【連載4】世の中に挑戦する人をサポート、「docks」コミュニティにフォーカス

f:id:pcads_media:20201028110159j:plain

こんにちは!TECH Street編集部です。
コミュニティフォーカス」第4弾をお届けします。

※本取材はリモートにて実施いたしました

「コミュニティフォーカス」とは

会員が気になるコミュニティについて、
下記3軸にフォーカスするインタビューコラムです。

  ・コミュニティ
  ・コミュニティで活躍しているヒト
  ・コミュニティを運営するヒト

「コミュニティフォーカス」第4弾は、Crewwで「docks」コミュニティを運営する小田さんにお話を伺いました。

f:id:pcads_media:20201028110229j:plain

Creww株式会社 小田健博氏


――まずは、「docks」コミュニティの概略から教えてください。

小田氏:元々、弊社Crewwのオンラインコミュニティに参加していたスタートアップのメンバーに対して、アクセラレータープログラムを展開。その際に、事業者の方から「登録後、物理的に会える場所が欲しい」という声をいただいていました。

ただ弊社自体もスタートアップ企業なので、自分たちで場所を借りて運営していくのは正直、“難しいのでは?”と思っていたところ、森トラストさんからお声がけがあったのですね。ちょうど3~4年前から、様々なディベロッパーが自社保有の空きスペースを、コワーキングスペースやシェアオフィスに変えていくという流れがあって、コミュニティを運営する弊社と施設を有効活用したい森トラストさんのニーズがお互いに合致したのです。

森トラストさんも、単純に場所を提供するだけではなく、スタートアップの企業が集まるような街、エリアにしたいという想いがあったようです。その時に、コミュニティを運営し、スタートアップの本質をしっかり理解しているプレイヤーが欲しいというニーズがあったようで、そこをちょうどカバーできるサービスを提供していた僕らに白羽の矢が立ち、お互いに無いものを埋めるかたちでの協業形態になったといえます。

2017年の11月からリアルなコミュニティスペースとしての「dock-Kamiyacho*」がスタート。現在は形を変え、オンラインコミュティ「docks」へと進化を遂げています。

*「dock-Kamiyacho」は2020年8月31日までCreww株式会社と株式会社森トラストが共同運営していたコミュニティスペースです。現在は、「Cozy Works Kamiyacho」という名称に変わっています。Crewwはオンラインスタートアップ支援サービス「docks」を提供しています。

 

――スタートアップ企業が集まりやすい場所作りの条件には、どのようなものがあるのでしょう。

小田氏:そうですね。僕らとしては、コミュニティそのものに価値を感じてもらえるような場所をつくりたかったのですが、実情としては、どうしても立地的な条件が優先されがちです。それでも、僕らの価値訴求に共感して入ってきてくれた人も一定数はいらっしゃって、彼らは僕らのスタートアップと大手企業の橋渡し役としての価値を認め、期待していたのですね。

スタートアップが通常、大手企業との事業提携や業務提携の実現を夢みてアクセスしようと思っても、紹介やドアノックしていくのにどうしても時間がかかります。僕らは過去にアクセラレータープログラムをいくつもやっていて、そういった大手の事業会社と繋がりがあります。

新規事業やオープンイノベーションを実現してきたという過去の経験から、スタートアップに対して理解のあるご担当者との繋がりがあり、適切な窓口にダイレクトで繋げることが可能です。そこに価値を感じ、そのメリットを享受したいがために「docks」に入る方々もいらっしゃいました。

そもそもCrewwの代表である伊地知が六本木のコワーキングスペースにいたとき、今では有名企業となっているスタートアップ起業家が周囲にいたんですね。

同じ空間の中に、同じように“成功したい”という目標をもっている人が集まっていると、資金調達先を紹介しあったりするような良好なネットワークコミュニティが形成されたらしいのです。

仲間意識をもって、切磋琢磨しながら成長していく環境がよかったと言っていて、そういう環境を自分たちもスタートアップの企業たちに提供したいという思いが根底にありました。

ですから、場所が綺麗とかおしゃれというのは、単なるおまけだと思っていて、そこは最低限用意すればいいという考え。日本人の特性として、コミュニティがあっても用がなければ話しかけないので、お互いに“共通の課題や目標をもっているのだよ”と認識するきっかけをつくってあげることが大事だと思っています。それを仕切るのはシステムやアプリではなく、やっぱり人なんですよね。

f:id:pcads_media:20201028110355j:plain

2017年に「docks」をスタートした当時は、オンラインでコミュニティを運営したことはあったものの、コワーキングスペースの運営やオフラインのコミュニティの経験はなかったので結構、手探り状態でした。

今もそうですが、当時、海外で流行りだしていた「コミュニティマネージャー」という職種に対する明確な定義がない中で、まずは名称をつけてみて、“ところで、コミュニティマネージャーってなにするの?”という感じで(笑)、その役割付けからはじめてみました。

僕らは、コミュニティマネージャーは、コミュニティのハブになることが役割だと考えていて、会員の人がまず相談してくれる、そして相談した内容に関して「わかりません」「できません」とは言わないのが大事だと思っています。

僕らがすべてを解決する必要はありませんが、僕らがわからなかったとしても、解決策を知っている人を紹介するべきです。なので、少なくとも「docks」のコミュニティマネージャーには、どんなことでも投げ返すことができる人を配置しています。

例えば、とあるスタートアップ企業から資金調達が上手くいかないと相談された場合、自分が持っている人脈やネットワークを駆使して解決するというコミュニティマネージャーの個人的な力にプラスして、さらにCrewwとしての組織の力をうまく使えることが特徴なのかなと思います。

僕らが全部受けて、問題をため込んでボトルネックになるのはスタートアップの企業会員にとってもったいないことです。

“オープンイノベーション”というのをキーワードにしていて、Crewwはプラットフォームとして機能しているので、その中に上手く解決できる人、すなわちコミュニティマネージャーがいて、プレイヤー同士が繋がれるシーンを作れればいいと思っているのですね。すなわち、オープンでなんでも共有しあって、良い人がいれば紹介するというスタンスでいます。

 

――「docks」に集まった人たちは、どのようなメリットを実感していたのでしょう。

f:id:pcads_media:20201028110447j:plain

小田氏:僕らはハンズオンでコンサルをするよりも、多様な機会を提供することに注力していました。基本的にスタートアップに成長する過程で必要なものとして“ヒト・金・チャンス”があげられますが、僕らもその三種の要素を「docks」でサービスとして提供しようと思っていました。

具体的な方法としては、まずはメンタリングという形でプロの方に入ってもらい、「docks」会員であれば、月に一回無料相談ができるプランを用意しました。

また、VCや起業家の先輩に壁打ちできる機会や、VCや金融機会も含めて、資金調達ができる機会も設けていましたね。マーケティングに関しても、実績のある先輩やプロの方に相談ができる機会も作っていましたし、あとは事業会社系だと簡単なマッチングサービスを作っていて、ピンポイントで紹介することも行っていました。

それは会員側のスタートアップとしても、メンタリングする側にとっても重要な機会だと思っていて、スタートアップを支援している企業は他にもあると思いますが、それゆえに“誰に相談にいけば良いのかわからない”という現状があります。「docks」にいれば、少なくともCrewwという会社が間に入っていて、良心的な価格で契約できて安心できるという点も大きいです。

また、メンター側も本来は「時間いくら」で相談にのっているので、無駄な時間は費やしたくないと思うもの。ちゃんとした人と出会いたいし、そのフィルターの役割を「docks」のコミュニティマネージャーが担っているという点に価値を感じてもらっています。要するに会員もメンターもフィルタリングされているというのは両者にとって重要だということですね。

しっかりスタートアップのシード期の企業に絞って、“スタートアップの人たちにとって最善なものは何か?”を考え抜いてメンターを選んできました。だからこそ、Crewwとしても「docks」のブランディングができて、「docks」の名前を出すとメンターの皆さんが快く協力してくれるようになったと自負しています。

>>次のページへ続く


――どのような分野のスタートアップ企業が参画されているのでしょうか。

小田氏:大体はITサービスですね。「docks」にはハードを作れるような施設がないので、アイデア勝負の企業が多い。そもそも日本のスタートアップのほとんどは、そういったタイプの企業で、世の中の身近な課題をITで解決したという起業家が多く、強いアイデアと想いを持ち、そこを形にするエンジニアがいるとプロトタイプはすぐにできちゃいますよね。それをベースにして、ゴリゴリとスキルにしていくという企業と個人が多いです。

アイデアを持っている優秀なエンジニアもいます。今は、エンジニアの方が売り手市場になっていると思いますが、エンジニアの方にもっとスタートアップに参画して欲しいし、パートタイムでもいいので参加して、サポートするなどの選択肢を知ってほしいと思っています。

とはいえ、現時点において、「docks」内で「エンジニアです」といったところで、すぐにスタートアップの企業と繋がれるかというと難しいかもしれませんが、実際、企業から人材の相談も多く、そのうちの約7割が「エンジニアがいません」「CTOいません」という内容となっています。

これは業界全体の課題にもなっていて、作っているプロダクトの精度を高めたり、サービスを拡大していきたいというときには、間違いなくエンジニアの力が必要になってきますが、スタートアップはフルタイムでお願いするほど給料は払えず、大きな補償があるわけでもありません。そういったときに副業ベース、プロジェクトベースでも入ってもらえる人が欲しいという声はあがっていますね。

 

――スタートアップにエンジニアとして参加することの魅力、自分のアイデアを形にしていく魅力というのは、どういったものでしょうか

f:id:pcads_media:20201028110726j:plain

小田氏:僕自身、Crewwに4年くらい前に入社しましたが、その当時まだ、創立6年目を迎えたスタートアップの状態で、入社するかどうかを結構悩んでいたという経験があります。ただ、世の中に挑戦する人や、スタートアップで支援するという体制をつくって、スタートアップの会社を中心に支援し、世の中をよくしよう、変えていこうという当時のCrewwのビジョンにすごく共感したことが決定打になりました。

その経験を踏まえたうえで質問にお答えするとしたら、スタートアップには、まだ世の中にないものを作れるかもしれないというワクワク感があるかと思っていて、エンジニアの方のスキルを既存のシステム改修に使うのではなく、新しいものを作ることに活かしていただきたいし、そこに魅力に感じる人は多いのではないかと思います。

また、スタートアップ企業は人数も少なく裁量も広いので、指示待ちではなく、自分で考えて、自分の権限を行使しながら色々なことができるし、形になるのも早いですよね。

そういったヒリついた感じを楽しめる方はスタートアップに行くべきだと思いますね。さらに上手くいけば、イグジットの時に上場して、株をもっていればお金に変わるよという話もありますが、大体、周囲の方の話を聞いていると、そこは重要視していなくて、ビジョンに共感している方が多い印象ですね。

 

――こういう時代だからこそ“世の中を変える”ということに、共感をもって面白く感じるのはビジネスサイドもエンジニアサイドも一緒のことということですね。

小田氏:そうだと思います。一旦入ってみて、もしも違っていれば転職したら良いと思いますし、エンジニアは力さえあれば食っていけるので、フルタイムで入る必要もなく、プロジェクトとして参加したり、副業としてスタートアップに入っていくパターンもありだと思います。

とにかくひとつの組織に属して、その中でしかスキルを使わないのはもったいない。もっとオープンに使える場所で活かしていければ、さらなるバリューを得ることができます。そういった場所があることを知っておいて欲しいですよね。

 

――このコミュニティの良さとして、周りのプロがいて志を抱き確実に目指していける場所というイメージがあります。そこに惹かれて皆さんが口コミで参加されていく感じでしょうか。

f:id:pcads_media:20201028110518j:plain

小田氏:そうですね。そこをうまく活用して上手くいった人のリファラルが多かったですね。ただ両極端で、まったく使わなくて、単に仕事場として使う人や、僕らのメンテナンスサービスを使いまくって得たものを得たらさよなら!という人も当然いるんですよ(笑)。

僕らはそれでいいと思っていて、「docks」に2年も3年もスタートアップの企業が居てはだめで、本当に腰掛でよくて、早く成長することが重要だと思っています。

 

――コミュニティの捉え方は色々ありますが、小田さんのコミュニティ論は他の方とは違って、非常にスマートな感じがしたのですが…。

小田氏:本来、スタートアップは合理的で、無駄をなるべく排除して、目指すところに最短で行きたい人が多い。僕らもその考えに則って、要らないことはしないようにしますし、最短距離でいって「docks」の役割が終わったら次へいってね、となりますね。

ただ、僕らはオンラインでもネットワークをもっているので、一旦「docks」で繋がった人が卒業した後に、そのネットワークを使いたいという相談も寄せられます。必要な時に、必要なものを提供できるコミュニティであればいいと思っていますね。ずっとコミュニティというお風呂に浸かっている必要はなくて、入りたくなったら入れば良いという感覚ですね。

僕ら経由で繋がった人たちは、卒業しても繋がっていたりもするので、それがあるから入る価値があるし、僕らもそれでいいと思っています。流動性がないと結局、滞留してしまって良いことなどひとつもありません。新陳代謝がないと、新しいところへは登れないのでじゃんじゃん入って、じゃんじゃん出ていってくださいという考えですね。

 

――今後の展望を教えてください。

小田氏:「docks」でやってきたことをオンラインでも提供していきたいと思っています。「docks」で得られた知見を活かし、もう一度オンラインに置き換えて、必要な時に必要な人と出会えるプラットフォームをオンラインで作っていくことが次のフェーズかなと思います。

それができれば、スタートアップとスタートアップに関わる人たち、そして支援する人たちで、さらにもう一層広がると思うのです。

支援者のさらに外に企業が入ってくると、割と大きなオープンイノベーションが生まれるような気がしていて、それが単なるデータベースでなく、僕らが持つ人の繋がりがベースの血が通ったプラットフォームができる、それを目指していきたいですね。

 

――ありがとうございます。最後に「docks」を一言で表していただけますでしょうか。

f:id:pcads_media:20201028110613j:plain

小田氏:「場所」でもない、「人」ですね。コミュニティは、人の集合体なので、人という「点」がコミュニティという「面」になっているイメージ。

人で活かしてもらって、人が繋がって「docks」が形成され、その中の人が繋がって色々なことが生まれている。面を構成する点は結構、変わっていますが、だからこそ面白いし、それで僕らはいいと思っています。

以上が第4回のコミュニティフォーカスです。出張中にもかかわらず丁寧にお話いただきありがとうございました!次回も会員が気になるコミュニティについて深堀っていきます!今後のコミュニティフォーカスもお楽しみに。

Creww株式会社

(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき / 編集:TECH Street編集部)