採用1年目の失敗からの学び、パーソルキャリア・テクノロジー組織づくりの歴史と今後のビジョン

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“一人ひとりがいい意味でお節介です。枠を作らないで活動できる人たちの集まりがこの部署ですね──。”

今回はTECH Street(テックストリート)始動に際して、運営元であるパーソルキャリア株式会社のデジタルテクノロジー統括部が人やデータ、テクノロジーに対してどう向き合っているのか、マネージャーである斉藤孝章氏とシニアエンジニアの清田馨一郎氏に話を聞いた。

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斉藤 孝章氏(さいとうたかあき)写真右
デジタルテクノロジー統括 事業開発 / R&Dマネジャー
現在パーソルキャリア(旧インテリジェンス)で「人と組織の成長創造インフラ」実現に向けた、データ活用組織の構築及びデータ戦略部門の責任者として日々悪戦苦闘中

清田 馨一郎氏(せいだけいいちろう)写真左
デジタルテクノロジー統括 データ&テクノロジー ソリューション エンジニアリングシニアエンジニア
2014年に株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)へ入り、現在は、ビジネスに機械学習を活用するプロジェクトのアーキテクト・開発者として、企画からサーバ保守まで従事。

チームの概要・歴史について

――まずはデジタルテクノロジー統括部のミッションからお聞かせください。

斉藤孝章氏(以下、斉藤氏):デジタルテクノロジー統括部は、データとテクノロジーを活用して価値あるものに変えていくといったことをミッションにしている部署です。具体的には社内の売上貢献、工数の削減や効率化を図ります。データと分析の仕方、そのアルゴリズムなど、本当に新しいテクノロジーとして全然違う基盤を作りこみ、それを社内のみならず、社外に発信。新しいビジネスを創造することも期待されています。人材業、HRの業界のデータは与信に近いデータなので、データとしての価値が高い。そういった部分をビジネス化しています。

――パーソルキャリアは人材の会社としてやってきました。そういう中でなぜこのような組織が生まれてきたのでしょうか?

清田馨一郎氏(以下、清田氏):マーケティング本部の中にCRMチーム、カスタマーリレーションシップマネジメントチームがあって、ユーザーの行動ログや社内データを見て、マーケティング活動をしようというのがそもそもの発端でした。その中からちょうど2013年頃に、データを使って何かしようという世の中的な動きが出てきました。そこで、データを活用する専門チームを作ろうというマーケティング本部の動きがありました。その時に元々CRMのデータをやっていた人たちと、機械学習をずっとやっていてそれを使いたいという人が社内にいて、ちょうどいいタイミングで一緒にチームができました。

私はそれができる前にエンジニアチームに入っていて、たまたま独学で機械学習もやっていました。そして、エンジニアリングとしてサポートしてほしいということで、そのチームで活動していました。さらに、マーケティング本部だけではもったいないから、もっと大きく、上段に組成を持っていって、全社的な活動をするためにコーポレート本部に一部のメンバーが移動したんですね。そこから活動範囲を全社に広げていって、対象となる幅も広げていきました。

――社内の状況はよく分かりました。一方で、社会的な流れを見極めつつ、どのようにビジネスにしていこうと考えていたのでしょうか。

清田氏:データが大事だという雰囲気は感じていましたし、それを扱える部門があるということ、さらにビジネスとデータを融合したいという社員がいて、一つひとつ案件をこなしているうちに何か形になりそうだというのは感じていました。そこで、さらに活動範囲を広げようということになりました。

結局、実績ができたというのが、大きなポイントになったのかなと思います。データ分析をしても、結果が出なければ、恐らくこういった大きい組織にはならなかったと思います。小さくても実績が出たので、これを広げて全社に適用してもいいのではないかという判断が経営層であったのだと思います。

――2013年ごろにマーケティングとCRMでデータを活用しようという機運がありました。それから6年経って、今ではデータの取り扱いや捉え方が大きく変わっているというイメージがあります。2013年の時点で御社が取り組んだ頃は先進的で、最近になって時代追い付いてきたという感覚でしょうか?

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清田氏:2013年頃は先進的な活動でしたが、あっという間に世の中的には当たり前のレベルになってしまいました。技術、社内の人材も含めて、2013年、2014年では先進的だったのでアウトプットもできましたが、今はもう当たり前の世界になってしまっていて、逆にもう古いと言われてしまいます。

斉藤氏:そして2016年頃には「やっぱりデータは大事だ。色々な所から話を聞くと社内はどうなっているのか」という経営陣からの期待値も大きくなってきました。データに何か価値ありそうだと。人材は与信に近いデータです。月に何万件も登録して頂いて、人もいる。何かできないのか?という状況でした。そのタイミングで、この組織を見てほしいということで私がアサインされました。

――何から考え、実行したのでしょうか。

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斉藤氏:まず、よく話をしましたね。どんなことを考えていて、どんな組織にしていきたいかというのを本当によく、毎日議論ばかりしていましたね。その時点では、何もできていなかったというのが正直なところかなと思います。今でこそある程度の形にはなってきましたが、その時にどんな可能性があるのかはその時のメンバー、中にいる私達ですら半信半疑でした。

何かできるかもしれないけど、フロント側である企画、現場の人が課題に気付かないと何もできません。そういう部分の設計がそもそもされていませんでした。どうやって仕事を取ってくるのか、営業戦略に近いものを初めに作っていたという感じです。社内の状況を見極めることは必要でした。

――まずは社内のシステムを整理していったということでしょうか。

清田氏:今までは外注をしていて、自分たちで作るという文化はありませんでした。自分たちで作って運用する体制がないので、それをどう自分たちでやっていくかというところも問題でした。他の情報システムの世界でも、フロントや企画も社内で作って提供されるという感覚がないので、自分たちで一緒に物を考えて作っていくという感覚がその当時はありませんでした。課題を見つけてそれをどう改善していくかというのも大きかったです。

自分たちがやりやすいように立場を含めて変えていくというアプローチもありました。社外には色々なベンダーやパートナーがいますので、そことの接点をできるだけ持つようにしました。接し方も外部のベンダーという扱いではなく、技術提供をしてもらう方々という認識でやっていました。色々な所に分からないまま任せてしまうと、分からないから従ってしまいますが、ここにいるメンバーはむしろ詳しく技術が分かるので、打ち返しができました。お互いに情報を出し合えたので、新しいことを一緒にできたというところもあったと思いますね。

――データの価値の打ち出し方が明確になって、外に向かっていったブレイクスルーポイントはあるのでしょうか?

斉藤氏:ブレイクスルーかどうかは分からないですが、弊社がデータを扱う基盤サーバーを購入することをIBMさんと一緒にプレスリリースしました。それが日本初だったこともあって、結構バズりました。 

清田氏:日本初、かつ人材紹介業ということで業界的にも結構インパクトがありました。大きい業界ではありますが、テクノロジーに関しては少々遅れていましたから、データ活用を目指していることが結構珍しかったのかなと思っています。

斉藤氏:その後からHRテックという言葉を耳にするようになりました。私たちの転機はそこでうまくいったことですね。

清田氏:実はこの時にはすでにデータ活用は案件としていくつか動いていましたが、それは社内向けでした。社内向けの既存データを使ったレコメンドなどはもう作っていました。ただ、それは内向きの話ですし、なかなか世の中に伝わりにくいところはありましたね。

――その頃は、組織としては固まっていたのですか?

斉藤氏:この時に採用はまだ1人しかできていないです。全部で7人くらいでした。本当に増えなかったのです。

清田氏:当時はデータやテクノロジーを活用する企業として、ほとんど認知されていなかったのですよ。エンジニアの会社ではないですし、まだ環境が整っていなかったのでアピールするポイントも全くない。「データはあります。一緒にデータ活用をして頑張りませんか」くらいしか言えませんでした。

斉藤氏:毎日のように面接をしても全然フィット感がないという状況が続いていましたね。2年間くらいは本当に頑張っても10名くらいにとどまっていました。

清田氏:実績を積んでいっても、応募してくださる方が極端に少なかったのでなかなかマッチする人に出会えなかったのですが、最近は社内外含めてようやく認知されてきました。きっかけとなったのは2018年の8月。ブロックチェーンで副業の時間管理をするビジネスをリリースしたこと。そのサービスが社会課題に繋がることをアピールできたところが大きいポイントかなと思いますね。

斉藤氏:そこから一気に認知が加速した感覚です。その後、サンフランシスコのIBMのthinkに登壇しました。地道に活動しているのでアピールポイントも増えて、推薦という形で紹介されてくる方が増えてきましたね。

――今、どのぐらいの規模、構成になっていますか?

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斉藤氏:今は50人弱ですね。大きい組織になりました。データサイエンス協会が提唱するデータサイエンティストの3つの要素、「ビジネス」「アナリティクス」「エンジニア」の3チームで構成されています。「ビジネス」が正にコンサルタントのような役割で、そこに今は15人くらい。「アナリティクス」は5人くらいですね。清田がリードしている「エンジニア」チームに関してはパートナーも含めて20人以上という組織になっています。これとは別に新規事業というところで1人専属がいるような状態ですね。

――世の中がデータサイエンティストに注目し始めるなど、世の中が追いついてきたと感じますか?

清田氏:データサイエンティストという言葉は2012年くらいに出ていました。日本に知れ渡ったのが2013年から2014年だと思います。いわゆるデータサイエンスが流行って、協会ができたのが2016年くらいですね。

斉藤氏:ちょうど組織ができたちょっと前くらいですね。その時に協会から「データサイエンティストは世の中にいない」というようなメッセージがあり、どういう人がデータサイエンティストなのかということはよく話していましたね。

――御社のこのチームの中で、データサイエンティストの定義は明確になっているのでしょうか?

斉藤氏:データサイエンティストは、さっき話した3つの要素が全部そろっている真ん中の人です。今、ユニコーンと言われるくらいの人材がほとんどいません。全部が揃っている人は世の中にまずいません。

清田氏:簡単に言いますと、ビジネス課題を見つけてデータを活用してエンジニアリングで作りだせる人。

斉藤氏:全部を作れる人は世界を見渡してもまずいません。ビジネスだけという人はいます。エンジニアだけ、アナリティクスだけ、統計だけやっている人たちはいるのです。

――ただチームとしてはそれができているわけですね。

斉藤氏:そうですね。

清田氏:私たちが採用1年目に失敗した理由はそれなんです。いると思って信じていたので本当に探していました。2人で本当に探していたのです。絶対にいると。それに近そうな人を1年目に採用しているのです。

デジタルテクノロジー統括部的組織づくりの極意とは

――組織作りで1番苦労するポイントはどこでしょうか?

清田氏:社風や文化、雰囲気にマッチするかどうかというのが1番大きいですね。環境というのはどうにでもなります。でも、メンバーの雰囲気や文化は給与面どうこうという話ではなくて、最初いたメンバーや途中から入ってきたメンバーによって醸成されるものです。50名くらいになるとそれぞれのチームの中でも文化や雰囲気が醸成されてしまっています。それにマッチするかどうかが第1のポイントで、面接の時もここに合いそうかどうかがポイントです。

 合えばすごくパフォーマンスが出るというのは分かっているので、そういう人をどう入れるのかですね。社内でもうちのチームは他とは全然違うのですよ。我々の部と他の部を比べると全然違う毛色なので、そこでやっぱり本当にうちのチームに合う人とはどんな人なのかを考えないといけません。

 ――組織文化を作るまでの段階と、それに合わせる段階について教えてください。

清田氏:最初は「足りないパーツはなんだっけ?」みたいな感じだったのですが、途中からパーツは揃ってきます。全体を上げるには満遍なく採用しなくてはならないのですが、そういう時に単純に経験だけで見てしまうと合わない部分が出てきてしまいます。経験やスキルは前提ですが、雰囲気が合うかどうか、マインド的なものがプラスされてきます。

斉藤氏:本当にそうですね。そこが1番難しいです。そもそもそういう人材が少ないので採用はもちろん難しいです。そこをどう考えるかというのがまずひとつ難しいところですが、文化にフィットさせるというのが1番悩むところです。

 ――最初に文化に合うかどうかが分かるのでしょうか?

斉藤氏:最初は分からなかったですが、面接を何百件、書類を何百件、何千件と見ています。見続けていると透けて見えてくるのです。データではないですが、感覚的に分かってきます。今までオペレーションエクセレントな人をたくさん採っていました。そして、自発的な人とはどういう人だったかを考えたら“ラーニングアニマル”、本当に勉強し続ける人たちだと分かりました。うちのメンバーがまさにそうですが、本当に勉強し続けています。本当に苦じゃないのですよね。趣味との境がない。面接で話を聞いていて、どこかのスイッチを押した時に、わーっと話し始めるかどうかが、採用基準だったりします。それで面接が延びてしまう人が採用に値するような人です。

 ――“ラーニングアニマル”で、さらに文化に馴染む人を見つけるのは本当に大変そうですね。

清田氏:やっぱり人が大事で、そこを妥協したらどうしようもないと思っています。多少、妥協して大丈夫だろうと思っても、やっぱり駄目だったりします。そこはこだわりたいですね。迎える側もこだわらなくてはいけないし、来てもらう方にもこだわって欲しいと思っています。そのこだわりがマッチしないと絶対にうまくいかないので、私は大事だと思っています。

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――実際にどういった事業を展開し、どういった価値を創出しているのでしょうか。

斉藤氏:AIマッチングのような例が分かりやすいと思います。転職希望者の方と求人は、間に入るものがないとマッチしません。本当にフィットしているか分からないところをマッチングするのは難しいです。私たちには過去のデータがあります。進捗のデータや決定のデータがあるので、その辺りをマッチさせ、特徴を捉えながらマッチングさせるというのは正にAI、機械学習を活用しながら進めています。

キャリアアドバイザーの方と転職希望者が話すカウンセリングの場がありますが、そこはブラックボックスでした。匠の技でカウンセリングのクローズに持っていく。それは人材育成にも使える情報です。しかし、それがどこにも共有されていません。キャリアアドバイザーにも個人差があり、メモで情報を取っているのが現状です。現在は、そこに切り込んで、音声をテキストにできる技術を活用しながら運用しています。

 ――結構、画期的な取り組みですね。

斉藤氏:私たちはプラットフォームを与えるだけですが、それからイノベーションが生まれています。今までは、私たちから提案しないとできなかったのですが、キャリアアドバイザーの方から「こんなことできませんか?」と言っていただけるようになりました。このリテラシーの差はこの2年間、3年間やってきて1番社内で変わったことだなと思っています。これはかなりのインパクトです。もちろん、お話した案件以外にも進行しているものが50件程あります。常に新しい技術、試したい技術も持っていますし、その中にR&Dも含まれています。人に関わるデータだったらどんな形でもアイデアによっては活用できる可能性があります。

清田氏:ブロックチェーンはちゃんと地道に活動していて国内の事例ができて、IBMの国際カンファレンスで話をさせてもらいました。そして、今は本当にビジネスとしてどうローンチするかというレベルの話をしています。ブロックチェーンをやっていると絶対にぶち当たる課題があります。それをどう解消するかというところで、マイナンバーカードや認証を扱っている企業さんとPoCを進めています。ただ言ってしまうと面白くないので小出しにしています。多分、分かる人には狙っている所が分かるとは思いますが(笑)。

人材×テクノロジーの今後のビジョンについて

――今後の展開について教えてください。

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斉藤氏:パーソルキャリアで取り組んでいるテクノロジーに関してはどんどん外に発信したいと思っています。今は人を増やしていくことによって売上が上がるというビジネスモデルなので、このビジネスモデルをどこかで変えないといけません。社会課題として少子化の話があるので、そこを含めて考えた時に、そのビジネスモデルはおそらく成り立たないことが分かっています。テクノロジーである程度までサポートしてあげるような体制は必要なので、外にどんどん発信しながらそういう組織を形成していきます。

エンジニアの人たちをさらに集めながらビジネスをしていくことになっていくだろうと思っていますし、我々はそういうことを発信していきたいと思っています。エンジニアが働きやすい会社にして、データを活かしながら新しい何か、HRテック、ADテックもそうなのかもしれないですし、IoTもそうなのかもしれないですが、繋げていくことを我々の部署発信で進めていくつもりです。

清田氏:1年前とは全然違っていますね。本当に1年前だと、世の中もそうですし我々も全然こうなっていると思っていなかったんです。

斉藤氏:そうなんです。もうちょっと地道にやっている予定でした。

 ――手堅く確実にやってきた中でブレイクして、さらに手堅くやっていくということがポイントかもしれませんね。

斉藤氏:そうですね。時代がうまくついてきてくれたというのはありますね。やはり、誠実であり続けるというのが、この部署の良いところです。誠実な人が多いですね。真面目なのでここまで地道にやってくることができたのだと思っています。

清田氏:自分がやりたいことに邁進する高いモチベーションを持っている人が多いですね。

斉藤氏:責任に関する視座が皆高いのですよ。普通のサラリーマンはある一定の枠でしか責任をとらないですが、その上を見てくれる人が多い。例えば、セキュリティに関してはルール通りにやっていればいいんですけれど「そのセキュリティはこうした方がいい」と言える責任感を持っています。

我々と違う部署のことは我関せずではなく、そこが変わらないとデータも環境も変わらないという課題を見つけたら、そこにまでしっかり介入するのです。そして、もっとこういうふうに動いた方がいいよということを、皆を巻き込んで社内で啓発してくれる。それで組織が変わっていくのですよね。一人ひとりが良い意味でお節介です。枠を作らないで活動できる人たちの集まりがこの部署ですね。こういう人は少ないと思いますね。どちらかというと俺は技術だけやればいい、ここは知らなくていいみたいな人の方が世の中には多いです。アプリ開発では、そもそもインフラを知らなくていいのです。必要な部分だけ知っておけばいいという人たちが増えてきている中ではかなり希少な人材ですね。どこに出ても恥ずかしくない方々がたくさんいます。

TECH Street(テックストリート)について

――新しくリリースされたTECH Street(テックストリート)について教えてください。

斉藤氏:以前からコミュニティを創りたいという思いがありました。優秀な人材ほど、強力なコネクションを持っています。様々なコミュニティに属していて、そこから情報を取っているのですね。一方でコミュニティを持たない方々の中にも優秀な方はたくさんいます。そういう方々とつながって、議論をしていけたら面白いだろうとは常々思っていました。

優秀な人であればあるほど、TwitterやFacebookなどで情報を色々な角度から、様々な場所、人に取りに行っています。清田さんが出してくれる情報は信頼できるんですよね。部の中で、皆がそれを見に行っているという現状です。それがパーソル印とは言わないですが、デジタルテクノロジー統括部が発信をしたら、それに共感してくれる人たちが集まる、そんな発想からテックストリートが生まれました。

 ――技術者同士が議論をすることで生まれるものがあるという感覚ですね。

斉藤氏:コミュニティで議論するというのはすごく大事です。最初は間違ったりもします。ブロックチェーンが始まった時、私も間違い続けてずっと怒られていました。「これ読んで来い」みたいなことも言われて。でもそれでいいと思っています。始めは皆そうなので。世の中ではそういう議論できる場が少なくなっています。ネットの掲示板だけではなく、もう少しリアルで会話を交わせる場所があったら本当にいいなと思いますし、そういう頑張っている人たちに企業から場所を貸すなど支援したいと思っています。そういうカルチャー、コミュニティを作れたら本当にいいなと。私は正直、パーソルの一員としてではなく、業界で活躍するテクノロジー人材、データサイエンス人材を増やしていけたらなと思っています。

そのためには議論する場もそうですが、インプットという点では、書籍やセミナーの費用、登壇に対する支援もしていきたい。テックストリートでつながる様々なコミュニティに対して投資していきたいと思っています。

100万人以上のエンジニアが足りないと言われているこの世の中において、そこに手を入れないようでは人材業としてどうなのかと。ちょっとカッコつけているように見えるかもしれませんが、そういった思いがあります。

 ――会社だけの利益を考えるのではなくて、社会全体の底上げまで視野に入れているんですね。しかも、テクノロジーに関しては、底上げしていくことで日本や世界の経済に波及していくということも考えていらっしゃるのでしょうか?

斉藤氏:もちろんそうです。この活動に様々な技術や考え方を持っている企業が参加されたら、なお可能性が広がると思います。学生でも良いと思います。あまり縛られずに、頑張っている人たちにちゃんと支援してあげたいです。頑張ったら頑張っただけ支援されるという仕組みがあまりにもなさすぎます。真っ当なことをしたいだけなのですよね。真っ当なことをしている人たちに真っ当な支援をして、底上げしていきたいですね。

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( 取材:伊藤秋廣  / 撮影:岡部敏明 )