
こんにちは!TECH Street編集部です。
連載企画「ストリートインタビュー」の第63弾をお届けします。
※記事公開時点(2026年5月)の内容を記載しています。
「ストリートインタビュー」とは
TECH Streetコミュニティメンバーが“今、気になるヒト”をリレー形式でつなぐインタビュー企画です。
企画ルール:
・インタビュー対象には必ず次のインタビュー対象を指定していただきます。
・指定するインタビュー対象は以下の2つの条件のうちどちらかを満たしている方です。

“今気になるヒト”佐藤さんからのバトンを受け取ったのは、Dress Code株式会社 津田 薫さん。
ご紹介いただいた佐藤さんより「津田 薫さんを紹介します。彼は、2019年頃に同じチームで一緒に開発をしていたメンバーであり、先輩です。技術的な知見も活用しつつ、ビジネスサイドにも入り込んで問題解決をゴリゴリしてくれる、とても頼りになるエンジニアです。2026年ではどんな領域に興味を持って、活動 & 活躍しているかをお聞きしたいです!」とお言葉をいただいております。

津田 薫 氏
Dress Code株式会社
スタートアップで、開発環境や運用の仕組みづくりもやる雑食エンジニア。大手ベンダーとベンチャー双方を経験し、異なる規模・文化で培った視点を活かして、創業期のスピードと将来の安定性を両立できる仕組みづくりを探求中。圧倒的猫派。
- 自ら価値を定義し、形にする力。エンジニアとしての「基本スタイル」の原点
- 「自発的な先回り」こそが生存戦略
- 「シンプルさ」が最大の武器。コンパウンド戦略を支える基盤の哲学
- 「適切な環境」と「圧倒的行動量」が、変化の激しい時代を生き抜く武器になる
── まずは、現在の津田さんを形作る原体験をお聞かせください。
津田: 私は元々、エンジニアを志して情報系を専攻していたわけではありません。大学は経営学部で、当時はバンド活動に明け暮れる、自由を謳歌するタイプの大学生でした。就職活動の時期を迎え、初めて「仕事」というものに真剣に向き合い始めたとき、根底にあったのは「手に職をつけ、自立して生きていきたい」という想いでした。
その際、一つのきっかけとなったのが、中・高校生の頃に親しんでいた「ハンゲーム(現:hange)」や「ニコニコ動画」といったネットコミュニティです。一人のユーザーとして深く関わっていた背景から、「IT業界なら自分もいけるのではないか」という漠然とした考えが芽生えました。
また、大学時代に唯一のめり込んだ授業が、プログラミング(VBA)を駆使した「待ち行列」のシミュレーションです。例えば「レジの台数をいくつに増やせば、行列の待ち時間を最小限に抑えられるか」といった現実の課題を、数式とコードで解き明かす試みです。ロジックを組み、期待通りのアウトプットを導き出すプロセスを純粋に面白いと感じたことで、「この道を仕事にしたい」という確信が芽生えました。そして、未経験からでもその思考力を武器に挑戦できる「株式会社ワークスアプリケーションズ」との出会いがあり、入社を決めました。
── 当時、未経験ながらITの世界で通用すると感じたきっかけは何だったのでしょうか。
ネットゲームを通じてテクノロジーに対する心理的障壁が低かったことに加え、中学生の頃に自らホームページを運営していた経験が大きいです。当時はギリシャ神話に傾倒しており、その知識を発信するサイトを作って遊んでいました。自分の作ったものが世界中に公開される喜びを知っていたため、テクノロジーを道具として何かを作り出す行為に抵抗感がなかった。それが最大の根拠だったのかもしれません。
自ら価値を定義し、形にする力。エンジニアとしての「基本スタイル」の原点
── 未経験からエンジニアの道へ進まれましたが、現場に配属されるまでにどのような経験を積まれたのですか。

入社直後に課された半年間の「突破型研修」が、私にとって大きな壁でした。これは、実務に即した難題を自力で解決しながらプログラミングや業務知識を習得する、成長重視の独自プログラムです。
課題をクリアしない限り配属されないという非常にシビアな環境でしたが、要件定義から実装、テストまでを一気通貫でやり遂げる中で、バラバラだった知識のピースが一つずつ埋まっていく感覚は、むしろ快感ですらありました。
この濃密な「研修期間」があったおかげで、現場配属後も戸惑うことなくスムーズに業務へ入ることができました。「自ら価値を定義し、それをどう形にするかを周囲と議論しながら進める」というエンジニアとしての基本スタイルは、間違いなくこの研修を通じて私の血肉となったものです。
── ワークスアプリケーションズ社での6年間では、どのような収穫がありましたか。
一貫して企業のITインフラを支えるID管理製品の開発に携わりましたが、最大の収穫は「未知の領域に対するキャッチアップの型」を確立できたことです。
私は情報系出身ではないため、配属当初は周囲との知識差に危機感がありました。しかし、幸いにもチームは実装時点でモダンだったOSSやフレームワークを積極的に取り入れる環境で、ここで、ただドキュメントを読むだけでなく、OSSの内部構造まで深掘りして「仕組み」を理解する重要性を叩き込まれました。
── 特に、バージョン管理システムをSVNからGitへ移行するプロジェクトに自ら手を挙げた経験が大きな転換点だったとか。
はい。当時はまだGitがデファクトスタンダードになりつつある過渡期で、純粋な興味から「自分たちの環境にも取り入れたい」と手を挙げました。
いざ移行を始めると、OSSを自社環境で動かす際に、ドキュメント通りにはいかない予期せぬ不具合に何度も直面しました。自社製品ではない、全く未知のソースコードを一行ずつ読み解き、原因を特定して修正パッチを当てる……。この「正解がどこにも書いていない問題を、自力で突破するプロセス」を経験したことで、エンジニアとしての技術的感度が飛躍的に高まりました。
「自発的な先回り」こそが生存戦略
── ワークスアプリケーションズでの6年を経て、ビットキーへと転身されました。当時の心境はいかがでしたか。

ビットキーに入社したのは設立から半年ほどのタイミングで、まさにプロダクトを世に送り出そうとする怒涛のフェーズでした。創業メンバーの多くはソフトウェアを得意としており、物理デバイスやファームウェアはゼロから作り上げていくフェーズにありました。
しかし、私にとってはそれが最高に面白い環境でした。ECサイト構築からサプライチェーン管理、モバイルアプリ、SRE、セキュリティ、QA体制の構築まで、境界線なくあらゆる領域に首を突っ込むことができたからです。
── 多岐にわたる領域へ、スムーズに適応できたのはなぜでしょうか。
私は、実際に手を動かす「実体験」を通して本質を理解するタイプなんです。以前から趣味でプロダクトの試行錯誤を繰り返してきたこともあり、ビットキーでの「正解を自分たちで定義していく」状況は、私の「手を動かして学ぶ」スタイルを最大限に活かせる最高の遊び場でした。こうした「自ら手を動かして道を作る」スタンスは、私のキャリアにおける生存戦略でもあります。先回りして自ら課題を見つけ、自分の得意な領域へ引き寄せて動く。この「自発的な先回り」を徹底することこそが、自分のリズムでエンジニアリングを楽しみ続けるための秘訣なのだと考えています。
「シンプルさ」が最大の武器。コンパウンド戦略を支える基盤の哲学
── 現在、Dress Code社で担っている具体的なミッションについても教えてください。

弊社の強みである「コンパウンド戦略」の核となる、共通基盤の設計・構築をリードしています。人事、情シス、総務といった分断されがちなSaaSを一つの強固な基盤に統合し、データをシームレスに繋ぐことで無駄を徹底排除する戦略です。
この設計において最も大切にしているのは、「シンプルさを保ち続けること」。基盤が複雑化すると、その歪みは必ず上に載るアプリに滲み出し、ユーザーの使い勝手を損ないます。堅牢かつシンプルでありながら、最大限の表現力を持たせる。この二律背反をどう両立させるかは、パズルを解くような感覚です。現在はBPMN2.0やイベントソーシングといった手法を取り入れ、データの信頼性(SSoT)を維持しながら、次なるステップとして「AIフレンドリーな基盤」への進化に心血を注いでいます。
── 「AIフレンドリーな基盤の構築」という話がありましたが、まさに前回の取材対象者である佐藤さんから届いている「今、最もエネルギーを注いでいる領域は?」という質問に対する答えそのものになりそうですね。
おっしゃる通りです。今お話しした基盤を、いかに実際の「AIによる業務自動化」へと昇華させるか。その一点に、エネルギーを注いでいます。
単なる便利なチャットボットを作る段階はすでに過ぎています。私たちが今向き合っているのは、AI特有の「非決定的な挙動」を、いかに厳格な「業務フロー」の中で制御し、決定的なアウトプットへと落とし込んでいくかという挑戦です。
── 進化のスピードが非常に速い領域ですが、キャッチアップの難しさを感じることはありませんか?
技術は常に進化しますが、本質は変わらないと考えています。その時点でベストな判断を下し、その「判断根拠」さえ論理的に残しておけば、新しい技術が登場しても柔軟にアップデートしていけるはずです。
日々起こる予測不能な問題を一つずつ構造化し、解決していく。その連続こそが、私にとってのエンジニアリングの楽しさそのもの。変化を恐れるよりも、そのスピード感の中で最善の構造を追求し続けることに、何よりのやりがいを感じています。
「適切な環境」と「圧倒的行動量」が、変化の激しい時代を生き抜く武器になる
── 最後にこの激動の時代を生き抜くために、エンジニア読者へアドバイスをお願いします。

ポイントは2つあり「適切な環境に身を置くこと」と「圧倒的な行動量を増やすこと」です。
もし今の環境で誠実な努力が認められないと感じるなら、正当な努力が認められる環境へ移る選択も重要です。そして、結局のところ圧倒的な経験値を積まなければ、真の意味での成長はできません。IT業界は変化が激しいからこそ、実際に手を動かして失敗を経験してみなければ理解できないことが多い。私は一時期、副業を4つ並行していましたが、そうした「行動量」が自信を形作ります。
── 貴重なお話をありがとうございました。それでは、次回の取材対象者をご紹介いただけますか。
山本寛司さんをご紹介します。ビットキー時代の上司で、現在は Dress Code社にも参画していますが、メインは株式会社DeepGrooveの代表取締役を務めている方です。
彼は経営者としてのビジネス感覚と言語化能力が極めて秀逸である一方で、今でも自らエンジニアとして手を動かし続けている稀有な存在です。技術への真摯さと経営視点を併せ持つ彼の、行動の原動力をぜひ深掘りしてほしいです。
(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/ 編集:TECH Street編集部)



