
こんにちは!TECH Street編集部です。
連載企画「ストリートインタビュー」の第56弾をお届けします。
「ストリートインタビュー」とは
TECH Streetコミュニティメンバーが“今、気になるヒト”をリレー形式でつなぐインタビュー企画です。
企画ルール:
・インタビュー対象には必ず次のインタビュー対象を指定していただきます。
・指定するインタビュー対象は以下の2つの条件のうちどちらかを満たしている方です。

“今気になるヒト”島袋さんからのバトンを受け取ったのは、株式会社令和トラベル 松本 泰幸さん。
ご紹介いただいた島袋さんより「令和トラベルという勢いのあるスタートアップで活躍されているエンジニア・松本さんをご紹介します。彼は大学の同級生であり、私の後輩としてヤフーに入社してきた方です。エンジニアとして非常にスキルが高いだけでなく、コミュニケーション力にも長けていて、話し方もとても上手です。私自身、常に刺激をもらっており、尊敬しているエンジニアの一人です。今回はぜひ、「大切にしているソフトスキルは何か?」について聞いてみたいと思っていますし、普段あまり話す機会のない将来の展望についても、深掘りしてお聞きしたいです。」とご推薦のお言葉をいただいております。

松本 泰幸 氏
株式会社令和トラベル / エンジニアリングマネージャー、 フロントエンドエンジニア
2017年にヤフー株式会社に新卒入社し、社内システムの開発・運用を担当。その後異動を経て、PayPayフリマのフロントエンドの開発を担当。
2022年5月より業務委託として株式会社令和トラベルにジョインし、2022年11月よりフルタイムメンバーとして参画。現在は主に旅行アプリ『NEWT(ニュート)』フロントエンドの開発を担当。
小学生の頃に芽生えた「作り手としての興味」
ーーエンジニアとしての原点を教えてください。

最初にITに触れたのは小学校5、6年生の頃でした。先生が自作したホームページの話を楽しそうにしていて、「自分もやってみたい」と思ったのがきっかけです。自宅のパソコンに入っていた「ホームページビルダー」を使って、試行錯誤しながら初めてサイトを作りました。
当時は『ドラゴンボール』が大好きで、ファンサイトを作り、掲示板などを設置して人が集まる場を提供していました。そして、中学・高校時代は、当時は何かを作るというよりも、mixiやフリーソフトを使う側に回っていました。
――その後、エンジニアへの道にどうつながっていったのでしょう?
高校は普通科でしたが、心のどこかで「ITに関わりたい」という思いがあり、大学では情報分野を専攻しました。高校では部活のサイトを作ったりもしていて、「作る方が面白い」という気持ちはずっと持ち続けていたのだと思います。
大学院ではAI研究へ
――大学ではどんなことを学んでいたんですか?

大学院では人工知能の研究に取り組みました。当時のAIは現在のような大規模言語モデル(LLM)ではなく、ルールベースの判断ロジックが主流。LSTMによる動画像の認識を研究していました。
ヤフーでのキャリアとインフラ開発で得た土台
――大学院後、ヤフー(現:LINEヤフー株式会社)に入社された経緯を教えてください。

楽天やリクルート、 クックパッド などのインターンを経て、「お客様の顔が見える」toCサービスに惹かれ、ヤフーに入社を決めました。
しかし、希望していたユーザー向け開発ではなく、インフラ系の部署に配属され、「あれ、ちょっと違うな」と感じました(笑)。とはいえ、当時の社長 宮坂学さんの「どんな環境でも3年は全力でやってみろ」という言葉に背中を押され、まずはやってみようと腹をくくりました。
――3年間働いていかがでしたか?
クラウド基盤のインフラ構築を担当していました。ジェンガで例えると、一つ外すと全体が崩れるような重要な部分を担っていたと思います。5人ほどのチームでまわしていて、裁量もあり、責任も大きかったです。
この3年間で社会人としての基本的なスキルや、エンジニアとしての基盤もしっかり身につけることができました。特に、目の前の技術だけでなく、もう少し抽象度の高いレベルでの理解力や考え方が培われたと思っています。
副業で気づいた、ベンチャーの面白さ
――副業を始めた理由について教えていただけますか?

ヤフーでは副業が許可されていたので、休日や夜の時間を使って別の開発案件に関わっていました。そうすることで、専門性に偏りすぎず、技術の幅を広げられるようにしていたんです。
本業で特定の技術を磨いても、もしその技術が廃れてしまったらゼロから学び直さないといけない。だからリスク分散という意味でも副業で新しい技術を取り入れていました。実際、そういうエンジニアは周りにも多かったと思います。
副業から、本業へ――令和トラベルでの挑戦

ある時、令和トラベルのエンジニアの方から「手伝ってほしい」と声をかけてもらい、旅行アプリ『NEWT』の開発に関わることになりました。創業期に近いフェーズで、まだカスタマーもそこまでいない段階から機能を一緒に考えたり、提案が採用されたりと、裁量が大きくその自由さに面白さを感じるようになっていきました。
その後「正式に来ないか」と声をかけてもらい、正社員として転向しました。
副業と本業では役割も責任も違います。新しく入ってくるメンバーの教育体制なども、私自身が一緒に考えてつくっていく必要がありました。
ーーどのような役割を期待されていたのですか?
最初は「エンジニアの1人」としての入社でしたが、仕事を進めるうちに、開発だけでなく方向性の判断や組織づくりの面でも立ち回るようになりました。その結果、今ではエンジニアリングマネージャーも兼任しています。
私自身、ただ開発するだけではなく、自ら役割を作っていきたいと思っていたので、今のポジションは自然な流れだったと思います。入社当初は、組織体制やインフラが発展途上の段階にあり、それらの整備を進める中で、組織改善にも自然と関与するようになっていきました。
ーーどんな組織を作っていきたいですか?
コミュニケーションに対して苦手意識を持つ方もいる中で、私はピープルマネジメントにも前向きに取り組んでいます。特に1on1では、メンバー一人ひとりの強みを引き出すことを重視しており、その成果を自分の成果と捉えています。
技術をしっかりと積み上げてきたからこそ、メンバーも話に耳を傾けてくれているのだと感じています。さらに、自身のキャリアにもきちんと軸を持つことで、言葉にも自然と説得力が宿ると考えています。
令和トラベルの今と未来
――現在、貴社はどのような事業フェーズ・成長段階にありますか?

会社は今、まさにグロースフェーズにあります。今年のテーマは「WOW(ワオ)」で、カスタマーが驚くような体験を提供することを目指しています。
旅行業界は、長年の業務慣習や複雑なオペレーションが多く、デジタル化が進みにくい側面もありますが、私たちはその業務の裏側まで含めて改善を図り、カスタマーがよりスマートな旅行体験ができるUXの提供を目指しています。将来的には、ECサイトで水を買うような手軽さで、旅行を予約できる世界を実現したいと考えています。
その鍵の一つになるのがAIです。AIを使って社内の生産性を上げるだけでなく、カスタマー体験も大きく変えていこうとしています。よくある「AIツールを導入して全員が使えるようにしました」ではなく、実際に私たちはAIをプロダクトそのものに組み込み、価値を直接届けることにこだわっています。直近では、旅行の希望条件から最適な日程・観光ルートを自動提案するAIトラベルプランナーをリリースし、ユーザーが「検索」ではなく「相談」するだけで旅程が完成する体験を実現しました。さらに開発部門だけで完結させず、マーケティングやカスタマーサクセスとも連携しながら全社横断でAI活用を推進。たとえばPodcastの立ち上げに際しては台本作成や収録後の要約生成をAIで自動化し、動画制作では AI でシナリオ生成から字幕付け・サムネイル生成までをワンストップで行うワークフローを構築しました。こうした取り組みを通じて、エンジニア以外のチームメンバーも「AI を使いこなす側」に立ち、組織全体でイノベーションを高速に回せる体制を整えています。
「再現性のない時代」にどう立ち向かうか──エンジニアが今すべきこと

ーーありがとうございました。最後に、これからの時代にエンジニアとしてどのように立ち回るべきか、読者に向けてメッセージをお願いします。
これからの時代、これまで通用してきたやり方がそのまま通用しなくなっていくと思います。過去の成功をなぞるだけでは成果が出ない——そんな「再現性のない時代」が来ています。
その最大の要因はやはりAIです。ChatGPTやGeminiといったツールを「使える」だけでは不十分で、それらを使って「何を生み出すか」が問われています。常にAIに関する最新情報をキャッチアップし、使いこなし方を磨いていく必要があります。過去の自分に言えるなら、「とにかくAIと向き合うことが大切」と伝えたいです。
また、今はAI技術が本格的に浸透する“過渡期”です。このタイミングでどのような考え方や技術を選ぶかが、将来大きな差になります。例えばWeb開発では、現在、ロジックと見た目の実装を分けるのが一般的です。しかし、AIにとっては、それらが1つのファイルで一体となっている方が理解しやすく、処理も効率的です。
こうした価値観の変化に柔軟に対応し、AI時代に適した開発スタイルを受け入れていく姿勢が、これからのエンジニアには求められていると感じます。
ーー貴重なお話をありがとうございました。それでは、次回の取材対象者をご紹介いただけますか。
次回は、ROUTE06の宮城ひろたかさんをご紹介します。
副業を通じてご縁のあった方で、バックエンドとフロントエンドの両方を手がけるエンジニアです。今回は、どうやって幅広い技術をキャッチアップしているのか、その方法をぜひ伺ってみたいと思っています。
また、ROUTE06さんのプロダクトは企業の開発にも関わらず、OSS(オープンソースソフトウェア)として公開されています。通常、企業では技術を外部に見せないことが多い中で、この取り組みは非常に興味深いです。なぜそのような判断をしたのか、その背景や、OSS公開の先にどんな未来を見据えているのか、深掘りしていきたいと思います。
以上が第56回 松本 泰幸さんのインタビューです。
ありがとうございました!
今後のストリートインタビューもお楽しみに。
(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:株式会社PalmTrees / 編集:TECH Street編集部)
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