【イベントレポート】各社の実サービスを支えるMLモデル開発者勉強会~各社の取り組みや課題から学ぶ会~

こんにちは、TECH Street編集部です!

この記事では、2025年8月20日(水)に開催した「各社の実サービスを支えるMLモデル開発者勉強会~各社の取り組みや課題から学ぶ会~」の登壇者の発表内容の紹介と、イベント中に回答しきれなかったQ&Aを記載しています。

 

登壇者はこちらの方々!

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浦山 昌生 (Masao Urayama)

パーソルキャリア株式会社
シニアデータアナリスト

AI ベンダーでデータサイエンティスト兼PL(プロジェクトリーダー)として機械学習モデルの開発やデータ分析の受託業務に従事。それまでは、ネットワークエンジニア、情報セキュリティエンジニアとして顧客の課題解決に対応。2021年10月にパーソルキャリアに入社し、推薦モデルの開発、情報検索システムの開発等、先進的なデータの活用を実践。

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鴨田 将来(Masayuki Kamoda)

エムスリー株式会社
AI・機械学習エンジニア

自動運転向け機械学習システムや大量文書RAGシステムの構築などを経験。2024年にM3にJoin。主に製薬企業向け機械学習システムを担当

 

転職希望者と求人のマッチングモデル開発について~これまでと今後の展望~

MLによって自己進化するFAQシステムの話

 

Q&Aコーナー

(Q)AIガチ勢から見て今の生成AIにどう感じますか?

浦山:生成AIも機械学習も「どこまでできて、何ができないか」の見極めが必要だと思っています。そのために継続的な情報収集と「実際に触ること」で腹落ちする感覚を持ち続けたいと思っています。

鴨田:顧客価値を最大化するためのツールとしてモデル・コードそれぞれの開発の高速化にありがたく利用させていただいています。
コード開発ではデモ作成や自動コードレビューなど様々な点で活用しているので皆様も活用していただければと思います。


(Q)AI時代のアナリストとして、会社の中でどう価値を発揮するか。

浦山:この問いは、ぜひ皆さんと一緒に考えていきたいテーマです。
従来のデータアナリストの役割と、生成AIの活用は必ずしも重なるものではないと考えています。そのため、双方をうまく使い分けるスキルが今後ますます重要になると感じています。

鴨田:昨今はAIモデルをどのように社会実装するか?というのが課題となっている印象です。なのでデータ収集やレポートの作成より、そこで見つけたビジネス課題を深く理解し、「解くべき問い」を立てる力が重要になってくると考えます。それに加えてAIをうまく活用する力ももちろん必要だと考えています。


(Q)AIエンジニア自体の求人とか年収ってどんな感じなのでしょうか?

浦山:以前と比べて、AIエンジニアの求人の幅は広がっていると感じます。
採用側のニーズも流動的だという印象です。

鴨田:求人観点だとMLが利用できるデータ基盤がどの会社も整ってきた今以前より拡大していると思っています。


(Q)社内のAI開発者の体制について

浦山:データサイエンティスト30名程度、AI系エンジニア130名程度の体制です。それ以外に、企画やサービス側のエンジニアがいます。それぞれで得意なサービスや領域があるので適するところで活躍しています。

鴨田:現在AI・機械学習チームは15名ほどの規模です。M3のAIチーム特性としてなんでもやる風土なので役割がかっちり決まっているわけではないですが、名義として、MLエンジニアとSREが5:5くらいだと思います


(Q)活用する上で、いわゆる使えないデータが蓄積されている状況は様々な企業でよくあるかとおもいます。パーソルさん内における使えないデータを増やさない取り組みは何かしていますか?

浦山:現状、社内にはさまざまな場所にデータが点在しており、それらをつなぎ合わせるための取り組みが進められています。
「使えないデータをどう減らすか」という観点での議論はあまり多くありませんが、それよりも、点在しているデータをいかに統合し、活用可能な形にしていくかという動きが中心になっていると感じています。

 

(Q)データエンジニア、データアナリスト、データサイエンティスト、どんな体制なのかは確かに聞いてみたいです。

浦山:AI系のモノづくり系では、データエンジニア、インフラエンジニア、機械学習エンジニア(バックエンド、フロントエンド)、データアナリスト(データサイエンティスト)というロールがあります。プロジェクトでは企画やサービス側のエンジニアと一緒に、AI系エンジニアが対応します。

 

(Q)推薦システム以外ではどのようなMLモデルがあるのでしょうか。

浦山:法人様向けのモデルですと、例えば営業活動の効率化を目的とした意思決定支援のモデルがあります。具体的には、「今、どの企業にアプローチすべきか」といった判断を支援するモデルです。


(Q)KPIを設定する際に、経営層や事業部門と合意形成するときに難しかったことや課題はあったのでしょうか。

浦山:難しいことや課題は多いです。ステークホルダー間の合意を形成するのも仕事の一つになります。良い方向へ向かうためにデータサイエンティストも事業やビジネス目標を理解して提案し続ける動きをしています。

鴨田:特に難しかったという経験はありません。というのも、弊社にはPJのKPIも含めてエンジニアが主体的に動く文化が根付いており、経営層から一方的に方針が降りてくるというより、エンジニアが責任を持ってPJを進めていく形が基本だからです。


(Q)求人サービスベンダー界隈ではこういった取り組みは当たり前の時代なのでしょうか?dodaさん特有?

浦山:弊社だけが特別に進んでいるというわけではなく、学会などで発表されている事例を見る限り、同様の取り組みを行っている企業も多くあります。そういった意味で、私たちも“今どきの取り組み”をしている、という感覚でいます。


(Q)推薦モデルを改善する時に、企業側、候補者のキャリア側どちらに寄せすぎてもいけないと思いますが、どのようにバランスをとってますか。
ジェンダー、年齢、性別などのバイアスの影響など、推薦モデルならではの難易度、課題があればお聞かせください

浦山:バランスをどう寄せるかは我々としても永遠の課題です。
どちらか一方に最適化されたモデルを作るというよりも、状況に応じて柔軟かつタイムリーに調整できる仕組みを目指しています。現在もその実現に向けて、試行錯誤を続けているところです。
個人的には、ユーザーにとっての「ハッピー」を定量化し、それをモデルが学習できるようになると理想的だと考えています。バイアスの問題も含め、誠実に向き合い、継続的に取り組み続ける姿勢が何より重要だと思っています。


(Q)製薬企業向けの機械学習ってどんなのか気になります!ほとんど知らない業界です

鴨田:例えば薬の開発・マーケティングのために意向予測モデルを介してAI医師に市場調査できるプロダクトや、m3.comという医療従事者向けポータルでの配信コンテンツの内容や配信対象のマッチングシステムなどを開発しています!


(Q)FAQサイトがイマイチだと、高感度むっちゃ下がりますよね…FAQの満足度が下がる要因ってUI/UXだけかと思っていました。この範疇にMLって言うのはいま常識なのでしょうか?

鴨田:LLMやML自体のモデル発展とともにMLが介入できる領域が増えたと感じます。他の領域でも「満足度」というのをうまく指標や数値化できればMLが介入する余地があると思います!


(Q)最近問い合わせ系のチャットボットがメチャ増えていますが、FAQ自体への影響とか掛け合わせとかってどんな進化とか変化があるのでしょう?

鴨田:RAGが主に使われているかなと思います。これは、ユーザーが入力した問いに対して、適切な回答を既存の情報から検索し、それをもとに応答を生成する仕組みです。
FAQの情報をもとに、より的確な回答をレコメンドするチャットボットにもこの技術が取り入れられているケースが増えており、FAQそのものの改善やブラッシュアップにも一部活用されていると思います。    FAQの情報をもとに、より的確な回答をレコメンドするチャットボットにもこの技術が取り入れられているケースが増えており、FAQそのものの改善やブラッシュアップにも一部活用されていると思います。


(Q)エムスリーさんではAI機械学習チームがどのプロジェクトにアサインされるかなどの基準は決まっていますか。開発組織が発起人となるプロジェクトが多いのでしょうか。それとも事業部門から要望を受けてアサインされるでしょうか。

鴨田:基本的には、エンジニアが自ら手を挙げてプロジェクトに参画するスタイルです。たとえば「どこにどんな記事を掲載するか」といったレコメンドシステムの開発に対して、「私がやります」と立候補する形で関わりました。また、「問い合わせ件数を削減したい」といった課題に対しても、自分から手を挙げて取り組んでいます。このように、自主性を重んじる文化が根付いています。


(Q)どのような基準で機械学習チームやアナリスト、エンジニアがアサインされるのか

浦山:スキルをもっているかどうか、取り組みたいかどうかという気持ちの両方を見てアサインしているかと思います。

鴨田:アサインではなく、自主的にやりたい・やるべき仕事を取りに行く文化です。エンジニアが自主的に立候補できる心理的背景として、サポートできるメンバーが多数いるので、スキルが心配でも挑戦できる心理的安全性もあると思います。


(Q)FAQシステムのゴールって、究極的に使いやすくしたらFAQを見なくても済むようになることだと思います。こうなるとFAQシステムの精度改善の指標ってどのようにすべきでしょうか?

鴨田:KGIとしては「電話での問い合わせの減少」を掲げます。このKGIを補完するKPIとして「自己解決率」を継続的に監視します。 今後は、このKPIのデータを分析し、FAQコンテンツの追加(運用)や、検索機能・UI/UXの改良(開発)を機動的に行える「改善フェーズ」へとプロジェクトを移行します。大規模な初期開発は完了となりますが、自己解決率を高いレベルで維持するため、データに基づいた改善を続けていきます。

 

(Q)テキスト埋め込みモデルの選定ってどうしていますか?

鴨田:まずは手軽に利用できるモデルを実環境で動かしてみる、というのが一般的で我々もやっている方法です。そもそもMLを使うべきかどうかの判断も含めてその方法を採っています。そしてこの手の課題は埋め込みモデル以外のタスクが大きく精度に寄与することが多いと思っていますので、そこまで気にしてない。というのが回答かもしれません


(Q)Elasticsearchを選定したポイントは何でしょうか?

鴨田:OpenSearchとElasticSearchで迷いました。マネージドなOpenSearchを使うのも良いのですが、、FAQの規模とSLAがGKEでのセルフホストElasticSearchで可能でコストメリットがあったこと、Helmを利用したデプロイも技術的挑戦として面白かったので セルフホストのElasticSearchを採用しました。

 
 

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