
こんにちは!TECH Street編集部です。
連載企画「ストリートインタビュー」の第57弾をお届けします。
「ストリートインタビュー」とは
TECH Streetコミュニティメンバーが“今、気になるヒト”をリレー形式でつなぐインタビュー企画です。
企画ルール:
・インタビュー対象には必ず次のインタビュー対象を指定していただきます。
・指定するインタビュー対象は以下の2つの条件のうちどちらかを満たしている方です。

“今気になるヒト”松本さんからのバトンを受け取ったのは、株式会社ROUTE06 宮城広隆さん。
ご紹介いただいた松本さんより「副業を通じてご縁のあった方で、バックエンドとフロントエンドの両方を手がけるエンジニアです。今回は、どうやって幅広い技術をキャッチアップしているのか、その方法をぜひ伺ってみたいと思っています。
また、ROUTE06さんのプロダクトは企業の開発にも関わらず、OSS(オープンソースソフトウェア)として公開されています。通常、企業では技術を外部に見せないことが多い中で、この取り組みは非常に興味深いです。なぜそのような判断をしたのか、その背景や、OSS公開の先にどんな未来を見据えているのか、深掘りしていきたいと思います。」とご推薦のお言葉をいただいております。

宮城 広隆 氏
株式会社ROUTE06 / Software Engineer
2018 年にスポットワークサービス「タイミー」に第一号社員として参画し、機能開発・SRE・新規事業 PjM をリードしました。法務チームと連携して 特許取得の QR コード勤怠システム を実装し、シリーズ C 調達期には TVCM 流入にも耐えるインフラ基盤を構築しました。その後フリーランスとして複数スタートアップを支援し、React + GraphQL による UI 刷新、Rails モノリスのモダン化、AWS/Terraform でのインフラ 0→1 を推進。2022 年に ROUTE06 へ加わり、商取引 DX プラットフォームのフロントエンドアーキテクチャをリードしたのち、現在は OSS のビジュアルデベロップメントプラットフォーム「Liam」シリーズをプロダクトマネージャー兼テックリードとして企画・開発しています。第一弾 Liam ERD はリリース 3 か月で GitHub で 3,700 スターを獲得。高速な学習と HRT(謙虚・尊敬・信頼)を軸に、プロダクトとチームの成長を両輪で加速させてきました。
- 「ストリートインタビュー」とは
- 文系出身の私がエンジニアになった「原点」
- プログラミングに感じた「パズルのような面白さ」
- 楽しかったプログラミングを「仕事」に
- 0から1を築き上げたタイミーでの経験
- フリーランスでの「武者修行」と新たな挑戦へ
- ROUTE06への参画を決めた理由
- 現在の役割と「オープンソース」への挑戦
- OSSに感じる魅力と今後の展望
- 生成AI時代のエンジニアリング:好奇心を原動力に、深く考える
文系出身の私がエンジニアになった「原点」
ーーまずは、現在の宮城さんを形作る原点をお聞かせください。

宮城:エンジニアとしての原点は大学時代だと思います。出身は文系の社会学部で、そこでマスコミや新聞などの報道関係を学んでいました。所属ゼミでは、取材した内容をもとにニュース形式の動画を制作し、ゼミ内で発表していました。
動画制作を頻繁に行う中で、次第に「もっと凝った映像を作りたい」という思いが募っていきました。その時、複雑な映像表現を実現するには、プログラミングのような「条件分岐」の考え方が必要になることに気づいたのです。最初は全くの未知の領域でしたが、「面白そうだから、やってみよう」という純粋な好奇心が、私がプログラミングを始める大きなきっかけとなりました。
ニュース映像というと、内容が重視されがちです。しかし私は、「どう見せるか」「どう伝えるか」という表現の側面に強く惹かれていました。特に、テロップの入れ方や映像表現には、人一倍こだわっていたと思います。アートや映画といったクリエイティブな方向性というよりも、映像制作の「技術」そのものに深く関心を持っていったことが、私自身のキャリア形成における特徴だと感じています。
プログラミングに感じた「パズルのような面白さ」
ーープログラミングのどのような点に面白さを感じたのでしょうか。

プログラミングの面白さの根源は、パズルだと思っています。例えば、「ビジネス上の制約」「保守のしやすさ」「人の入れ替わりがあっても使えること」など、様々な制約を満たしていく作業がパズルのようだと感じていました。学生時代から、その制約の中で解を見つけていくことが楽しいと感じていました。
楽しかったプログラミングを「仕事」に
――この頃からプログラミングを仕事にしていこうと考えたのでしょうか?

この頃から、「プログラマーという職業もいいかもしれない」と、漠然とながら意識するようになっていたのは確かです。 当時はProgateのようなオンライン学習サイトを活用して、Webアプリケーションの制作に没頭していました。
具体的には、学習時間を管理し、その記録ができるようなツールを自作していました。Progateのサンプルアプリにタイマー機能を追加したり、デザインを少し変更したりした程度の、ごくシンプルなものでしたが、これを当時のTwitter(現在:X)で公開したところ、結構話題になったのです。
プログラミングの学習を始めた当初から、その内容を積極的に Twitter(現在:X)で発信していました。自分の思考を整理する上で、アウトプットの場として活用していたのです。その流れで自作ツールも公開したのですが、想像以上に反響があったため、その投稿に続けて「雇ってくれる会社はありませんか?」と呟いてみたところ、なんと10社ほどからお声がけをいただいたのです。その中に、タイミー社がありました。
0から1を築き上げたタイミーでの経験
――Xの投稿がきっかけとなり、タイミー社へ入社されたのでしょうか?

はい、「良い機会だし、面白そう」という直感もあり、入社を決めました。
当時タイミーは業務委託のエンジニアがアプリとサーバーを構築中で、私はクライアント向けアプリを担当したのです。リリース後は業務委託の方が抜け、エンジニア2人だけで全てを担う日々が約1年間続きました。営業もカスタマーサポートも社長も皆、小さなテーブルで膝を突き合わせ、目の前の課題解決に奔走していました。
タイミーではバックエンドを担当しました。初めてのバックエンド開発には不安もありましたが、業務委託の方には相談役として残っていただき、学びながら対応していきました。組織や戦略は未整備で、とにかく「火消し」のように次々と現れる課題を、文字通り全員で解決していく状況だったと思います。クライアント向け機能の不足から、手作業だった請求書対応、カスタマーサポート管理機能の構築、データ分析ツールの導入まで、本当に何もないところから一つずつシステムを整備していったのです。
この経験は、私にとって「0から1を創り上げる」ことの醍醐味を教えてくれました。事業の成長と共に、システムが形になっていく過程を間近で見られたのは、エンジニアとして非常に貴重な経験でしたね。
フリーランスでの「武者修行」と新たな挑戦へ
――次の転機は、どのようなタイミングに訪れたのでしょうか。

タイミーの成長と共に、私の中にインフラやバックエンドだけでは解決できない課題、つまり組織づくりやマネジメントへの関心が芽生えました。そこで、より大きなインパクトを残すため、「技術的な武者修行」としてフリーランスになることを決意しました。
フリーランスを選んだのは、多様な組織での経験を通じて、自分の能力を最大限に発揮できると考えたからです。約3年間、5、6社と並行して契約し、各社で技術的な課題解決に注力しました。
この期間は技術的な研鑽には最適でしたが、組織の課題など、長期的な視点でしか解決できない問題には関われないという側面も感じていました。技術解決だけでは限界があると感じ、しばらくフリーランスとして武者修行をした後に、最終的に社員として就職する道を選びました。
ROUTE06への参画を決めた理由
私は常に新しいことに興味を持ち、柔軟に選択するタイプだと思っています。フリーランスでの「武者修行」を終え、ROUTE06社に参画しました。
ROUTE06は、商社と協業し新規事業を創出するスタートアップです。通販と実店舗の在庫を完全に同期させるOMOストアなど、ユニークなプロダクトを多数手掛けています。私も当初は業務委託として関わり、徐々にコミットメントを高めていきました。
私がROUTE06に惹かれたのは、顧客と共にモノづくりを進め、多様なプロダクトが生まれる点です。増えるプロダクトの保守基盤を築く中で、技術的な課題や複雑な問題解決に面白さを感じています。フリーランスでは満たされなかった、組織に深く関わることで解決できる課題への欲求も、ここなら満たせると確信しました。
現在の役割と「オープンソース」への挑戦
――ROUTE06社での現在の役割について教えていただけますか?

現在は、新規事業としてオープンソースのデータベース管理ツールのプロダクトマネージャー兼テックリードを務めています。このプロダクトはGitHubで公開されており、GitHub Starsがまもなく4,000に到達する勢いです。これは日本国内の同規模企業では珍しい取り組みであり、海外では一般的なオープンソーススタートアップの潮流に合わせたものです。
――ご紹介者である松本さんからも「会社としてオープンソースで開発するのは珍しい」というコメントがありました、その狙いはどのようなもので、宮城さんはどう思っているかお聞かせいただけますか。
オープンソース化している主な理由は、海外でのプロダクト認知とブランディング、そして世界レベルの品質追求です。公開することでエンジニアコミュニティからの信頼を得やすく、コントリビューターによる協力も期待できます。後発として、隠すものはなく、公開を通じてプロダクトを普及させたいという考えがあります。
――保守やセキュリティ上の心配はないのでしょうか。
おっしゃる通り、脆弱性が見つかりやすいという側面があるため、セキュリティ対策は非常に重要です。サプライチェーン攻撃対策や一般的なWebアプリケーションのセキュリティ対策を徹底しています。ROUTE06にはOSS推進室があり、専門のチームがこれらのセキュリティ対策を調査・実施しています。今後はSOC2などの認証取得や、バグバウンティプログラムの導入も計画しており、公開によるメリットがセキュリティリスクを上回る価値があると判断しています。
OSSに感じる魅力と今後の展望
―― OSSプロダクトについて、宮城さんが感じる魅力をお聞かせいただけますでしょうか。

私にとって、制約の中で最適解を見つけることは大きな魅力であり、OSSへの貢献は、まさにその面白さの塊です。過去にプルリクエストを通じて海外のエンジニアと繋がり、感謝された経験から、OSSへの貢献は私の原動力となっています。コードを書くだけでなく、個人的に少額のスポンサーとしてOSSツールを支援するなど、様々な形で関わっています。OSSへの参加は技術的な成長に繋がるだけでなく、無償ゆえに陥りがちなメンテナンス不足をコミュニティで解決したいという思いもあります。
ROUTE06は、「日本初のオープンソースでグローバル展開する」という前例の少ない挑戦をしています。「日本人でもできる」という姿勢を世界に示すため、この挑戦を続けたいと考えています。オープンソースでのビジネスモデルは容易ではありませんが、プロダクト開発を通じて、OSSをクラウドサービスとして提供できるかどうかに挑んでいます。
生成AI時代のエンジニアリング:好奇心を原動力に、深く考える
――ありがとうございました。最後に、これからの時代にエンジニアとしてどのように立ち回るべきか、読者に向けてメッセージをお願いします。

エンジニアの皆さんには、機会を楽しむことの重要性を伝えたいです。私のキャリアも、発信によって得られた様々な機会に面白さを見出し、挑戦し、学習することで築き上げられました。たとえ失敗だと感じることがあっても、それら全てが自分の糧になっています。目の前の機会には積極的に挑戦してみてください。
今は生成AIが非常に強力なツールとなります。何か新しいことを始める際、生成AIは60%程度の品質であれば圧倒的な速さで答えをくれます。つまり、あらゆる分野で基礎的な知識を短時間で得られるということです。そこから100%、120%に引き上げるには自身の努力が必要ですが、「何から始めればいいか分からない」という状態から抜け出す道筋は容易に見つけられます。この「やりやすい時代」だからこそ、興味のあることにはまず生成AIの力を借りて取り組んでみるのが良いでしょう。
そして、「腑に落ちるまで考えること」が重要です。「面白い」と感じたことを、客観的に言語化できるまで突き詰める。そうすることで、たとえ失敗に終わっても、深く興味を持った経験は必ず自分の身になります。それが巡り巡って、世の中の課題解決に繋がることを願っています。
――貴重なお話をありがとうございました。それでは、次回の取材対象者をご紹介いただけますか。
医療DXに挑むスタートアップispec CTOの山田さんをご紹介します。彼はタイミーのサーバーサイドを0から作った方で、その後複数のスタートアップでもプロダクト立ち上げに携わった後、ispecさんにCTOとしてジョインされました。深い思考と実行速度の両方を併せ持つ方で、タイミー時代から今でも何度も相談させていただく機会があり、私が人生で一緒に働けてよかったなと思うエンジニアの1人です。ぜひ山田さんのキャリアや頭の中を覗いてみたいです。
以上が第57回 宮城 広隆さんのインタビューです。
ありがとうございました!
今後のストリートインタビューもお楽しみに。
(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:株式会社PalmTrees / 編集:TECH Street編集部)
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