【連載2】各社の若手エンジニア学び・研修特集 〈クリエーションライン株式会社編〉

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こんにちは!TECH Street編集部です。

TECH Streetコミュニティメンバーが気になるキーワード「エンジニアの育成」「エンジニアの学び」に注目。
各社の若手エンジニアの学び・研修特集第2弾です! 今回はクリエーションライン株式会社の皆さんにお話を伺ってみました◎

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クリエーションライン株式会社株式会社
(左上)荒井 裕貴/Organization Development Team Leader
(右上)鈴木 逸平/取締役 CSO(Chief Strategy Officer)
(下) 向山 英治/Branding Manager     

 

――まずは貴社の事業内容から教えてください。

荒井氏:クリエーションラインでは主に、アジャイル開発サービス事業とサブスクリプション事業の二つの事業軸で展開しています。前者は、アジャイル開発に取り組むクライアントと一緒にひとつのチームをつくり、開発を進めていくサービス。後者は、海外のツールやサービスの代理店機能です。日本語による導入サービスやサポートを提供しています。二つの事業は連動していて、アジャイル開発をより効率的に進めリリースサイクルを早めるために、弊社で扱っているサブスクリプションのツールを導入していただくこともあります。

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鈴木氏:最終的には“クライアント自身によるソフトウェアの内製化”を共通のゴールにしたいという考えがあります。ただし、スタート時点ではクライアントのエンジニアと弊社の人材(アジャイルコーチやデータベース等を含む特定領域の専門技術者)が半々くらいの混成チームです。

クライアントが持っていない知見を私たちが提供するなかで成功事例をつくりながら、最終的にはクライアントのエンジニアだけで構成されるようになればというイメージでお付き合いさせていただいています。

もちろん、提供するのは技術だけではありません。ソフトウェア開発の考え方や文化をどう形成していくかが重要な要素です。また、アジャイル開発に適した環境の整備も重要ですし、さらにプロジェクトに必要な人材の確保も大切です。そういったものを含めて、クライアントが自走できるよう知見を体系化して、寄り添いながらサポートしていきます。

 

――貴社の組織面における特徴を教えていただけますか。

荒井氏:弊社では「HRT+JOY」という企業理念を掲げています。HRTとは謙虚(Humility)・尊敬(Respect)・信頼(Trust)の略語なのですが、これらを実践し、チームとして力を発揮していこうという想いを込めています。もうひとつがJOYで、仕事における喜びを組織の中で感じることを重要視しよう、そして“そういう働きかたをしてもいいんだよ”とエンパワーメントしていく考え方です。

だからこそ「HRT+JOY」を体現している組織であり続けようと、会社の文化が形成されています。特徴的なところで言うと、CEOの安田は週に1回、全メンバーを集めて雑談をしていたりするんですよ。会話や雑談を重んじる文化はチームの質を高め、そうして「HRT+JOY」につながっていくんですね。

 

――250人の社員がいる中、会話や雑談を重んじる文化を上手く形成するにはどうしているのでしょうか。

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荒井氏:週に1回の「Weekly朝会」という場で、1時間の全社集会を設定しています。Zoomでメンバーが集まってきますが、ブレイクアウトセッションを使い、5~6人程度のメンバーに部屋分けし、雑談をする場を設けているんです。また、弊社では雑談を仕事の工数の一部として計上しており、去年は業務時間全体の3%を雑談の工数として使うという目標を掲げていました。あえて雑談に取り組むことで関係性が良くなり、それぞれの思考も働くようになる。するとアウトプットも良くなって、最終的に会社の成果に繋がるという考え方のもと、関係構築や関係の質の向上に取り組んでいます。
 

――ここからは教育、研修、勉強会について詳しくお聞かせください。まずは、ベースとなる全体的な考え方、方針から教えてください。

荒井氏:“必要に応じて必要なものを”というかたちでカリキュラムの開発を行っています。必要な声や必要なビジネス状況があって、それを解決するために教育コンテンツが生まれる、すなわち“必要だから教育をつくっている”ということです。

よくありがちなのは、理想の人材像を設定して教育コンテンツを設計するというものですが、たとえばデリバリーまでに1年かかったら、1年後には必要な人材像が変わっているかもというリスクがぬぐえません。もちろん、人材像の設定からプログラムの作成までを1週間でできるのであれば、全体を設計した上でやったほうが理想だと思います。しかし、我々はそこまでの計画と設計とトレーニングコンテンツ実装のスピード感を持っていないので、必要になっているから必要なものをそのタイミングでつくっているという感じですね。

やはり変化も激しい時代ですから、変わるものにその都度適応している、ということが現実的なのかなと思います。アジャイル教育っていうとわかりやすいかもしれません(笑)。

 

――貴社では以下のような教育、研修、勉強会を実施していると伺っています。それぞれ詳しくお聞かせください。

  アジャイル開発道場
・  アプリ荘
・  人間勉強会
・  財務セミナー
・  焚火で動画を見る会
・  CL.FM
・  よろず屋会

荒井氏:最初の「アジャイル開発道場」からご説明します。冒頭で、クライアントと一緒にひとつのチームをつくってアジャイル開発を進めるという話をしたかと思いますが、チームを組んでプロジェクトを進めていく上ではやはり課題があります。

それは、技術的な課題もそうですし、マインド面での課題もありますよね。今までと違った開発の進め方であったり、考え方を持って仕事に取り組む際に、いきなり明日から“この人が新メンバーです”と言われても、環境や技術に馴染んでいない状態から、成果を出すまでに時間がかかってしまったり、場合によっては人材アンマッチも生じます。

そこで、チームに参加する前段階の教育として導入していただくのが、この「アジャイル開発道場」です。具体的には1ヶ月ほどの期間を設定し、その中で実際にアジャイル開発の手法を取り入れながら、短い期間でのリリースサイクルやプロジェクトを立ち上げるフェーズなどを体験しながら開発を進めるというものです。雑談などを通したチームビルディングから実践的なアジャイル開発に触れていただくことで、スムーズな導入につなげていきます。アジャイル道場は体験入門編もあり、かなりご好評をいただいているプログラムですね。

 

――「アプリ荘」とは何でしょうか? 

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荒井氏:「アプリ荘」は、プログラミング未経験の方々や比較的開発経験が浅い方々を対象とした社内のプログラミング教育です。たとえば、今までインフラを担当してきたけれど開発者に転向したいという方や、新卒で入社してプログラミングは未経験だけれどこれからプログラマーとしての道を歩んでいきたい…という方々に向けて実施しています。

数か月という長期間を要するプログラムで、Webの基礎知識やクラウドの知識などを学び、特定のプログラミング言語を使った開発を実際に行います。場合によっては社内で使うアプリケーションを開発していただくこともありますね。実際の開発からリリースまでのサイクルを体験することで、プログラミングを学んでいくというものです。

 

――「人間勉強会」とはどのようなものなのでしょうか。面白いネーミングですね。

荒井氏:これは一言で表しにくいのですが、例えば心理学などの講義であったり、場合によってはプレゼンテーションスキルであったり、キャリアについての話があったり…。面白いところでは「ダイバーシティ&インクルージョン」というテーマもありました。座学というか、社内で得意分野をもっている方に講師としてお話しいただく、というようなスタイルですね。

月に1回、講義形式で開催していて、参加できない方は社内で公開されている動画を視聴。いつでも資料と動画を見ながら「人間勉強会」の内容を学べるというものです。この「人間勉強会」のサブタイトルは「知的好奇心をくすぐる」。何か話を聞いて、それによってきっかけを得て、自分の仕事に活かしてもらえれば嬉しいなと思っています。

ちなみに「人間勉強会」は人事に関わる方が主催していて、「アジャイル開発道場」は主に組織開発のチームが、「アプリ荘」はアプリケーション開発部隊のチームが展開しています。いろんなチームが主体的に教育に携わっている、という点は弊社の特徴ですね

 

――「財務セミナー」というのもあるのですね。これは社員全員が受けられるのでしょうか。

荒井氏:そうですね。動画も公開されていて、社員全員が任意で参加できるプログラムです。必要な人が必要なタイミングで学ぶ、という考え方に基づいていますね。内容もかなり本格的で、資本主義の構造やマクロ経済的な話など、幅広いテーマを用意しています。

弊社では透明性をもった運営をしようという方針のもと、財務に関する情報を所属している全メンバーに対して公開しているんです。そうなると、そもそも読み方を知らないといけない、という話になりますよね。だからこそ財務知識といった、一見するとエンジニアとは関連性がないように思われるプログラムも開催しているんです。

それに、興味のある事柄を正しく理解する、把握する力をつけておくことは、必ず仕事にもいきてくるじゃないですか。いろんなことを学び、より深いところからの育成支援ができたらなと考えています。 

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向山氏:会社に所属して、キャリアが積めるのはある意味で当たり前。だって、会社って仕事をする場所ですからね(笑)。でも、こういった幅広い学習の機会があると、その人にとって会社の意味合いも変わってくると思うんです。仕事をしてキャリアを積む場でもあるし、いろんな学びを仲間と一緒に得る場でもある。やっぱり、そういう会社のほうが豊かな時間を過ごせると思うんですよね。仕事だけして終わりっていうのは、少し寂しいじゃないですか。

「興味のあることをみんなで勉強したら面白いよね」っていうシンプルな発想からうまれた人間勉強会ですが、すごく本質的な取り組みのようにも感じます。そこには「どうしたらもっとみんなにとっていい会社になれるだろうか」と考え続けている人と、「いろんなことを楽しく学びたい」という人がいるわけですから。

 

――「焚火で動画を見る会」というのも非常にユニークですね。

荒井氏:ちょっと謎なタイトルですよね(笑)。リモートの生活が長くなってきて、カンファレンスが開催された時のセッションや講演が録画されて公開されることが多くなってきているじゃないですか。これは、そういった動画を見ながら語り合おう、という会です。動画を一緒に見て、そこで感じたことや思ったことを共有しあって学びに繋げていこうという、勉強会というか、まあ動画を見る会ですね(笑)。

なんで「焚火で動画を見る会」なのかというと、開催場所がoViceという仮想オフィスの焚火があるところで実施しているからです(笑)。お話ししていて気づいたのですが、どうやらうちの会社はこういう遊び心が要所要所で吹き出ているようですね(笑)。

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――単純なスキルシェア、知見シェアではなさそうですね。

荒井氏:そうですね。要約したりせずに、その動画でその方が話されているその熱量で話を聞こうという意図があります。知見シェアになると、自分のフィルターで語って要約してしまいがちですが、そうではなくて、同じものを見て、それぞれ色々感じ方が違うから、というところで語り合ったりしていますね。

不定期ですが、1週間に1回くらいは実施していると思います。数名のメンバーでやることが多く、雑談するにもちょうどいいと思います。本当に内輪で焚火を見ながらちょっと語り合う、という感じですね。

 

――「CL.FM」や「よろず屋会」というものもあるのですね。

荒井氏:「CL.FM」は、いわゆるラジオです。テーマは「アジャイル」で、社内でアジャイルに詳しいメンバーがラジオ形式で色々なゲストを呼びながら語るというもの。アジャイルをちょっと身近に感じられるようにラジオを聞きながら仕事をするというイメージです。

毎週金曜日17時スタートで、かれこれもう数十回は開催しています。ゲストは社内の人が多かったと思いますが、ときどきは外部の方をお招きして放送することもありますよ。

「よろず屋会」は、技術勉強会というか相談会といったほうが近いでしょうか。サブスクリプションのツールや技術に詳しい方々が時間を用意して待っているので、何でも質問に来てくださいね~という場ですね。

 

――全体を通してネーミングやスタイルがユニークですね。これは意図的にそうしているのだと思いますが、どういった想いがあるのでしょうか?

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荒井氏:特にルールはありません(笑)。ネーミングに対して面白い発想をするメンバーが多くいて、それが特に止められることもなく良いものとして受け入れられている、という感じです。

弊社で働いていると違和感を覚えない状態なので、もはや文化なのだと思いますね。たとえば「こういうネーミングでこんな内容のものを考えたんだけど、どうかな」という感じで誰かが言い出します。すると周りの人が「いいじゃん、やってみよう!」と集まって、それが企画になっていくような流れですね。

アイデアはどんどん実行されるので、実行に関してもかなりハードルが低いです。チャットツールとかで“やります!”と手を挙げると、自然に参加者が集まって実行されるというパターンが多いですね。

ユニークなスタイルですが、実行するリーダーとそれをフォローする人達のモチベーションにはなるのかなと感じますね。有志で活動している都合上、楽しめないとモチベーションがキープできない、継続できないという部分ってあるじゃないですか。だからこそ自分たちらしさを表現できると、やはり楽しさが出てきて、継続されていくのかなと思いますね。

向山氏:「楽しさ」みたいなことでいうと、たとえば弊社のYouTubeには「たぬきボーイズ」っていう謎のグループが登場したりして…。

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やっぱり、冗談みたいなことが好きなんですよね(笑)。同じ学習の機会を提供するのでも、きっちりしすぎたものって、やはりハードルが高く感じられるじゃないですか(笑)。それよりはもう少し可愛げがあって、楽しく学ぶほうがうちの会社らしいかな、と思います。

その他にも、弊社がスポンサーをしているイベントに動画を提供する機会がありましたが、CEOの安田が“はげちゃびん”のズラを被っているんですよね(笑)。

荒井氏:意図して緩いカルチャーをつくり出しているかと言うと、そうでもない。結果として、自然と今の状況になっているような気がします。ふざけようとしてふざけているわけでなく、“どんなアイデアでも実行する会社”という安心感から生まれているのかもしれませんね。

向山氏:アジャイルでよく語られる心理的安全性が、社内にも浸透しているなと感じます。だからこそカッチコチの常識に縛られることなく遊び心を発揮できるし、ときどきはちょっと愉快すぎる仕上がりになっちゃうのかなと(笑)。

 

――どれも、とてもユニークな取り組みですね(笑)。ありがとうございます。では、社外に提供するサービスについても教えてください。

荒井氏:社外向けには、Kubernetesなど弊社が得意とする技術領域や、取り扱いのある製品に関するトレーニングを提供しています。社外向けのトレーニングですが、弊社に所属するメンバーはいつでも参加できる仕組みにしていますね。

もちろん社員のスキルアップという目的がありますが、もうひとつの目的としては弊社のメンバーらしさや空気感を、トレーニングに参加していただいた方へ共有したいという意図があります。ソフトウェア開発における関係性構築のひとつのモデルとして紹介したい、という感覚ですね。

今はオンライントレーニングに変わってしまったのでできなくなってしまいましたが、オフライン開催の際は「おやつタイム」を設けていました(笑)。3時になると美味しいおやつが出てきて、お茶を飲みながら今日のトレーニングについて雑談をするんです。また、体操の時間を取り入れているトレーニングもありましたね。

一日中椅子に座ってキーボードを叩いて…学びは得られると思いますが、やはり疲れるじゃないですか。息を抜いて雑談をする時間を持つことで距離も近くなりますし、だからこそ効率的に学習が進むという側面もあると思います。

トレーニングを受ける際には、もちろんみなさんプログラムはチェックされると思います。しかし、こういった「どういった雰囲気で提供されるのか」という定性面も、学習を考えるうえでは大事なのではないでしょうか。弊社ではそのような考えに基づいたKubernetesGitLabのトレーニングを提供していますので、興味がある方はぜひご検討ください。急に宣伝しちゃってすみません…! でも、こういうのも弊社らしいかなと(笑)。

 

――素敵な空気感ですね。では、今後の展望についてお聞かせいただけますか。

荒井氏:弊社は、もともと知見を持った中途採用のメンバーがメインの会社でしたが、来期から新卒の方も多くお迎えしていきます。新卒の方にフォーカスした学習コンテンツの提供や育成プランに力を入れており、ぜひ楽しみにしていただきたいですね。

 

――ありがとうございます。最後に、貴社のエンジニアの皆さんに向けてメッセージをお願いします。

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荒井氏:弊社がやりたいことのひとつに、一人ひとりの状況や求めていることに応じた学びの場の提供というものがあります。たとえば、先ほどご紹介した社内向けのトレーニングや研修ですが、その提供のタイミングや内容が全員に合っているとは思っていません。

たとえば新卒のメンバーだったら、その人が目指している方向性、場合によってはキャリアを一緒に考えていくところも含めて、前に進むための学びの場をつくっていきたいと考えています。この学びの場をつくることに、もっと多くのメンバーが飛び込んできてくれたら嬉しいですね。

やはり、現場のメンバーが思いっきり活躍できるのがいい会社なんだと思います。我々はそこをお手伝いするというか、最大限のサポートをしていくつもりです。「エンジニアがもっともJOYを感じられる会社」になれたら最高ですね!

以上「クリエーションライン株式会社」のインタビューでした。
荒井さん、鈴木さん、向山さん、ありがとうございました!

今後の「各社の若手エンジニア学び・研修特集 」もお楽しみに。

※1月18日取材時点の情報となります。

取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき / 編集:TECH Street編集部