
※この記事は、2025年6月に開催されたイベントでの発表内容をレポートしたものです。
登壇者はこの方

神崎 将也 氏
パーソルキャリア株式会社
UXリサーチャー
2023年にパーソルキャリアに新卒入社。大学ではUXデザインを中心に学ぶ。現在は「PERSOL MIRAIZ」でUXリサーチを担当し、日々ユーザーと向き合い続けている。
神崎:この発表では、オフライン開催で取り組んだ「実践型学習を提供するキャリアスクール」を舞台に、「リアル」な学びの場と、休憩時間での「スキマ時間」の2つを活用しリサーチを行った実践例についてお話できればと思います。
新規事業でリサーチに取り組んでいる方・取り組もうと思っている方にとって参考になれば幸いです。
PERSOL MIRAIZとは?
まずは、今回リサーチを行ったサービス「PERSOL MIRAIZ」についてご説明します。

「PERSOL MIRAIZ」は、自己探究や学びを通じて「はたらく」を支援するサービスになります。
現職や転職といった選択肢ありきではなく、仲間やプロとの対話やトップランナーの実践知などを通じて、
自分らしいキャリアの形成を無料でご支援しています。
私がUXリサーチを担当したのは、この「PERSOL MIRAIZ」の一環として実施された実践型学習を提供する「キャリアスクール」です。
昨年取り組んだ「キャリアスクール」について
キャリアスクールは、業界のトップランナーを講師として招き、参加者が仲間とともに実践的に学び、キャリアに活かせる実績やスキルを短期間で習得することを目的に開校されました。

1〜2ヶ月の期間で、土日のいずれかに開催される少人数制の対面イベントです。1つのスクールは、合計2〜4回の講義と実践で構成されています。

キャリアスクールの一覧
「キャリアスクール」の1日の流れ
1日の流れは下図の通り、講義とワークを組み合わせた構成になっています。学びだけでなく、仲間との交流の時間も設けさせていただきました。

このようなキャリアスクールにおいて、私たちUXリサーチャーには、このリアルな場でしか得られない「学習体験」をどのように可視化し、改善に繋げていくかという役割が求められていました。
UXリサーチャーの役割
そのため、私たちUXリサーチャーに託された役割は、主に2つありました。

- 1つ目は、ユーザーに最も近い現場で参加者の変化や感情を「見える化」し、それを次のプロジェクトにつながる学びへと変換すること。
- 2つ目は、「PERSOL MIRAIZ」のチームメンバーが「今、現場で何が起きているのか」を共通認識として持てるようにすることです。
リサーチはUXリサーチャーだけで行うのではなく、他の職種の方々にもご協力いただきながら進めました。
UXリサーチを実施した体制は下図の通りです。キャリアスクールの運営を皆で協力しながら、その合間のスキマ時間を使って一緒にリサーチを行いました。

4つのUXリサーチ手法
では、具体的にどのようにリサーチを行ったのかをご説明します。
リサーチには、フィールドリサーチ・事後アンケート・ヒアリング・KPTの4つの手法を活用しました。
理由は、多面的なインプットを得て、構造的に現状理解し改善の厚みが出てくるようにするためです。
それぞれどのような設計をし、どのような点を工夫したかをご紹介させていただきます。

フィールドリサーチ
まず1つ目は、フィールドリサーチです。このリサーチは、クラスに参加できなかったチームメンバーでも、その場の雰囲気や様子をあたかもその場にいたかのように理解できるよう設計しました。そのために、当日の様子を写真やメモで記録し、現場の空気感や受講生の行動の背景として考えられる仮説も含めてドキュメントに可視化していきました。

工夫した点は、運営チームにも気づきや仮説をメモしてもらうよう依頼したことです。これにより、客観性の高い観察が可能になりました。メモの記入は10分程度で、複数人で気づきを出し合ったため、負担は大きくありませんでした。
事後アンケート
次に、事後アンケートについてです。
事後アンケートは、学習体験の満足度や転職意向の変化を測定するために実施しました。回答者の負担を最小限に抑えるため、NPSやCSATなどの選択式設問を12問以内、そしてその理由を深掘りするための自由記述設問を3問以内とし、全体で15分以内に回答が完了するように設計しました。

また、アンケート調査では回答率が非常に重要です。そのため、イベント当日にアンケートに回答していただく時間を確保し、全員の回答が終わるまで時間を取っていただきました。さらに、アンケート作成の工数を削減するために、設問のフォーマットを事前に作成しておき、各キャリアイベントに合わせて修正箇所のみを修正すればよい状態にしました。結果として、毎回のアンケート作成時間を、合計で30分程度に収めることができました。
ヒアリング
続いて、ヒアリングです。
アンケートやフィールドリサーチだけでは把握しきれない事柄や、さらに深く掘り下げたい点について、プロジェクトリーダーや各職種のリード層と「明らかにしたいこと」とその「背景」をすり合わせました。その内容を基に、私がインタビューガイドを作成し、イベント後の打ち上げの時間にヒアリングを実施しました。
ヒアリングは、当日に3名から5名ほどの協力者を募り、1人あたり約20分程度で深掘りできるようにしました。その際、要件定義やインタビューガイドを事前に協力者と共有し、質疑応答の時間を設けること、ヒアリングのコツを伝えることを徹底しました。

KPT
最後にKPTについてです。
「次に活かすこと」を明確にするため、イベント当日のメンバー全員に参加していただき、イベント終了後1週間以内に必ずKPTを実施しました。
また、PDCAサイクルをしっかりと回せる仕組みを定着させるため、TRYの進捗を次回のKPTで再確認する仕組みを設けました。私たちは普段、連絡手段としてSlackを使用していますが、SlackでもTRYを共有し、アクションの抜け漏れを防ぐようにしました。

個人的には、当日参加したメンバー全員でKPTを実施したことが特に良かったと感じています。全員が現場の状況を把握した上で取り組んだため、提示されたKEEP、PROBLEM、TRYに対して、非常に納得感がありました。
DAY単位レポート/イベント単位レポート
これらの調査から得られた結果は2つのレポートを作成して、チーム全体にリサーチ結果が浸透するようにしました。

- 1つ目はDAY単位レポートです。キャリアスクールの日程ごとに、その日のカリキュラム内容や参加者の様子、リサーチ結果を簡易的にまとめてチーム全体に共有しました。
- 2つ目はイベント単位レポートです。キャリアスクールの全日程が終了後、他のキャリアスクールとの比較から得られた結果や示唆、考察をまとめてチーム全体に共有しました。
UXリサーチの成果
4つの手法を使ったリサーチの成果についてお話します。

まず、改善点や示唆を構造的に説明できるようになったことです。アンケートの数値を見て良かった、「悪かった」で終わるのではなく、その背景にどのような行動や感情があったのかを、フィールドリサーチやヒアリングの結果と結びつけて捉えることで、「なぜそうなったのか」「次にどうすべきか」をチームに対して構造的に説明できるようになりました。
次に、当事者にもリサーチに参加いただいたことで、得られた情報をすぐに実務に活かすことができました。UXリサーチャーだけでなく、リサーチ依頼者の方にもヒアリングに参加いただきました。また、フィールドリサーチも当日の参加者全員で行っていただいたことで、得られた情報をもとにネクストアクションがすぐに生まれ、次の施策への反映がスムーズに進んだと思います。
また、品質担保の工夫として、要件定義やインタビューガイドを事前に共有し、ヒアリングの目的や聞き方のコツまで擦り合わせることで、誰が聞いてもブレの少ない、質の高いヒアリングが実現できました。
そして最後に、KPTにおいて納得感が生まれやすい状況を作れたことも大きな成果です。この「TRY」はなぜ出てきたのか、どのような状況でそう思ったのか、といった背景がフィールドリサーチやヒアリングの情報から共有されたことで、振り返りが単なる反省会に終わらず、「では、次にこうしよう」という具体的な行動につながる時間になりました。
こうした積み重ねによって、関係者全員でリサーチを進めていく文化が少しずつ根付き、自然と共通認識が生まれていきました。
プロジェクトリーダーからの評価と影響
プロジェクトリーダーからも、
- 「単なる振り返りではなく、改善の土台になっていた」
- 「客観的なデータが取れており、コンテンツレベルでPDCAを回せた」
- 「主観的な振り返りで終わりがちだったが、今回はメンバーの課題や仮説もしっかりと拾い、次の企画に活かせた」
といったポジティブな評価をいただくことができました。

まとめ
今回、私が最も良かったと感じたことは、現場を見て、ユーザーと直接対話し、そして、一緒にリサーチをするということです。現場で得た情報、ユーザーの声、数字で現れた結果は、それぞれがバラバラな点に見えるかもしれません。しかし、これらを繋げて面にすることで、言葉や数字に対する納得感が生まれ、レポーティングを待つことなく、「じゃあ、次はこうしよう」という改善の動きがチーム全体で自然と生まれていました。
今回ご紹介した4つの手法を使い、チームで一緒にリサーチをしたことこそが、プロジェクトを前に進めるための「推進力」になりました。リサーチの重要性を感じてくれた人々がいたからこそ、今期は各チームが自発的にリサーチを行う文化が根付いています。
「みんなで見て、聞いて、考えて、動く」。それこそが、リサーチが持つ最も実践的で、かつ最も文化的な価値だと感じています。
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