【連載 クラウド#1】クラウドとは? 仕組みやメリットデメリットを解説

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今や日常的に使われる言葉となった「クラウド(cloud)」。普段パソコンを使わないスマートフォン(スマホ)ユーザーの間でもよく使われているため、耳にする機会は年々増えていることでしょう。

そこで今回の記事を皮切りに全5回の連載で「クラウド」について学べる記事シリーズを展開!今回は、「そもそもクラウドとは何か」「使うにあたってのメリット・デメリットとは何か」について分かりやすく解説します。

クラウドの代表例

まずはクラウドの基本的な仕組みや種類についてみていきましょう

クラウドの基本的な仕組み

クラウド・コンピューティング(クラウド)とは、「ネットワークに接続されたコンピューター(サーバー)が提供するサービスを、ユーザーがネットワークを経由して利用する形態」のこと。なぜクラウドという名称がついたかについては諸説ありますが、一説には技術者がネットワークを図解する際に雲の絵を用いていたことが関係していると言われています。 クラウドのサービスにはサーバーやストレージ、ソフトウェアなどがあり、ユーザーはそれらをパソコンやスマートフォン、タブレットといったデバイス上で利用することができます。クラウドが存在する以前は、情報を記録するための外付けハードディスクといったハードウェアを利用するためには購入が、ソフトウェアを利用するためにはパソコンへのインストールが必須でした。 しかし、クラウドが出現してからは、外付けハードディスクを購入したりソフトウェアをパソコンにインストールしたりしなくてもサービスを利用できるようになりました。また、インターネットを経由しているので、必要に応じて必要な分だけサービスを利用できるようになりました。

SaaS(Software as a Service)

SaaSとは、ネットワークを経由してソフトウェアを提供するクラウドサービスのこと。クラウドサービスでなければ通常はソフトウェアのインストール作業やメンテナンス、管理が必要になりますが、SaaSの場合は必要がありません。サービス・プロバイダに全て任せることができます。 SaaSの代表的な例として、ウェブベースのメールサービス(GmailやYahoo!メールなど)が挙げられますが、このクラウドサービスでもやはりメールサーバーを構築したりメンテナンスを行ったりする必要はありません。そうしたことを気にせずにメールを送受信することが可能になっています。 このようにSaaSではユーザーがソフトウェアをパソコンにインストールしていなくても、クラウドサービスのアカウントを持っていてインターネット環境さえ整っていればサービスを利用することができます。

PaaS(Platform as a Service)

PaaSとはネットワークを経由して開発環境(プラットフォーム)を提供するクラウドサービスのこと。このクラウドサービスではアプリケーションを構築・稼働できる開発環境一式を、インターネット上で使用することができます。SaaSが一般の方でも利用しやすいクラウドサービスだとすると、PaaSはシステム開発者向きのクラウドサービスだと言えるでしょう。 PaaSでは、開発環境の基盤となるハードウェアやシステムを管理する必要がありません。処理能力や容量、メンテナンスなどについて考えなくてよいことから、業務に集中しやすくなります。開発環境を整えるためのコストを省くこともできます。 PaaSの代表的なものの一つとして「Google App Engine」が挙げられます。このクラウドサービスを用いてユーザーはアプリケーションを開発し、外部に公開することができます。

HaaS(Hardware as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)

HaaS、IaaSとはインターネットを経由し、サーバーやストレージといったハードウェアレベルのインフラ機能を提供するクラウドサービスのこと。クラウドサービスを利用することで、ユーザーはサーバーやネットワーク環境などを設置したり設定したりする手間を省くことができます。 サービスはネットワークを経由して提供されるため、ユーザーは実機のハードウェアで起こり得るトラブルを回避することができます。メンテナンスやアップデートも不必要なため、管理コストが削減できます。

クラウドの歴史

「クラウド」という言葉は、2006年当時Google(グーグル)のCEOだったエリック・シュミット氏が提唱した言葉です。しかし、そもそもなぜクラウドという概念は生まれたのでしょうか。

クラウドという概念が生まれた背景

クラウド誕生の背景には、まずコンピューターの全世界的な普及があります。それまでは高価で一部の専門職の人しか使わないイメージのあったコンピューターですが、1990年代後半から2000年代初頭にかけてコンピューターの価格が大幅に下がったことにより、企業や一般家庭を問わず普及していきました。コンピューターの利用台数が増えていったため、アプリケーションやデータはWebブラウザを介してダウンロードするのが主要になっていったのです。 こうしたサービスが増えていくことで、世の中にはたくさんのサーバーが乱立するようにもなりました。そこで課題になったのがサーバーの管理・統合。この課題の解決手段こそがクラウドでした。 時代がクラウドを要請したとはいえ、普及にまで到ったのは訳があります。それはネットワークの通信速度が速くなったということです。クラウドはその性質上、ネットワークを介さないと成り立たないのです。通信速度が遅いと快適に使用することはままなりません。光回線などのブロードバンドや3G、LTEといった高速無線通信、またWi-Fiといった技術がなければクラウドは実現できず、ここまで普及することはなかったでしょう。コンピューターの普及がサーバーの乱立を呼び起こした結果、クラウドは生まれ、通信速度の進化と共に普及していったのです。

物理サーバーとクラウドの違いとは

物理サーバーは、設置するサーバー台数に見合ったスペースが必要になります。一方、クラウドは1台の物理サーバーに複数台分のサーバーを立てることができる仮想サーバーを利用しています。そのため、使うスペースが物理サーバーとクラウドでは全く異なります。この仮想サーバーがクラウドの実現を可能としたと言っても過言ではないでしょう。物理サーバー1台分のスペースでいくつもの仮想サーバーを運用することができるようになったため、乱立していたサーバーの統合を可能にしました。

クラウドのメリットとデメリット

クラウドのメリット

クラウドは、ネットワークを経由してサービスが提供されるため、従来のようにユーザーがサービスを所有する必要がありません。そのため、高額なハードウェアやソフトウェアを購入する必要もありません。必要な時に必要な機能のみ使うことができます。無料で始められるものが多く、使った分だけ支払う従量課金制のものが多いため、料金があまりかかりません。気軽に導入して試してみることができるでしょう。 システムを自分で構築するなど、定期的にメンテナンスをする手間もかかりません。全てサービス・プロバイダが担ってくれます。また、クラウドサービスは一度アカウントさえ作ってしまえば、パソコンやスマホ、タブレットなどデバイスを問わずアクセスすることができます。クラウドのオンラインストレージを利用している場合は、端末が故障してもクラウドから写真や文書データをダウンロードすることができます。さらに従来であればパソコンを使用している際、端末の保存容量を気にすることがありましたが、クラウドを利用するとクラウド上の保存領域を活用することが可能になります。

クラウドのデメリット

クラウドのデメリットとして、まずサービス停止リスクが挙げられます。例えば、自分が利用しているクラウドサービスの利用者が減少することによって、ある日突然サービスが使えなくなるケースが起こり得ます。突然サービスが停止されると、非常に困るのではないでしょうか。クラウドにはこうしたクラウドならではのデメリットがあります。他にも、サーバーの安定性がサービス・プロパイダのサービスのレベルに依存するため、レベルが低い場合はサーバーダウンが頻繁に起こることもあるでしょう。 また、非常に大きなデメリットとして、セキュリティ面の問題が挙げられます。クラウドはその性質上、一つのシステムを幾人ものユーザーで共有するため、アクセス権のある他のユーザーから自分の個人情報が漏れる可能性があります。また、クラウドには様々な機密情報が含まれるため、ハッキングなどのサイバー攻撃の対象になりやすいのも事実。データの漏えいリスクは見過ごせません。もちろんセキュリティ対策は各提供会社がしていますが、会社によってそのレベルはまちまち。ひとたび攻撃を受けるとサービスそのものが使用できなくなったり、個人情報が漏えいしたりすることもあります。 これらのリスクを減らすためには、しっかりとした運営元のクラウドサービスを選ぶことが求められます。現代のビジネスにおいてなくてはならないクラウド。安心して利用できる環境で活用するようにしましょう。

まとめ

クラウドは私たちの生活をより便利なものにしてくれています。通信速度が速くなれば、クラウドを活用する場面も増えていきます。通信技術の発達に伴い、今後クラウドはより生活にとってなくてはならないものとなっていくことでしょう。

今回はクラウドの基礎についてみていきましたが、次回は【連載 クラウド#2】として「SaaS」「PaaS」「IaaS」3種類のクラウドサービスとその代表例を紹介していきます。お楽しみに!