【連載2】八重洲発スタートアップスタジオ、xBridge-Tokyoコミュニティにフォーカス

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こんにちは!TECH Street編集部です。
コミュニティフォーカス」第2弾をお届けします。

「コミュニティフォーカス」とは

会員が気になるコミュニティについて、
下記3軸にフォーカスするインタビューコラムです。

  ・コミュニティ
  ・コミュニティで活躍しているヒト
  ・コミュニティを運営するヒト

「コミュニティフォーカス」第2弾は、「xBridge-Tokyo(クロスブリッジトウキョウ)」コミュニティを運営する3名にお話を伺いました。

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東京建物株式会社 渡部氏(左)、松井氏(中央)、高津氏(右)

※以下インタビュー中は、取材対象者、インタビュアー、撮影スタッフ全員マスク着用でお話を伺っております。

 

――まずは、コミュニティ運営における皆さんの役割分担からお聞かせください。

渡部氏:2018年4月に東京建物本社ビルで開業した『xBridge-Tokyo』の企画・立ち上げから担当していて、現在のTGビルディングへの移転を経てこちらにいます。そのタイミングでメンバーが強化されて、3人になりました。この3人は見ての通り、若くフレッシュなメンバー(笑)。若者に託されているプロジェクトだと思っています。

高津氏:今年の1月、この部署に配属されました。それまでは不動産の仲介営業をしていました。私の役割は、移転したばかりのこの場所、そしてコミュニティの盛り上げ役です。

松井氏:私は1月に転職してきて、この部署に配属されました。今はアシスタントとして働いていて、主にSNSの運用を担当しています。コミュニティの運営についてはまったくの未経験。ゼロからのスタートですね。

 

――ありがとうございます、確かにフレッシュなメンバーですね!では、まずはこの『xBridge-Tokyo』の概略と立ち上がった背景から教えてください。

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渡部氏:『xBridge-Tokyo』はスタートアップの方の成長を支援する施設です。「八重洲発スタートアップスタジオ」というところでしょうか。

スタートアップの方が、まさにここから事業を始められて成長し、卒業するまでの期間をフォローアップできればと考えています。

私たちは、八重洲・日本橋・京橋という“まち”対して、建物のハード面だけではなく、ソフト面にも目を向けることによって、まちの魅力を更に高めていければと考えています。

具体的には、私たちの会社よりも長い時間をこのまちと共に過ごしている地元の方々の思いを大切にすることはもちろん、新たにこのまちを訪れた方にどう魅力を発信するか、馴染みのない方にどうやってこのまちに来ていただけるか、なんてことに目を向けています。

その中で、働く人は、“常にイノベーションが起こるまちで働きたいのでは?”という考えのもと、このまちに“イノベーション・エコシステム”を作り、発展させるのが私たちのミッションです。イノベーションが常に起こるまちの中では、新しいアイデアを持っているスタートアップの存在は、とても重要です。

そこで、“このまちに彼らに集まってもらえるような場所が必要なのでは?”と考え、この『xBridge-Tokyo』を立ち上げました。

スタートアップは、渋谷や六本木エリアに集まっているというイメージがあるかと思います。東京駅周辺でも、丸の内エリアには外資系や金融系のスタートアップが増えてきましたが、この八重洲・日本橋・京橋エリアは、どちらかというと歴史の長い企業の集積地というイメージが強く、スタートアップに集まってもらうには、何か施策が必要だろうと考えました。

そこで考えたのが、スタートアップ業界で豊富な実績をお持ちのXTech株式会社/代表の西條氏にご参画いただき、「スタートアップ・スタジオ」としての機能・コミュニティを整えることと、賃料が高いイメージのこのエリアの中でもこの一等地において、スタートアップにも利用しやすいプライスを設定することでした。

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▲xBridge-Tokyo会議スペース

こうして2018年にxBridge-Tokyoがオープンしたのですが、当時入居していた東京建物本社ビルはおよそ築90年の歴史のある建物で、不動産業の本社ビルなのでビシッとスーツで決めている人たちばかりでした。

その中に、スタートアップ向けのオフィスができたというのはなかなか面白かったと思います。

最初は、私服通勤を見慣れない社員が、本社ビルに入ってくるスタートアップの方々を見て、ぽかんとするところからスタート。

でも、同じビルの中で働くというのは、やっぱり面白いもので、すぐに慣れてきますし、スタートアップが成長していく勢いに影響を受けた社員も少なくないと思いますし、オープンな雰囲気にもなったかと。

スタートアップ側も、正直最初は居心地が悪そうでしたが(笑)、そのうち慣れてきたのか、なかなか体験できないシチュエーションを楽しんでくれていたようです。

 

――スタートアップが集まるコミュニティは様々な場所にありますが、大きな違いはどこにあると思われますか。

渡部氏:私たちは、“創業時はここで頑張ったな”という思い出を大切にしてもらいたいと考え、“心に残るオフィス”をコンセプトとして掲げています。

弊社は「信頼を未来へ」という企業理念を掲げていますが、今ここでスタートアップの方に信頼していただけるような環境をつくることができれば、将来、また私たちのことを思い出していただき、この八重洲に戻ってきていただけるのではないか、と思っています。

ですから、アットホームな空間にしたいですし、サービスを提供する側というよりは、縁の下から支えるような立場で運営したいと思っています。一人ひとりの思いにきちんとフォーカスし、一社一社の成長を陰ながらサポートできるような施設でありたいですね。

さらに、私たち運営者だけでは彼らの成長はサポートしきれないので、入居企業の方々が相互に助け合えるような関係を持っていただけるようなコミュニティをつくる、ということも心がけています。

入居している起業家の方はもちろん、既にこの場所を卒業した先輩起業家や、事業支援を担っていただけるベンチャーキャピタルの方なども含め、お互いのアイデアや知見を交換し合うことで、この『xBridge-Tokyo』を盛りあげていただきたい。その下支えとなる役割を私たちが果たしたいと考えています。

 

――どのような仕掛けをご用意されているのですか。

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高津氏:私たちは、ここに常駐しているわけではないので、入居されている会社さんにオフィスの運営を自主的に手伝っていただいている部分がたくさんあります。

例えば、コピー機内の用紙を補充していただいたり、ウォーターサーバーの水を変えていただいたりということですが、運営を通した「共通の話題」があることでコミュニケーションが生まれています。

私たちが常にいるわけではないので、お互いに情報交換し合っていただくしかないのです(笑)。

結果的にではありますが、このような偶発的なコミュニケーションが良いコミュニティ形成につながることに気付き、今はこのような機会を意識的につくるようにしています。

また、自分の席だけではなく、バーカウンターなど様々なスペースを利用していただくことで、他のスタートアップの会話が自然と耳に入ってきます。それによって刺激を受けたり、コミュニケーションのきっかけにしたりして、深いところまでお互いに理解し合っていただけると、「あ、こんな情報はあの人に共有した方が良いな」、「これはあの会社に相談しよう」なんていうことが起こるようになります。

 

――アイデアは皆さんで考えるのでしょうか。

渡部氏:正直に言いますと、私たちの知見だけでは、快適で成長できるオフィスをつくりあげることは難しいと考えています。

私たち自身もスタートアップのように新規事業としてこのオフィスを立ち上げたので、まだまだ何が正解かわかりません。ですから、オフィスの新しいルールを作るときには入居者の皆様のご意見を伺い、フィードバックをいただきながらアジャイルに色々と変えています。

入居者の皆様に何かしら施設の運営に関わっていただくことで、結果的に、「提供された」オフィスではなく、「私たちが運営している」オフィスだと感じていただくことになり、これは他のシェアオフィスでは味わえない感覚なのではないか、と思うようになりました。

移転前でいえば、セキュリティもほぼない状態だったので、ある意味オフィス内の安全すら入居者さんご自身に守っていただいていましたし、そのようなコミュニティができていたので、新規にご入居者いただく方は、既にご入居されている方のご紹介というパターンも多かったです。
このような運営を通して、愛着をもっていただける、他にはないコミュニティになってきているのではないかと感じています。

受付が常駐し、細かいところまで様々なサービスがあるシェアオフィスとは真逆の立ち位置にいますが、その分、利用料をお得に設定できているのも、スタートアップの皆さんに魅力を感じていただいている部分です。

私たちは、創業期の限られた予算をオフィスの利用料ではなく事業にまわせるようにすることも、私たちにできる支援だと思っていますので、サービスが必要最低限になってしまう面はありますが、その分、心を込めて、スタートアップの皆さんが気持ちよく事業に集中できる環境を整えているつもりです。

立地についても利便性を感じていただいています。東京駅から徒歩5分程度で、利用できる地下鉄の路線数も豊富です。空港へのアクセスも良いので地方・海外にも行きやすいです。間違いなく日本全国でトップのアクセス性だと思います。営業に出かけやすい立地だということはもちろんですが、「立地が良いので、お客さんを呼びやすい」との声もたくさん寄せられています。

また、オフィスは固定席でお貸ししていて、人員が増える毎に、1席単位で増やすことができます。それによってときどき席替えも発生しています。コワーキングなのに固定席というのも珍しいかもしれませんね。

フリーアドレスの場合、まわりにいる人がどのような属性なのかが分かりにくいため、コミュニケーションも発生しにくい面があります。その点、固定席としている渡地たちの施設はコミュニケーションが取りやすく、特に卒業生の方からは、このようなxBridge-Tokyoの独自性を高くご評価いただいています。

 

――ジョインされたばかりの松井さんはいかがですか。気づいた点があったら教えてください。

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松井氏:そうですね。私が初めてxBridge-Tokyoを見て驚いたのは、入居者を募集するときに業種を特定の領域に絞っていないので、様々な特色を持った企業が入っていることですね。

普通の場ではお互いに出会わないような企業同士のコミュニティが生まれていることが最大の特徴だと思いました。例えば、VRの開発をしている企業と郵便転送サービスの企業の接点が生まれ、意見を交わしています。

 

――業界を絞らないのは何か狙いがあるのでしょうか。

渡部氏:確かに、業種を絞った方が、共通の話題や目的があるので、コミュニティのイメージがつきやすいとは思います。

大手町にはフィンテック、日本橋にはライフサイエンスのコミュニティがありますが、このxBridge-Tokyoに関して言えば、多様性こそが特徴だと思っていて、様々な業種の方がいらしてこそイノベーションが生まれやすいということが強みになるのではと考えています。

また、このまちにいる様々な大企業と、テクノロジーや新たなアイディア創出に強みを持つスタートアップが関わる場として、まち全体でもイノベーションが生まれるようなきっかけをつくれればと考えています。

 

――入居してくる人は、ここに出会いがあり、イノベーションが起こることを期待してくる人が多いのか、それとも場所としてここを選び、結果として何かが生まれているのか。どちらの意識が先に来ている方が多いのでしょうか。

渡部氏:どちらもあると思います。やはり作業場所は大事なので、スペースをまず求めて、という方もいらっしゃいます。

ただ、やはり「起業家同士で助け合えるようなコミュニティ」を大切にしたいので、ご入居の際には私たちから「今までのご経歴やご経験を、ぜひ入居者の方に還元していただきたい」という思いを伝えています。

一方で、『xBridge-Tokyo』を卒業されたスタートアップの皆さんが順調に成長されていることもあり、「このコミュニティメンバーの方に魅力を感じて来た」と仰る入居者の方もいらっしゃいます。そのような場ですので、最初の時点で、お互いの思いを伝え合い、知り合うことは重要なポイントだと思います。

私たちは、せっかく創業の地として選んでいただいたこのまちを好きになってもらいたいという思いがあるので、ご入居の際はもちろん、ご入居後も、このまちにたくさんある美味しいお店を紹介したり、近くで開催されているイベントにお誘いしたりと、私たちがこのまちに感じている魅力的を日々全力でお伝えしています(笑)

 

――皆さんこの場所に対する思い入れが強そうですが、どのような感覚なのでしょうか。

松井氏:私の場合、既に多くの企業が入居されてコミュニティが出来上がっている移転前の状態で入社した為、自分の立ち位置がいまいち上手く掴めずにいましたが、移転後は、1から入居者さんと話すことを始めたので、そのタイミングで愛着を感じるようになりました。入居者さんとのコミュニケーションを1から始めることで、自分もコミュニティの一員になったという感覚があり嬉しいです。

渡部氏:起業家の皆さんは、ご自身で会社を立ち上げられて、事業をされていますから、その点においては私たちよりも経験が豊富です。同じ目線というよりは、私たちの方がご指導いただく立場といった側面があります。

したがって、ご意見は真摯に伺いますし、改善のためのアイデアもいただきながら全力を尽くしてきました。ここにいる皆さんに育ててもらっている感覚ですね。ですので、この場は私のキャリアにとっても思い出深い「スタート地点」になっています。

私個人としてもですが、会社としても、この施設を通じて、これまで接点の少なかった「スタートアップ」という組織ならではの特質や関係性の在り方等、日々多くの学びがあります。私自身は学ばせていただいたことを会社に還元しながら、そしていつか、また違う形でスタートアップの方にも学ばせていただいたことのお返しをすることができればと考えています。

高津氏:私が最初にこの施設に魅力を感じたのは、こちらの渡部先輩の存在をきっかけとしています。個人的な話で恐縮ですが、私はもともとウィンドサーフィンの日本代表選手でした。日本代表選手というのは、周りからとてもちやほやされます(笑)。

しかし社会人になってからはその経験が“まったく”なくなり、この施設でみんなから頼りにされている渡部さんを見て、少し嫉妬しました(笑)。そのような姿を見て“いいな”と思い、かつての自分の経験とも重ね合わせ、いずれは自分も努力して渡部先輩のようになりたいと思っています。

 

――良いコミュニティを作るために、重要なことはなんだと思いますか。

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高津氏:私はこの施設を通じて築かれる人間関係は、仕事上のものだけではなく、その一歩先にも踏み込むものだと思っています。

私も、先日入居者の方と偶然、外でばったりお会いして、その勢いでい一緒に飲みに行ったのですが、入居者の方のお仕事のお話だけではなく、はずかしながら自分の恋愛相談にも乗っていただきました。

“友達”というと失礼かもしれませんが、仕事上の関係性よりも一歩、近づいていくと、“あの人のためにこれをすると良いのでは”と自然と思えるようになる部分が多分にあります。ビジネスだけではない感覚は、コミュニティを作るためにも重要だと思っています。

渡部氏:私たちの立場で重要なことは、常に入居者の皆さんに対してアンテナを張り、相手を知りたいという気持ちや目の前で起きている出来事に興味を持つ“好奇心”だと思います。

興味が無ければスルーしてしまうことも、好奇心と共にアンテナを張っていれば様々な情報が入ってくるようになり、その分コミュニティに対して貢献できることも増えます。反対に、私自身にも興味をもってもらえるように、積極的にコミュニケーションをとることも重要だと思っています。

 

――ありがとうございます!最後に今後のビジョンをついて教えてください。

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高津氏:今は在宅勤務が増えていますが、その中でも、たまにでも実際に会うことで、在宅では得られない“何か”が生まれることってありますよね。

そのような機会を生む場が『xBridge-Tokyo』であり、“より良いものが生まれる場”として『xBridge-Tokyo』が盛り上げ、みんながこの施設を好きになってくれることが私の目標です。そういった出会いのきっかけを作るためにも、オンラインでは生まれにくい“何か”のためにも、新たな仕掛けを考えていきたいと思います。

渡部氏:このxBride-Tokyoとまち全体の両方でどのようなコミュニティを作っていくかを考えたいと思っています。

このまちはとても面白く、歴史・文化的背景から集積している食やものづくりのコミュニティも存在しており、当社はそのテーマ毎のオープンイノベーション施設も運営しています。

テーマ別のコミュニティがいくつかあるこの街の中で、コミュニティ同士が関わる新たなコミュニティが出来るとさらに面白いまちになると思っています。例えば、食×テック等、コミュニティ同士を組み合わせることで、どのようなイノベーションを起こすことができるのかといったことを考え抜きたいと思います。

xBridge-Tokyoについては、スタートアップの方が憧れるオフィスにしたいと思っています。

のちのち「あの大きな会社も最初は『xBridge-Tokyo』に入っていたんだ」「私も入りたかった」と言っていただける施設にすることが私の目標です。引き続き「創業の思い出の地にする」というコンセプトを忘れずに、入居者の方の成長をきちんと応援したいと思っています。

何より、この『xBridge-Tokyo』を卒業したスタートアップの方が誇りに思ってくださるようなオフィスにしたいですね。

 

以上が第2回のコミュニティフォーカスです。
渡部さん、高津さん、松井さん、ご協力いただきありがとうございました。

次回も会員が気になるコミュニティについて深堀っていきます!今後のコミュニティフォーカスもお楽しみに。

( 取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき / 編集:TECH Street編集部)