【連載58】ビジョンを技術で実装する。事業をつくるエンジニアが持つ「プロダクト目線」

 

こんにちは!TECH Street編集部です。

連載企画「ストリートインタビュー」の第58弾をお届けします。

「ストリートインタビュー」とは

TECH Streetコミュニティメンバーが“今、気になるヒト”をリレー形式でつなぐインタビュー企画です。

企画ルール:
・インタビュー対象には必ず次のインタビュー対象を指定していただきます。
・指定するインタビュー対象は以下の2つの条件のうちどちらかを満たしている方です。

“今気になるヒト”宮城さんからのバトンを受け取ったのは、株式会社 ispec  山田 佑亮さん。

ご紹介いただいた宮城さんより「医療DXに挑むスタートアップispec CTOの山田さんをご紹介します。彼はタイミーのサーバーサイドを0から作った方で、その後複数のスタートアップでもプロダクト立ち上げに携わった後、ispecさんにCTOとしてジョインされました。深い思考と実行速度の両方を併せ持つ方で、タイミー時代から今でも何度も相談させていただく機会があり、私が人生で一緒に働けてよかったなと思うエンジニアの1人です。ぜひ山田さんのキャリアや頭の中を覗いてみたいです。」とご推薦のお言葉をいただいております。

*

山田 佑亮 氏

株式会社 ispec / 取締役・CTO

慶應義塾大学政策・メディア研究科にて機械学習の研究を行い、ACM Multimediaや情報処理学会論文誌で研究が採択される。卒業後、スタートアップ数社でプロダクト立ち上げを経験し、ispecにCTOとしてジョイン。クラウド型電子カルテのテックリードやプロダクトマネージャーを歴任し、現在は病院向けIaaS事業の事業責任者。2024年度、デジタル庁が推進する標準型電子カルテプロダクトワーキンググループのメンバー。

 

 

エンジニアとしてのキャリアの原点

――まずは、現在の山田さんを形作る原体験をお聞かせください。

 

 

山田:私のキャリアのスタートは、高校3年生の時に観た映画『ソーシャル・ネットワーク』にあります。

ゼロからプロダクトを作り、それが多くの人に使われるサービスへと成長していくストーリーに心を揺さぶられ、漠然と「起業したい」「プロダクト開発がしたい」と考えるようになりました。

兄がプログラミングを学んでいたこともあり、私も独学でプログラミングを始めました。ちょうど機械学習やAIが注目され始めた時期で、もともと関心のあった脳科学に通じる分野だと感じたことが、のめり込むきっかけの一つになりました。

 

大学1年生のとき、まずは実務経験を積みたいと考え、プログラミングや機械学習に関わる仕事を探してインターンシップに参加しました。これが、私にとってエンジニアとしての第一歩となりました。

2つのインターンで得た「技術」と「事業」の視点

――どのような企業でインターンシップに取り組まれたのですか?

 

 

最初のインターン先は、IoT系の企業でした。IoTデバイスから収集したデータをもとに、電力消費量を予測するようなモデルを構築する業務を担当しました。

 

周りには優秀な方が多く、自分の作ったモデルが採用されることは少なかったのですが、技術的な基礎を固める良い「筋トレ」になったと思います。その後、人材系サービスを提供するLAPRAS株式会社で、初期の機械学習エンジニアとしてインターンを始めました。

 

ここでは、より事業に直結する内容に取り組みました。例えば「何曜日の何時にスカウトメールを送れば最も返信率が高いか」といった分析から、具体的な施策を提案するなど、ビジネスを意識した経験を積むことができました。

成長のきっかけは「起業サークル」と「行動力」

――早い段階から実務経験を積みたいという想いはどこか生まれたのでしょうか?

それは所属していた起業サークル「KBC」の存在が大きいです。
周囲には高校生の頃から起業しているメンバーもおり、「インターンをするのが当たり前」という環境でした。その中で「自分も何か行動しなければ」という良い意味での焦りを感じていたのです。

 

KBCに入り、大きな転機となったのは、サークルのビジネスコンテストで、後にタイミーを創業する小川嶺さんとチームを組み、優勝したことです。この実績から繋がりが広がり、様々な方から「一緒に何かやらないか」と声をかけていただく機会が増えました。そして、小川嶺さんから声をかけていただき、タイミーの立ち上げに参加したのです。

プロダクトをゼロから一気に立ち上げた経験

――当時を振り返って印象に残っていることはありますか?

 

 

小川嶺さんから初めて声をかけてもらったとき、タイミーは本当にゼロの状態からのスタートでした。
「1ヶ月後にリリースしたい。船でリリースパーティーをする予約はもうしてあるから」と言われて……正直、「一体どういうことなんだ」と思いました(笑)。この時の出来事はとても印象に残っています。しかし、最終的には「じゃあ、やりましょう」と腹を括ったのです。

私が担当したのは、ゼロからコードを書くところから始めて、設計も含めて、一気に進めていきました。結果的に1ヶ月という期限にはほんの少しだけ間に合わなかったのですが、ほぼそのスピード感で立ち上げることができました。

 

当時は正直、根拠はなかったのですが、「自分ならやれる」という不思議な自信だけはあったのです。

このスピードで形にできたのは、やはりプロダクトに対する深い理解があったからだと思っています。「このサービスは、誰のどんな課題を解決するのか」「ステークホルダーにはどんな人たちがいるのか」──そういったことを徹底的に考え抜きました。

もともと、ビジネスやプロダクトの全体像を把握するのが好きだったこともあり、当時は仕様をしっかりと理解したうえで、設計から実装までを一気に進められた、というのが大きかったと思います。

無限に「0→1」を立ち上げる環境を求め、ispec社へ

――その後、山田さんはどのような道に進まれたのでしょうか?

 

 

タイミーの事業が急成長し、組織体制が整い、事業フェーズが成熟していく中、私は明確なキャリアプランがあったわけではありませんが、「まだやったことのないことを体験してみたい」という純粋な好奇心が湧きました。

 

そして、タイミー社に携わっていたのと同時期に関わっていたのが、現在在籍している株式会社ispecでした。ispecはスタートアップのプロダクト開発を支援している会社で、つまり、無限に「0→1」ができる会社だったのです。「0→1をもっとたくさんやりたい」という気持ちと、「どうすれば0→1がうまくいくのか、その再現性はどこにあるのか」という問いへの興味があり、ispecへの入社を決めました。

 

 

――当時、山田さんが入社された時、ispec社はどのような状況だったのでしょうか?

ispecはもともと自社プロダクト開発を目指していましたが、最初はなかなかうまくいかず、キャッシュを作るために受託開発を並行していました。そして、受託開発に舵を切ったタイミングで入社したのです。

 


――プロダクトをゼロから立ち上げる際、重要視していることについて教えてください。

声をかけてくださるスタートアップの多くは、プロダクト開発の実行能力が少ないケースが多いです。崇高なビジョンはあるけれども、それをどう形にするかがわからない。そこで我々が、そのビジョンを言語化し、プロダクトとしてどうあるべきかを考え企画段階から支援するようにしています。

 

そして、スタートアップでは、まず最小限の機能を持つMVP(Minimum Viable Product)を早くリリースし、ユーザーの反応を見ながら改善していくことが重要です。ここには技術的な視点が不可欠です。技術的に最も軽い構成でMVPを定義できれば、開発期間を4ヶ月から2ヶ月に短縮することも可能です。

技術的な観点と、事業としてやりたいことのバランスを取りながら「まずこれでいきましょう」と提案し、決まったら開発者を巻き込んでリリースまでこぎつけるように取り組んでいます。

医療ドメインの知識を活かし、次の事業を創る

――現在の会社の事業内容と、CTOとしての役割について教えてください。



ispecは、もともとスタートアップスタジオとして様々な事業を手掛けていました。しかし、3年ほど前に医療ドメインに事業を絞り、病院や医療系システムを開発している企業様との受託開発を続けてきました。この中で知見を蓄積し、これから自社プロダクト開発に投資していく、まさに重要なタイミングを迎えています。

そうした中で、私が担う役割は、もはや会社から求められるものではなく、「自分が会社をこうしたい」という強い意志がメインになっています。

 

具体的には、第一に、現在の受託開発プロジェクトを良い形で完了させつつ、自社プロダクト開発のための資金を確保することです。ここでどれだけの資金を確保できるかによって、その後のプロダクト開発に充てられる期間が、1年になるか半年になるか大きく変わってきます。

それと並行して、次のプロダクト開発事業に向けて、現在私自身もプロトタイピングを進めています。プロトタイプを作りながら、きちんと顧客を見つけてくることが非常に重要になります。

 

――今後の挑戦について教えていただけますか?

今後取り組んでいきたいことは、何よりもまず、プロダクトをしっかりと立ち上げ、事業として軌道に乗せることです。今回は病院や医療業界を対象としたプロダクトになるため、タイミーの時とはまた異なる、業界特有の商慣習や課題が存在します。そうした様々な制約がある中で、クオリティの高いものを作り上げていくことが明確に求められている挑戦だと認識しています。

AI時代に求められる、エンジニアの新たな働き方

――ありがとうございました。最後に、これからの時代にエンジニアとしてどのように立ち回るべきか、読者に向けてメッセージをお願いします。

 

 

今後のエンジニアの働き方についてお話しすると、AIやLLMの活用により、エンジニア間の差はより一層広がっていくでしょう。私は個人的に、「いかに抽象度の高い課題を扱えるか」が、今後ますます重要になると考えています。

 

事業全体を見渡せる人、プロダクトの一機能を見られる人、特定の技術レイヤーを担う人など、仕事には階層が存在します。AIの活用によって、一人でできることの範囲がどんどん広がっていくと、事業全体を自分で見て、開発はAIと協力し、顧客は自分の足で探してくる、といったスタイルも可能になります。

そうなった時に、「あなたはどのレイヤーまで関わりたいですか?」という問いが重要になります。

個人的には、プロダクトやお客様と直接向き合うエンジニアがもっと増えると面白いのではないかと思っています。自分が作ったものを、自分でプレゼンし、自分で売る。そうした経験は、きっと非常に嬉しいものだと感じるはずです。

 

コーディングのような作業はAIと上手く連携しながらこなし、お客様やドメインと向き合う時間をいかに増やすか。これこそが、これからのエンジニアにとって大切な視点になってくるのではないではないかと思います。

 


――貴重なお話をありがとうございました。それでは、次回の取材対象者をご紹介いただけますか。

次回は、私がWantedlyで働いていた時のメンターである竹野創平さんをご紹介します。

彼は私にとって、まさに「エンジニアの理想像」です。プロダクトへの深い愛と、卓越した技術力を併せ持つ方です。技術的に圧倒的な強さを持っているにもかかわらず、常に「プロダクトをどうしていくか」という視点が根底にあります。技術かプロダクトか、どちらかに偏らないその姿勢に、私は強く惹かれています。

現在は、自然の中に別荘を持つサービス「SANU」でシステムの開発をされています。彼がなぜそこまで鋭い視点で技術を見つめることができるのか、その思考プロセスについて、ぜひ聞いてみたいですね。

 

 

 

以上が第58回 山田 佑亮さんのインタビューです。
ありがとうございました!
今後のストリートインタビューもお楽しみに。 

 

(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:株式会社PalmTrees  / 編集:TECH Street編集部)

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