【イベントレポート】“エンジニアのキャリア分岐点”マネジメントで見える世界とエンジニアとしての生存戦略

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こんにちは!TECH Street編集部です!

今回は2021月12月22日(木)に開催した、 「エンジニアのキャリア分岐点”その時どうする? マネジメントで見える世界とエンジニアとしての生存戦略」のイベントレポートをお届けいたします。

キャリアや年齢を重ねていく中で「エンジニアとしてこれから自分はどうあるべきなのか」と考え始める方も多いのではないでしょうか。キャリアの分岐点に立っているエンジニアの皆さんにとって、今後のヒントとなるような内容を盛りだくさんでお送りします!

登壇者はこちら◎

久松 剛さん/株式会社LIG
大谷 祐司さん/ミイダス株式会社
岡本 邦宏さん/パーソルキャリア株式会社
吉次 洋毅さん/パーソルキャリア株式会社

 

テーマ①:パネラーの分岐点について

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吉次さん:今日のイベントは、ミイダスの大谷さんがキャリアについてFacebookで投稿しているのをきっかけに企画したのですよね。大谷さんのキャリアの分岐点やきっかけは何だったかお聞かせください。

大谷さん:サイバーエージェントにいたときに、3年ほどプレイヤーとしてものづくりを経験しました。そこでマネージャーにチャレンジしたこともあるのですが、「みんな自分と同じくらいできるものだ」という意識で接してしまい、失敗した経験がありました。

自分はマネージャーではなくプレイヤーが向いているのかと思っていたところ、子会社に出向。そこで、当時社長だった菊池さんからマネジメントの温かさや、マネジメントと管理の違いなど色々なことを教えていただきました。ここで自分も、頑張ればマネジメントができるのだなと思い始め、マネージャーとしてのキャリアもいいなと思うようになりました。

吉次さん:プレイヤーからマネージャーに移る時、プレイングマネージャーみたいなものを経由することも多いと思いますが、どのようなアプローチをしていましたか?

大谷さん:初めの頃は「何日でできる?」「いやそんなにかからないでしょ、1日でやってよ」のようなダメなコミュニケーションをしてしまっていました。そこから、メンバーの立場に立ち、今彼らが持っている知識はどういうもので、このタスクを通してどう成長できるのか、そのためにはどういう時間の使い方をしてもらうのが適切なのかなどを考えるようになりました。短絡的な結果ではなくメンバーが成長することによって組織の力も上がっていくという視点で考えるようになり、これが自分の中のターニングポイントだった気がします。

吉次さん:ありがとうございます。では、岡本さんはどうでしたか?

岡本さん:僕は、サイバードでの経験がターニングポイントでした。先ほど吉次さんがおっしゃったように、僕はプレイングマネージャーを一回経由しているのですが、当時調子に乗っていたのでしょうね。(笑)

各事業部にPLがあるのですがトップラインを達成するためにはボトム(コスト)を合わせるしかないという状況。自分はエンジニアだったので、自分がやりさえすればコストが浮くと考えていました。レベニューシェアでやっているビジネスなので、トップラインが達成できなくてもボトムを合わせれば評価されるのですよね。自分がサイバード初のプレイングマネージャーとしてなんでもやってやろうと思っていました。

しかしある時、自分が開発のボトルネックになってしまいました。出張に行ったり、企画書を書いたりPLを見たり...全く開発に時間を使えない状況。結果的にお客さんにとても迷惑をかけてしまう出来事がありました。

自分が求められることを考えた時に、自分の時間をマネージャーとして使ったほうがいいと決断したのが私のターニングポイントでした。自分のレスポンシビリティをちゃんと理解する、という良いきっかけになりましたね。

久松さん:LIGでいうと、エンジニアがフィリピンに100人、ベトナムに15人、日本人のテクニカルディレクター10人というチームでしたが、得意不得意がわかりやすいチームでした。toBが得意・toCが得意、ドキュメントがないとダメ・なくても大丈夫など、様々なキャラクターの存在する状況でした。本人たちのWill・Can・Mustや志向性、これまでの実績を見ながらチーム編成をするようになりました。

このような考えに至るきっかけを考えると、博士の時に研究していたP2Pの世界が一つのきっかけだったと思います。今だと、例えばYoutubeという確固たるサーバーが並んでいます。この確固たるサーバーによって構成された状態を人に置き換えると、新卒でまっさらな人が一人前になって一人月として捉えられるようになった、というような状態に似ていると思います。一方でP2Pの世界では、受信しながら転送する、PCのスペックの良し悪しやネットワークの良し悪しに左右される、コンテンツの詐称ができる、再構築が必要になるということを繰り返していくのですが、これがまさにベンチャーの人事だなと思いました。

人事領域はあまりシミュレーションできないと思っていたのですが、実は誰よりもシミュレーションをしていたのですよね。重要な人がパッといなくなってしまった時に、次の人を立てるかなども、事前にシミュレーションしておかないと乱れてしまうのでそういう意味でも面白いと思います。

大谷さん:ピンポイントにすごく興味を持ったことがあるのですが、抜けそうな兆候はどうやって見つけていたのですか?

久松さん:P2Pの世界だと「突然いなくなる」可能性は前提として計算に入れるのが一般的でした。今、人材がどんどん流動的になる中で、最終出社の2週間前に連絡してくる、なんてこともよくありますよね。そういう時のために、横軸に繋がりを作って絶えず情報交換をする必要があると思っています。例えば、我々の拠点のあるフィリピンのセブ島は、大きな台風が来てライフラインが切断、発電機を使って仕事をしないといけないような状況になったのです。数日間ブランクが空いてしまうような状況が発生したのですが、セブ島以外に住んでいる人を集めたり日本のメンバーでカバーしたりして、ある意味P2Pのアルゴリズムの応用ができたような経験だった気がします。

吉次さん:ここで質問が来ています。

Q:教えるよりも自分が手を動かしたほうが早い時のジレンマをどうやって乗り越えましたか

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岡本さん:自分で動かすには限界があります。短期目線でいうとめちゃくちゃ早いかもしれないけれど、中長期的に見ると問題を先送りしているだけなので、いかに中長期目線で考えられるかどうかだと思いますね。

吉次さん:ありがとうございます。大谷さんも、チームメンバーが自分と同じくらいできるものだと思ってしまったジレンマもあったと思うのですが、いかがですか?

大谷さん:チームが成長するという目線で考えるようになりましたね。短期的に、自分が目の前のことを解決するということよりも、支援してあげて、その人ができるようにしてあげることで、チームとして戦力をあげるという方向に意識を変えていきました。

吉次さん:なるほど。長期的に見て、自分以外の組織のキャパシティという視点で見ることが大事そうですね。こんな質問もいただきました

Q:マネジメントの考え方やスキルをどう学びましたか。また、学ぶためにどういう環境が最適なのかの見分け方を教えてください

久松さん:マネジメントにはいくつか種類があります。このうち、プロダクトマネジメントとプロジェクトマネジメントの二つは、お金になります。エンジニアリングマネジメントはお金にならない=営業利益で儲かるという話ではない分野ですよね。

最近noteで「曖昧ロール型雇用の難しさ」という話をしたのですが、エンジニアマネジメントは非常に重要なのですが、組織全体で考えた際、過剰に営業利益や粗利率、売上貢献にこだわりすぎると、余裕がなくなってくることに気がつきました。マネージャーや中間管理職をする上では、粗利に余裕がある企業を選ぶほうがいいのではないかと思っています。

吉次さん:数字を追わないといけない環境だと、マネジメントのスキルを学ぶということに集中できないですよね。

では、次の質問です。

Q:SIerを経験された方に質問です。私も現在SIerをしているのですが、コーディングする機会が全くなく、技術力が身につく未来が全く見えません。SIerでは、マネジメント力が主に身につくかと思いますが、自分で開発できない人間に将来はないでしょうか

大谷さん:私もいわゆる二次受け、三次受けのようなことが多く、上流工程は経験できなかったのですよね。自分で開発できない人間に将来はない、という質問ですが、そんなことないと思います。
例えば、ITの知識がある人が、レガシー産業に行き、最先端の知識ではなくてもITの知識を用いて課題解決するということもあると思いますし、開発ができないから将来がないと過度に悲観する必要はないと思います。

その一方で、最新の技術が目まぐるしく出てくるので、面白い技術の部分を知りながら、裾野を広げていくために自分で勉強していかなければいけないと感じることはすごくあります。手を動かせるほうが、新しい技術への理解を進めやすいので、そういう意味では手を動かせることのメリットも多いのではないかなと思います。

久松さん:マネジメントは見える景色が変わってくるのが面白いなと思います。りんごの木に例えてみます。開発者は、美味しいりんごの実がなるように面倒を見る人です。アウトプットとしてはりんごの実があります。そのりんごの実を、営業側に渡したり、マーケターなどに任せたりして売ってもらうというような形でお金を作っていくのですが、マネジメントは複数のりんごの木がある中でどうやって売り上げを出していくのか、来シーズンの収穫はどうするか、長期的なビジョンで来年も美味しいりんごを作るにはどうすればいいのかなどを考えながら、全体を俯瞰しながらみていくという世界です。全ての木に対して、全てを把握することは難しいと思います。マネージャーの持つ技術力という点においては「概念のキャッチアップ」が重要だと思います。新しい技術の細かいところはメンバーに任せていても、概念を追いかけていくことは大切だと思います。ですので、別のプロセスを立てる感覚で、他の人を育成するというのがいいと思います。

 

テーマ②:マネジメントで見える世界と中間管理職の魅力

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吉次さん:プレイヤーの立場から見ると調整することが多くて勉強する時間がなくなるというようなネガティブなイメージや、成長イメージがつかめないなど、キャリアとして選びづらいポジションと感じている方もいらっしゃるのではないかと思います。皆さんはいかがでしたか?

久松さん:前提として、フリーランスの人たちが増えていますよね。フリーランスのプロジェクトマネジャーはいるにはいますが、基本的にはメンバーとして稼ぎたい、よく言えばスペシャリスト思考の人が多いと思います。また、出世するより副業した方が稼げるという世界線もある中で、マネージャーの何がおもしろいのかを説明する必要がありますよね。

「自分の給与ってどこからくるの」という話をするととてもわかりやすいと思います。自分の手取りの給料がこれくらいで、そこに社会保険や教育費用など様々なコストが乗ってきて、そのうちの一部が給料だという話をするのです。いわゆるフリーランスや副業をしたいという思考の人は、自分の手取りを最大化したいと思ってフリーランスになる方が多いのですが、手取りを構成するような要素をどれだけ自分でカバーできるか、という問いかけをします。そうすると、やっぱり会社ってすごいね、という着地になりやすい。そこを理解してもらった上で、大きな会社を動かすには中間管理職になっていくしかないよね、という話をすると納得してもらいやすいですね。

岡本さん:僕の場合だと、中間管理職の話をする時は大きな会社やベンチャーを船に例えることが多いです。大きな会社=豪華客船だと、例えば右に曲がりたい時も、航海士や船長など様々なカウンターパートの意思決定が必要で、そこがそれぞれの中間管理職の腕の見せ所のようなイメージです。自分一人ではできないような影響力を持って、産業にレバレッジをきかせるという経験ができる、それがいないと大事故になるかもしれないという状況でパワーを発揮できるというのが中間管理職だと思いますね。

大谷さん:マネージャーのやりがいみたいなところにフォーカスすると、メンバーが成長し、自分が想像もしなかった成果をチームで出してくれるのを見られた時はすごくマネージャーをやって良かったなと思いましたね。

過去に、技術的な課題を解決する方法を考えるところからメンバーにお願いしたことがありました。そうすると、自分が名前を知っているけど触ったことがない仕組みを提案してきてくれたんです。聞いた時は「本当にそれ大丈夫なの?」と思ったのですが、期待値よりも本当に大きな成果を出してくれました。その時に、自分が知っている範囲、自分の経験の中だけで組織の成果を最大化するということは老害化しているのだろうなと思ったんです。もっと、若い力やチャレンジングな部分を伸ばしてあげるほうがいいなと思いました。

久松さん:フリーランスから正社員に転向される方もよく言われるのですが、一人の仕事ってたかがしれているのですよね。そこに対して、数百万、数千万円の大きい仕事や海外人材とのタイアップのチャンスも正社員ならではだと思います。中間管理職になって、大きく動かしている実感がないと抱きづらい魅力だと思いますね。

吉次さん:ありがとうございます。ここで質問が来ています。

Q:マネージャーになると、上からの要求に答えるのに必死になってエンジニアの自由を奪ってしまったり、板挟みになったりするのではないかと思っています。そんな経験はありますか?ある場合はどのように調整しましたか?

これは僕もすごく気になりますね。いかがでしょうか?

久松さん:最近だと、営業職の強い組織のエンジニアチームのプレゼンス改善などの依頼が増えてきました。営業職は売り上げの貢献がすごくわかりやすい一方で、エンジニアってコストセンターだよねと言われることもあります。それに対して、エンジニアの給料を上げるとどうなるとか、エンジニアの視座を上げることがどうなるかを言語化します。マーケターに、この施策を実施するとどれくらい売上が上がるか等を試算してもらった上で、現在の人員での工数見積をセットにして事業部長と施策の優先順位を握りに行くコミュニケーションを取ったりしたことがあります。こうすることで、エンジニアの優秀さがどのように売上貢献してくれるかを理解してもらえるようにしています。共通言語でマネージャーが話に行くというのも大事だと思います。

岡本さん:先程の営業の話でいうと、結局ゴールが一緒で言っていることも同じでも、話すコンテキストが合わないことが多々あります。

コンテキストをどう表現するか、どう握りに行くかをうまく機能させないと、組織はうまくいかないと思います。中間管理職は、組織のケイパビリティがわかっているはずなので、今できる限界を、コンテキストを合わせて伝えることで、わかってもらえたりしますよね。

久松さん:私もnoteで何回か取り上げたのですが、ベイカレント・コンサルティングの方々が書いた「エンジニアがビジネスリーダーをめざすための10の法則」という本があります。共通言語を話すトレーニングはとても役に立つので、ぜひ試してみてほしいです。

大谷さん:要求がきた時に、なんの課題を解決してほしいのだろうということを要求した側と同じ目線で理解するために、視座をあげたり、言語のトレーニングをしたりするのは普段から必要だと思います。自分が腹落ちしない状態でメンバーに話しても、メンバーも絶対腹落ちしないので、適正な要求かどうかも含めてしっかりと要求する側と話すのが大事だと思っていますね。

久松さん:それでいうと私も、この前BizDev研修をやったのですが、Bizの人とDevの人を同じチームにして4時間くらいの研修をやりました。その中で非常に好評だったコンテンツは「一緒に障害報告をしよう」というもの。エンジニアって、障害報告する時に時系列で長々と書いちゃうことが多いのですが、これって経営層からするといらなかったりするのですよね。結論、どれくらい止まっていて、どれくらいビジネスに影響があって、次の発生確率がどの程度で、抜本対応にどのくらいかかるのかがわかれば良いため、それらをエンジニアではない経営層に報告しましょう、というワークをしました。

吉次さん:続いて、こちらも難しい質問ですね。

Q:プロジェクトのマネジメントと、組織のマネジメントの両立が難しいと感じています。転職を考える場合、ポータビリティなスキルとしてどちらに注力したら良いでしょうか?

岡本さん:いくつかケースはあると思うのですが、プロジェクトマネジメントも組織マネジメントも大事で、両方持っていればベストですよね。ただ、向き不向きもあると思います。プロジェクトのプロセスを積み上げて行くのが得意な人は、組織マネジメントで情報の粒感を合わせてくのが苦手なことも...まずは、自分の適性を客観的に周りから聞いてみることもいいと思います。そして、そのスキルを求められている会社に転職したらいいと思います。

久松さん:需要はどちらもありますが、人が好きか、コンピューターが好きか、だと思っています。僕も、インターネットの基盤をずっといじっていたのですが、最終的に人の方がよくわからなくて面白いというところに行き着きました。

やはり、市場にマネージャーがいないので、どこも欲しがっていますよね。今日本のエンジニアが引く手数多な理由は、少子化によって人が減っていることもあると思います。海外人材の供給がされるようになったら、需要は無くなってしまう。プログラミングは海外人材に任せられても、企業がやりたいことを言語化していける人の需要はあると思うので、ここのマネジメントをできるようになるのが生存戦略上良いかと思いますね。

岡本さん:もう少しすると、英語が話せるようなプロジェクトマネジメントや組織マネジメントはめちゃくちゃ重宝しますよね。その国の文化のことを知っているとか、それだけでもすごいアドバンテージだと思います。

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テーマ③:組織を作って行く立場からみて、どんなエンジニアに活躍してもらいたいか。組織づくりの狙いは?

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吉次さん:ちょうど質問で「中間管理職向きだなと思うエンジニアはどういうエンジニアですか」という質問が来ていますね。エンジニアでいうとどうですか?

久松さん:他人に興味があるかどうか、ではないでしょうか。自分の持ち場だけやればいい、という人はフリーランスに向いていると思います。

岡本さん:組織の規模によっても求められ方は異なりますが、僕の組織でいうと、エンジニアそれぞれが技術を伸ばしていってほしいというのが大前提です。その上で、ユーザーにいいものを早く届けたいという視点を持っていることも大切です。その視点や意識がチーム作りに影響すると思いますし、そういう意識を持っている人には任せやすいし権限委譲もしやすく、信頼関係も生まれやすいですね。

吉次さん:なるほど。大谷さんはいかがですか?エンジニアの組織を作って行く中で、リーダーやマネージャーを育てて行く経験があったと思うのですがどうでしょうか。

大谷さん:ミイダスの組織でいうと、多様な人材を受け入れるような思想でやっています。技術は好きだけど、サービスやユーザーにあまり興味がないという人も活躍してもらっていいと思っています。そんな中で中間管理職をお任せしたい人でいうと、「チームで成果を出していこう、助け合っていこう」という振る舞いをしてくれる人だとか、人のいいところを見つけて褒められる人がいいなと思っています。

久松さん:前向きな提案が最初からできる人って少ないのですが、そのような働き掛け方ができるようになってくると、リーダーとしていいな、と思いますね。

提案って結構エネルギーがいるのですよね。私の後輩も、週4で働きたいからフリーランスになった方がいるんですが、フルタイムで働いている時に比べて、提案するエネルギーが減ってしまったといっていました。これもリーダーシップの素養と逆の話なのですが、提案はエネルギーが必要なのでそれを乗り越えてもやろうと思うというのがリーダーの素養だと思いますね。

大谷さん:何かを変えようと思う提案は、それなりに熱量が必要になりますし、熱量って伝わるので、そこまで熱量を持ってやりたいなら組織もやろうと思いますよね。

吉次さん:ここでも質問を拾っていこうと思います。

Q:会社の規模によっては、マネジメントになるとこれをやる必要があるのか?というような管理系の仕事が増えて行くようなイメージです。パネラーの皆さんがマネージャーになった時に、これ、本当に必要なのかなと思う仕事はどれくらい増えましたか?また、それにどのように向き合ってきましたか?

岡本さん:大量のスプレッドシートに囲まれたりもしますが、仕事をするための仕事も、大事だと思います。それが本当に必要なのかと疑問に思うならば、例えば、GASでスクリプトを書いて自動化するなど、自分でソリューションを提案すれば良いし、役割をどう考えるかをもう一歩踏み込んで捉えるのがいいと思います。マネージャーとしての視座をあげることが必要だと思います。

久松さん:最近、DXコンサルという言葉も流行っていますが、自社で本当に必要なの?という仕事があったりするんですよね。この仕事いらないよね、というのは簡単ですがなんのためにやっているのかとか、こう改善しようとかをコミュニケーションして行くのも管理職の仕事かなと思いますね。

大谷さん:インテリジェンスに一人目の社員として入った時はめちゃくちゃありましたね。面倒くさいやつだと思われたかもしれませんが、結構ガシガシ言いに行きましたね。どこにいったらそれを変えられるのか、改善できるのかなども聞いてアプローチして行きました。

久松さん:相手の立場を思いやりながら提案して行くと結構人って動くんですよね。この仕事って無駄ですよねと否定するのではなく、根気よく目線を合わせながら改善して行くのが良いと思いますね。

吉次さん:立場が違う人同士だと、知らないから無駄になっているけど、知ったらすんなり解決するなんてこともありますよね。

続いて、こんな質問もいただきました。

Q:管理職として長く仕事をしていると、リスクを気にしすぎてしまうバイアスがあると思います。先ほど老害というワードが出ましたが、そのバイアスをどのように意識して取り払っているのでしょうか?

大谷さん:新しい技術に対して、それって本当に今必要か?と思うことが多くありました。しかし、ここ数年反省して、自分であえて新しい環境で作るように意識しています。始めてみると、思ってみたより便利だし工夫次第でスケールするなと実感できるようになりました。新しい技術は、概念として理解するだけでなく、手を動かして便利さを理解することが必要だと気が付きました。

岡本さん:最低限キャッチアップはできるようにします。リスクを気にしすぎてしまうという発言は、技術がおろそかになってしまうのでは、という不安もあると思うのですが、それはキャッチアップすることで精神衛生を保つことができると思います。あとは、マネージャーは役割なので、市場から見ると求められているので、不安に思うことはないと思いますね。

久松さん:若手が新しい仕組みを導入したいと提案した時に、「自社の現状のものでいいじゃん」と潰すマネージャーがいますが、自社の手札を増やすというイメージで追加して行くと、そんなに苦痛じゃないと思うのです。今までの知識でやってきたもので戦えないのではないかと思って保守的になってしまうと手札は増えないです。自社の手札を増やすために新しい技術をやらせてみる、自分も理解する、そして責任を持つという姿勢があれば良いと思います。

Q:エンジニアとしての経営者目線はどう持つべきか悩んでいます。メンバーとしても持つためにはどうしたら良いでしょうか

大谷さん:SIerの時、自分でシステムを作ってネットで公開していたのですね。そうしたら
サイバーエージェントの人から連絡が来て、うちの会社で使いたいと言われました。それまで、自分で見積書を書いて出して、というのをやったことがなかったのでめちゃくちゃ緊張したのですが、その経験からとても視座が上がりました。もし、今の会社の中でできることが限られているのであれば、副業を通して、ベンチャーに参画してみる、仕事を見つけて作って納品することを経験すると経営者目線というのはかなり持てるようになると思います。

岡本さん:商流を理解するというのが大事だと思います。自分の給料がどうやって発生しているのかを理解するためにフリーランスでやってみるのも一つの手ですね。自分が自分を雇った時に、これだけの活躍をしたんだっけ、と自分ゴト化して考えてみるのもいいと思います。

久松さん:顧客に会ってみるのもいいかもしれないですね。お客さんは何を考えているのか、なぜそれを作りたいと思ったか、なぜ自分たちに頼もうと思ったのかなど、意思決定がみられると新しい気づきがあるかと思います。実際に渡しも営業さんと一緒にお客さんのところに行くのはかなり視座を上げるいい経験でした。想定されるシステムがどうやって使われるのかを実際に見に行くのもいいと思います。

 

当日のトークは内容は以上になります◎

今回は、キャリアに迷うエンジニアの皆さんの参考になるお話が盛り沢山だったのではないでしょうか。フリーランスエンジニアが増えるが故、市場にマネージャーがいない状況になっている、というのも興味深かったですね…!
自身のエンジニアとしての市場価値を上げていくために、何を選んでいくのか、どのようなキャリアを築いていくのかの参考になれば幸いです。

次回のイベントレポートもお楽しみに!