こんにちは!TECH Street編集部です!
今回は2021年9月9日(木)に開催した、 「UXデザイン勉強会 〜UXデザイン事例と業務効率化ネタ共有〜」のイベントレポートお届けいたします。今回は大好評のUXデザイン勉強会の第二弾。ITテクノロジーに関するサービスのUXデザイン事例やTIPSを共有しあう勉強会を開催いたしました。
登壇者はこちらのお二人!(登壇順に記載)
亀田 重幸さん/ディップ株式会社
羽山 祥樹さん/日本ウェブデザイン株式会社
それでは、早速当日の発表を紹介してまいります。
「ビジネス視点から考える新しいUXデザイン」亀田 重幸さん/ディップ株式会社
今回は、使いやすいだけでなく、ビジネスで成果の上がる、UXデザインを活用した新しいフレームワークを紹介していただきました。
UXデザインとビジネスの関係性
デザインとは、美しい見た目を作るためのものではなく、課題解決の思考方法の一つ。全てのデザインの範囲をあげると、「見えるデザイン」から、経営理念やビジョンなどの「想い」まで様々なフェーズで用いられていることがわかります。
次に、UXデザインという言葉を要素分解するとUX(作り手の心地よい体験)を作り、デザインする(課題解決する)こと、と説明することができます。
「課題を解決する」ことは、ビジネスとイコールでもあります。何かの課題を解決したいからお金を払い、それがビジネスになります。そのため、ビジネスそのものはデザインであるというように考えることができます。
DX時代においては、ユーザーが使いやすいだけのUXデザインではなく、ビジネスで売上を上げるためのUXデザインが求められるようになってきています。
サービスデザインシステムとは
サービスデザインシステムとは、下記4つの軸でビジネスを考えて行く方法です。
今回はバイトルを題材に、既存機能をサービスデザインシステムで解説いただきました。
①ビジネスロジック
②ユーザー体験
③仮説設計
④プロダクト
①ビジネスロジック
まず、ビジネスロジックでは目標達成のためのKPIを整理します。バイトルの場合は売上を上げるためには「案件数」と「応募数」が重要なので、この二つの数を増やすためのKPIを設定していきます。
ここで重要なのが、どのKPIをあげたいのか、優先順位をしっかりと立てることになります◎
②ユーザー体験
次に、バイトルにおいて重要なKPIである「応募数」を増加させるためのユーザー体験を整理していきます。
ユーザーが応募するにあたり、何をしたいかという気持ちを想像し、ユーザーの体験やアクションを書き出して整理していきます。この際、バイトルにおいては一般的な応募の流れだけでなく「職場体験があったほうがいい」というユーザーのニーズを新しい価値として取り入れることを検討したそうです。
③仮説検証
次に、ユーザー体験に関するアイデアの仮説検証を実施します。
検証内容
↓
課題
↓
解決策
↓
計測KPI
この項目に沿って検証内容を整理していきます。
バイトルの職場体験については下記のように整理しました。
<検証内容>職場体験の応募数を増やすために仕事詳細で効果的な内容を検証したい
<課題>職場体験という聞き慣れない言葉にどう反応して、理解してくれるのか明らかにしたい
<解決策>職場体験OKの求人案件を用意して、ボタンクリック、応募時の体験選択有無を評価する
<計測KPI>職場体験コンテンツのクリック数・応募時の項目選択数
このとき、Flylを用いて仮説検証の管理をしました。
④プロダクトのワイヤー
最後は、プロダクトのワイヤーを検討します。
実施に、この「職場体験」というユーザー体験がバイトル全体の中でどのポジションに位置しているのかをワイヤーを使って整理します。これをすることで、どこの機能に影響して何を変えなければいけないのかがわかるようになります。
上記が、サービスデザインシステムの一連の流れですが、これを活用することは下記のようなメリットがあります。
・ユーザー体験(UX)の向上がKPIと繋がり数値も上がる
・仮説が立てやすくなり検証の精度が上がる
・無駄な機能開発をする時間を削減できる
UXは、UXフレームを使ったワークをやっただけで満足しがちになってしまうため、ビジネスにおける課題解決を意識したい人は、このサービスデザインシステムを活用するのがオススメです。
サービスデザインシステムは、UXを中心に使いやすいサービスを作れるだけでなく、しっかりサービスをグロースできるフレームになっています。
サービスデザインシステムの活用
サービスを開発する工程においては、戦略的UXを考えた後にサービスデザインシステムを活用するのがおすすめ!本当にこのビジネスが成功するのか、この機能は使われるのかを整理しておくことがその後の開発に大きな影響を与えます。
UXデザインには様々なフレームやワークがありますが、ぜひ一度亀田さんからご紹介いただいたサービスデザインシステムも、試してみてください◎
登壇資料
https://miro.com/app/board/o9J_lytMDK8=/?moveToWidget=3074457363668186511&cot=14
「もしプロダクトマネージャー・プロダクトチームにUXリサーチのメンターがついたら」羽山 祥樹さん/日本ウェブデザイン株式会社
プロダクトチームから成長につながる「決定的な一手」が出てこない...これはじつはプロダクトチームのユーザー理解が浅いときの典型的な症状。
「決定的な一手」は真に深いユーザー理解からしか生まれません。今回は、プロダクトマネジメントにおいて、プロダクトマネージャー・プロダクトチームにUXリサーチのメンターがつくことで、強いチームへと成長することができる、というお話をしていただきました。
例えば、人事の担当者から「応募者へのメッセージに「テンプレートの挿入」をできたらいいな」と相談を受け、一生懸命作ったのに「決まり切ったテンプレートしか使えないのでは使い物にならないよ」と言われてしまった…このようにユーザー側からの要望を受けて作ったプロタグトが、ユーザーの本来の要望を満たすことができなかったという経験はありませんか?
これは、ユーザーの発言を受け取ったプロダクトチームがユーザーの要望をどこまで理解していたか、という点が問題になっています。
ここで、プロダクトチームは「テンプレートを挿入したい」という発言の表面的な理解だけではなく、その背景にある「メッセージを効率よく捌きたい」という意図を理解し、さらにその先にある「たくさんの応募者に気配りある対応をしたい」という真のニーズを理解する必要があります。
真のニーズの理解まで達することができていれば、ユーザーのペインを解決する改善を多方面から的確にリリースすることができます。
つまり「決定的な一手」は、「真のニーズの理解」無くしては生まれないということです。
たとえば、人材採用サイトにおいては、ユーザーは二人存在します。一人は人事担当者、もう一人は転職者です。
どちらのユーザーも、転職サイトだけをずっとみている訳ではありません。ユーザーにとって、転職サイトを使うことは「目的」ではないのです。そのため、プロダクトチームが自分のプロダクトのユーザー体験だけを考えているのでは、ユーザーを取り巻く世界を断片的に切り取っただけとなってしまい、真のニーズを満たすプロダクトを生み出すことが難しくなります。
では、プロダクトチームが、真の意味でユーザーに出会うにはどうしたら良いでしょうか。
あてずっぽうにプロダクトを増築するのでは成功率は低くなります。そのため、ユーザーの真のニーズがどこにあるのかを見極めてから、プロダクト開発をする必要があります。
ここで、ユーザーを知るための専門技術である、UXリサーチが活躍することになります。これを、プロダクトチームが習得することができれば、ビジネスとしても成功するより良いプロダクトを生み出すことができます。
まずは、ユーザーインタビューやユーザビリティテストを使ってユーザーの価値観を明らかにしていきます。
次に、定性分析(質的分析)の専門技法でユーザーのインサイトを探っていきます。
このようにして、チームで徹底的にユーザー心理を考えていきます。この、「ユーザー心理を徹底的に考えること」がチームの文化になっていくことが大切です。
プロダクト視点ではなく、ユーザー視点を持ってプロダクトを開発することを意識することが大切で、現状のプロダクトにとらわれず、ユーザーの真のニーズを理解していくために考え抜くことが必要です。
このようなチームを作る上で、外部のUXリサーチャーに委託するのも一つの手ではありますが、最終的にはユーザー理解をチームの文化に浸透していく必要があるため完全に委託するのではなく、チームで取り組むことがオススメです。
とはいえ、チームにノウハウがない、ということも考えられると思います。そんな時は、チームにユーザー視点が文化になるまで伴走してくれる、経験豊かなUXデザイナーのメンタリングを活用してみるのもオススメです。できれば、CXO(Chief eXperience Officer)の設置をし、経営レベルにまで盛り込むことが好ましいと思います。
ビジョンのある革新的なプロダクトは、天才のジャンプした思いつきから生まれるのではなく、ユーザーに対する深い洞察から生まれます。
世の中に価値をもたらすプロダクトを生み出すために、ユーザーの理解をチームの文化にしていきましょう◎
登壇資料
まとめ
参加者の方からは、「精神論っていうかなんていうか、根本的にすごく大事なことを教えていただいた気がします。」などのコメントもいただきました!みなさまが抱えている、UXリサーチ、UXデザインという分野においての様々な悩みを今回のイベントで少しでも解消できていれば嬉しく思います!
ビデオオンの参加者のみなさまとの集合写真
参加者の皆様からもたくさんのご質問をいただきました!次のページでは、当日回答しきれなかったご質問含めて紹介いたします◎
参加者からのご質問
“(Q)お客様向けのプロダクト作成で、UXの意識はどの段階で持ち始めると良いでしょうか?”
亀田さん:一番最初からです。まずは誰向けの何をやりたいのか、そこからUXだと思います。
羽山さん:亀田さんに同意です。UXデザイン・UXリサーチは「何をつくるか」を決める作業なので、要件定義の話なんです。それも要件定義の前の要件整理をやる技術です。だからいちばん最初です。
“(Q)UXってセンスと技術どちらが大事なんだろう。”
亀田さん:誰かをマネして、自分でやることが大切です。そして誰にでもできる、困っている人をみつけてそれをどう解決できるかっていうことなので、センスというより誰でもできることだと思います。
羽山さん:僕は、センスという言葉はあまり信じていません。「センス」と言われると「いま言ったセンスとは何を示していますか?」と聞いてしまいます。一つ一つ言語化してみましょう。「ユーザーインタビューはセンスだよ」→「それは何をしているということですか?」、「ユーザーとの信頼感をつくるんだ」→「信頼感をつくるってどうやるんですか?」、→「まずは最初に明るく挨拶をする」→「なるほど、つまりセンスを言語化すると、最初に明るく挨拶することなのですね」というように「センス」を言語化しましょう。センスというものは存在しなくて、つまりは技術しかないのではないでしょうか。
“(Q)まずは何をすべきか悩みます。サービスを利用するユーザーを見るか、それとも同じ形態のサービスから成功事例をみるか。”
亀田さん:どちらでもいいと思います。競合調査もしますし、僕はユーザー(課題)をみます。何に困っているかをみます。
羽山さん:亀田さんに同意です。ユーザーをみましょう。他社をみてもそれが間違っていたりもすると思います。たとえば、業界のリーダーが「社内事情」ではじめた機能が、競合他社がみんな真似をして、しかしユーザーには刺さっていない事例もあります。
“(Q)五感の中で一番UX、感動体験にうったえかけやすい感覚ってどれなんでしょうか?”
亀田さん:難しいですね。視覚かなと思います。目に入るものは大きいと思います。体験を自分の中に植え付けるような役割ではないでしょうか。
羽山さん:人を感動させたいというご意図の質問でしょうか。もしそうならば「五感」と考えるのではなく、「ストーリー」をユーザーに渡してください。人間はストーリーに感動します。たとえば「犬が飼い主を待っている。飼い主が戦争に行く。飼い主は帰らない。しかし犬は毎日飼い主の帰りを待ち続けている」というように「五感」ではなく「ストーリー」に人は感動します。
“(Q)バイトルさんのWebエンジニアはUX意識させてますか?内製でしょうか?”
亀田さん:内製と外注は機能によって分かれてます。すごく内製できてるかというとそういうわけでもないです。
“(Q)UXを学ぶにあたって、何をされましたか?うまくできなくて悩んでまして。”
羽山さん:1. 実案件で、高度なノウハウのあるUXデザイナーに参画してもらって、一緒に仕事をするのが学びになりました。羽山の場合はネットイヤーグループさん(当時、坂本貴史さんが羽山のプロジェクトを担当)とのプロジェクトで思考方法を学びました。
2. 産業技術大学院大学 履修証明プロクグラム「人間中心デザイン」に通い、体系的な知識、手法、哲学を学びました。
“(Q)UXについてPoCって取り入れられますかね?”
亀田さん:チームにもよりますね。バイトルでもやっていたりします。プロトタイプで検証することが多いです。
羽山さん:「MVPをつくってユーザーに受け入れられるか検証する」というのが、UXのPoCそのものだと思っています。
“(Q)ディップさんのつかってるITツールしりたい。イケてるのたくさん使ってそう。”
亀田さん:最近はmiroとNotionを使ってます。
“(Q)UXデザインにおすすめのツール教えてほしいです。”
羽山さん:僕も知りたい!(笑)。僕はPowerPointで心理マップをつくっています。僕のクライアントで、大手のお客様だと、クラウドツール禁止、フリーソフト禁止、という会社もあります。そうするとデータを共有するには、絶対にどの会社でも入っているパワポ・Excelを使うことになります。
“(Q)このサイト(企業)のデザイン、うまいなー、って思うのありますか??”
羽山さん:ビービット(beBit)のUXデザインが好きです。彼らは「成果(売上やコンバージョンなど)」に徹底的にフォーカスしたデザインをします。UXデザイナー視点でみたときに、ビービットのデザインは、一切の無駄なくユーザーの課題をまっすぐ撃ち抜く設計をしているなと思います。
“(Q)miroの他に、スプレッドシートも駆使して 情報を洗い出すことはありますか?”
亀田さん:もちろんあります。色んなものを使います!
“(Q)ユーザーニーズをプロダクトチームがきちんと理解するには、どのくらいすり合わせる必要がありますか?”
羽山さん:僕が関わっているプロダクトチームでいうと、僕自身がプロダクトマネージャーなんです。プロダクトマネージャー=UXデザイナーなので、擦り合わせというのはやっていません。
そうでないチームの場合、よく言われるのは、ユーザー調査の段階で、関わる人(エンジニアやデザイナー、ビジネスサイド、営業など)を交えて、ユーザーが何に困っているのかを目の前でみせることで、腑に落ちてものがつくれるようになります。
“(Q)UXと話が変わってごめんなさい羽山さんのスライドの絵が可愛すぎる。どこのサイトにありますか?”
羽山さん:じつは https://hermie.jp/ で無料素材として配布していたり・・・。
“(Q)掘り下げるレベルは3段階なのが羽山さまの一般的なやりかたですか?”
羽山さん:プレゼンとして分かりやすく説明するために3段階の図で紹介してます。現実には明確に段階を分けることはできませんが、いずれにしてもポイントは深く深くヒアリングすることが大切だと思います。
“(Q)ユーザーニーズの掘りさげにかける時間(かけられる時間)と予算はどのように考えればよいでしょうか?”
亀田さん:ひたすら営業にインタビューしたり、ヒアリングに時間をかけることはあります。
羽山さん:これは難しいですね。ユーザーニーズを理解することの大切さが分かっている企業は、予算も時間もかけられると思います。スタートアップなどスピード重視の場合もあります。
“(Q)技術者ってユーザーの気持ちを考える工程を面倒に思っている印象…技術ありきの人に考えてもらうコツを聞きたい。”
羽山さん:そういう方も、ユーザーがプロダクトをぜんぜん使えていない場面を生で目の前でみると衝撃をうけるので、ユーザビリティテストなどに同席していただくとよいです。
“(Q)そういう素敵なプロダクトチーム作りたい。なのですが、社内の壁があるんです。特に上司。”
亀田さん:僕はお土産をもって仲良くなろう作戦をやっています。そのチームが困っていることを解決するよっていうのが「お土産」です。
羽山さん:お察しします…ゲリラ的にやる、という方法があります。たとえばユーザビリティテストにしても、お金をかけずに呼べる人、たとえば社内の別チームの人を呼んできて、プロダクトを使ってもらい、その様子を上司に見せるような方法です。
“(Q)UXリサーチにはどんな手法がありますか?”
羽山さん:ユーザーインタビュー(ユーザーがどんな課題を抱えているか聞く)、ユーザビリティテスト(具体的なプロダクトを使ってもらいその様子を観察する)がとくに多いです。
ほかにビジネスエスノグラフィ(現場にいってユーザーと一緒になって観察する)をすることもあります。もう1点、リサーチしたあとに、きちんと結果を「定性分析(質的分析)」することが大切です。分析方法は親和図法、KA法(本質的価値抽出法)といったものがあります。
“(Q)UXデザインのメンタリングおすすめありますか?”
羽山さん:ベテランのUXデザイナーに教わるのがいいと思います。ただ、ここまでお話して、じゃあその人とどこで出会うのかって問題がありますね(笑)。社内にそういう方がいれば弟子入りしたらいいと思いますが、社内にいないパターンもあります…。昔だと社外勉強会で懇親会で仲良くなるという方法がありましたよね。今のこのご時世、出会い難しいですよね…😢 人脈づくりとしては、このイベント運営をされているミッツさんがプロです。
ミッツさんはどうされていますか?
ミッツさん:「これは!という方には、SNSでコミュニケーションをつくり、ダイレクトメッセージで相談してつながりをつくります。みなさんはぜひ羽山さんとつながるとよいと思います」
“(Q)UXリサーチの法則ってありますが、あくまで仮説だし当てはまらないことや背反する法則もあると思うのですが、どうグルーピングして仮説を整理してますか?”
亀田さん:法則は意識したことなかったです。課題は、グルーピングももちろんやります。重たい課題からみつけていって、それをいかに解決するかにアプローチしていくと効果が大きいです。
羽山さん:「UXリサーチの法則」とはユーザビリティ原則のことでしょうか? ユーザビリティ原則として、一般的にこうつくると使いやすくなる、という指針はいろいろ公開されています。ただ、そこをUXデザインするときにあまり意識してません。というのは、UXデザインは「インターフェースのデザイン」をしている時間より、「ユーザーを調査すること」と「何をつくるべきか整理すること」にかける時間のほうがずっと多いのです。UXデザインは要件定義フェーズの技術だからです。(羽山後日談:質問者の方は「UXデザインの法則」という書籍に書かれた心理学の法則のことをおっしゃりたかったのかもしれません。いずれにしてもユーザビリティ原則と同じで、UIデザインをする以上にユーザー調査に時間をつかいます)
“(Q)アプリエンジニアです。 自社開発だと、UXリサーチを取り入れやすいですが、受託開発だと難しいですよね? 発注側からのアクションを待つしかないのですよね...。 何か事例はありますか?”
羽山さん:受託であれば、営業活動のなかで「UXデザイン・UXリサーチをしませんか」と訴求して、案件をつくる、ということが必要になります。発注側のアクションを待っていてもなかなかチャンスは来ないので、自分から案件を取りにいきましょう。
“(Q)技術系の開発だと社内/社外のおえらいさんに体験してもらって、ユーザーからの意見を収集したと勘違いしている人が多い。”
羽山さん:社内政治は社内政治でプロジェクトを円滑にまわすために必要だと思っています。ただ社内政治のための意見収集と、ユーザー理解のための調査をまぜてしまうと混乱するようであれば、どちらかを諦めるのではなく、両方するのがいいと思います。
“(Q)我が強い人の意見に流されてしまう部署が多いのが現状で、UXデザインが間違った方向に行ってしまいます。そんなときの解決策ってありますか?”
羽山さん:ユーザーがプロダクトをぜんぜん使えていない場面を、みんなで目の前でみて、みんなで衝撃をうけるとよいです。それ以後のミーティングでは、「この前のAさんだったら、この機能をどうおもうだろうか」と、かならず「Aさん」を主語にするようにします。そうすると、チーム全員の意識が「Aさん」という具体的なユーザーを中心に思考するようになります。
“(Q)リサーチしてユーザインサイトを踏まえながら企画したいけど、組織の理解が得られないっていう相談毎回でるなぁ お金かからないゲリラ調査をまずしましょう、と私も回答することが多いのだけどゲリラ出来ないケースとかもあるのかな〜 きになる。”
羽山さん:上司がUXリサーチを理解しない。しかし、部下が上司の知らないところで活動するとプライドが傷ついて怒り出す上司、というケースがあります。この場合、ゲリラ活動も内容以前に活動していたこと自体で反感を買うことがあります。
そのような場合、まずは上司に可愛がられる部下になり、ある程度の裁量をもらえるまで社内政治をすることがスタートになります。年単位がかかることもあります。UXデザインプロジェクトの半分は組織論なので、覚悟を決めてがんばってください。
羽山の例をいうと、部署でたったひとり、誰も「UX」という単語を知らないところからスタートし、10年かけて事業部の年間方針にUXが含まれるところまでしました。長期戦、心が折れないように、じっくりとがんばってください。
“(Q)ユーザーに直接会うことができないときはどんな方法で理解を深めたら良いですか。私はIT部門ですが営業の人と会うことが出来ません。”
羽山さん:ゲリラ的にやる、という方法があります。たとえばユーザビリティテストにしても、お金をかけずに呼べる人、たとえば社内の別チームの人を呼んできて、プロダクトを使ってもらうような方法です。
直接のユーザーでなくても、人間は「同じ目的」のために行動するとき、おおむね同じような行動をする傾向があります。似た行動をする、間接的なユーザーへの調査で代用します。
“(Q)ユーザー心理マップを詳しく見たいのですが共有いただくことは可能でしょうか?”
羽山さん:本日のプレゼンでご紹介した「ユーザー心理マップ」は、実物をダウンロード配布しております。以下のnoteで配布しているので、ぜひご参考ください。
https://note.com/storywriter/n/n7e362be9c956
https://note.com/storywriter/n/n9f84eb25f8c8
https://note.com/on_inc/n/n48fa96374313
“(Q)ベネフィットが出ない改修に予算が出ません🥺使いやすくなることでベネフィットをどのように算出して予算を取得していますか?”
羽山さん:まずベネフィットが明確なところのユーザー体験の改善から取り組んでみてはいかがでしょうか。ユーザーのゴールとビジネスのゴールが一致するところにおいて、ユーザーがよりゴールを達成しやすくなるための投資であれば、引き出しやすいのではないかと思います。
“(Q)企画業務に携わっておりUXの勉強をしているのですが、自分のことをUXデザイナーと名乗って良いのか迷っています、”
羽山さん:世の中が期待するUXデザイナーのスキルとして幅はあれど、「ユーザーインタビュー」と「ユーザビリティテスト」はできる、というところは、比較的多くの人の同意が得られそうに思います。まずはその2つが、最初から最後まで独力でできるようになったら、UXデザイナーと名乗ってみたらいかがでしょうか。
イベントレポートは以上です!次回のイベントレポートもお楽しみに◎