こんにちは!TECH Street編集部です。
前回、KDDI株式会社藤井彰人氏にインタビューをしましたが、今回は連載企画「ストリートインタビュー」の第22弾をお届けします。
「ストリートインタビュー」とは
TECH Streetコミュニティメンバーが“今、気になるヒト”をリレー形式でつなぐインタビュー企画です。
企画ルール:
・インタビュー対象は必ず次のインタビュー対象を指定していただきます。
・指定するインタビュー対象は以下の2つの条件のうちどちらかを満たしている方です。
“今気になるヒト”藤井さんからのバトンを受け取ったのは、株式会社ソラコム片山暁雄さん。
▼藤井さんの記事はこちら
【連載21】“グローバルにベストな選択肢”を問い続ける、KDDI藤井流エンジニアの力を引き上げる努力とは
片山 暁雄 Akio Katayama/株式会社ソラコム 執行役員プリンシパルソフトウェアエンジニア
芝浦工業大学工学部金属工学科卒業。金融機関向けのシステム開発と、AWS(Amazon Web Services)を使用した資産管理事業を業務として行うかたわら、オープンソースのJavaフレームワークプロジェクトや、 AWSの日本ユーザーグループ(JAWS-UG)の立ち上げに関わり、2011年にアマゾンデータサービスジャパンに入社。その後株式会社ソラコムにて、ソフトウェアエンジニアとしてソラコムの提供するIoTプラットフォームの設計構築を担当。
著書「AWSクラウドデザインパターン設計編/実装編」「Amazon Web Services 基礎からのネットワーク&サーバー構築」「Javaルールブック」「IoTエンジニア養成読本」「公式ガイドブック SORACOMプラットフォーム」「公式ワークブック SORACOM実装ガイド」など。
――ご紹介いただいた藤井様から『急成長中だったAWSから、スタートアップのエンジニアへの転身は、これからのエンジニアのひとつの選択肢なのだろうと思います。私が未踏プロジェクトで採択した酒井さんもソラコムに加わっていますが、海外IT企業のように技術レベルをしっかりと精査した採用なども、今後のジョブ型採用の先駆なのだろうと思います。』とご推薦のお言葉をいただいております。まずは、いまの片山様を形作る原体験をお聞かせください。
片山氏:幼い頃から、レゴなど何かモノを作るのが好きでした。小学生の頃には仏具をよく磨いていましたね(笑)昔から、金属は磨けば光るというように「手を加えれば何かになる」という仕組みを作ることに興味を持っていたのだと思います。釣りもやっていましたが、釣ることよりもその道具が好きでしたし、自転車も走るよりも作る方が好きだったので、自然と大学でも金属工学に進みました。そして就職先に選んだのが鍵のメーカー。住宅の鍵やコインロッカー、自動車の鍵やドアハンドルなどを作っていました。
その会社に長く勤める予定でしたが、業界再編の波に飲み込まれた会社が人件費を抑えると言い始めたので、まだ入社して1年目でしたが、あっさり辞めてしまいました。次にどのような仕事をしようか悩んだときに、どんどんスキルを磨いて稼げるようになりたいと考えたのですね。そこで効率の良い仕事をしようと思い、ITが良いのではないかと目をつけました。また、できれば自分で設計もしたいですし、イチからモノを作りたいという気持ちがあったので、IT企業で、かつ大きい会社よりも小さい会社に入る方が経験を積めるだろうと考えていました。
――製造業から、いきなりSIってすごい転身ですね。プログラミングの知識はどのように身に着けたのでしょうか。
片山氏:モノづくりが好きということで、学生時代にパソコンを自作したり、プログラミングも少し触ったりしていました。また、1社目にJavaが使える同僚がいて、転職に便利だと思って学び、おかげで今でもJavaを使っています。
私の頭の中ではレゴなどで何かを作ることと、コンピューターでプログラムを作って動かすことは同じことだと捉えていました。それが物理的なものかコンピューターの中かという差だけなので、転職してもとくに違和感はありません。
まさにレゴブロックのイメージで、ブロックは形が決まっていて、インターフェースが決まっていますよね。要するに、接続部分がどうなっているのかが決まっています。自動車の鍵にしても部品を作っていき、それらの組み合わせでモノが成り立ちます。
Webサイトも様々な要素が組み合わさって成り立ちます。例えばプログラムにはライブラリと呼ばれるものがありますが、私にとってはそれも1つの部品です。システム全体を捉えたときに、どれが使えるパーツでどう組み立てればいいのかというのは、ドアハンドルを作ることとあまりイメージは変わりません。ハンドルには強度計算がありますが、それはWebサイトのトラフィックに対する耐性のイメージと近いです。もちろんやっていることは違いますが、そのような捉え方をするとプログラムもあまり変わらないという考え方ができます。私はJavaをメインに使っていて、Javaが私の手に馴染んでいる気がしますが、自分の手に馴染むかどうかはモノづくりの道具でも同じですね。
とにかくハードやソフトも物理的にあるかないかの違いだけで、構造や考え方、組み立て方は同じだと捉えていたので、IT業界にも行きやすかったのかもしれませんね。
――では、実際にSIerに入っていかがでしたか。
片山氏:SIerには 11年間勤めていました。プログラマーとして入社し、作っていたのは、フロントエンドと言われるお客様に見せる画面でした。例えば保険会社の外交員がライフプランを見るときにお客様と一緒に操作をする画面や、そのシミュレーションの仕組み、また保険商品を買うときのシステムなどを作っていました。
プログラミングだけでなく、プロジェクトマネジメントとして実際にお客様と要件定義をすることもありましたね。裁量が大きかったので自由に技術を選択できましたし、実際に作ったものをお客様が見て、それが案件に繋がるととても嬉しかったです。
そんなとき、2003年頃にStrutsという、アプリケーションを早く作るための技術が流行り、フレームワークがオープンソースで提供されていました。私はそれを使うプロジェクトに入ったのですが、オープンソースでコードを読むことができるので、多くの学びがありました。
そこで、自分が作ったプログラムをオープンソースにするような活動を初めて、そうこうしているうちに知り合った人たちとオープンソース活動をすることになり、カンファレンスに出たり、自分たちで勉強会を開くようになったりして、社外の人たちと交流を深めるようになりました。
長い間、社内にいると閉塞感が生まれますが、外に出て普段仕事では関わらないような方たちと出会うと、情報交換ができて自分のスキルも上がりますし、発表をする場も得られるので、“他の技術者と出会うために会社を変える必要がない”という気持ちになっていきます。当時、努めていた会社は、金融の一部分とはいえ、特化した技術がありましたし、私も好きな仕事が多かったので、結果的に長く勤めていましたね。
――会社への所属意識よりも、自分の個としてのエンジニアが立っていくイメージの方が強かったのでしょうか。
片山氏:自分自身がたくさんの知識を持っていることで、自分の価値が上がったり、次のステップを目指せたりということを考えますが、やはり所属している企業にいかに良いものを持って帰れるかということは考えています。
オープンソースの良さもありますが、やはり社内の案件は緊張感が違います。外で「すごい」と言われている技術でも、実際に業務に使ってみると今ひとつ使いにくかったり、工夫が必要だったりすることもあるのですが、実際に使えるかどうかという感覚は実業務に触れていなければ分かりません。そのバランス感はとても大事ですね。外ばかり見ていても絵空事を言うばかりになってしまいますが、反対に中ばかり見ていても発展的な考え方はできません。やはり両方の草鞋を履くことが大事だと昔から考えていました。
――11年勤めていた会社から転職されたのはどういうきっかけがあったのでしょうか。
片山氏:私が入社した頃から、資産評価をして投資比率を決めるというサービスをASPで行っていましたが、当時はまだ早すぎて、どこの金融機関からも買ってもらえなかったのです。また、SIがメインの会社だったので、「ASPを作ろう」となっても結局はお金がとれるSI案件の方に人が流れてしまい、最終的には私と先輩の2人しか開発要員が残っていないという状況になってしまいました。
しかし、それでも2009年にもう一度チャレンジしようという話になって、サーバーを買うのをやめて、Amazon EC2という、時間単位でクラウドを貸してくれるサービスを利用することにしました。当時は情報が全くなかったのですが、ストリートインタビューにも登場された当時AWSにおられた小島さんと付き合いがあったので、一緒にAWSのユーザーグループであるJAWS-UGをはじめることになりました。当時はAWSの情報が少なかったので、情報を知りたい人を集めようと考えたのです。
当時、私の中では金融機関もクラウドを使ってほしいという思いがありました。例えば1億円の案件があると、多くの部分はハードウェアを購入したり、その環境を構築するために使われます。しかし私はプログラムを書くということにも価値があると思ったので、もっとプログラマーの価値を上げなければと考えていました。クラウドを使えばそれを実現しやすくなるという気持ちがありました。
要するに、クラウドであればソフトウェアエンジニアの私でもインフラ環境を用意できるので、インフラ費用をプログラマーの費用にできるのではないかと考えたのですね。これが金融に取り入れられれば自分のキャリアパスにとってもプラスになると思い、まずはクラウドを流行らせる仕事をしようと考え、AWSにジョインすることにしました。端的に言えば、よりソフトウェアで実現できる領域を増やすことで、ビジネスを早く実現することができるようになる、それを改善するためにもクラウドを普及させたいと考えたのです。
当時はクラウドを使うとなったときには、必ずと言って良いほどセキュリティの問題が取り沙汰されましたが、それが当たり前に使われるようになり、セキュリティの問題に時間を多く割かなくて済むようになると、“どうシステムを作るか?”という本質的な話に入ることができます。敷居を下げるとプログラマーとしての領域も広がるわけですね。
転職後の4年間は、AWSを金融機関の方々に使っていただくための活動をしていました。最初のお客さまは足掛け3年でようやく取引を始めることができました。当時は「Amazonです」というと「本屋が何をしに来たのか」と言われる時代でした。お客さまの1社であるソニー銀行の担当者は「これはいける」と直感があったようで、公開事例になっていただくことができました。そこから少しずつ金融機関のお客さんも増えていったので、認知が上がったというのがこの4年間における成果ですね。
――その4年間で、金融機関においてクラウドに対する見方が大きく変わったかと思いますが、そのターニングポイントはどこにあるのでしょうか。
片山氏:日本の金融業界にはFISC(金融情報システムセンター)という団体がありますが、そこが「金融のシステムはこうあるべき」というガイドラインを出しています。そのガイドラインにクラウドでどのようにクリアするかというのがネックでした。
反面、諸外国でクラウドを使って成功している金融機関の例が出てきて、そういった流れに敏感な金融庁の方や金融機関の方の間で、ガイドラインをクラウドに適用するための改訂の話が進みました。私もクラウド利用の有識者会議に参加して、最終的にリスクベースで判断をして、クラウドを使うというガイドラインとなりました。そしていくつも事例が生まれ、今では多くの金融機関で使われるようになった流れがあります。
――そこから現在のソラコムに転職されるのですね。
片山氏:AWSにいた4年間で金融機関普及の足掛かりができました。当時の目標はクラウドを流行らせて、自分のキャリアパスを広げることだったので、システムを作る仕事に戻ってもいいなと思い始めていたのです。ちょうどAWS Lambdaというサービスが出てきたのですが、それはプログラムを書くとインフラ周りをAWSが管理してくれて、動かした時間だけ課金されるというサービス。まさにアプリケーションを書くための使い勝手の良いプラットフォームがクラウド上でも出はじめてきたので、そういうものを使って仕事がしたいと考えるようになりました。
AWSの仕事は、最新の事例や最新のテクノロジーの話を聞けるので、とてもエキサイティングな仕事ですし、それをみなさんにお知らせして、たくさん使ってもらうという意味ではとても意義のある仕事でした。
しかし徐々に、本番環境でどれくらい使えるのかを知りたくなってきました。例えば当時の金融機関への提案ではあまり使わないようなAWSサービスがありますが、実際に自分でプロダクトのコードを書いていなければ、限界値が分かりませんし、どのような設計をすればより良いのかということが分かりません。
やはり実際にやらなければ分からないことはたくさんあるので、4年ほど経つとクラウドを使う仕事に戻りたいという気持ちが出てきました。AWSを使ったクラウドベンダーにジョインすれば確実にクラウドが使えるので、いろいろ考えましたが、ちょうど当時上司だった現社長の玉川が起業すると聞いて、ソラコムにジョインすることにしました。
通信やIoTに関する知識はあまりありませんでしたが、私が今担当している課金の仕事は、これまでの知識が十分に役に立つと思いました。そして私の知らないことは他のよく分かっているエンジニアにお任せすればいいので、私ができる仕事がそこにあり、エンジニアとして役に立ち、そこでモノが作れるならば良いのではないかと思い、ソラコムに行くことにしました。
――ソラコムの中で、どのような役割を担い、どのような価値を世の中に提供しようと考えていたのでしょうか。
片山氏:AWSの登場により、例えばInstagramやNetflixなど、多くの新しいビジネスが誕生しました。スタートアップの方々がAWSを使うことによって、少ない初期コストでサービスをスモールスタートし、顧客の増加とともに一気にサービスを拡大していきました。なので、IoTにおいても、同じようにアイディアを持つ人が簡単にサービスを作れるプラットフォームがあると良いのではないかと感じていました。
IoTでは、デバイスや通信の管理が必要です。例えばスマートフォンは現在1億台ほど普及していますが、一方のモノは将来数兆台を越えると言われています。膨大なIoTデバイスで、認証情報はどのように設定・管理入力するのかという問題や、これらのIoTデバイスの通信を管理するために、APIを使った自動化の必要性が発生します。そういった要望は、IoT普及とともにこれから次々に出てくるので、本来なら高度な専門人材が必要となる機能を、SORACOMプラットフォームではブロックのように組み合わせて簡単に作れるように提供することで、IoTに取り組みたい方の敷居を下げて、実際のビジネスを動かすことができればと考えています。
私は課金体系の担当なので、より柔軟に、お客様が使いやすい課金体系を実現する、お客様の声を聞きながら改善するということをより早く実現しようとしています。それが今の私のやるべきことだと思っています。
最終的に我々の名前は表に出なくてもいいと思っています。我々が下支えすることで、新しいビジネスを実現できた、というお客様がたくさん増えると嬉しいです。お客様の業種は本当に様々で、それぞれにビジネス課題が違うため、要求や使い方も違っています。しかし「これまで取れなかったデータを取りたい」という点においてみなさん一致しています。
例えば、養豚場でのIoT活用事例では、水圧データを定常的に取っているのですが、水圧が下がると水道管のどこかが破損していることがわかります。そこで、水圧が下がったらLINEで教えるという機能を安価で実現。それによって現場の方々が1日に1回配水に回る時間を豚の世話に費やせるようになり、同じ従業員数で豚の数を2倍に増やすことができました。
言うなれば、我々の仕組みはどうでもよくて、様々な会社がIoTを使ってビジネスを拡大しているということは、とても良い状態だと思います。このように、様々な情報が取得できるようになると、それを元にした新たなビジネスが出てくると思うので、我々は通信を介してデータを取得し、デバイスにデータを投げるということを、いかに安価に、そして便利にお客様に使っていただくかということが、プラットフォーマーとしての肝だと思っています。
――世の中にも今後、求められていく事業だと思いますが、どのような手ごたえを感じていますか。
片山氏:例えば我々のお客様に大手ガス会社がいらっしゃいますが、私たちが提案した自動検針やリモート開栓をご利用いただいています。そのレベルになると社会インフラになってくるので、仮にそういうところが自動化できてくると、とくに日本は少子高齢化社会なので、そもそも検針をする人がいなくなってくるという未来も実現できるかもしれません。こういった事例を見ると、今後はそういった領域にもリーチできる可能性があると考えられるので、よりアクセルを踏んで使っていただきたいと思いますね。
――では、ソラコムのエンジニア組織を組成していくにあたり、どのようなものを大切にして、どのような人たちに何を期待し、どのようにマネジメントをしたいと考えていますか。
片山氏:エンジニアの姿勢として良いと思うのは、自分自身がリーダーシップを発揮して、自分が問題だと思うところに対してトライしていくことです。そういう方が揃えば、ピープルマネジメントに多大な工数を割く必要はありません。そういった組織が理想ですし、私自身もそこで働きたいと思いますよね。
我々の組織も大きくなってきて、実際にはピープルマネジメントを実施する必要も出てきてはいますが、個々人のリーダーシップが高ければそれほど問題はありません。指示待ちの人が増えれば管理層が増えて、ミスコミュニケーションが生じてしまうので、それは出来れば避けたいと思っています。そのためには個々人のリーダーシップを高く持ち、自分の担当する範囲を把握してやるべき事をする、そして枠組みを決めず、どこでも顔を出して良いカルチャーにすることが大事だと思います。
――一般的に、最初のコアメンバーは全員で意識を高く持てるので、それで上手くいくと思いますが、組織が大きくなっていくときがなかなか難しくなりますよね。ソラコムは今どのような状態で、それに対して片山さんはどのような手を打っているのでしょうか。
片山氏:確かに、おっしゃる通り、当初はoneチームで仕事ができていましたが、人数が増えてくると分割しなければ効率が悪くなってくるので、今は1つのチームをできるだけ小さくして7チームに分け、その中で進められるところまで進めるという体制を作っています。そのチームの中にはエンジニアだけでなく、プロダクトオーナーを務めるビジネスサイドの人にも入ってもらい、その中で決められることは決めてもらっています。
――ところで「SORACOM User Group(SORACOM UG)」というコミュニティについて教えいただけますか。
片山氏:ユーザーが自主的に企画し運営するコミュニティです。現在全国で12のユーザーグループが活動してくださっています。立ち上げには私たちも協力します。地域や分野で、IoTやSORACOMに関する技術や事例を学びあいたい方がユーザーグループを立ち上げ、勉強会を開催してくださっています。
参加されるみなさんのモチベーションとしては、SORACOMへの興味もありますが、自分のビジネスの話をお互いに共有したいという気持ちがあることが、このSORACOM UGの特徴かもしれません。そこでリアルなビジネスの話をしていただくと、我々自身も勉強になりますし、参加される方々にも新しい使い方の気づきが生まれます。
今はとにかくお客様の事例をひとつでも多く発信して、各業界への気づきを増やすということを会社全体としても、私個人としても取り組みたいと思っています。新しい技術の活用も、外部のセミナーで話を聞いたり、さらには取り組む方同士が情報共有してお互いに学び合う場も増えてきています。
ソラコムとしても、このような学びを支援すべく、すぐに使えるIoTデバイスや、IoT開発の手順書IoT DIYレシピを提供しています。最新の技術や活用シーンを学ぶには、このような「まずやってみる」実践と、オープンな情報共有が重要だと思っています。
――様々な事例が広がっていくことで、点が繋がっていくというイメージですね。
片山氏:我々は、それを「IoTの民主化」と呼んでいますが、IoTの敷居を下げていくことに繋がります。もちろんそれだけで敷居を下げるのではなく、我々が価格を下げることや、使いやすいサービスを提供することも重要ですし、事例を見てやる気になっていただくことも重要です。
我々1社だけでなく、他にもIoT製品を製造・販売している会社はたくさんあるので、そういった方々も多くの事例を出していただくことで、“何かをデジタル化してビジネスに繋げることはとても重要だ”という社会的認知が浸透していけば、さらにビジネスの幅が広がると思います。
IoTはまだまだ成長市場です。今は、IoTプレイヤーが協力して市場を拡げていくタイミングだと考えています。面で広げていくことで、アナログだったものをデジタルに変えていく、インターネットが浸透していったのと同じように、モノをインターネットに繋いでデータを取れるようにすることで、今はまだ考えつかないような面白いビジネスが出てくるのではないかという期待感がありますね。
――ありがとうございます。最後に、これからの時代、エンジニアとしてどういう生き方をしたら良いのか、ご提言いただけますか。
片山氏:ITエンジニアとしては、他の業種と比べると技術が陳腐化するのが早いものが多いと思います。例えば樹脂成型機や金型の技術は長く使えますが、ITの技術には旬があるものが多いので、自分の仕事は常に無くなっていくというスタンスでいます。今自分がやっていることも、そのうち何かに置き換えられるだろうという気持ちを常に持ち、だからこそなるべく長いスパンで使える技術というのは身に付けられるといいですね。
例えばSIerの中にいても、プロジェクトを動かしたり、仕様に対して良い設計を考えたりというのは長期的に使える技術なので、その技術を磨くためにはSIerの環境にいても悪くないと思います。しかしそればかりをやっていても、実際にモノを作るうえではその時に使える技術が必要なので、直近の技術を追いかける必要があります。そして次の技術にも手をつけておくと、新しい技術は最初に覚えることが少ないので、勉強コストが低いことが多いです。その一歩を踏み出しておけば、少し使ってみてダメでも、何がダメだったのかは自分の中に知見として溜まります。
短期的なことばかりを追いかけても陳腐化する技術に特化してしまい、次の良い仕事がなかったりするので、長期的に使える技術を身に付けるといいのではないでしょうか。もちろん、お客様の話を聞いてモノを作り、喜んでいただくという経験がなければモチベーションも上がらないので、お客さまとの関わりも得ながら仕事をするのが大事だと思います。
――では、次回の取材対象者をご推薦ください。
片山氏:ブレインズテクノロジーの榎並さんを推薦します。榎並さんは、通信会社や大手メーカーを経て、クラウド、AIを提供する企業へ転身されており、キャリアの選択についていろいろとお話伺えると思います。また、現職のブレインズテクノロジー社は、数ある日本のAIスタートアップの中でも上場された大変実力のある会社です。ぜひお話を伺ってほしいです。
第22回のインタビューは以上となります。片山さん、ありがとうございました!
インタビュー後は最近はまっているというヨーヨーも披露いただき楽しい時間でした♪
次回は、ブレインズテクノロジー榎並利晃さんにバトンタッチ。今後のストリートインタビューもお楽しみに。
▼ご紹介いただいたKDDI株式会社藤井 彰人さんの記事はこちら
【連載21】“グローバルにベストな選択肢”を問い続ける、KDDI藤井流エンジニアの力を引き上げる努力とは
(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき / 編集:TECH Street編集部)