【連載26】SmartHR躍進の秘訣は“細部”にあり、 CTO芹澤氏が率いるエンジニア組織の強みとは

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こんにちは!TECH Street編集部です。

前回、ユニファ株式会社 取締役CTO赤沼 寛明さんにインタビューをしましたが、今回は連載企画「ストリートインタビュー」の第26弾をお届けします。

「ストリートインタビュー」とは

TECH Streetコミュニティメンバーが“今、気になるヒト”をリレー形式でつなぐインタビュー企画です。

企画ルール:
・インタビュー対象には必ず次のインタビュー対象を指定していただきます。
・指定するインタビュー対象は以下の2つの条件のうちどちらかを満たしている方です。

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“今気になるヒト”赤沼さんからのバトンを受け取ったのは、株式会社SmartHR 取締役CTO芹澤 雅人さん。

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芹澤 雅人 Masato Serizawa/株式会社SmartHR 取締役・CTO(最高技術責任者)
2011年よりナビゲーションサービスを運営する会社にて、経路探索や交通費精算、動態管理といったサービスを支える大規模な Web API の設計と開発に従事。2016年2月にSmartHR入社、開発業務のほか VPoE としてエンジニアチームのビルディングとマネジメントを行う。2020年11月現職に就任し、現在はプロダクト開発・運用に関わるチーム全体の最適化やビジネスサイドとの要望調整を担う。

 

――ご紹介いただいた赤沼様から『プロダクトがすごいだけでなく、開発組織もしっかりとマネージしていて、文化を作られています。それを会社全体としてできているのはCTOとしての力があるからだと思います』と推薦の御言葉を頂いております。現在の芹澤様を形作る原体験からお聞かせいただけますでしょうか。

芹澤氏:パソコンとの出会いは小学生の頃に遡ります。もともと機械には興味があり、自宅にあったワープロで遊んでいたりしたのですが、ある時“世の中にはパソコンというものがあり、ワープロよりもっと色々なことができる”と知ったんです。それで小学4年生の時にパソコンを買ってもらって、インターネットに繋げて使うために回線を引いてもらいました。ネットサーフィンを楽しむうちに“インターネットのサイトは誰でも作れるらしい”と知り、作ってみることにしました。

 

―― 小学生で!?どんなサイトを作ったのですか?

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芹澤氏:友だちと一緒に作ったのですが、内容はまったく覚えていません(笑)。当時確か5年生だったと思うのですが、“公開できた、やったね”みたいなノリでした。内容は覚えていませんが、アクセスカウンターが全然回っていなかったことは記憶しています。僕と友達がそれを毎日回し続けるみたいな(笑)。とにかくその時に、サイトの先に色々な人がいて、その人たちに繋がっているというインターネットの仕組みを理解し、その感覚を面白いと感じました。

中学に入学後、友人に誘われて何となくパソコン部に顔を出すことになりました。そこにはCGをやっている人やプログラミングをやっている人がいたんですよね。そこで「小学生の時にHTMLを書いたことがあります」という話をしたら、「BASICという言語があるよ」と教わったんです。実際に触ってみると、めちゃくちゃ面白い。そこから、命令を与えられるプログラミングに、一気にのめり込んでいきます。普段触っているWindowsのアプリケーションを作ったり、ゲームを作ったりするにはどうしたらいいんだろう?とどんどん興味が湧いていきました。さらに、本を買ってもらって、夏休みの間プログラミングに熱中しました。

中学2年生頃に文化祭に向けて「パソコン部でゲームを作ろう」という話に。そこでまためちゃくちゃ勉強して一気に作り上げたのですが、文化祭当日、“面白い!”と評判になり、子どもたちの行列ができたんですね。それを見て、“自分が作ったもので人に喜んでもらうってすごく楽しいな”って思って、これが今の自分を形作る原体験になっていると思います。

ところが、文化祭を終えると完全に燃え尽きてしまい、プログラミングはそれ以降ぱったり辞めてしまいます。パソコンはインターネットや友人とのチャットを楽しむだけのツールとなり、高校からは音楽系の部活に入ります。大学受験を考える時期になって、僕がプログラミングをやっていたのを知っている親や先生に情報系への進学を勧められたのですが、オープンキャンパスに行ってもどうしても興味が湧かず、結局文系の大学に進学。そこから大学4年間はプログラミングとまったく無縁の生活を送ります。

 

――なんと…波瀾万丈な(笑)。一体、どこでまたテクノロジー熱は再燃するのでしょう。

芹澤氏:就職活動のタイミングです。文系学部なので、周りの人は商社や銀行を志望します。もちろん僕も見てはいましたが、あまり興味が湧きませんでした。アルバイトの飲食業が楽しかったので、地元でカフェでも細々とやろうかと思っていた時に、たまたまIT企業の求人が目に入り、「そういえばプログラミングができる」と思い出したんです。文系学部卒でも可、研修アリ、私服可、都内という条件で絞ってIT系の会社をいくつか受けて、内定をいただいたのがナビタイムジャパンでした。

 

――ナビタイムジャパンではどのようなお仕事をされていたのでしょうか。

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芹澤氏:元々NAVITIMEのユーザーだったわけではなく、交通系に興味があったわけでもありません。“ただプログラミングがしたい”と思っていました。入社後の研修を経てAPIを作る部署に配属されたのですが、そこにはすごい先輩エンジニアがたくさんいて、そこで僕のエンジニアとしての基礎が作られました。先輩方に社外の勉強会にもどんどん連れていっていただき、一気に世界が広がりましたね。

当初はそれほど強い思いをもってこの業界に来たわけではありませんでしたが、段々とエンジニアという仕事を面白いと思うようになりました。2011年に入社しましたが、当時はスマホが流行り出したタイミングで、モバイル端末での位置情報の活用もものすごくブームでした。かつそこから取れるログを分析するのが盛んになっていて、それもすべて教えてもらいました。めちゃくちゃ面白いし、もっと多くの人がスマホを持ち始めたら、いろいろなことができるのではないかと思うとテクノロジーに対する興味が再燃して、勉強を再開しました。

しかし、データ分析は統計の世界ですが、文系出身の僕は数式や論文が読めないことに気付きます。そこで、数学を勉強する必要があるのですが、これがとても大変でした。理系で大学院までいった友だちとタイミングよく会う機会があって話を聞いたのですが、“理系でずっと勉強してきた人には敵わない”と感じ、そこで“エンジニアのスペシャリストとしてスキルを高めるのはここが限界かもしれない”と思ってしまいました。今からやり直したら勝てるかもしれないけど、それには長い時間が必要だと知ってしまったのです。

そんなことから目的を見失い、プログラミングを学ぶ熱が一気に冷めて、社会人としてのキャリアに迷う、そんな日々を過ごします。それなら別のことをしようと考え、マーケティングや企画をかいつまんで学んでいく中で、モノをつくるだけでなく、“それをどう売るのか”を考えることに面白みを感じるようになります。

そこでありがちかもしれませんが、“起業をしたい”という思いが芽生えますが、アイデアが浮かびません。今の収入も悪くないし、リスクをとってまで起業するのか、誰とするのかといった迷いもあり、願望が頭の片隅にはあるけれど、行動するきっかけがない日々を過ごします。

そんな期間が2年ぐらい続いたある日、ついに行動のトリガーがやってきます。それはTechCrunch Japanのハッカソンでした。会社の同僚と一緒に出場してみると、優勝は逃したものの複数の賞をいただき、高く評価されていると感じました。そこで勇気を出して起業するのもアリなのでは?思うようになりました。

ハッカソンの参加特典としてTechCrunch Tokyoに参加し、そこで行われていたスタートアップバトルでSmartHRを見つけ、“めちゃくちゃ良さそうだな”と強く惹かれたのです。

 

――多くのスタートアップが存在する中で、どうしてこの会社に魅了されたのでしょう。どのようなポイントが刺さりましたか?

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芹澤氏:まずはプロダクトの印象が良かったです。人事・労務という僕の全く知らない領域のSaaSで、一見硬そうですがUIは柔らかくわかりやすくて、作った人たちのセンスが良いと感じました。プロダクトの未来としても、世の中にはない体系的で良質なデータが集まる感覚と、それを活用することでまた新しい事業ができそうだと思いました。

実際に代表の宮田さんと話してみるとクリエイティブだし、気さくですごく面白い。しかも、創業メンバーは元々人事・労務をやりたかったわけではなく、11回のピボットの末に辿り着いたというのですね。“何かやろう”と思って立ち上げた組織らしく、この人達はもしこれで失敗しても、また何か新しく面白いことをするのだろうなと。そこについて行きたいと強く思い、入社を決めました。

 

――入社当初はどのような役割を担っていたのでしょう。CTOになるまでの経緯を教えていただけますか。

芹澤氏:最初はいちエンジニアとして入社しました。対応する範囲は“全部”でしたね。僕が入社する前は社員数が3名で、僕たちが加わって7名になりましたが、何でもやらなければ回らない状態でした。僕もひたすらコードが書きたくて入社しましたし、スタートアップってそういうものだと思っていたので、マネジメントなどのタスクは一切なく、ひたすらコードを量産していました。

入社してから1年半ぐらいのタイミングで元CTOが退職。「代わりにCTOをお願いしたい」と言われましたが、コードを書きたかったので断り、VPoEになりました。

マネジメントについては、ナビタイムの時に少しだけやっていましたが、少し苦手意識がありました。当時若かったのもあって求めすぎてしまったんです。“自分には向いていないな”と思っていました。

人に負荷をかけてしまうようなマネジメントはしない方がいいと思っていたのですが、VPoEをやるからにはマネジメントも必要。そこで、“しっかりやり直そう”と思って勉強しました。そうするとマネジメントのセオリーに気づいて、面白味を感じるスイッチが入りました。やればやるほど分かってくる感覚になり、ピープルマネジメントや組織づくりを勉強して実践するのが楽しくなり、プレイヤーとマネジメントの割合が徐々に逆転していきます。

組織が大きくなっていったタイミングで“開発組織全体を1人がまとめて見た方がいいね”となり、その時にVPoEからCTOに肩書きが変わりました。CTOになってもしばらくはコードも書いていましたが、2020年ぐらいから全然書かなくなりましたね。

 

――芹澤さんが入社された当時のSmartHRというプロダクトは、世の中的にどのような状態だったのでしょうか。

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芹澤氏:リリースされたばかりの頃でしたね。2015年11月に正式版が出ていますが、僕はその2ヶ月後に入社しているので、まだほとんどユーザーがいませんでしたし、売り上げも月に20万円ほどでした。

僕たちがやっているのはBtoBのSaaSと呼ばれる領域。SaaSにはシリコンバレーで研究し尽くされた盤石のセオリーがあります。SaaSはホッケースティック曲線のような成長を目指すのではなく、着実に連続的な成長を積み上げていきましょうというものです。初期の頃からそのセオリーを愚直に守ってきています。

 

―― 途中で体力を失う会社もあると思うのですか、貴社が成長をし続けられた理由はなんでしょう。

芹澤氏:要所要所のドンピシャのタイミングで“いい人”が入社しているのは大きいと思います。ちょっと話がそれますが、僕は元々起業を目指していたので、SmartHRでその勉強をしたいと考えていましたが、スタートアップは人に支えられている部分が大きいと知り、“これは再現性がないな”と気付きました。

最初に驚いたのは、僕が入社した3ヶ月後ぐらいに労務にすごく詳しい人が入ってきたことですね。その人がいなかったら人事・労務の経験がない人達が現場感覚とずれたサービスを作り続けていただろうなと思います。その方がきて一気に立て直したのは大きかったですね。あと今のCFOやCOOはその翌年に入社したのですが、その人達がいなかったら、やはり今のような組織になっていなかったと思います。なので要所要所でこの人に救われたなと感じることが多かったです。カルチャーや組織作りは、ある程度再現性があると思いますが、人というのは運の要素も大きいと思います。

 

―― では、SmartHRは顧客、もしくは社会に対してどのような価値を提供したいとお考えですか。

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芹澤氏:会社のミッションは「社会の非合理を、ハックする。」というもの。人事・労務やバックオフィスをテクノロジーで効率化していくことが目下の目的ですね

 

――活況を呈しているHRテクノロジー市場において、貴社のサービスはどのような点で他との差別化を図っているのでしょうか。

芹澤氏:HRテクノロジーは今でこそ盛り上がっていますが、昔からある領域です。ではなぜ我々のサービスが受け入れられたかというと、人事・労務の分野でクラウドネイティブのサービスを提供したのが最初だったからだと思います。従業員にアカウントが発行されてスマホから何かを入力し、担当者に送れる仕組みが新しかったことで広まっていきました。従業員と労務担当者を繋ぐことを意識していて、その点は強みだと思います。ただ、サービスの構造自体を真似しようと思えばできるものなので、その中でより良い価値をどのように提供し、どうやって生き残っていくかということは、社内でも議論をしているところです。

また、「使ってみたい」と思わせるUI、UXの良さを褒めていただくことも多いです。それを対外的に伝えるブランド力も強みだと思っています。社長の宮田が強い思いを持っていて、当社のバリューにも「一語一句に手間ひまかける」とありますが、アウトプットするときには細部にまでこだわりますね。それが組織にも根付いています。

 

――そういう会社のテクノロジー集団を取りまとめるCTOの役割とこだわりを教えてください。

芹澤氏:CTOになって3年ほどのため、その時々で異なるのですが、前提として、私たちはコア技術や特許で勝負する会社ではありません。SmartHRのプロダクトは比較的容易にコピーできてしまう。そういう会社のテクノロジー集団とは何なのか?ということはずっと考えています。

SaaSを作る難しさの1つに「寿命の長さ」があります。開発してリリースして終わりではなく、そこから10年とかそういう単位で継続的に開発・運用を続ける必要があります。長期間の運用に耐えうるように、コードを綺麗に書いたり、テストをきちんと書いていくことや、仕様の変更に強い設計にするといったことには、かなりこだわっています。見えないところでの努力が半端ない集団だとおもいます。

また、全員が納得感を持って、楽しみながら開発ができる環境作りにもこだわっています。自分の経験的にもそうなのですが、人は楽しくモノをつくっているとクオリティも高くなります。なので、できるだけ情報はオープンにして「なぜこれを作るのか」の部分を明確化したり、作るものを決める議論にも多くの人が参加できるようにしたりしています。

加えて、どういう期待値で入社してもらうかも考えます。対外的な発信や選考時のコミュニケーションなどで、前述したような当社の開発の特性をきちんとお伝えし、認識に齟齬がない状態で入社していただきます。変に誇張するのではなく、ありのままをお伝えし、そこに共感していただくことを前提とする感じです。

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――では、どういった人物を求めているのか教えてください。

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芹澤氏:求める技術力は、ウェブアプリの開発で求められる標準的なレベルだと思います。社外からは少数精鋭で“技術力が高くないと入社できない”と思われがちなのですが、実際はそんなことはなく、ジュニアからシニアまで様々な人がいます。大切にしていることは、世の中の課題をテクノロジーで解決して喜んでもらいたい気持ちを持っていることですね。それさえあれば技術力は追いつけると思います。

 

――この会社における芹澤さんのマネジメント、組織作りの肝はどこにありますか。組織づくりのために大切にしてきた考え方、実行してきたことを教えてください。

芹澤氏:一言で表現するのは難しいですね。“これをやれば良い”というものはなく、状況に応じて細かな施策を数多く打ってきた印象です。ただ、前提というか、絶対に疎かにしてはいけない点として「カルチャーの定義」と「カルチャーマッチにこだわる」ことがあると思います。

会社のカルチャーの解釈はとても難しいのですが、自分たちがどういう価値基準のもとに物事を判断していくかについて、全社員で共通認識を持つことが大切だと思います。弊社ではそれを7つのバリューで言語化しています。採用においても、その人の能力だけで判断するのではなく、カルチャーマッチまで細かくみる。どんなに能力が高くて戦力として魅力的でも、“この人と共に長く働きたいと思うか”を常に意識して、そうじゃない場合は妥協せずお断りする。そうして会社のカルチャーを維持していくことが、マネジメントおよび組織作りの土台となっていくと思います。

 

――代表も細部にこだわる方という話でした。芹澤さんも細かい点に留意しながらプロダクト作りをされているとのことですが、これは入社してからそうなったのか、元々そうだったのかでいうとどちらですか。

芹澤氏:後者だと思います。SmartHRと出会った時に“これだ!”と思いましたし、この創業者達とは馬が合うなと思いました。前述の通り、価値観がマッチするかしないかは職場を選ぶうえで大きなポイントになると思っていて、僕は末っ子気質なので自分がやりたいことをやりたいタイプなんですよね(笑)。会社から自分がやりたくないことを言われる可能性を少なくするのがカルチャーマッチだと考えていて、“この会社から言われることは大体自分のやりたいことだな”と思える環境に身を置くことが僕の生存戦略なんです。

 

――それを見極めるのって難しいですよね。

芹澤氏:難しいです。SmartHRと出会えたのは奇跡だと思います。自分が少人数のスタートアップに行きたかったのもそれが理由で、ダメだったら自分が会社を変えてもいいのではないかという思いもありました。

幸いに最近は、どこの会社もカルチャーマッチを意識していて、情報開示もされています。あとは面談の回数を増やせることもあるので、さまざまな角度から企業を見た方がいいと思います。できれば現場の方と会えるとより良いですよね。どういう人と働くかを知ることも大事ですし、僕がもし今転職活動をするとしたら、経営陣がどういうメッセージを出しているのかもしっかりと見ると思いますね。

 

――貴社ではエンジニアの方々が対外的なアウトプットを積極的に行っています。それによって得られる効果をどのようにお考えですか。

芹澤氏:目的は2つあって、1つは対外的な採用ブランディングです。採用のミスマッチを防ぐため、現場を含めて“私たちはこういうチーム”ですと伝える必要があると考えています。

もう1つは、対外的に何かを発表することは自分の力になるからです。エンジニアは日常的に知識をインプットする機会が多いですが、それをアウトプットする機会は意外と少なくて、勉強していた内容をブログに書こうと思ってもなかなか書けないことがあります。正しい情報を発信するために細部まで調べることで知識が本当の意味で身につく。適度な緊張感のあるアウトプットを定期的に行うことが、自身の成長に繋がると思います。

 

――ありがとうございます。最後に、これからの時代、エンジニアとしてどういう生き方をしたら良いのか、メッセージをいただけますか。

芹澤氏:僕が小中学生の頃はプログラミングを学ぶ人の数が今ほど多くありませんでした。インターネットで調べても情報が限られているし、本屋に行っても書籍が少ない。今ならたくさんありますよね。つまり、今はエンジニアになるハードルがすごく下がっていて、多くの人が目指せる。

しかし、エンジニアの人口がものすごく増えている中での生存戦略はすごく難しいですね。残酷な話ですが、「ウェブアプリが作れます」だけでは、市場に身を置いた時の価値にならない。その市場感は養った方がいいですね。自分が企業に提供できる価値は何かを考えるといいと思います。

いろいろな領域を勉強して、その掛け合わせで価値を発揮していくジェネラリストタイプになるのか、誰にも負けない技術力を持つスペシャリストタイプになるのか、その2軸のどちらを選ぶのかを考えると良いと思っています。“どういう技術を身につけたいか”ではなく、“どういうところで働きたくて、そこで働く人はどんな光るものを持っているのか”を考える必要がありますね。

もう1つは、今の時代に求められるのはチームワークです。技術がコモディティ化しているので、どんな環境でも基本的にチームで動きます。プログラミングができる人が1人で活躍するわけではない中で求められるのは、人と話す力や輪を乱さないといったソフトスキル面だと思います。

 

――ありがとうございました。とても勉強になりました!それでは、次回の取材対象者を教えてください。

芹澤氏:CADDiのCTO小橋昭文さんをご紹介します。CADDiはSmartHRと同じく、BtoBでSaaSプロダクトを作っている会社なのですが、小橋さんは尖った技術力を持っているとよく耳にします。また、小橋さんはエンジニアリングスキルとビジネススキルを兼ね備えた素晴らしい方なので、ぜひ色々と伺ってほしいです。

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以上が第26回のインタビューです。芹澤さんありがとうございました!

(撮影裏話)恒例のバトンカットは、芹澤さん×SmartHR広報さんコンビでいかに自然に撮れるか…!を追求していただきながら撮影しておりました!画面左側に手がちらり…(笑)

次回はキャディ株式会社CTO小橋昭文さんにバトンタッチ。今後のストリートインタビューもお楽しみに。

(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき / 編集:TECH Street編集部)