
こんにちは!TECH Street編集部です。
連載企画「ストリートインタビュー」の第62弾をお届けします。
「ストリートインタビュー」とは
TECH Streetコミュニティメンバーが“今、気になるヒト”をリレー形式でつなぐインタビュー企画です。
企画ルール:
・インタビュー対象には必ず次のインタビュー対象を指定していただきます。
・指定するインタビュー対象は以下の2つの条件のうちどちらかを満たしている方です。

“今気になるヒト”高丘さんからのバトンを受け取ったのは、株式会社ビットキー 佐藤 拓人さん。
ご紹介いただいた高丘さんより「株式会社ビットキーの佐藤 拓人さんをご紹介します。選定理由は二つあり、一つは、私が主催する「イベントソーシング勉強会」での彼の技術発表が素晴らしく、特に、事実に基づいたデータ管理による改善の話は、もっと聞きたいと思いました。もう一つは、佐藤さんが技術記事サービス「Zenn」に投稿した「エージェンティック・コーディングの実装戦略」を読み、AI活用プログラミングに関する質の高い記事で、彼がどのように的確な発想に至るのか、その背景を詳しく伺いたいと思い推薦しました。」とお言葉をいただいております。

佐藤 拓人 氏
株式会社ビットキー
東京大学卒業後、ワークスアプリケーションズへ新卒入社。2019年春にビットキーへジョインし、ソフトウェア開発に携わる。2020年よりhomehubの開発に関わり、現在はhomehub開発部部長を務める。複雑な事象を読み解いて構造化し、抽象化 / 汎用化できるように設計し、低コストで多くの価値をだせる開発をすることを好む。
- 建築からソフトウェアへ。物作りの本質を求めた原体験
- 「何が最善か」をフラットに議論できる環境を求めて
- 成長痛の最中で磨かれた「生存戦略」
- ビットキーでの挑戦:プロダクトを構造化する醍醐味
- 技術を「納得」の手段へ。AIネイティブな未来を見据えて
建築からソフトウェアへ。物作りの本質を求めた原体験
── まずは、佐藤さんのテクノロジーや物作りにおける原点から教えてください。

佐藤: 振り返ってみると、小・中学校の頃から物作りが大好きでした。その興味が次第に「形」としての美しさ、つまり建築の分野へと広がっていったのは自然な流れと言えます。 大学院では建築学の「構造系」研究室に所属しました。構造物にどのような力を加えれば耐えられるのか。解析プログラムを通じて物理的なシミュレーションを行う毎日を過ごしていました。
当時は「有限要素解析」という手法を扱っていました。物体を小さな要素に分解し、力がどう伝播して形状がどう変化するかを解析するものです。この計算モデルを組む過程で、コンピューターによる課題解決の面白さに魅せられていきました。 ただ、いざ就職活動を始めると、建築業界の伝統や慣習を重んじる文化と、自分自身の価値観との間にギャップを感じるようになります。そんな中、ITベンチャーのインターンに参加し、その圧倒的な「スピード感」に衝撃を受けたのです。建築は形になるまで数年単位を要しますが、ソフトウェアは昨日書いたコードが今日には価値を生む。自分の思考を即座に形にできる合理性に惹かれ、IT業界への転身を決めました。建築で培った「構造を捉える力」をデジタルの世界で試してみたいと考えたのです。
「何が最善か」をフラットに議論できる環境を求めて
── ベンチャーを選んだ理由はどこにあったのでしょうか。

佐藤: インターンを通じて感じた、環境の「合理性」にあります。ルールや形式よりも、「今、目の前の課題に対して何が最善か」を唯一の基準に判断する姿勢に深く共感しました。既存のしがらみに縛られず、純粋にプロダクトを良くすることに集中できる。 最近、弊社のCEOが既成概念を疑う意味で「世の中の『当たり前』に縛られない」という話をよくしていますが、私も昔から垣根なく最善を追求できる環境を求めていました。当時の私にとって、ITベンチャーこそが、自分の頭で納得して動ける場所だと感じたのです。
── 建築や数学の知見は、エンジニアとしてどのように活かされていますか?
佐藤: 物事を抽象化し、構造的に捉える「考え方」が活きています。私は数学的な美しさに惹かれるタイプなのですが、それは設計の美しさにも通じます。なぜそのようなコード構造になっているのか、その「必然性」には非常にこだわりを持っています。
── 「数学的に美しい」とは、具体的にどのような状態でしょうか。
佐藤: 実現したい事柄に対して、最小限の手数や構造で論理的整合性が取れている状態です。建築の構造計算でも、無駄に太い柱は「不細工」だとされます。最小の材料で最大の強度を出す洗練された構造。それと同じことがプログラムの設計にも言えます。無理のある構造は必ず運用で歪みを生むもの。その歪みを排し、純粋な論理で構成されたシステムを追求することが、私のエンジニアリングの原動力です。
成長痛の最中で磨かれた「生存戦略」
── IT未経験からエンジニアを志した際、どのようにスキルを磨いていきましたか?

佐藤: 1社目の研修で、「顧客の課題解決のためにプロダクトを自ら設計すること」を徹底的に叩き込まれました。課題設定からMVPの定義まで、設計者としての視点を学んだ経験が今の基礎になっています。 この「設計」は、建築の意匠設計と本質的に同じです。土地の文脈まで考慮して建築を提案する手法は、ソフトウェア開発における「ユーザーの真の課題は何か」を突き詰め、機能へと昇華させるアプローチと全く変わらないのです。
また、配属された財務システム開発の現場は、複雑性の極みでした。組織が急成長していた時期で、手厚い教育を待つ余裕はありません。一円のミスも許されないシビアな業務を任される中、自力で答えを見つけ出す必要がありました。そこで私は、独自の「コミュニケーション戦略」を立てることにしたのです。
── 具体的にどのような戦略だったのでしょうか。
佐藤:先輩に「教える価値がある」と判断してもらうことを意識しました。
ただ「分かりません」と聞くのではなく、自分なりに徹底的に調べた上で、「自分はここまで理解し、解決策としてこう考えているが、この認識で間違いないか」という形でぶつけるようにしました。 相手の時間を奪うのではなく、自分の理解をレビューしてもらう。こうした姿勢を貫くことで信頼を勝ち取ることができました。カオスをどう構造化し、厳しい環境で立ち位置を確立するか。エンジニアとしての生存戦略を学ぶ貴重な機会となったのです。
ビットキーでの挑戦:プロダクトを構造化する醍醐味
── その後、ビットキーに入社されたきっかけは何だったのでしょうか。

佐藤: 「人のせいにしない」「理想から逆算してやり遂げる」という文化に惹かれたからです。このプロフェッショナルな集団と一緒なら、胸を張って子供に見せられる仕事ができると確信し、ジョインを決めました。
── 現在、佐藤さんが担っているミッションについて教えてください。
佐藤: スマートロックを起点に、物理的な世界の断絶を解消することを目指しています。私は「homehub」というプラットフォームを通じ、暮らしの領域におけるプロダクト開発をリードしています。管理会社向けの内見管理から、入居者向けの共用施設予約まで、アプリ一つで完結する世界を構築中です。
── 開発をリードする上で大切にしていることは何でしょうか。
佐藤: 「プロダクトのあるべき構造を守り抜くこと」に尽きます。ビットキーは扱うドメインが非常に広く、少人数で複雑な機能を統合しなければなりません。 たとえ便利に見える機能の要望でも、それが論理構造を損なったり、技術負債になる可能性があるなら、専門家として代替案を提示し、はっきりと異を唱えることもあります。短期的な利便性と、中長期的な健全性のバランスをシビアに見極める。この難問に挑むこと自体が、私にとっての最大のモチベーションとなっています。
技術を「納得」の手段へ。AIネイティブな未来を見据えて
── 技術情報を咀嚼する際に意識していることはありますか?

佐藤: 技術を「目的」ではなく「手段」として捉え、その意義を自分が心から納得できるまで突き詰めることです。ドキュメントを読み込むだけでなく、実際にコードを書いて触ってみて、その「手触り」を体感する。「自分を説得できる言葉」を持って初めて、人にも正しく価値を伝えられるのだと考えています。
── 今後の挑戦として、特に注目している領域はありますか?
佐藤: やはりAIですね。私の興味があるのは、人間とAIの役割分担です。最終的に人間が責任を持つ構造が続くからこそ、AIに自走させつつも人間が管理・検証できるアーキテクチャをどう構築するか。 AIの進化に合わせてリリースプロセスやガードレールをどう再定義するか。複数の専門領域を横断してAIネイティブな新しい開発プロセスを確立していくことが、今の私の向き合い方です。メンバーにも、AIをどう使いこなすかの先にある「AIとの共生」を考えてほしいと伝えています。
── 最後に、エンジニアに向けてこの時代を生き抜くためのメッセージをお願いします。

佐藤: 「何が一番楽しいか」を大切にしてほしいです。ベンチャーの現場はタスクが山積みですが、単に消化するだけでは退屈ですし、疲弊してしまいます。 忙しい業務の中でも、自分がこだわりたい部分、110点の結果を出したい部分を一つでも見つけることが、仕事を楽しむコツだと思います。やる意義が分からない仕事も、納得できるまで対話し、自分の哲学を込めることで「やりたいこと」へ変換する努力が大切です。 日々の開発でも、「ここだけは、将来誰が見ても美しいと思える設計にする」という小さなこだわりを持つ。その積み重ねが、仕事への誇りになり、困難を乗り越えるエネルギーになります。納得感を持って没頭し、自分の価値を証明し続けること。それが結果として、あなたらしいキャリアを形作っていくのだと思います。
── 貴重なお話をありがとうございました。それでは、次回の取材対象者をご紹介いただけますか。
津田 薫さんを紹介します。
彼は、2019年頃に同じチームで一緒に開発をしていたメンバーであり、先輩です。技術的な知見も活用しつつ、ビジネスサイドにも入り込んで問題解決をゴリゴリしてくれる、とても頼りになるエンジニアです。2026年ではどんな領域に興味を持って、活動 & 活躍しているかをお聞きしたいです!
(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 編集:TECH Street編集部)
▼ストリートインタビューのバックナンバーはこちら




