こんにちは!TECH Street編集部です。
IT・テクノロジー人材のためのコミュニティ「TECH Street(テックストリート)」は、コミュニティメンバーの興味・関心事をテーマに独自アンケート調査を定期的に実施しております。
今回はコミュニティメンバーから気になるコトとして注目度が高い「副業」をピックアップ。2020年8月時点のITエンジニア500名と非エンジニア500名を対象に「ITエンジニアの副業実態調査」を実施いたしました。
調査結果サマリー
〈1〉ITエンジニアの副業経験率は約40%
〈2〉ITエンジニアの副業は「投資系」が最も多い結果に
〈3〉副業理由のトップは「収入アップ」。人脈形成や社会貢献という回答も
〈4〉約70%以上のITエンジニアが副業は1つに絞って行っている
〈5〉副業の平均月収は9千円未満~4万円台がボリュームゾーン
〈6〉エンジニアが副業を辞めた主な理由は「時間的余裕がなくなったから」
〈7〉ITエンジニアは副業に対して前向きな意向を示す回答が半数以上
〈8〉企業の副業制度が副業の促進の妨げに
〈9〉コロナ禍をきっかけに新しい副業を始めたITエンジニアは約24%
〈10〉ITエンジニアのコロナ禍における勤務形態の変化は非エンジニアの約1.9倍
〈番外編〉ITエンジニアが一度はやってみたい副業は「宇宙飛行士」「通行人A」?!
この調査を行ったところ、ITエンジニアのリアルな実態だけでなく、副業に関する課題も明らかに…本記事では調査結果の公開だけでなく、人材業界のプロフェッショナルに解説をいただきながら副業に関する課題についても考察を行いました。
考察コメンテーター
斉藤 孝章 Takaaki Saito
(パーソルキャリア株式会社 テクノロジー本部 デジタルテクノロジー統括部 ゼネラルマネジャー)
大学卒業後、自動車業界を経て、コンサルティング業界、EC業界、人材業界などのITガバナンス及びIT戦略・設計に従事する傍ら、管理職として組織構築に貢献。2016年にパーソルキャリア(旧インテリジェンス)に入社。同社のミッションである「人々に“はたらく”を自分のものにする力を」の実現をテクノロジードリブンでリードする。
調査概要
・対象者:正社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、公務員、個人事業主の20~70代男女
・回答人数:1000名(エンジニア500名、非エンジニア500名)
・調査手法:Webアンケート
・調査期間:2020年8月25日(火)~8月30日(日)
※グラフの構成比は小数点以下を四捨五入しているため、合計しても100とはならない場合があります。
〈1〉ITエンジニアの副業経験率は約40%!
「Qあなたの現在の副業実施状況について教えてください。」(n=500)と質問をしたところ、「副業をしたことがない」と回答したITエンジニアが約60%と最も多く、副業経験率は「過去に副業をしていたが、現在は本業のみに専念している」という人を含めても40%という結果となりました。
・副業をしたことがない:60%
・過去に副業をしていたが、現在は本業のみに専念している:24%
・現在副業をしている(スポット/不定期だが行っている):10%
・現在副業をしている(毎月コンスタントに行っている):6%
考察コメント
斉藤氏:パーソルキャリアの運営する転職サービス「doda(デューダ)」において、「副業、複業、兼業、ダブルワーク、パラレルキャリア」いずれかのキーワードを含む求人がどれだけ増えたかを調査したところ、doda掲載総数に占める副業可の求人シェアは、直近1.2%(2019年4月時点では0.5%)、前年比130.2%という結果が出ています。2020年4月以降、平均150%超で推移していますが、直近は2019年4~6月に比べると伸びが鈍化しています。
※集計期間は:2019年4月~2020年10月20日まで
求人自体は増加傾向にあり、徐々に副業人口は増えていますが、今回の調査において「副業をしたことがない」と回答したITエンジニアが約60%であることからも、まだまだ世の中に副業が浸透していない現状があります。
また、自分のスキルを活かした副業をしたくても、企業の副業ルールで同業他社での副業が禁止されている、また適切な副業紹介サービスがなく人脈を駆使しないと良い条件の副業が探しにくいことも副業人口が伸び悩んでいる原因の一つではないかと考えられます。
〈2〉ITエンジニアの副業は「投資系」が最も多い結果に
「Qあなたが経験したことがある副業のカテゴリを教えて下さい※複数回答可」(n=201)と質問をしたところ、「投資系(株式投資/外国為替証拠金取引(FX)/純金積立etc)」と回答したITエンジニアが最も多いという結果に。次いで、「制作系(イラストレーター/プログラミング/システム開発)」、「ネット系(アフィリエイト/YouTuber/ネットショップetc)」が多い結果となりました。
・投資系(株式投資/外国為替証拠金取引(FX)/純金積立etc):36%
・制作系(イラストレーター/プログラミング/システム開発/ハンドメイド):24%
・ネット系(アフィリエイト/YouTuber/ネットショップ) :22%
・肉体労働系(資材運搬/引っ越しスタッフ/建設現場作業員/農業):16%
・配達・作業系(新聞や飲食の各種配達/データ入力/検品仕分けスタッフ) :12%
・飲食・接客系(カフェ店員/バーテンダー/各種施設スタッフ):10%
・専門・技術職(講師業/整体師/モデル/ダンサー/音楽演奏):6%
・シェア系(アパート・駐車場経営/賃貸/民泊) :5%
・会社・士業系(広報/各種ディレクター業/各種コンサルティング/営業) :5%
・代行・生活系(家事代行/ペットシッター):2%
・その他:3%
考察コメント
斉藤氏:副業経験で一番多いのは「投資系(株式投資/外国為替証拠金取引(FX)/純金積立etc)」という結果がでました。後ほど詳しく触れますが、副業を辞める理由として最も多いのは「時間的余裕がないから」です。
実際に副業を継続している人でも十分な副業時間を確保するのは難しい現状にあります。しかし「投資系(株式投資/外国為替証拠金取引(FX)/純金積立etc))」は運用スタイルによっては短時間で行うことができるため、選ばれやすい傾向にあると言えます。
また、肉体労働系・配達系の副業経験が上位に来ていることも興味深いですね。今後、リモートワーク中の運動不足解消も兼ねて通勤時間等がなくなったスキマ時間をうまく活用した肉体労働系の副業を選択する傾向が増えていく可能性は大いにあるでしょう。
〈3〉副業理由のトップは「収入アップ」。人脈形成や社会貢献という回答も
「Q副業を行っている理由を教えて下さい。※複数回答可」(n=80)という質問については、収入アップを目的としているITエンジニアが多い傾向にあるとわかりました。
・収入を増やしたいから/収入の柱を増やしたいから:68%
・自分の能力を試したいから:25%
・本業以外の人脈/コミュニティが欲しいから:16%
・時間に余裕があるから:16%
・将来的に独立したいから:14%
・経験を増やし現職(本業)へ活かしたいから:10%
・転職せずに異なる環境で活躍や社会貢献ができるから:5%
・その他:4%
考察コメント
斉藤氏:「収入を増やしたいから/収入の柱を増やしたいから」という回答が多い中で、注目したいのは「本業以外の人脈/コミュニティが欲しいから」という回答です。
これはITエンジニアの方々が同じ価値観、異なる価値観の人と繋がっていきたいという想いの表れではないかと感じています。そのようなコミュニティを自分自身で広げていくことによって、エンジニアギルドを形成しながら次のアクション、次の会社に結び付けられるような行動をするためのきっかけの一つに副業を選択していることが考えられます。
今後ますます、個人のITエンジニアが活躍するコミュニティが重要になってくると推測されます。
〈4〉約70%以上のITエンジニアが副業は1つに絞って行っている
「現在、何種類の副業を行っていますか。」(n=80)という質問については「1種類」と回答したITエンジニアが最も多いという結果に。中には「5種類以上」副業をしているという方も。また、非エンジニアにも同様の質問をしたところ1種類という回答が最も多く同様の傾向が見られました。
▼ITエンジニア
1種類:70%
2種類:23%
3種類:5%
4種類:1%
5種類以上:1%
▼非エンジニア
1種類:68%
2種類:24%
3種類:8%
4種類:0%
5種類以上:0%
〈5〉副業の平均月収は9千円未満〜4万円台がボリュームゾーン
「あなたの副業だけに絞った際の、平均月収を教えてください。」(n=80)という質問については、「9千円未満〜4万円台」という回答が最も多い結果に。副業だけで平均「100万円以上」の月収を得ているITエンジニアは20代女性で、本業の他に5種類以上の副業をこなしていることがわかりました。
また、同様の質問を非エンジニアにもしたところ、平均月収の最高は「50万〜54万円台」という結果に。ITエンジニアと比較すると低い結果となりましたが、ボリュームゾーンは「9千円未満〜4万円台」とITエンジニアと同様の結果となりました。
▼ITエンジニア
9千円未満:34%
1万〜4万円台:28%
5万〜9万円台:20%
10万〜14万円台:9%
15万〜19万円台:3%
35万〜39万円台:3%
30万〜34万円台:1%
55万〜59万円台:1%
60万~99万円台:1%
100万円以上:1%
▼非エンジニア
1万〜4万円台:38%
9千円未満:35%
5万〜9万円台:14%
10万〜14万円台 :7%
20万〜24万円台:3%
50万〜54万円台:3%
15万~19万円台:1%
〈6〉ITエンジニアが副業を辞めた理由は「時間的余裕がなくなったから」
「副業を辞めた主な理由を教えて下さい。」(n=121)と質問したところ、「副業をするための時間的余裕がなくなったから」という回答が最も多い結果になりました。
また、収入アップを目的とするITエンジニアが多いものの、「満足する副業収入が得られなかったから」という理由も多い結果となりました。個人の理由だけでなく、「副業禁止の企業に転職をしたから」という回答もあり、まだまだ制度としての副業が浸透していないことが影響していると言えそうです。
副業する時間に余裕がなくなったから:45%
満足する副業収入が得られなかったから:23%
副業先の都合により辞めざるを得えなかったから:17%
副業禁止の企業に転職をしたから:9%
その他:6%
時間的理由・収入の理由などで副業を辞めてしまった方が多いものの、ITエンジニアの方々はそもそも副業に対してどのように感じているのでしょうか。次の質問では今後の副業に対する意向を聞いてみました。
〈7〉ITエンジニアは副業に対して前向きな意向を示す回答が半数以上
「あなたの副業に対する今後の意向として最も近しいものを教えてください。」(n=299)という質問に対しては、「機会があれば副業してみたい」という前向きな回答が多い結果となりました。しかし、副業をしたい気持ちがあるものの、「本業から副業を認められていない」「副業をしたいが、副業にあてられる時間がない」という回答も。
機会があれば副業してみたい:31%
副業はしたくない:20%
副業を検討していない:20%
副業をしたいが、本業から副業を認められていない:12%
副業をしたいが、副業にあてられる時間がない:11%
副業を具体的に検討している:5%
考察コメント
斉藤氏:パーソルキャリア株式会社が運営する転職サービス「doda(デューダ)」内の検索キーワードにおいて「副業」というキーワードに注目すると、2019年9月にはランキングTOP100外だったにもかかわらず、2020年9月には59位までランクアップ。ITエンジニアに限らず、世の中の「副業」に対する需要は増えてきているといえます。
また、「副業」だけでなく、「在宅勤務」「在宅」「フルリモート」「リモートワーク」「リモート」というキーワードも前年同月比で増えてきており、コロナ禍における新しい働き方への意向が高まってきているとも言えるでしょう。
▼「2020年9月度doda検索フリーワードランキング」転職サービスdoda(デューダ)調べ
▼「2019年9月度doda検索フリーワードランキング」転職サービスdoda(デューダ)調べ
前向きな意向が多いにもかかわらず、なぜ副業をしているITエンジニアが少ないのでしょうか…次の質問では、ITエンジニアが所属する企業では副業に対してどういう対応を取っているのか聞いてみました。
〈8〉企業の副業制度が副業促進の妨げに
「本業でお勤めされている会社の、副業への対応として最も近しいものをお教えてください。」(n=80)という質問に対して、「副業が制度的に禁止されている」「わからない」という回答が最も多い結果に。
副業が制度的に禁止されている:30%
わからない:30%
制度的に認められており、上司・同僚からも理解されている:28%
制度的には認められているが、上司・同僚からの理解は得られていない:13%
考察コメント
斉藤氏:
・副業が企業のための制度になっていること
・採用のフローの構造
この2点が副業の促進にネガティブな影響を与えていると推測されます。
「副業が企業のための制度になっている」
副業をする際に、ステップの多い「副業申請」などが、副業を妨げる要因になっているといいます。また、スキルを活かした副業をしたいものの、ノウハウなどの流出の懸念から本業と同業他社・競合企業などでの副業が禁止されており、個人の可能性を閉ざしてしまっている現状があります。
「採用のフローの構造」
また、特にITエンジニアについては、明確なスキルの把握が難しいためタスクを切り出すのが難しいことが挙げられます。また、採用フローの構造上の課題として、人事を挟むと専門的なスキルの把握が難しく、採用をより難しくしている可能性があります。
特に海外だと職種・役職などが明確に定まった上でのポジションマッチングが主流であるものの、日本の場合はゼネラリスト採用が多く、これも副業の促進を妨げる一因になっていると言えそうです。
〈9〉コロナ禍をきっかけに新しい副業を始めたITエンジニアは約24%
「Qコロナ禍における勤務形態や環境変化がきっかけで新たな副業をはじめましたか。」(n=80)という質問をしてみたところ「はい」と回答したITエンジニアが約24%、「いいえ」と回答したITエンジニアが約76%という結果に。
・いいえ:76%
・はい:24%
〈10〉ITエンジニアのコロナ禍における勤務形態の変化は非エンジニアの約1.9倍
コロナ禍における働く環境の変化について深堀りするために「Qコロナ禍において勤務形態は変わりましたか。」(n=80)こんな質問もしてみました。非エンジニアは「変わらない」と回答した方が多かったのですが、ITエンジニアは「変わった」という回答のほうが多いという結果に。
▼ITエンジニア
・変わった:54%
・変わらない:46%
▼非エンジニア
・変わらない:72%
・変わった:28%
「Q本業の勤務形態を教えて下さい。」(n=80)という質問では、「オフィスワーク」と回答したITエンジニアが約53%と最も多く、次いで「オフィスワークとリモートワークの両方」と回答したITエンジニアが約28%という結果となりました。
一方で、非エンジニアについては、約69%が「オフィスワーク」、「オフィスワークとリモートワークの両方」という回答が約10%という結果に。ITエンジニアは非エンジニアの約1.9倍勤務形態の変化があったという結果となりました。
コロナ禍における勤務形態の変化がITエンジニアのほうが多い理由としては、非エンジニアに比べると働く場所を選ばないITエンジニアの方がリモートワークに適していることが要因として考えられます。リモートワーク向きの職種ということはワーケーションをするITエンジニアも今後増えてきそうな予感。南国からのリモート会議、してみたいですね・・・
▼ITエンジニア
オフィスワーク:53%
オフィスワークとリモートワーク両方:28%
リモートワーク:20%
▼非エンジニア
オフィスワーク:69%
リモートワーク:21%
オフィスワークとリモートワーク両方:10%
・番外編:ITエンジニアが一度はやってみたい副業は「宇宙飛行士」「通行人A」?!
夏休みの特別企画として実施した調査【夏休み特別企画】ITエンジニアの小学生時代を深堀りしてみたでITエンジニアの方々の“ちょっとおもしろい”、そしてガチすぎる回答が集まってしまったのですが、今回も妄想ネタ(?)の質問をしてみました。
「現在の職種以外で、人生で一度はやってみたい職種・業務内容を教えてください。」という質問では、やっぱりありましたナニソレ回答。TECH Street編集部が皆さんに紹介したい回答を一部紹介いたします。
▼ITエンジニア編
・宇宙飛行士(24歳/ネットワークエンジニア)
・政治家(44歳/その他エンジニア)
・馬券師(48歳/システムエンジニア)
・通行人A(46歳/ネットワークエンジニア)
・スポーツ選手(31歳/システムエンジニア)
・大富豪(45歳/その他エンジニア)
・フライトアテンダント(29歳/セキュリティエンジニア)
・料理人(30歳/サーバーエンジニア)
・かいこさん(45歳/制御・組み込みエンジニア)
・YouTuber(37歳/プログラマー)
▼非エンジニア編
・占い師(39歳/クリエイティブ制作)
・発掘調査(38歳/企画職)
・音楽プロデューサー(53歳/専門職)
・エキストラ(40歳/一般事務)
・船の中の調理師(46歳/専門職)
・有名俳優(40歳/経営者)
・ホスト(33歳/生産系)
・自由人(20歳/生産系)
まとめ
調査の結果「ITエンジニアの副業経験率は約40%と全体の半分以下」その中で最も選ばれている副業は「投資系」ということが判明しました。ITエンジニアのスキルを活かした副業を行っている人はTECH Street編集部が予想していたよりも少ないという結果となりました。
これまでに副業経験がないITエンジニアも「機会があれば副業をしたい」と前向きな回答が多いにも関わらず、副業率が50%満たないのは“副業時間の確保が困難”、“本業への副業申請が煩雑”など、様々な外的要因が絡んでいることが推測されます。
また、副業経験者に対して、コロナ禍の勤務形態や環境変化がきっかけで新しい副業をはじめたかについて質問したところ「新しく始めた」と回答した人は約24%にとどまりました。コロナ禍で勤務形態がオフィスワークからリモートワークに移行して通勤がなくなったスキマ時間を副業にあてるという選択をしたITエンジニアはまだ少ない傾向にあるようです。
国内のIT人材不足が問題視されている中で、不足を補う選択肢の一つが副業採用であり、企業や個人にとって、もっと副業という選択肢が身近に感じられるよう推進するべきではないかと考えています。
また、副業の目的の1つに「本業以外の人脈/コミュニティが欲しいから」という回答があったように、同じ価値観、異なる価値観の人とつながることで個人の価値や可能性を拡げられると考えています。
ITエンジニアや様々な職種の人と関りながら次のアクション、新たな経験や環境につながるきっかけとして副業を起点としたコミュニティも積極的に活用してほしいと思います。
今回の調査に関する内容は以上となります。
今後もTECH Street独自のリサーチをしていきますので次回もご期待ください!