【イベントレポート】IoTエンジニア勉強会~人気のIoT機器紹介やIoTエンジニアの魅力や道のりetc~

2022年12月16日(金)に開催した「IoTエンジニア勉強会~人気のIoT機器紹介やIoTエンジニアの魅力や道のりetc~」のイベントレポートをお届けします。今回はプロトタイピング専門スクール「プロトアウトスタジオ」の菅原 のびすけさんを講師としてお招きしてIoT情報について語っていただきました!

protoout.studio

iotlt.connpass.com

のびすけさんが個人で主催しているIoTLTは国内最大のIoTコミュニティです。

それでは早速のびすけさんの発表を紹介いたします!

 

IoTエンジニアと他のエンジニアの違いや共通点

のびすけ:まずIoTエンジニアについてですが、例えばWebエンジニアだと、フロントエンドとバックエンドで分かれていました。どちらも出来る人はフルスタックエンジニアと呼ばれたりしています。
IoTエンジニアはそれよりも対応範囲が広いイメージではあるのですが、全ての領域をカバーする必要はありません。ある程度アーキテクチャが分かっていて、ある領域に特化している人同士を繋げれば、仕事として成り立ちます。

IoT年表

続いて私が個人的に作成した“IoT年表”をもとにIoTについて色々お話できればと思います。こちらは個人的な感覚で作ったIoT史です。国内でIoTが流行りだしたのは2014年頃なので、その年代を軸として紀元前と紀元後で分けています。

古代IoT時代について

当時のIoT界隈では【Raspberry Pi】や【Arduino】がよく使われていたかと思います。

【Raspberry Pi】
Linuxが中で動いているほぼパソコンといっても過言ではないです。
みんなが使いたいプログラムをインストールできるので、ソフトウェアのエンジニアでも取り組みやすいです。

【Arduino】
OSが入っているのではなく、プログラムを書き込んでいく形式です。
通信ができなかったので、IoTではなく電子工作というイメージでした。当時はArduino言語というC++を拡張した言語を使わなければならないという縛りがあったので、Webエンジニアは取り組みにくかったかもしれません。

中世IoT時代について

中世くらいになると「ESP8266」という開発ボードが登場します。
シンプルなArduino開発でネットワークに繋がるようになりました。

近代IoT時代について

JavaScriptに関係なく、今のIoT開発ではESP32がよく使われています。
最近はESP32をベースとした別のシリーズ(M5Stack)も登場しました。

現代

最近は半導体不足ということもあり【Raspberry Pi】本体は品薄になっていますが、同じ財団が出している【RP2040】は販売されています。【Raspberry Pi】はシングルボードコンピューターでLinuxを中に入れなければなりませんでしたが、Arduinoのようなマイコンボードを【Raspberry Pi】から出したのです。
安くて高性能なので、最近は【Raspberry Pi Pico】が流行っていますが、残念ながら日本国内では引き続き【Raspberry Pi】の供給難が続いています。
最近人気のIoT機器となると、Raspberry Pi Picoにのっているシリーズと、ESP32系統のものが人気だと思います。

また、オープンソースのCPUアーキテクチャ【RISCーV】も使いながらチップを展開する流れが出てきています。しかし開発環境がまだ整っていないこともあるので、「これから」という感じでしょう。

ここで注目したいのがIoT史の現代のところにある【Matter】というネットワークプロトコル。
スマートホーム向けのプロトコルで、最近注目されており、【Matter】に対応した機器が今後出てくると言われています。ひとことで言うと【標準化規格】という表現が適切ではないでしょうか。

今まではGoogleやアレクサなど、各社のネットワークや機器に対応させてスマートホーム化をしよう!となっていましたが、それはユーザー側からするととても面倒です。
アレクサやAmazon系の製品を選ぶとGoogle系の製品は揃えにくかったりしますよね。
そのため、サードパーティ的な開発ベンダーはすべてに対応しなければならなかったのです。

そこで標準化しようということで、AppleやGoogleなど400社以上が規格を統合して、この先出していくデバイスはMatterに対応しようと決めました。【Matter】に対応しているデバイスは、今のところまだ出ていませんが、iOS16.1から使えるようになっているとのことです。

これからIoTに取り組む方におススメ&IoTエンジニアになるには?

どういった人なのかによりますが、ソフトウェアエンジニアの方などであればこれからIoTに取り組む方にオススメなのは【obniz】です。
特定のESP32系のチップにOSをインストールして制御可能であり、JavaScriptで開発が可能です。ハードウェアや回路の知識がなくても、JavaScriptであらゆるモノの操作や制御できるIoTの入門に最適なコントロールボードだとおもいます。Wi-Fiにつなげばクラウド経由でプログラムを書くことが可能です。電子工作初心者にもおススメといえるでしょう。

今ハードウェアをやっている人で、アプリケーション側をやりたいと考えている人は、JavaScriptを学んだ方がいいと個人的には思います。反対にハードウェアはやっていないという人であれば、まずは電子工作からスタートすると良いので、Arduinoがオススメだと思います。

質問コーナー

すでに役割を終えた「Amazon Dash(一撃注文ボタン)」のような仕組みで、スプレッドシートに記録(例えば筋トレ実績や機器の点検確認など)していきたいのですが、どこから手をつけていけば良いでしょうか?
―Amazon Dash ボタンを持っていれば、再活用できる!ラズパイに繋いだりして、既存のボタンをそれっぽく出来ます。
「ボタンを押したら記録」がやりたいのであれば、obnizを使ってみましょう。IFTTTと繋げばコードを書かずに簡単に作れますよ。obnizは比較的高いので、安く抑えたい場合はM5Stack のATOM Liteがオススメです。こちらはコードを書く必要があります。

初学者が社内業務効率化や個人の趣味範囲でIoT機器を取り入れていく際、学び方や運用の注意点としてどう押さえていけば良いですか? ネットワークに繋がるだけに情報漏洩や脆弱性みたいなトラブルを放置していた…みたいな事に発展したら怖いと感じているのですが。
―「取り扱うデータ」によると思います。そのデータが漏れたとしても問題ないというものから取り掛かってみましょう。電気のオン/オフや電気の使用量など、個人情報と紐づかないデータからまず考えてみましょう。
漏洩したらやばいデータを最初に使うのは避けた方がベターです。

久しぶりにはんだ付けしましたが、めちゃ下手で笑っちゃいました。ブリッジしなかっただけよかったかなと(笑) はんだ付けを上手にやるコツってありますか?
―失敗するのは仕方ありません。
失敗したときははんだを温めて溶かすドライヤー、ヒートガンを使って溶かして、はんだ吸い取り線を使って除去が可能です。上手くやるためには回数をこなすことが一番です。

IoTの電子工作の技量はどれくらい求められますか? 例えば電子工作のキット品は電子部品が何の役割であるか、NGなことは何がNGなのかよくわからない状態で完成できます。電子回路を組む際、Web界隈でいうところのノーコードのように素人でも事故らないようにする方法はあるでしょうか?
―Seeedさんが出しているGrove センサーから始めてください。
(サイトとあわせて分かりやすく紹介いただきました。)

抵抗器の配線で迷うことがあるが、Groveという規格は線を1つにまとめてくれているから、カチッと刺すだけでできてしまいます。Groveシリーズはたくさんあるので、ここから始めるのも良し!

遠く離れた店舗内の基本的なセンサーデータ(計測時刻、室温、人感など)を本部へ送信する場合、「Raspberry Pi」「センサーの拡張ボード」「The Things Network」あたりの準備ができれば特に専門技術なくはじめられるのでしょうか?
―出来ると思います。
ラズパイが問題なく触れるスキルがあれば大丈夫だと思います。Linuxを触るのが初めてであれば、Linuxの知識が必要なのでそこは少し難しく感じるかもしれません。
obnizが圧倒的にラクにできるとは思います。コストを気にしないのであれば、MESHもオススメです。

仕事でまったくもの作りもプログラミングもやらない40代からのエンジニアってどうでしょう?いけますか?(行きたい)
―いけます!作りたいものがあって、実際に作ってみるのがいいと思います。IT業界じゃない人の作った事例をマネしてみるのも面白いかも。日々の生活から自動化していくのは楽しいですよ。
Make も使いやすくてオススメです。ScratchやMicro bit辺りもブロック感覚で作れます。

ラズパイ(Raspberry Pi)とアルディーノ(Arduino)、どっちからやろうかなと悩んでどっちも進められなかった...仕事に追われて...
―頑張ってください!
ムリヤリ仕事に絡めて研究開発的にやれたらいいですね!

IoTの身近な事例を知りたいです。社内事例なんか特に。
―自社オフィスでは、玄関でIoTをしています。
IoTLTの例では、スーパーで働いている人が売上に繋がる商品陳列のレイアウトを調べたい。売り場の一角にカメラを置いて、どれくらいの年代・性別の人が商品をみているかのデータを取って分析するというAIカメラを開発していました。
obniz の事例を見ていくのは面白いと思います。

車のナンバーを取得して、駐車場に止まると店員さんが、ようこそ●●様、と声かけてくれます(事例情報)
―情報ありがとうございます!

IoTに取り掛かったキッカケはなんですか?当時ってIoT何が流行ってましたか?
―2014年、夏ごろ。ラズパイだけでした。アルディーノもありましたが、別の言語という感じだったのでハードルが高かった。OS書き込み済みのSDカードを購入して、コンソールに書き込んでいました。
大学院生のときに先輩が作ったものを披露してきた。物理世界で出来るんだということに気づいて、現実世界のハックができるところに面白さを感じました。

社会勉強でアルバイトされていたんですね!ちなみになぜ居酒屋をえらんだのでしょうか?
―養老乃瀧でハッカソンをして繋がりがあったのがきっかけでした。

dotstud.io

デジタルを推進するためにアナログを学ぶ、これは目からウロコです。そこで得た気付きがあれば教えてください!
―オペレーション業務は特に多く、現場の人はマニュアルに対していかに早く作業するかに頭がいってしまいます。現場の人たちは目の前の仕事で一杯いっぱいですので、効率化しようというところまでに余力がまわせない。上層のところから落としていくところと現場の変えたいという想いの2つがないといけないと感じました。

ということは、ソフト側エンジニアとハード側エンジニアに分かれて、IoTはその両方に足を突っ込む感じですか?
―いいと思います!

いま何が一番面白いですか??(わたし最近M5stack買いました)
―「Kaluma」が面白かったです。RP2040のハックはここから伸びて一大勢力になりそうと予想しています。

ライトニングトークとの相性が抜群って感じていました。いかがでしょう?(動きを見せられるので)あと、最近一番面白かったライトニングトークがあればぜひ見せて欲しいです
―オンラインイベントだと抜群とはいえない…。Webシステムや双方向性のある方がデモとして動かせるので、そっちの方が強いと思います。
最近面白かったのは、総統さん(マッドサイエンティストみたいな方)が「基板の設計図を書いて発注まで行う」というのを5分間でやったのが面白かったです。

一番最近買ったIoT機器を教えてください。
―ブラックフライデーで、ホームキット対応の電球を買いました。まだ触っていませんが、「メロス」というシリーズの電球を買いました。

エンジニアに売れるIoT機器の条件って何でしょう?安さ、見た目、開発し易さ?
―エンジニアからするとAPIやSDKがあることが良いと思います!自分でハックしやすいと人気になりますよね

仕事(営業)をしている35歳の子持ちの非エンジニアがエンジニアになれますでしょうか?アドバイスをぜひ(私じゃないですが、知り合いが悩んでいまして)
―できますが、どうなりたいか次第ですが!エンジニアになる!というのを目的にするのではなく、その先に何をしたいのかが重要だと思います!@n0bisuke までご相談くださいませ。

IoT原理主義!!!ウケる。ネット繋がってなくても、まずは電子工作で楽しめば、その先にIoTチャレンジに繋がるってことですかね?
―そうですそうです。まずは電子工作からはじめてみましょう〜

obniz、買ってみます。
―ぜひ!

のびすけさんがもし働きたいなと思うIoTプラットフォーマーをお選びください理由も・・・ ・IOT-EX ・Symphonict ・SORACOM ・Things Cloud ・それ以外ではどこ?
―難しいですねぇ〜
ArduinoがArduinoクラウドっていうのも最近やっていますがArduinoの中が気になるので働いてみたいかも...です。

エンジニアならMac一択?!
―WindowsでもLinuxでも良いと思いますよ!最近はMac一択って感じでもなくなっている気がしています!

ちょっと営業的な内容で申し訳ありませんが、プロトアウトスタジオさんってどういう風に授業すすめるのかお聞きしてみたいです。会社で良い研修とかなかなか出会えないです。
―作る&発信する
この2つを沢山してもらいます。先生が喋ってハンズオンするだけでは、自分で作るということができない。学んだ技術をもとに何か作ってこようというのをやっています。「作ってみせる、そして先生がフィードバックをする」そういう流れになっています。
(参考)受講生のnote記事
https://note.com/atoms50/n/nab8655a73c75

社内のネットワークにはセキュリティでIoTデバイスが接続できないので、obnizはつかえない
―Wi-Fi使わずにBLE系のデバイスから使ってみると良いかもしれません!あとはLTEに直接繋がる開発ボードとかもでていますよ!

いまって学校の授業で“はんだ付け“ってやらないのかな?
―僕が中学校のころはやっていました!が最近は分からないですね...プログラミングがはんだ付けなどの時間からおき変わっているかもしれません。

BraveとMETAMASKが気になります・・
→BAT貯めていきましょう。

“Grove ⇒ ブレッドボード ⇒ はんだ“って感じ?
→そうですね!その流れで大丈夫だと思います。
ハード側だとさらにいくと、はんだ => ユニバーサル基板 => 基板設計 / 筐体設計
みたいな流れになると思います。

のびすけさんが2023年自動化(IoT化)したい構想ってありますか?
→居酒屋や小売業の現場のハックをやれたら楽しそうって思っています!

IoTデバイスとクラウドサービスでの使い分けの目安ってありますか? (会社だとセキュリティで社内ネットワークが使えないので、SORACOM&AWSの組み合わせが多いです。)
→Wi-Fiが使えるかどうか、電源は取れるかどうか、設置する場所のスペースはどれくらいか
などで考えたりします。あとは予算も。電源もWiFiもスペースも予算もあるならIoTデバイスを買わず、スマホやノートパソコンをがんがん設定するというパワープレイもありといえばありな気がします。

 


いかがでしたでしょうか。IoTの変遷から現代のトレンド機器まで幅広くお伝えいただき、現IoTエンジニアの方はもちろん、これからIoTエンジニアを目指される方にも参考になった内容だったかと思います。
みなさんの参考になれば幸いです。

イベントレポートは以上となります!
次回のレポートもお楽しみに♪