【連載 クラウド#3】クラウド型プラットフォームの特徴と選び方

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今や日常的に使われる言葉となった「クラウド(cloud)」。普段パソコンを使わないスマートフォン(スマホ)ユーザーの間でもよく使われているため、耳にする機会は年々増えていることでしょう。

そこでTECH Streetでは全5回の連載で「クラウド」について学べる記事シリーズを展開中!今回は、クラウド型プラットフォームの特徴と選び方にてついて深堀りしていきます。

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クラウド型プラットフォームとは

様々な企業で利活用がどんどん進んでいるクラウド型プラットフォーム。その一方で、物理サーバーを使用しつつクラウド型プラットフォームへの移行を考えている人も少なくないのではないでしょうか。こうした人々が導入にハードルを感じる要因の一つに「そもそも選び方がわからない」ことが挙げられます。そこでクラウド型プラットフォームの特徴と、その選び方について解説します。

まず、「プラットフォーム」の語源は「足場」「環境」「基盤」などの意味を持つ英単語。 ではクラウド型プラットフォームとは何のことを指すのでしょうか。代表例を交えながら解説します。

アプリケーション実行やデータ保存ができる基盤

そもそもプラットフォームとはアプリケーションの実行やデータ保存が可能な基盤(環境)のこと。ハードウェアや、データベースエンジン、OS(Windows、Linux、UNIX、MacOS、iOS、Androidなど)、CPUなどが該当します。 プラットフォームをクラウド上で利用することができるのが、クラウド型プラットフォームです。クラウド型プラットフォームはPaaS(Platform as a Service)とも呼ばれます。PaaSでは、インターネット回線があればどんな端末からもプラットフォームにアクセスが可能です。

Amazon Web Service、Google Cloud Platformが代表例

クラウド型プラットフォームの代表例としてAmazon Web Service(AWS)とGoogle Cloud Platform(GCP)が挙げられます。どちらもクラウドサービスのシェアを大きく占めるサービスです。 まず、Amazon Web Services (AWS) はAmazonによるパブリッククラウドサービスです。2006年から10年以上にわたる運用実績があり、日本国内だけでも100,000社以上の導入実績があります。アプリケーションやビッグデータ分析、ストレージなど、幅広いサービスを展開。サーバーサービス以外の機能が豊富な点も特徴です。APIも充実しているため運用・管理を自動化しやすいといえます。 続いて、Google Compute Engine(GCP)はGoogleによるパブリッククラウドサービスです。GCPはGoogle独自のテクノロジーがサービスの一部として提供されているのが大きな特徴です。例えば、画像認識や音声認識などの機械学習サービスAPIを利用することができます。 IoT製品から集約したビッグデータを一瞬のうちに処理できる「BigQuery」や、ディープラーニング向けサービス「Cloud Machine Learning」が利用できるため、ビッグデータ解析にも最適です。サーバーディスクの拡張をオンライン上で行うことができる点も特徴的です。サーバーの起動が速く、性能も安定しているため開発環境としておすすめのサービスと言えそうです。

クラウド型プラットフォーム活用のメリット・デメリット

クラウド型プラットフォームを活用するにあたってどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。それぞれ見ていきましょう。

社内サーバーが不要(メリット)

第一に、クラウド型プラットフォームを利用すると、社内サーバーを保有する必要がなくなります。 従来、社内サーバーを設置するためには多額の投資が必要でした。加えて、固定資産税が発生したり電力代が発生したりと、運用にも費用がかかります。また、サーバーを置くためのスペースを確保したり、メンテナンスを行うために専任スタッフを雇ったりと維持にもコストがかかります。 クラウド型プラットフォームではそれら全ての仕事をサービス提供会社が担います。そのため、サーバーを維持管理するために必要な費用を大幅に削減することができるのです。

初期費用が圧縮できる(メリット)

自分あるいは自社が保有するサーバーにソフトウェアをインストールする、従来のオンプレミス型では初期費用が高額になることがありました。しかし、クラウド型プラットフォームでは、システムを構築したりサーバーを購入したりする必要がないため、初期費用を大幅に圧縮することができます。 また、初期費用無料のサービスも多いのがクラウド型プラットフォームの特徴。必要に応じてサーバーを増やしたり減らしたりすることが可能な従量課金制となっているため、導入後もコストを最適化することができます。

オリジナル機能の追加が困難(デメリット)

従来の自社で構築するシステムやサーバーは手間がかかる分、オリジナル機能の追加が容易にできました。しかしクラウド型プラットフォームの場合は、サービスの提供元がシステムやアプリケーションをパッケージ化し、管理しているため、オリジナル機能の追加は困難です。 とはいえ、提供されているオプションサービスを利用してできるだけ最適なシステムにカスタマイズすることは可能です。また、ごく一部ですがカスタマイズに対応しているクラウド型プラットフォームもあります。

サービサー都合でサービス内容が変更されることも(デメリット)

クラウドサービスでは、サービスの提供元であるサービサーに依存しているため、サービサーの都合でサービスの内容が変更されるケースがデメリットとして挙げられます。 ユーザーが大幅に減少したり、サービス提供元の会社が倒産したり買収されたりすると、最悪の場合サービスそのものが突然終了してしまうこともあります。 また、クラウド型プラットフォームはネットワークを介したサービスのため、サイバーテロやハッキングの標的にされやすいのも事実。もちろんサービサーはその点に留意してセキュリティに注力していますが、まれにサービスに影響が出る場合もあります。 そのサービサーに信頼がおけるかどうか調べてから利用する必要があるでしょう。

クラウド型プラットフォームの選び方

クラウド型プラットフォームの概要と、メリット・デメリットについて理解したところで、次は選び方について学びましょう。

コンピューティング性能を選ぶ

クラウドという言葉を略さずにいうとクラウドコンピューティング(cloud computing)といいます。この言葉のどおり、クラウドはインターネットを通じて利用できるコンピューターだ、とも言えるでしょう。だとするなら、普段利用しているコンピューター同様、クラウドの提供するコンピューターも提供会社によって性能が違うはずです。コンピューターの性能を決定づけるものにはどんなものがあるでしょうか。一般に、「CPUの種類」や「クロック数」「コア数」などが挙げられるかもしれません。それぞれのスペックを確認しながら、使いたい内容に合わせて最適なコンピューティング性能を選ぶ必要があります。例えばAmazon Web Services (AWS) は「Amazon Elastic Compute Cloud(EC2)」、Google Compute Engine(GCP)は「Compute Engine」という名称でそれぞれコンピューティングサービスを提供しています。EC2は他のクラウドサービスと比較すると包括的にサービスを提供していると言われており、GCPのCompute EngineはCPUやメモリを細かく設定できるため、カスタマイズが柔軟だと言われています。

必要な容量のストレージのものを選ぶ

次に選ぶポイントの一つとして、使いたい量に適したストレージを選ぶことが挙げられます。データを格納するオンラインストレージの容量は業務の効率に影響するため、クラウドにとって重要な要素だと言えるでしょう。例えばGoogle Compute Engine(GCP)では「Google Cloud Storage」というストレージが使われています。また、Amazon Web Services (AWS) で利用されているストレージは「Amazon Simple Storage Service(S3)」と言い、99.99%の堅牢度を謳われていいます。使用用途によって、必要とされる容量は変わるため、事前にどの程度の容量が必要か把握した上でストレージを選ぶことは賢明です。

利用方法にあった料金を選ぶ

基本料は無料のサービスが多いクラウド型プラットフォームですが、クラウドサーバーやストレージ、データベースなどを追加利用する際には、別途料金がかかります。料金体系は大抵の場合、従量課金制となっています。例えばAmazon Web Services(AWS)、Google Compute Engine(GCP)もそうです。。とにかく安く抑えようと思えば抑えられるクラウド型プラットフォームですが、大事なのは費用のバランス。標準機能のみの場合と機能を別途追加した場合の料金を比べるなどして、実際に使用したときのシミュレーションを前もってしておくことが肝心です。 ハードウェアやサーバーの存在を気にすることなく利用できるクラウド型プラットフォーム。しかし、実際は世界のどこかにあるデータセンターに物理サーバーやストレージが存在し、運用されています。クラウドのサービス提供元企業は、このデータセンターを複数持っています。そして、データセンターが存在する分割された地域は「リージョン」と呼ばれています。クラウド上にシステムを構築する場合、この複数のリージョンの中から利用するリージョンを選ぶ必要があります。 ではどのようにリージョンを選べばよいのでしょうか。まず考える必要があるのは、システムを利用するユーザーとリージョンの物理的な距離です。できるだけ近いリージョンを利用した方が、通信のレイテンシー(遅延)は少なく済むでしょう。また、複数のリージョンを利用することも一つの方法です。システム停止リスクの回避に役立ちます。

まとめ

クラウドサービスは万能ではなく、デメリットもいくつか存在します。しかし、使い方によってはそんなデメリットを補ってあまりあるほどのメリットが生まれるサービスだとも言えるでしょう。ストレージやコンピューティング性能、料金を自由に選びつつも、面倒なメンテナンスや莫大な人的・費用的コストを削減できる点は特筆すべき点です。サービスを最大限に利活用するためにも、自分の使い方に最も適したクラウド型プラットフォームサービスを選びましょう。

今回はクラウドの基礎についてみていきましたが、次回は【連載 クラウド#4】としてクラウドと仮想化の違いを深堀りしていきます。お楽しみに!

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