【連載 クラウド#2】「SaaS」「PaaS」「IaaS」3種類のクラウドサービスとその代表例を紹介

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今や日常的に使われる言葉となった「クラウド(cloud)」。普段パソコンを使わないスマートフォン(スマホ)ユーザーの間でもよく使われているため、耳にする機会は年々増えていることでしょう。

そこでTECH Streetでは全5回の連載で「クラウド」について学べる記事シリーズを展開中!今回は、今知っておくべき「SaaS」「PaaS」「IaaS」3種類のクラウドサービスについて深堀りしていきます。

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クラウドの代表例

サービスの種類は大きく分けて「SaaS」「PaaS」「IaaS」の3つに分類されます。クラウドという言葉はよく使っていても、SaaSやPaaSといったクラウドの種類の違いを完全に理解できないない方もいるかもしれません。この記事では、3種類のクラウドサービスがそれぞれどのようなものなのか、代表例を比較しつつ詳しく解説します。

クラウド上で提供されるソフトウェアSaaS

「SaaS」は「Software as a Service」の略。「サース」と呼称されます。名前にある通りクラウド上で提供されるソフトウェアのことを指します。今までパッケージとして提供されていたソフトウェアも近年ではSaaSに移行しつつあります。どんなサービス形態で、どんなサービス例があるのか見てみましょう。

ユーザーが手軽に利用できるサービス形態

SaaSは、従来パッケージとして提供されていたソフトウェアを、インターネットを通じてサービスとして提供・利用する形態のこと。SaaSではコンピューターにソフトウェアやアプリケーションをインストールせず、インターネットを経由してサービスを利用できます。 インターネットを経由するため、コンピューターやスマートフォン(スマホ)、タブレットなどデバイスを選ばずサービスを利用することができます。そのため、複数のユーザーが同一データを共有することが可能です。更にアップデートも自動で行われるため、手間がかかりません。 料金設定のほとんどは月額定額制であったりアカウント単位であったりと、利用状況に合わせて支払うスタイルが一般的です。基本機能は無料で拡張機能に課金する料金設定のサービスも多く存在するため、ソフトウェアの導入のハードルが低く、比較的手軽に利用することができます。

Google Appsなどが代表例

Webメールや社内コミュニケーションツール、業務管理に役立つソフトウェアなどさまざまなサービスがあるSaaS。代表例をいくつか見てみましょう。 まずGoogle AppsはGoogleの提供するツールがセットになったオンラインアプリケーションパック。パブリッククラウドサービスの代表格とも言えるでしょう。使いやすいWebメールとして定評のある「Gmail」、スケジュール管理ができる「Googleカレンダー」、オンラインストレージの「Googleドライブ」といったアプリケーションがパッケージされています。どれもインターネットを通して使用するサービスのため、万が一端末を盗難されたり、破損したりしてもすぐに新しい端末にバックアップを復元可能です。 組織で使用する場合は、テキストチャットやビデオチャットが行える「ハングアウト」を使うことでコミュニケーションを活発化し、業務を効率よく行うことができます。その際「Googleカレンダー」や「Googleドキュメント」といった他のアプリと組み合わせることで、さらに利便性は増します。例えば、ハングアウトでビデオチャットをした後、話の内容をGoogleドキュメントに文書として保存することができます。こうした組み合わせによって業務を効率化できるのがGoogle Appsの強みです。 さらに、ビジネスコミュニケーションツールとして比較的有名なSaaSに「Slack」と「Chatwork」があります。どちらもチャットツールとしてビジネスシーンでよく使用されているものです。チャットツールはメールよりも短い文章で素早く会話することができるのが特徴。もちろん画像ファイルや文書ファイルといったデータのやり取りもスムーズに行うことができます。Slackは、Twitterなどの各種SNSやGoogleカレンダーと連携も可能です。UIを自分好みにカスタマイズできるため、自分の使いやすい形に変えられると高く評価されています。

プラットフォームをクラウド上で提供するPaaS

「PaaS」は「Platform as a Service」の略。「パース」と呼称されます。名前の通りプラットフォームをクラウド上で提供するサービスのことを指します。PaaSのサービス形態やサービス例を見ていきましょう。

OS、サーバーをパッケージで利用できるサービス形態

PaaSはソフトウェアやアプリケーションを稼働させるためのプラットフォームを、インターネットを通じてサービスとして提供・利用する形態のこと。 具体的には、OSやサーバーなどといったデータベースやプログラム実行環境が提供・利用されています。さらに細かく見ていくと、システム開発に欠かせないアプリケーションやデータベース管理システム、WebサーバーのOSなどといったソフトウェアがそろっているため、開発者におすすめの快適な環境だと言えます。 PaaSは、開発途中のソフトウェアやアプリケーションをテスト稼働させる場として利用することもできます。開発者はプラットフォームにかかるコストを抑えつつ、システム開発に注力することができるので、その利便性は非常に高いと言えます。

Google App Engine、Microsoft Azureが代表例

現在提供されているPaaSのサービスの中で代表的なものとして、「Azure Web Apps」と「Google App Engine」が挙げられます。それぞれの特徴を比較してみてみましょう。 Azure Web Appsは、Microsoftが提供するクラウドサービス「Microsoft Azure」に含まれるPaaSです。仮想マシンを利用できる「Virtual Machines」をはじめ、Webコンテンツをホスティング可能な「Azure Webサイト」と幅広いサービスが魅力的です。開発用言語として.NET、Java、PHP、Pythonなどを使えます。また、Microsoftが提供元のため、OSとしてWindowsサーバーを選べるのが特徴です。 Google App Engineは、Googleが提供するクラウドサービス「Google Cloud Platform」に含まれるPaaS。10年以上の運用実績があるのが何より安心です。標準環境のほかに、CPUとメモリのサイズをアプリケーションに合わせてカスタマイズすることができるフレキシブル環境というサービスが備わっています。Microsoft Azureと同様、JavaやPHP、Pythonといった言語を使用することができます。開発したWebアプリケーションはインフラの上で動作させることができます。 使用する言語やOSに多少の違いはあるものの、両者とも開発者が使いやすい環境、サービスが備わっています。

開発インフラを提供するIaaS

「IaaS」とは「Infrastructure as a Service」の略。「イアース」もしくは「アイアース」と読みます。名前にある通りクラウド上で提供されるインフラのことを指します。サービス形態やサービス例を見ていきましょう。

インターネット上で開発環境を構築できる

IaaSとは、システムの稼動に必要な仮想サーバやハードディスク、ネットワークといったインフラを、インターネットを通じてサービスとして提供・利用する形態のこと。このサービスでは、従来のオンプレミス型プライベートクラウドのようにサーバーを購入、設置し運用する必要はありません。 必要なOSやCPU、メモリ、ストレージなどのスペックを自分で自由に選定して、ネットワーク越しにリモートで構築することが可能です。そのため、スケールアップしたい場合も柔軟な対応が可能です。料金も自分で設定したスペックに応じたものとなるため、無駄な費用が発生することもありません。自由度が高い一方で、ユーザーにはOSやハードウェア、ネットワークの知識が求められるのがデメリット。もちろんセキュリティの対策についても考えなければなりません。

AWS、Microsoft Azureが代表例

IaaSの代表例としてあげられるのが Amazonが提供する「Amazon Web Services(AWS)」、Microsoftが提供する「Microsoft Azure」です。それぞれの特徴を比較してみましょう。 Amazon Web Services(AWS)は、Amazonによるクラウドサービスです。2006年から10年以上にわたる運用実績があり、日本国内だけでも100,000社以上の導入実績があります。運用実績から政府関連機関でも利用され、今は金融系企業のシステムでも利用されています。 AWSはユーザー数が多く、個人が使用する中で培ったノウハウを共有するサイトもたくさん存在するため、比較的導入しやすいと言えます。また、サーバーサービス以外の機能が豊富な点も特徴です。また、APIも充実しているため運用・管理を自動化しやすいと言えます。AWSの「Amazon Simple Storage Service(S3)」と呼ばれるストレージは「99.99%の堅牢度」とされています。非常に高度なセキュリティを持ったストレージサービスと言えそうです。 Microsoft Azureは、Microsoftによるクラウドサービスです。Web AppsやMobile Appsなど、アプリケーション型のPaaS機能が充実しているのが特徴です。また、Windows ServerやSQL Serverをそのままクラウドに移行しやすいのも特徴の一つ。他社クラウドサービスの違いとして、AWSは米ドルのみの請求となるのに対し、Microsoft Azureは日本円での支払いが可能な点が挙げられます。そのため、為替相場の影響を受け、支払い金額が変動するリスクを避けることができます。また、データセンターの場所を意味する「リージョン」の多さも特長の一つ。アジア、アメリカ、アフリカ、中東、ヨーロッパなど50を超えるリージョンが存在します。災害時には、平時に設定しておいた復旧計画をワンクリックで起動させるだけで、Azure上の仮想マシンが稼働します。

まとめ

一言にクラウドサービスといっても、SaaS、PaaS、IaaSと大きく分けて3つの種類があり、特徴は異なります。サービスを提供している企業は増加傾向で、内容も細分化しています。導入のハードルが低いぶん、いろいろなサービスを比較検討しやすいのもクラウドサービスのメリットの一つではないでしょうか。それぞれの特徴やメリット、デメリットを理解したうえで活用してください。

今回は「SaaS」「PaaS」「IaaS」という3つのクラウドービスについて紹介しましたが、次回は【連載 クラウド#3】としてクラウド型プラットフォームの特徴と選び方を解説します。お楽しみに!

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