こんにちは!TECH Street編集部です。
連載企画「ストリートインタビュー」の第52弾をお届けします。
「ストリートインタビュー」とは
TECH Streetコミュニティメンバーが“今、気になるヒト”をリレー形式でつなぐインタビュー企画です。
企画ルール:
・インタビュー対象には必ず次のインタビュー対象を指定していただきます。
・指定するインタビュー対象は以下の2つの条件のうちどちらかを満たしている方です。
“今気になるヒト”紀平さんからのバトンを受け取ったのは、株式会社リクルート エンジニアリングマネージャー 兼 ニジボックス デベロップメント室 室長の古川 陽介さん。
ご紹介いただいた紀平さんから「古川さんは、ひとつのことを極めたエンジニアとしても面白いですし、マネージャーとしてリクルート社に10年近くいらっしゃって、特に若い人たちのモデルケースになる人だと思っています。ひとつの業界において、影響力を持っていて、かつマネージャーとしてCTOクラスとしてリクルートで活躍されていらっしゃるので、その2つの観点から、私にはない知識量と経験量をお持ちです。私自身、毎回、お会いするたびに新しい刺激をもらっていますので、きっと面白いお話がきけることと思います。」とご推薦のお言葉をいただいております。
古川 陽介 さん
株式会社リクルート エンジニアリングマネージャー / ニジボックス デベロップメント室 室長
シニアソフトウェアエンジニア。Node.js 日本ユーザーグループ代表。Node.js evangelism WG/node.js collaborator/Chrome Advisory Board/TechFeed公認エキスパート。
エンジニアとしての古川さんの原点
ーーまずは、現在の古川さんを形作る原点をお聞かせください。
古川:子どもの頃からガンダムやエヴァンゲリオンなどのロボットが好きで、またその当時(2000年)は、本田技研がASIMOを開発した時代だったこともあり、自然とロボットには強い興味を持っていました。
その後大学では、情報科学科を選択し、ソフトもハードも満遍なく勉強しました。ロボットを研究している研究室もあり、最初は興味を持ちましたが、工場で使われるような産業用ロボットには興味はなく、アトムやエヴァンゲリオンのような、心を通わせられるロボットの方に興味があったので、そういったものを作るには情報処理やデータ系の研究した方が良いだろうと考え、情報検索をしている研究室を選びました。
ーーその研究室ではどのような研究をされていたのでしょうか。
主に画像認識や画像検索の研究をしていました。例えば、着物の模様を認識させて、近しい着物を検索したり、石油系の会社と提携していたので、その会社から提供された地層データを解析して「その地層パターンから石油が出るかでないか」を判定するなどしていました。
富士ゼロックス社に入社し、文書管理システムの開発を行う
ーーその後、社会人になりどのような会社に入社されたのでしょうか。
大学で画像認識や画像検索の研究をしていたので、それを活かせる会社を探しました。その結果、選んだのが複合機メーカーである富士ゼロックス(現:富士フイルムビジネスイノベーション)です。
当時の富士ゼロックス社は、「人類の知識は文章に残っているため、その文章をいかに検索しやすくするか・共有しやすくするかが、富士ゼロックスの使命である」と言っており、それは私の研究内容とも近く親和性の高さを感じたので、就職先として選んだのです。
ーー富士ゼロックス社では、どのような仕事をされたのでしょうか。
文書管理システムを作り、その検索エンジンを作ったり、データベースの設計などを行いました。文書管理システムとは、今で言う「富士ゼロックス版のGoogleドライブ」のようなものを作っていた感じです。
また、お客様から「文書管理システムの検索速度が遅くなったから見てほしい」というような依頼を受け、その対応もしていました。
UI改善でお客様がとても喜んでくれたのが転機となり、Node.jsの道へ
ーーその後、転機となったことはありましたか。
それまでバックエンド側から、検索速度の改善やシステムのパフォーマンス調査など、お客様の要望に応えていましたが、あるとき、お客様のところのGUIやフロントエンド側の刷新を行いました。そしたら、それがお客様にとても喜ばれたんです。
今までやっていたバックエンド側の改善とは異なり、GUIやJavaScriptを用いたUIの改善はお客様から見える部分なので、それがダイレクトにお客さんの喜びにつながることに気付きました。この出来事がきっかけで、JavaScriptを本格的に勉強しようと思ったのです。
ーーJavaScriptを勉強しようと思い、どのようなアクションを起こしたのでしょうか。
「Node.jsを触りながら最先端のUIを勉強したい」と思うようになりました。というのもNode.jsはサーバーサイドでJavaScriptを書けるものだったので、今までバックエンドをやっていた自分としては馴染みがあり、いきなりUIをやるよりも、一度Node.jsでJavaScriptに慣れながらその過程でUIを作る、という流れでやろうと考えたのです。
また、ガラッと環境を変えたい思いもあったので、このタイミングで転職を決意しました。
DeNAに入社し、障害発生時の向き合い方を学ぶ
ーーNode.jsが使える環境を探して、どのような会社に入社されたのでしょうか。
Node.jsを使って働ける会社はたくさんありましたが、その中でもDeNAに入社しました。
DeNAを選んだ理由の一つに、今までオラクルやJavaでアプリケーションを作っていた環境から、OSSを基準として開発するなど、社内で開発の仕方をガラッと変えた時期だったので、私もその変革を経験してみたいと思ったからです。
ーーDeNAではたらいてみていかがでしたか。
前職までは、ずっとバックエンドしかやっておらず、フロントエンドは、プライベートのみでしたが、DeNAでは、フロントエンドもバックエンドも両方やらなければならないサービスが多かったため、私自身、かなり鍛えられたと思っています。
また、DeNAでは障害が起きた際に、「なぜその障害が起きたのか」という振り返りを必ずしていて、「次はどうすればいいのか」ということを必ず考えています。
例えば、障害の原因も、プログラミングの1〜2行の変更ミスだったりしますが、なぜその変更ミスが起きたのか深掘りすると、「仕様の理解不足」や「コミュニケーションの伝達ミス」「デプロイのときの確認ミス」などで起きています。それを1つ1つみんなが認識していくことで、障害発生率を0に近づけていきました。
最終的にDeNAには3年半ほど在籍し、ゲームを作ったりしていて、モバゲーの中のサービスの障害対応などをしました。
フロントエンドブーム時にリクルート社に入社
ーーDeNAの後、現在のリクルート社に入社した経緯を教えてください。
私がリクルート社に入ろうと思ったきっかけは、「フロントエンドの専門組織で一緒に働きませんか」とお声がけいただいたのが大きな理由です。
私がリクルート社に入社した、2015年頃はフロントエンドのReactやTypeScriptなど革新的な技術が誕生し、フロントエンドブームのようなものが起こっていました。その背景から、多くの企業がフロントエンドの技術に注目するようになり、リクルート社も専門的な組織があった方が良いと考えるようになりました。また、当時、私はNode.jsのユーザーグループの代表もやっていたので、適任だと感じて、私に声をかけてくれたのだと思います。
ーーその後、リクルート社でのキャリアの歩みや現在の役割を教えてください。
私が入社したときは、そのフロントエンドの専門組織は3名しかいませんでしたが徐々にメンバーも増えて10名ほどになり、私はグループマネージャーとしてチームをまとめるようになりました。
また、少し話が脱線してしまいますが、現在はリクルート社の子会社である株式会社ニジボックスという会社で、デベロップメント室の室長も兼務しています。そこは100名ほどいる大きな組織です。
リクルートにはたくさんのアプリがあるため、すべてのアプリを社内で内製しているわけではありません。内製エンジニアと業務委託のハイブリッド体制が現状なのですが、その業務委託としてニジボックス社が携わっています。そのため、ニジボックス社を強くすることはリクルート社にとっても大きなメリットです。
現在の私の役割として、リクルート社が要求するような、フロントエンドとして実力の高い社員の方々を採用し、育成してアサインする、ということがメインミッションです。
ーーどのように採用した社員を育成したり、組織づくりされているのでしょうか?
ReactやTypeScriptなどの専用の研修メニューを作って育成したり、入社した社員がすぐに戦力になるのは難しいので、3人1組になってOJT体制を作りながら、うまく開発ができるようにしています。そのようなOJT体制を作ることで例えば、その中で1人が離任したとしても、また1人採用すれば万全な体制が作れるように体制を整えています。
エンジニアの勉強会に参加して「楽しみながら学ぶ」を実践
ーーそのような育成や組織づくりのノウハウは、どこで学ばれたのでしょうか?
ほとんど勉強会で学んだことがベースです。LT大会などで学んだことを「発表して、共有して、雑談する」など楽しみながら学んでいます。
勉強会以外でも、開発合宿などを行ってグループでアプリを作ったり、エンジニアだけが分かるクイズ大会のイベントも行いました。共通して「楽しみながら学ぶ」というのが私の好きな方法なので、そのやり方を実践しています。
ーー外部活動や勉強会へ参加し、楽しみながら学ぶのはエンジニアにとって大切ですね。
もちろん社内でキャリアを積んだり、勉強し続けるということも可能だと思います。実際に「勉強会に行く時間があれば自分で勉強すれば良いのでは」と仰る人もいます。もちろん、そういう人がいてもいいとは思いますが、私は同じことをやっている仲間を見つけたり、新しい発見をするというのは勉強会でしか出来ないことだと思っているので、そういう意味でも、参加することに大きなメリットがあると感じています。
ーー古川さんの今後のビジョンを教えてください。
Node.jsのユーザーコミュニティ活動については、これからも代表として継続していきたいです。
チャレンジしたいことは、まだ漠然としていますが、現在は会社の経営などにも携わっているので、これまでやってきたNode.jsのコミュニティ活動と経営の経験が繋がる、なにかしらの活動がしたいと思っています。
仕事を義務感でやらずに、見方を変えて、自分が楽しく思う方法を見つけて欲しい
ーーありがとうございました。最後に、これからの時代にエンジニアとしてどのように立ち回るべきか、読者に向けてメッセージをお願いします。
まずは楽しんでほしいですね。エンジニアは次から次へと新しいことに直面しますが、それを義務感でこなしていては楽しめません。なので、どこかに楽しみを見つけて欲しいです。ミクロで見たり、マクロで見たり、いろいろな見方をするのが良いと思います。しんどくなったら違うやり方で、自分が楽しく思う方法を見つけてほしいです。
私はもともとエンジニアなので、例えばコードを書いたりしていると、それはそれで楽しいのですが、今は経営やマネジメントという仕事もあり、人の成長を見るのを楽しんでいます。どんどんチャレンジすることで楽しみ方も広がっていくと思います。
ーー貴重なお話をありがとうございました。それでは、次回の取材対象者を教えていただけますか。
向井咲人さんを推薦します。若手だと思っていたらあっという間に技術組織を牽引するような立場になり、キャリアの話を聞いてみたいと思ったためです。
あとよくイベントで一緒になるのですが、毎回技術の話ばかりしててキャリアの話は聞いたことがないなーと思ったからですね。
以上が第52回 古川 陽介さんのインタビューです。
ありがとうございました!
今後のストリートインタビューもお楽しみに。
(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき / 編集:TECH Street編集部)
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