【iPaaS業界】セゾンテクノロジー社 有馬氏が語る「企業のDX化によるiPaaS誕生の関係性と本質的なデータ活用について」

こんにちは!TECH Street編集部です。

今回の「CTOインタビュー」は、株式会社セゾンテクノロジー 有馬さんです!iPaaS業界の動向や企業のデータ活用について有馬さんに聞いてみました。

 

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有馬 三郎 氏

株式会社セゾンテクノロジー
執行役員 開発本部長 

1999年 SIer入社
2009年 当社入社
2016年 R&D部門公募に伴い異動
2020年 執行役員:HULFT開発部門責任者 HULFT Square開発責任者
2023年 執行役員 CTO, HULFT Inc.取締役 経産省 デジタル時代の人材政策検討会委員
2025年 執行役員 開発本部長, Saison Technology International取締役

 

 

 

ーーまずは、貴社についてのご説明と「iPaaS」について教えていただけますか。

有馬:株式会社セゾンテクノロジーは、クレディセゾン様などの企業向けシステム開発を長く行なっております。また、1993年より販売を開始したファイル転送ソフト「HULFT」やETLアプリケーションのDataSpiderの開発、販売、サポートを行うソフトウェア開発の側面も持っております。

 

次にiPaaSについてお話しします。iPaaS(Integration Platform as a Service)とは、SaaS上のアプリケーション間でデータ連携を可能にする技術です。さらにSaaS、IaaS、オンプレミスのアプリケーション間でもデータ連携ができます。私たちの製品で言えば、「HULFT Square」がそれに該当します。「HULFT Square」は、2023年2月より日本発のiPaaSとして、当社が提供するクラウド型データ連携プラットフォームで、分散されたデータを活用するためのサービスです。

SaaS需要の急増とクラウド利用の進展

ーーiPaaSが求められるようになっている背景について教えてください。

この10年間でSaaS需要が高まり、クラウドの利用が進みました。2014年にはAWSの認知が広がり、大企業でも利用が拡大しています。オンプレミス環境の運用負荷を見直す中でもクラウド活用が主流となっています。例えば「Concur」や「Salesforce」などの経費精算や顧客管理系のSaaSの普及も爆発的に進みました。

 

そのような中で、オンプレミスでETL処理をしていると、クラウドサービス同士でデータをやり取りするのが難しくなります。オンプレミスからデータを送受信する際に遅延やセキュリティの問題があります。また、SaaSからオンプレミスへのデータ連携もハードルが高いです。このため、クラウド上のETLプロセスやデータインテグレーションツールが採用され始め、2014年以降に「SaaS間を連携するならiPaaS」という考え方が一般化しました。

 

――iPaaSがなかった時代はどうしていたのでしょうか?

iPaaSがなかった時代は、SaaS間のデータ連携はバッチ的なもの、もしくはシンプルな業務連携が行われていたと考えます。しかし、ニーズの増加、複雑化とともにiPaaSが誕生したのです。その大きなきっかけとなったのは「企業のDX化」です。企業はDX化を推進するというプレッシャーの中で、SaaSを活用してデータ活用を図るところが増えました。SaaS利用の増大がデータ連携を生み、データアーキテクチャの変化がiPaaSの誕生を促しました。

iPaaSがもたらすデータ連携の革新

ーーもしiPaaSがないと、企業はどのような点で困るのでしょうか?

一例として、オンプレミス上のデータをSaaSに連携させる際に困ります。
例えば、企業が経費精算系のSaaSを使っているとします。そうすると、その企業はSaaSに社員情報を渡す必要があります。

 

SaaS活用が進んでいる会社ならば、社員データ自体もSaaS上にあるので連携が容易ですが、オンプレミス上に社員データがある企業も少なくありません。そのような場合、最初に一度だけ社員情報を送るだけならば良いのですが、社員が退職したり、入社したりするたびに細かな連携作業をしなければいけません。
そこで、オンプレミスアプリケーションのデータとSaaSを連携させるためにiPaaSがあり、現在iPaaS製品を提供している企業も増えてきています。

 

iPaaSを活用するエンジニア視点では、さまざまな製品を試しながら、自分の目的に合ったものを選別できるようになりました。新しいiPaaS製品の多様化と多機能化の進化は急速に進んでいます。例えば、「Snowflake」や「Databricks」、「HULFT Square」はマネージドサービスで提供されます。これにより、データエンジニアはデータを細かく、簡単に分析できるようになりました。新しいデータアーキテクチャの登場がデータエンジニアにとって刺激となり、活躍の幅が広がっています。

 

ーーデータエンジニアの役割も変わってきそうですね。

そうですね。これまではどちらかというとシステムの構築に時間をかけることが多かったのではないでしょうか。iPaaSを使うことでより高速にデータ連携のトライアンドエラーを増やせるようになっています。データカタログ(組織が持つさまざまなデータを体系的に整理し、管理するためのシステム)、リネージュ情報などを用いたより能動的なデータエンジニアリングの仕事が増えてくると思います。

本質的なデータ活用ができているのか

ーーiPaaSの利用者側として、重要なことや何か意識することはありますか?

iPaaSを利用して、「結局どのようなデータが活用されているのか?」という視点を持つことは、非常に重要だと思っています。

 

「DX化」や「データドリブン経営」という言葉をよく耳にしますが、多くの企業では本質的なデータ活用が進んでいないと感じています。例えば、経営会議などで話される「売上利益」や「コスト」などのデータは、iPaaSなどの仕組みがなくても容易に取得できます。

 

しかし、本当に求められているデータは、「よりタイムリーなデータ」や「異なる視点から会社の状況を把握できるデータ」だと考えています。例えば、単に「お客様の訪問件数」というデータではなく、「訪問からどれくらいのリードタイムで売上に結びついたのか」などといったデータが求められることがあります。このような背景もあり現在、「経営に必要なデータとは何か?」を見直す動きも進んでいると感じます。

 

ーーiPaaSを開発する側のエンジニアには、どのような職種や役割があり、どのような知見が必要ですか?

多くのiPaaSはパブリッククラウド上で動作しているため、クラウドの理解、そしてアプリケーション構築に必要な開発力が必要です。これはiPaaSに限らずSaaS開発には共通するものです。

 

iPaaS開発としてはそこに加えて、ELT、ETL、モダンデータスタックなどのデータエンジニアリングに関する理解、ユーザーデータを扱うためのセキュリティや個人情報保護に関する知識が求められます。
SaaSもデータ連携も変化が速いため、情報のキャッチアップ力も必要になります。

iPaaS業界ではたらくことの魅力とは

ーーiPaaS業界ではたらくことの魅力を教えてください。

ガートナー(ITを中心とした調査・助言を行う、世界最大規模のITアドバイザリー企業)の評価によると、iPaaSのデータ連携領域は今後も高水準で成長することが予想されています。生成AIによるデータ活用の分野でも、iPaaSがより活用される見込みです。そうなると投資が多く行われ、イノベーションが起きやすくなります。開発と失敗を繰り返すことで、エンジニアの経験が得られます。

 

iPaaS業界は「データを取得して連携する」という簡単に見える作業でも、「安全」「確実」「個人情報保護」「信頼性」を考慮し、プラットフォームとして提供しなければなりません。そこには多様なスキルと学びがあります。フロントエンドやバックエンド、契約周りなど、さまざまなことを考える必要があります。大量の接続先があるため、接続先の知識も必要です。このようにエンジニアとして大きく成長できる機会があることは魅力だと思います。

 

ーーこれからどのようなエンジニアが求められるのでしょうか?

AI Codingも始まるこれからのエンジニアに求められるのは、開発することだけではなく、「業界や他のSaaS製品などに対する知見の幅」や「コミュニケーションスキル」の大きさがより優位に働くと思います。

 

例えば、iPaaSを作りたいと思うエンジニアであれば、データマネジメントについては関心を持っていてほしいです。プロダクトが提供する価値への関心、興味は顧客を惹きつける製品を開発するための大前提だと思います。

 

以上が株式会社セゾンテクノロジー 有馬さんのインタビューでした。
ありがとうございました!

 

(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:株式会社PalmTrees / 編集:TECH Street編集部)

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