【イベントレポート】UXデザイン勉強会vol.3.0

メンバーからの熱い支持もあり、3回目となった「UXデザイン勉強会vol.3」をレポートします。
今回は、最近のUX業界やUX事例、UXデザインに対する考え方を共有するセミナーを開催いたしました。

登壇者はこの方!
羽山 祥樹さん/日本ウェブデザイン株式会社

ここからは当日のセミナーの内容を紹介していきます◎
UXデザイン・UXリサーチを改めて理解するための問いかけからスタートしました。

 

UXデザイン・UXリサーチと“先入観”

そもそも「正しい」“UXデザイン”・“UXリサーチ”とは何でしょうか?厳密に何が正しいのかを説明するのは難しいですが、10年ほど前まではUXへの誤解が多かったです。誤解の例として「UXはカッコイイ画面を作ること」だと思われていました。さてここで、みなさんに質問をしてみます。回答を考えてみてください。

A-1 資格試験を受けようと思う人の心理にはどういうものがあるか。
A-2 資格勉強アプリを作るとしたら、どんな機能があればユーザーのモチベーションを高められるか。

では少し角度を変えて同じような質問をしてみます。

B-1 過去に資格試験を受けたとき、そのきっかけは何だったのか。事実を書いてみて!
B-2 あなたのモチベーションを高める資格勉強アプリを作るとしたら、どんな機能があればあなたのモチベーションは高まるか。

AとBで、感覚が少し異なっていることに気づいたでしょうか?きっとこういうことが起きていたと思います。

Aは「きっと」こうだろう、というイメージ。
Bはあなたが「実際にした」こと。

結果Bの方がリアルに回答を考えることができたと思います。

UXデザイン・UXリサーチの話をするときに、ぜひ体験してほしい1つとして、人間には先入観(確証バイアス)という認知の働きがあります。先ほどの質問で考えた、“資格を取る人の心理”を思い出してみてください。例えば“資格を取る心理”について、ユーザーインタビューした結果がこちら。

さて、あなたの仮説はあたっていましたか?大体の人が「自分の仮説が当たった」と思っていると思います。これはどういうことなのでしょうか。

人間は先入観に合う情報に意識がいってしまう

「確証バイアス」は心理学用語で、「人間は先入観に合う情報に意識がいってしまう」という認知の働きのことです。

あなたがもし、【社内の評価のために資格試験を受けるという仮説】を持っていた場合
↓のオレンジで囲まれた部分が輝いて見えて、「仮説が当たった」と感じたはずです。

しかし、【資格試験を受ける際に気になることはどれだけ手間がかかるか】という仮説を持っていた場合
↓の青で囲まれた部分が輝いて見えて、「仮説が当たった」と感じたはずです。

また、資格試験を受ける際に【体系的な知識を学びたい】という仮説を持っていた場合
↓緑で囲まれた部分が輝いて見えて、「仮説が当たった」と感じたはずです。

あるいは【転職や就職に役立つ】と考えていた場合
↓赤で囲まれた部分が輝いて見えて、「仮説が当たった」と感じたはずです。

または【学ぶ楽しみや暇つぶしのために資格試験を受ける】と考えていた場合
↓紫に囲まれた部分が輝いて見えて、「仮説が当たった」と感じたはずです。

資格を取るきっかけとなるユーザー心理は、大きく分けると5種類あります。

これは5人いるわけではなく、この5つの心理が混ざりあって1人の中にあると考えてください。

では、「仮説が当たったか」ということではなく、「これらすべての心理を漏らさずに思い浮かべられたか」という質問であればどうでしょうか。。。

この話は、モノづくりの際に私たちの足枷になります。なぜなら、仮説は必ず当たるからです。
今あった複数の心理の中で、誰もが必ず1つは当たっていたでしょう。つまり、みんなが「仮説が当たった」と思うはず。全体は見えていない。それにも関わらず「私は正しかった!仮説が当たった!」と感じていたかもしれません。人間が人間のことを考えるので、仮説は基本的に当たるもの。
しかしそれは中途半端に当たるものなので、かえって他の心理が見えなくなります。

自分の立てた仮説は当たっているわけなので、それに基づいてプロダクトを作ったものの、
その根拠にある当たった仮説は、「全体の中のどこなのか」ということに気づかずに進んでしまうという状況に陥るのです。

ユーザーを理解する専門技術それがUXデザイン・UXリサーチ

ここであらためて質問です。

C-1 資格勉強アプリを作るとしたら、どんな機能をそろえればすべてのユーザーのモチベーションを高められそうか?

そのアイデアすべてを、あなたは最初から思いつくことができましたか?答えは“NO“だと思います。

ここで最初のAの質問を思い出してみましょう。
「資格試験を取ろうと思う人の心理にはどのようなものがあるか」という質問でした。

あなたの経験のことも聞いていないし、実際にユーザー調査をしたわけでもありません。「きっとこうだろう」という話をしていました。
あなたが会社でユーザーについて議論しているとき、最初の質問にあった「きっとこうだろう」という議論をしていませんか? ユーザーの理解は思ったよりも出来ていません。とくに全体を見渡すのはとても難しいです。全体を含めたユーザーを理解する専門技術が“UXデザイン”や“UXリサーチ”です。
それは、「何を作ればいいのかを知るための技術」とも言い換えられます。

 

UXデザイン・UXリサーチの位置づけ

“UXデザイン”や“UXリサーチ”を正しく定義するのは難しいけれども、ざっくり言うと以下の図のようなイメージです。

例えば資格取得アプリを作る際に何を作ればいいのかを考えるのは、外部設計のインターフェースを考える段階ではありません。要件定義の前に何を作ればいいのかという確度を高めるために行うのが重要、それがUXデザイン・UXリサーチとなります。

近年ではスキルセットが的確になってきた

最近ではしっかりとUXデザイン・UXリサーチに取り組む会社が増えてきました。
例えば10年くらい前までよく見かけた“UXデザイナー”の求人票ですが…

ユーザーを理解するのに、なぜグラフィックソフトの使用経験が必須!?
10年くらい前は、名刺に「UXデザイナー」と肩書きが書かれている人がいて、その理由を聞くと…

当時はUXという言葉が流行り始めたばかりだったので、偉い人がデザイナーの人の肩書きを勝手に「UXデザイナー」としたということもあったそう。
それまでグラフィックデザインをしていたのに、ある日突然「UXデザイナー」とされて困惑していた人もいたようです。それに対して最近の求人票を見ていると…

このように正しいUXを見つめている企業が増えていると感じます。例えば、メルペイの求人票だと、

UXデザイナーやUXリサーチャーの職種に求められるスキルセットが的確になってきたように思えます。このように2、3年ちゃんとUXデザインに取り組む企業が増えています。
それにともなって「UXデザイナー」と名乗らずに「UXリサーチャー」と名乗る人も出てきていますね。

UXデザイナーやUXリサーチャーは圧倒的売り手市場

プロダクトマネジメントの分野でUXデザイン・UXリサーチへのニーズが高まってきました。
スタートアップの成功確率を上げる手法として、「ユーザーで仮説検証する=UXリサーチ」のニーズが高まったことで最近、プロダクトマネジメントが洗練されながら広まっています。

リーンスタートアップの考えを取り入れつつ、プロダクトマネジメントの概念が洗練されながら広がり、プロダクトのメーカー(いわゆる事業会社)がUXリサーチに本格的に取り組むようになりました。
つまり事業会社を中心に、UXデザイナーやUXリサーチャーの採用ニーズが爆増しています。
私の回りでも、事業会社に転職している方々がいらっしゃいます。

 

ユーザーインタビューをマッチングするサービスが登場

ユーザーインタビューのマッチングプラットフォームサービスが勃興してきています。
ユーザーインタビューをしてみたいけれど、そもそもユーザーに気軽にコンタクトが取れないという企業はいまだに多くあります。ユーザーに声をかけようとすると社内では「勝手なことをされては困る」と怒る人が出てくるようなケースです。
そんな中、ユーザーインタビューを安い価格でマッチングするサービスが出てきました。たとえば「uniiリサーチ」や「ZERONE」といったマッチングプラットフォームです。

 

行政による「デザイン経営」の推進

また、行政にも「デザイン経営」を加速化させる動きが出てきています。

ここで言っている「デザイン経営」は、UXデザイン・UXリサーチのことを指しています。
デザインには「何を作ればいいのか」や「お客さんは何を本当に欲しがっているのか」をきちんと知ることが中核にあります。よってそれを経営に活かしていき、それぞれの企業にイノベーションを起こしてほしいと、行政が推進しているのです。
今までは、ユーザーを理解したモノづくりについて社長などの経営層に理解してもらうことは難しいことでした。もちろん今でも難しいですが、行政が「デザイン経営」と出してくれていることによって、「そういう世界がある」と入ることができます。

 

前代未聞! プロによるユーザーインタビュー発話録の全文ダウンロード(無料)

ここで、ちょっとだけ耳より情報です。羽山はいま Think IT というエンジニア向けメディアで「UXデザインはじめの一歩 ー インタビュー技術を磨こう!」という連載をしています。UXデザインやUXリサーチについて他にない貴重な情報をどんどん出していています。

この連載では、大きなチャレンジとして「ユーザーインタビュー発話録の全文ダウンロード配布(無料)」をしています。

ユーザーインタビューを学ぶうえで、世にいろんな文献はあるのですが、概論や心がまえはいろいろ書いてあるものの、初心者からすると「けっきょくインタビューの場でどういう会話がされるの!?」というのは、どの本にも載っていないのです。いざバッターボックスに立つと足は震えるし、「ユーザーになんて声をかけていいかわからない」と焦ることになります。

そこで、2名のユーザーに羽山がインタビューをした発話録の全文を、まるごとダウンロード配布することにしました。1人のユーザーあたり1時間のインタビューなので、2時間ぶんの書き起こしです。本当にオープニングの挨拶からクロージングの会話まで、すべての会話を収録しています。ユーザーを前にして、そこそこベテランのUXデザイナー羽山がどのような会話をするのか、うまく話せているところも、失敗も、すべて公開しています。

教材としてどんどん使ってほしいので「無料」で配布しています。ダウンロードにあたり、あなたの個人情報を取得するようなこともしていません。

データは連載第14回から第18回までの記事中からダウンロードいただけます。

 

UXデザイン・UXリサーチのニーズはどんどん高まっている

ユーザーを理解する専門技術である“UXデザイン”や“UXリサーチ”のニーズはどんどん高まっています。仕事に広がりが出る、やりたいことがやれるようになる、あるいは自分が作っているものが本当にユーザーにとって良いものになっているのかと不安に感じている人は、ぜひ身につけていけばよいのではないでしょうか。

 

まとめ

いかがだったでしょうか?“UXデザイン”や“UXリサーチ”の本質を社会が理解して変革していっていることが感じられた内容だったと思います。世の中が本当に求めているものをつくりたい、そう思っている人こそ“UXデザイン”“UXリサーチ”を身につけてみてはいかがでしょうか。

ここからは、当日回答しきれなかった質問への回答を含めて紹介していきます^^

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羽山さんへのご質問

“(Q)広告と違ってUX改善は効果検証しにくい印象があります。UXを追究すること自体には異論はないのですが、費用対効果の話をする際はどう対応されていますか?”

(A)みんな悩んでいるところです。UX(ユーザー体験)の計測は、アクセス解析やABテストのように数値にしづらいからです。上司やチームへの説得材料に苦しむところです。「費用対効果」につなげた流用に、UXの数値的な計測を研究している研究者もいますが、あなたが今日から現場でUXを数値化できるかというと、かなり厳しい。そうすると、費用対効果でない形で、上司やチームに納得感をもってもらう必要があります。
おススメ方法としては、身近な人(ユーザー)が使っている様子を動画に撮って、上司やチームへ見せてみるのはいかがでしょうか。
ちなみにこのような「ユーザーが使っている様子を観察する」方法をユーザビリティテストと呼びますが、ポイントがあります。あなたはユーザーにプロダクトの操作方法を説明してはいけません。例えば資格学習アプリなら「このアプリを使ってTOEICの勉強をしてください」とだけお願いして、あとはひたすら観察に徹します。そうすると、まったくユーザーが使えてないことが分かったりする。その様子を動画に撮って上司やチームへ共有すると、「これ使えてないじゃん、やばいじゃん」という社内の共通認識をつくることができます。

“(Q)UXの良し悪しをどういったツールで調査することが多いですか?”

(A)ツールというより、「ユーザーインタビュー」や「ユーザビリティテスト」といった手法を用います。「ユーザーインタビュー」や「ユーザビリティテスト」をすることで、ユーザー体験がうまくいっているか、そうでないかを洗い出したり、どこでユーザーがつまずくのか、といったことを見つけることができます。
参考までですが、羽山が Think IT で連載しているUX入門記事のURLを記載します。参考にしてみてください。
https://thinkit.co.jp/series/9588

“(Q)社内に分かりやすくUXを伝えるとしたら、どういう話をすれば良いでしょう?絵や図ではなく、言葉で。”

(A)あなたが「UXが大切だと社内に伝えることで、なにかを変えたい」という思いがあるはず。それを表す分かりやすい言葉で伝えてあげればいいと思います。
UXが多様な意味をもつ言葉になってしまっているので、相手に伝わる言葉で伝えましょう。例えば「ユーザーが自分のプロダクトを使って目的を達成できていますか? スムーズに使えていますか? その過程でつまずいたり、嫌な思いをしたりしていませんか?」ということが伝わればいいのかなと思います。

“(Q)日本でも代表的なUX事例、身近なUX事例、を、知りたいです。”

(A)たとえばUXに積極的に取り組んでいる企業として、メルカリがあります。メルカリのアプリを使ってみるとわかりますが、「出品したらすぐ売れる」という体験をつくるために、さまざまな工夫がしてあります。たとえば品物の写真を撮るとAIでその商品が売れそうな金額を出す、というように、最新技術もただ技術として使うのではなく、メルカリのコアの価値である「出品したらすぐ売れる」を実現するために使われています。

“(Q)UXはこの先こう変わってくる、みたいなお話を伺いたいです。”

(A)UXデザインやUXリサーチという言葉が世の中に浸透して、本格的に取り組む企業が増えてきました。この傾向は今後も続くと思っています。

“(Q)家庭内で活かせるUX(プライベートで活かせるUX)ってどういうものがあるかな?”

(A)そんなあなたにぴったりの記事を書いたことがあります!ぜひお読みください。
恋するあなたのためのUXデザイン
https://japan.cnet.com/blog/webclip/2014/12/23/entry_30022729/

“(Q)アメリカの最新事例!”

(A)なにか画期的な事例があるというより、世の中全体としてUXデザインに取り組むのが当たり前になりつつあるように感じます。

“(Q)20年以上経っていて、UX自体の定義や体系は変化があったのでしょうか?それは不変?”

(A)UX(ユーザー体験)の定義は、2000年ごろはまだあいまいでした。これは日本だけでなく、グローバルにその状況でした。
言葉の定義として整ったのは、ISO 9241-210:2010 という国際規格のなかで定義されたことと、そのISOでも不足している定義について、世界中の有識者を集めて議論がされ、その結果が「UX白書」という文章にまとめられたところで、おおむね業界内での統一見解となりました。

そのあたりの話は Wikipedia の「ユーザーエクスペリエンス」の項目が詳しいです。Wikipedia の「ユーザーエクスペリエンス」の項目を主に執筆しているのは、実は業界内でも有名なゼロベース株式会社の石橋秀仁さんなので、安心して記事を読んで頂ければと思います。
https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=ユーザーエクスペリエンス&action=history

“(Q)UX提案時、提案する側・提案された側のそれぞれの視点で、どんな基準で「これは良いUXだ」と判断すれば良いでしょうか?”

(A)良いUXかどうかを決めるのは「ユーザー」であり、あなたでも、クライアントでもありません。それを提案者・提案を受ける人が判断しようとすると、正しい判断はできません。ただし「ユーザー」がどう思うかは、手順をふんで分析すれば、ある程度は予測することができます。まずユーザーの心理を見える化・整理しましょう。具体的な手法は羽山の note に資料公開をしているので、ぜひご参考ください。
https://note.com/storywriter

“(Q)UXの経験値ってどう貯めればいいでしょうか。”

(A)UXデザインやUXリサーチのスキルは、実際にユーザーに会って話をした数と、おおむね比例するものです。積極的にユーザーに会い、「ユーザーインタビュー」や「ユーザビリティテスト」を実施してください。

“(Q)自分自身の心理や自分自身の感覚ベースであれば意識できそうですが、ユーザーの感覚や心理って考えると難しいですね。”

(A)そうですね。自分の感覚があてにならないので、ユーザーにきく楽しみがある、とも考えられます。

“(Q)すでに動いている製品、途中でUXデザインを取り入れたら完全改修になるのでムーリーってあるある。”

(A)プロダクトにも組織にも歴史があるので、ドラステックな変化をいきなり突きつけても、折り合いはなかなかつかないものです。一歩一歩、お互いの理解と信頼関係をつくって、少しずつ変えていきましょう。

“(Q)手段と目的なんですよね。>さっきの件イラレとかフォトショの件”

(A)PhtoshopとIllustratorの求人票の例は、いちばんには現場のデザイナーの気持ちを聞かずに、宣伝効果があるから、という理由だけで肩書を変えてしまった経営層に問題があります。

“(Q)インハウスのUXデザイナーのキャリアパスについてのお考えを教えて下さい。”(A)本当にユーザーの目線でものづくりをするためには、そのプロダクトについての決裁権をもたないといけません。そのためには、デザイナーとしてのキャリアから、どこかでプロダクトの責任者へとキャリアチェンジしないといけません。身も蓋もないですが、組織のなかで偉くなることが、いいプロダクトをつくるためには必要です。

“(Q)勝手にユーザーアクションしたら怒るのは正しいんやないかな?勝手にって時点で。”

(A)ユーザー目線で良いプロダクトをつくるのが目的で、社内に敵をつくるのが目的ではありません。また社内の反発を招くと、ますますユーザー目線でのものづくりがしづらくなることがあります。社内で根回しを上手にしていただくコツがあります。

“(Q)UXデザインが経営課題を解決できる事例としてどのようなものがあるでしょうか?”

(A)羽山自身の事例を紹介します。新規事業に取り組むお客さまで、事業が始まって2年たち、それなりに売れているものの、事業サイドでは「お客さまが何を決め手に使ってくれているかが分からない」という状態にあり、そのため今後に自社製品のどこに投資をすればいいか分からないという相談がありました。
そこで、羽山さんがプロジェクトに入り、ユーザーを見て、ユーザーが本当に求めているものを明らかにしました。お客さまの決裁書は、それにより経営戦略の決定につなげることができました。

“(Q)リサーチをやりたい、でも会社の理解を得られない…。そんな時に、個人として組織にどんなアプローチをかけたらよいでしょうか。”

(A)1つは、ゲリラユーザビリティテストという手法があります。例えば、社内の他部署の人で、自分のプロジェクトに利害関係のない人に使ってもらい、その様子を動画におさめて、プロジェクトチームや上司に見せます。そうして違和感や使いづらさに組織として共感を作り上げます。

“(Q)マーケとUXの違いを教えてください。”

(A)ユーザーを中心に考える、という点ではマーケティングもUXデザインも差はありません。ただ、それぞれの分野ごとに発達してきた手法が異なります。UX分野では「ユーザーインタビュー」や「ユーザビリティテスト」が主な手法になります。

“(Q)UXデザインからサービスデザインへ業務の幅を拡げる際のお勧めのファーストステップがあれば教えてください。”

(A)「UXデザイン」も「サービスデザイン」も、場によって呼び名は異なりますが、実は同じものを指します。なので呼び名よりは何に取り組めているかが大切です。まずはユーザーに会いに行く習慣を社内につくりましょう。

“(Q)UXを考えるうえで一番大事なものはなんですか?”

(A)ユーザーに会うことです。

“(Q)上司から、インタビューでのリサーチは発話の間や言い淀みが重要なので、ケバ付きの素起こしが必要だと指示されています。私も理想的にはそうだと思う反面、分析に参加するメンバーからは読みづらいなどと不評でした。インタビュー記録はどのように見返して分析していますか?読みやすい会話文にしておき、細かな情報は動画や録音から振り返ったりするのでしょうか。”

(A)ユーザーの心理を分析する(プロトコル分析)とき、ケバ取りされたテキストでも、ケバ付きの素起こしでも、基本的には同じように分析することができます。エスノメソドロジーの分野では、発話のタイミングや、言い淀みなども分析対象にするため、ケバ付きの素起こしが求められますが、ビジネス実務では、そのような精密なテキストから得られる情報までが必要になることは、あまりありません。というのは、発話のタイミングや、言い淀みなどまで分析しようとすると、途方も無い時間が必要になってしまい、実務としてあまり現実味がないためです。なので、僕自身はケバ取りで書き起こしをしています。

“(Q)UXデザイナーの実務内容が知りたいです。何かをビジュアライズする仕事ではないと考えた方が良いのでしょうか?UXリサーチャーという名前であればとてもしっくりくるのですが。不躾で恐縮です。。”

(A)「UXデザイナー」「UXリサーチャー」という職種自体が新しいため、その会社により業務範囲は様々です。ただ、しっかり取り組んでいる組織においては「ユーザーを調べる」ことをコアスキルにされている点は共通しています。

登壇資料は Slideshare で公開されています👏

https://www.slideshare.net/storywriterjp/uxux-251415578

以上が、今回のイベントレポートです!次回のイベントもお楽しみに◎