を聞くと刺激を受ける」という回答がありました。やはり、同じ話でも、自分と立場が近い方から聞くと共感できますし、同世代から聞く方が、良い意味での焦りも生まれるものですよね。

そのような場をイメージしたときに、登壇者としては「ロールモデルになるようなすごい方に登壇してほしい」と思う一方、“初めて登壇する方でもチャレンジできる場所にしたい”という思いも併せてありました。デブストが、すでに実績がある方はもちろん、これからという方にもいいチャンスであってほしいと思ったんです。

デブサミは「サミット」とあるようにエンジニアの頂点を目指すものであるなら、デブストは、そのような場に向けて互いに刺激を与えあい、交流しながら成長をブーストしていくような場所でありたいと思い、企画を進めました。

セッションで登壇してくださる方は、私たちがお声がけする招待セッションと公募、そしてスポンサーセッションに分類されます。例えば、基調講演のセッションでは、普段から私たちが参加している勉強会などで知り合った人や、すでにデブサミに登壇してくださった方にお声がけをしました。公募については、当初、本当に応募者がいるのかという不安はありましたが、ふたを開けてみるとたくさんの方に応募いただきましたし、とても良いセッションも生まれました。2018年に1回目のデブストを開催しましたが、参加者も当初の予想よりも多く、会場がぎゅうぎゅう詰めでしたね。とても嬉しかったです。

鈴木氏:私は会場の様子を見て感動しました。我々としては初めての休日開催で、しかも若手のみだったので、やはり不安がありました。もちろん事前登録制なので、集客数は把握していましたが、それでも“当日、本当に来てくれるかな”とドキドキしていましたね。不安は杞憂に終わり、参加者の皆さまがたくさん集まったので、次の回からは少し大きな会場を利用することにしました。

苦労した点でいえば、登壇者の年齢を30歳以下のみとしていたのでそもそも社内に登壇できる若手エンジニアがいないというケースが多くありました。スポンサー営業の立場からすると、イベントに賛同してもらっている企業なのでなんとか登壇できるようにしたいという思いもあったのですが、コンセプトを大事にしていたので、お断りをせざるを得ないケースもあり心苦しいことも多々ありました…。また、30歳以下で初めて登壇するというスポンサーの登壇者さんも多くいたので、近藤さんと登壇内容のブラッシュアップをしました。スライドの添削などは、良い意味で苦労した点ですね。

近藤氏:その他、若手が集まりやすいように企画以外で工夫した点として、キャラクターや新しいロゴ、ステッカーの制作があげられます。

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デブストのロゴには、若手の成長の原動力になりそうなエンジンを積んだロケットという意味を込めています。そしてロケットにちなんで、宇宙服を着た人間とウサギのキャラクターを作りました。ウサギには跳躍の意味も込めています。

また、デブサミは、ホテル雅叙園東京で開催していることもあり、以前はスタッフが全員スーツで対応していましたが、それとは違う雰囲気にしたいと思い、スタッフTシャツやプレゼント用のTシャツを作りました。反響も大きく、翌年からはデブサミにもTシャツが導入されました。

ビジネス向けのイベントを行っている翔泳社としては異色だったかもしれません。しかし、新しい取り組みなので、いろいろなアイデアをとにかく試しながら進めてみました。結果として、デブサミでは規模が大きくてなかなかやりにくいことでも、デブストや他のイベントで試してみて、良さそうであれば拡大して大きなイベントに持っていく、という流れも作ることができました。

 

――新型コロナウイルス感染拡大の影響のあった昨年度は、どうされたのですか。

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鍋島氏:昨年6月にオフラインで関西での開催を予定していましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により延期をせざるをえなくなりました。他のイベントを見ても、開催のあり方を模索している時期で、本当に開催できるのか、かなり不安でした。また、ちょうどその直前に、近藤さんから企画担当を受け継いだばかりでしたのでその不安もありました。

 

――様々な状況の変化があるなかで、近藤さんから担当交代の依頼があったときに、どのように思いましたか。

鍋島氏:私が入社して少し経ったときに最初のデブストが開催されて、多くの方に参加していただいている状況を見ていましたし、当時はコロナ禍前でオフラインの交流もできていたので、それを見ていて“若手の方がこの交流を通して、技術のことやキャリアのことを気軽に話せて、且つコネクションを作れる場はとても貴重だ”と感じていました。そして何よりも、企画を担当していた近藤さんがとても楽しそうだったので、私も同じように楽しめたらいいなと思っていました。

当初は新しい目線や、新しい価値を提供した新しいイベントを行いたいという意気込みもありました。しかし、その直後に新型コロナウイルス感染症が流行し、結局、12月にオンライン開催に踏み切りましたが、不安は募るばかりでした。私だけでなく、恐らく一緒にイベントを作り上げてくれる営業の方も不安だったと思います。その中でも私は、今の状況に沿ってどのようなテーマを設定すれば良いのかをひたすら考えていました。

 

――どのような企画を考えたのでしょう?

鍋島氏:当時、デブストを引き継いで、初めて私がリーダーとして企画する立場になりました。同時にコロナ禍になったことで、さらに困難な状況になり、私1人では解決することが難しい課題に直面することが多くありました。

リモートワークが続いていたので、分からないことに対して1人悶々と考えていると、知らず知らずのうちに周りとのコミュニケーションが取れていないことに気づきます。そこで、もしかしたら若手のデベロッパーの方も、1人では技術の習得が難しいという課題を抱えているのではないかという考えに至り、「Share your ENGINE! ~ひとりじゃない~」というテーマに落とし込みました。

 

――では、オンラインに切り替えたことでなにか変化はありましたでしょうか。良かった点、苦労した点を教えてください。

鍋島氏:オンラインになったことで、場所を気にすることなく参加できるようになりました。

しかし、現在も模索中の課題があります。それは、デブストは成長と交流を促進するという目的を掲げていますが、その交流の部分にはまだまだ課題が残っています。コロナ禍になって、世の中的にもセミナーを受講したりスキルアップをしたりということは当たり前になってはきましたが、やはり交流は薄くなっているのが現状としてあります。

しかし、若手同士でお互いに切磋琢磨できる相手と出会えるというのはとても貴重だと思うので、参加者が積極的に交流できる場を提供できるよう、今後もデブストとしては交流をブーストするための工夫をしていきたいと思います。

 

――鍋島さんの頑張りをどのように評価されますか。

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近藤氏:私が引き続き担当するよりも、とても良いものになったと思います。私が企画をしていたら、“若手の人であればこのようなテーマがいいかな”と一歩引いたところから見ますが、鍋島さんは参加者や登壇者と同世代ということもあり、考えたテーマが共感を持ってしっかり受け止められたように感じます。実際に登壇者のみなさんも話がしやすく、参加者にも響いたように思えます。

交流面については、確かに模索中です。昨年夏にオンラインでデブサミを開催しましたが、そこではチャットでのコメントと、Twitterのハッシュタグによるコミュニケーションの場を提供しました。それも盛り上がりましたが、まだまだ不十分だと思います。やはりデブストでは、それにプラスαできるような交流がしたいと思ったので、Ask the Speakerという登壇者に質問できる機会をオンラインで設けました。

また、質問がすぐには集まらないかもというときに備えて、Ask the Speakerでは、私がファシリテーターとして、セッションを聞いた感想や気になったことを質問しながら参加者からの質問を促しました。鍋島さんがリーダーシップを発揮して現場のことをすべて取り仕切ってくれていたので、私は一日中それに専念することができましたね。

 

――では、2021年度版のデブストはどのようにものになるのでしょうか。ご案内をいただけますか。

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鍋島氏:今年のテーマは「Connecting the Dots」です。デブストは、デベロッパーの中で共通の課題として挙がりやすいキャリアの話や、技術のスキルアップやブラッシュアップをテーマに、彼、彼女らが主体的に取り組んだ開発事例や困難を乗り越えた事例、今後生き抜くための戦略などを主にシェアしてきました。

今年もまだ先行き不透明なので、エンジニアとしてのキャリアをどのように描いていくのかを悩んでいる若手の方も多いと思います。不確定要素の多い今の時代だからこそ、これまでに身に付けた技術やもともと備わっているスキル、新しく世に出た技術や新しく習得した技術を掛け算することで、エンジニアとして幅広い仕事を経験して独自のキャリアを築いてほしいと考え、このテーマを選びました。

もっといえば、この「Connecting the Dots」というテーマには、私のキャリアが密接に関わっています。編集の仕事をする前は、短期間ですがエンジニアとして働いていました。そのエンジニアだったころの上司から、「これから学んでいくことの1つ1つが散らばった点のように感じるかもしれないけれども、信じて打ち込んでいけば、点と点が繋がって1つの線になる瞬間が必ず来る。そして線が繋がって1つの面となれば、それは誰にも負けないような強みになる」と言われたことがあります。当時は言われたことがよく分かりませんでしたが、今になって振り返ると“その通りだな”と感じられます。

エンジニアだったころの自分からすれば、今の自分がエンジニア時代の経験と、もともと得意だった人に分かりやすく伝えることや文章を書くことを活かして、エンジニア向けにWebメディアの編集やイベントの企画をするとは、想像すらできませんでした。

私が伝えたいことは、一つのスキルを究めることも素晴らしいですが、若いうちはトライアンドエラーができるので、自分の好きなことや得意なことは何か、自分はどのようなことに挑戦したいのかということを考えてチャレンジすることで、自分がやってきた一つひとつのチャレンジが繋がって線となり、面となれば、それは他にはない自分だけの強みになると考え、今回の企画に落とし込みました。

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――参加者のみなさんの共感を生みそうなテーマですね。

近藤氏:実際に今までのセッションでも、「複数のスキルを掛け合わせる」ということを言っていた方もいるので、それも上手く反映しているテーマだと思います。デブストに登壇されたエンジニアの発信と、鍋島さんの実体験が上手く合わさっていますね。

鍋島氏:今は働き方が変化していると思います。ITが世界を変化させている時代なので、若手デベロッパーの皆さんの可能性は無限大です。今は先行き不透明で不確定要素が多いですが、点と点が繋がって自分の将来を作っていくことを信じて、恐れずにいろいろなことにチャレンジしてほしいと思います。ぜひデブストにご参加いただき、様々な方の知見やチャレンジした取り組みを自分にうまく踏襲して、新たな点をどんどん作ってほしいと思います。

 

――若手に着目しているというのは、数年後の世の中を変えるかもしれない、大変影響力の大きな取り組みだと思います。長い目で見たときのイベントの価値や、その中で貴社やこのチームがやりたいことはありますか。大きなビジョンを教えてください。

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鈴木氏:これまで通り、若手の登壇機会を作っていきたいというのは、イベント企画のメンバーとして強い思いがあります。今はオンラインでの業務やコミニュケーションが増えていて、横の人が何をしているかが分からない、そして新しい技術をインプットする場・アウトプットする場が減っています。デブストは、そういった若手の最初の一歩目を踏み出すきっかけとなるイベントにしたいと思っています。

例えば最初に参加したイベントがデブストで、そこから成長し、デブサミや国際的なイベントに登壇してくれるエンジニアが出てきたら嬉しいですね。そういうイベントに携われるのは、とても嬉しいことです。我々もたくさんの情報を発信していきたいので、ご興味ありましたらぜひ参加していただきたいですね。

近藤氏:翔泳社には、デベロッパーのみなさんがインプットやアウトプットするプロダクトがたくさんあります。デブストやデブサミに限って言うと、様々なデベロッパーさんの一歩を踏み出すきっかけとなればいいなと思っています。

例えばイベントに参加をして登壇者に質問をするという前向きなアクションをすることで、単純に受け身で聞くだけという先に一歩踏み出せたり、次は公募にチャレンジしてみたり、デブストに登壇できたから次はデブサミの登壇を目標にしてみようと思ってみたり、ゆくゆくは書籍の著者になったりと、エンジニアの成長にいろいろな立場で関われていることが楽しいですし、そのようなきっかけをどんどん増やしていきたいと思います。メディアが開催しているイベントだからこそ、参加者がとても多様です。レベルの違いや、住んでいる場所の違いなど、デブストやデブサミを通して多様な方が学べる場を作っていきたいですね。

鍋島氏:Webメディアやイベントを通して人の人生を変えるきっかけに携わっているというのは、私自身も幸せなことです。心に刺さったことはいくつになっても残ると思うので、誰かに言われたことや学んだこと、自分が挑戦したことは、人生の1ページとして刻まれていきます。だからこそ、ただ座って流れるように過ごすのではなく、特に若手の方はもっと主体的に自分の実力を信じて恐れずに挑戦してほしいと思います。私もこれからも様々なことに挑戦して、学び、気づき、みなさんと同じように自分の成長をブーストしていきたいと思います。一緒に頑張りましょう!

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以上がデブスト運営メンバーへのインタビューです。近藤さん、鈴木さん、鍋島さん、ありがとうございました!

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(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき / 編集:TECH Street編集部)