【クラウド 連載#5】クラウドとの違いとは?エッジコンピューティングの概要とメリットについて紹介

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今や日常的に使われる言葉となった「クラウド(cloud)」。普段パソコンを使わないスマートフォン(スマホ)ユーザーの間でもよく使われているため、耳にする機会は年々増えていることでしょう。

そこでTECH Streetでは全5回の連載で「クラウド」について学べる記事シリーズを展開中!最終回はエッジコンピューティングの概要とメリットについて深堀りしていきます。

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エッジコンピューティングとは

現代は、クラウドサービスを用いて様々な処理を行うことが主流となっています。一方で、これからのIoT時代では、より膨大なデータを高速処理することが求められており、クラウドでは処理しきれないケースもでてきました。そこで解決策として注目を浴びているのが「エッジコンピューティング(edge computing)」です。この記事ではエッジコンピューティングの概要やメリットなどについて解説します。

「端」を意味する名前が付けられたエッジコンピューティング。一体どんなものなのでしょうか。見てみましょう。

エッジコンピューティングの基礎知識

エッジコンピューティング(edge computing)とは、モバイル機器などのデバイスやユーザーの近くにサーバーを分散配置し、処理を行うコンピューティングモデルのこと。このコンピューティングはエッジ処理とも呼ばれます。ユーザーや端末のできるだけ近くでデータ処理することで、インターネットにつながるIoT機器の情報をオンタイムで処理することを可能にします。そのため、上位システムへの負荷や通信遅延を解消することができます。 似た言葉としてフォグコンピューティング(fog computing)という言葉が存在しますが、基本的な考え方はエッジコンピューティングと同じです。エッジコンピューティングはその名の通りネットワークの「端」で実行される処理のことを指しますが、フォグコンピューティングはエッジ端末そのものと、クラウドとのネットワーク接続のことを指します。

クラウドコンピューティングとの違い

クラウドコンピューティングは、複数のサーバーを統合して処理する「集中処理型」。一方、エッジコンピューティングは、ネットワークにつながったデバイスにおいて情報を処理したり、ネットワークにサーバーを分散配置し処理を行う「分散処理型」だと言えます。

誕生の背景(IoT導入に重要な技術)

IoTが普及した現代は、あらゆるモノがネットとつながるビッグデータ社会です。このビッグデータ社会において大量のモノから集約される膨大なデータすべてをその都度クラウドに集約することは、困難です。 いかにクラウドに拡張性の高いリソースがあると言えども、インターネットを経由してデータを送り、処理して戻すというプロセスでは若干のタイムラグが生じてしまいます。クラウド側のリソースがいくらあっても到底処理は追いつかないでしょう。 結果、このビッグデータ社会において「エッジコンピューティング」の技術が必要となりました。扱うデータの量が増えているのに比例して、処理のスピードとレスポンスのレベルも高いものが要求されているというわけです。

エッジコンピューティング実装のメリット

エッジコンピューティングを実装することで得られるメリットにはどのようなものがあるか見てみましょう。

膨大なデータを効率よく処理できる

エッジコンピューティング実装のメリットの一つは膨大なデータを効率よく処理できることにあります。従来のクラウドサービスではデータを転送・処理する場合にネットワークが遅延したり障害が起きたりすることがありました。すなわち、レスポンスタイムが発生したり転送にかかる通信コストが膨らんだりしていたのです。そうするとIoTのデータ処理に欠かせないリアルタイム性は失われてしまいます。 しかしエッジコンピューティングではそうした遅延や障害はありません。なぜならユーザーやデバイスの近くでデータを処理することができるからです。

障害発生時のBCP対策となる

サーバーを統合・集約しているクラウドコンピューティングの場合、万が一クラウドサービスがダウンすると、そのダメージは大きいものとなります。なぜなら、サービス提供元がクラウドサービスの復旧を終えるまで、データにアクセスすることができなくなってしまうからです。 一方、エッジコンピューティングの場合は、クラウドサービスに故障が生じた場合も影響を受けることはありません。データを収集するデバイスから最も近いエリアのエッジを一定時間稼働させることができるためです。有事の際に備えてあらかじめ継続すべき事業にエッジコンピューティングを導入しておくとBCP(事業持続計画)につながると言えます。

AIプラットフォームにも採用されているクラウドコンピューティング

エッジコンピューティングは近年AIプラットフォームに採用されています。クラウドとエッジの関係性やエッジAIの求められるシーンについて見てみましょう。

クラウドAIとエッジAIの違い

クラウドAIでは人工知能(AI)に必要な処理を、クラウド上で行いますが、エッジAIでは端末側で行うという違いがあります。クラウドAIは処理をクラウド上で行うため端末側の負荷が少なく、多様な利用環境を提供できます。そのかわり、データの即時処理には向いていません。一方エッジAIはデータをリアルタイムで処理する必要がある場合に向いています。

エッジAIが求められるシーン(ケース)

エッジAIが求められるシーンとして挙げられるのが、自動車における自動運転システムです。自動運転システムでは前方の車体や周辺の歩行者などをAIが画像認識し、危険だと判断した際に停車するなどの動きをします。前方の車体が急発進したり、歩行者が飛び出したりする瞬間はほんの数秒。データの処理速度が運転者の命を左右します。そのため、端末付近でデータ処理が可能なエッジAIが求められています。 他にも自動運転のパラメータの調整も必要です。例えば自動車のタイヤが摩耗している場合は、自動車の運動形態も変化します。即座に学習しなおす必要があるでしょう。 工場での製造ラインの機械制御の場合、秒単位でのレスポンスが要求されます。機械の不調や異常をAIで早期発見することができなければラインを強制停止することになり、莫大な損失を生みかねないからです。エッジAIを導入し、機械が経年劣化で異常を起こす前に予測し、メンテナンスを行えるようにする必要があります。 このようにリアルタイムで処理が必要なところは、現場に最も近い場所で処理が可能なエッジAIが求められます。

クラウドとエッジ 両技術の組み合わせも可能

クラウドとエッジの両技術のメリットを生かし、役割を分担した上で連携させて利用することが可能です。例えば、まずクラウド側にデータを転送し、GPU(Graphics Processing Unit)によって学習済みモデルをつくります。そしてそのモデルをエッジ側のデバイスに実装すれば、リアルタイムに流れる現場のデータから、予測や判定を行うことができます。 GPUを使った学習済みモデル制作は、ディープラーニング(DeepLearning=深層学習)の代用となります。この場合、行列計算を行うディープラーニングより並列分散処理に向くGPUを使うことで仕組みを機能させています。 実際、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)やIBM、Microsoftなどの大手ITベンダーはこうしたクラウドとエッジの連携に取り組んでおり、自社プラットフォームをユーザーに提供しています。

まとめ

エッジコンピューティングは先に挙げた自動運転車のみならず、医療や製造業、農業などの業界でも活躍が期待されています。例えば、顔認証を行うことで立ち止まることなく入退ゲートを通過できる、NECの「ウォークスルー顔認証装置」でもエッジコンピューティングの活用が検討されています。より高度に進化したデバイスが世の中に増え、IoTが発達していくのと並行して、エッジコンピューティングの必要性も拡大していくことでしょう。

今回で【クラウド連載】シリーズは終了。クラウドについてしっかり学べましたでしょうか?TECH Streetでは今後も1つのキーワードについて深堀りし、学べるコンテンツを配信していきますのでお楽しみに!

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