リユース業界のDXを推進、BuySell Technologies CTO今村雅幸氏の新たな挑戦とは

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こんにちは!TECH Street編集部です。

今回は、TECH Streetコミュニティメンバーが気になるヒト「今村 雅幸さん」に注目。
今年、ZOZOテクノロジーズからBuySell Technologiesにジョインし、取締役CTOに就任された今村さんに実際にお話を伺ってみました◎

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今村 雅幸 Masayuki Imamura/株式会社BuySell Technologies取締役CTO
2006年ヤフー株式会社に入社。Yahoo! FASHIONやX BRANDなどの新規事業開発に従事。2009年に株式会社VASILYを創業し、取締役CTOに就任。200万人が利用するファッションアプリ「IQON」のプロダクト開発やエンジニアリング組織をリード。2017年にVASILYをスタートトゥデイ(現ZOZO)に売却。会社統合とともに2018年4月、ZOZOテクノロジーズの執行役員に就任。CTOとしてZOZOのプロダクト開発やエンジニア採用・教育・評価などのエンジニアリング組織マネジメント、情報システム、セキュリティリスクマネジメントなど、幅広くDXを推進。2021年4月 BuySell Technologies 取締役CTOに就任。日本CTO協会理事としても活動を行う。

 

――まずは、これまで今村さんがたどってきたキャリアについてお話しください。

今村氏:新卒でヤフーに入り、ソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートさせました。そこで3年ほど働いたのち、同じプロジェクトメンバーだった仲間とファッション系のスタートアップを起業し、ベンチャー経営に挑戦。私自身はエンジニアなので、CTOとしてテクノロジー面や技術面で会社を支え、プロダクトを成長させる役割を担っていました。

そして8年ほど経営した会社を、2017年10月にZOZOへ売却しました。当時のZOZOはテックカンパニーではなく、これから技術に力を入れていきたいというフェーズでした。ZOZOスーツなど洋服的にも新しいことをやり始めていた頃だったので、エンジニア力を必要としていました。我々のスタートアップは「洋服×テクノロジー」に長けた集団だったので、ちょうどよいタイミングということもあり、ZOZOにジョインすることを決めたという経緯があります。

当時の私のミッションは、技術を使って事業を伸ばし、ZOZOをテックカンパニーにすることで、当時のエンジニアは100名ほどでしたが、私が在籍していた3年のあいだに400名までに増えていました。

 

――今村さんは、テクノロジーをどのように活用することで、ファッション産業の発展に寄与しようと考えていたのでしょうか。

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今村氏:ひとつは洋服の生産にまつわることです。それこそZOZOスーツがやろうとしたことは、自分のサイズを計測して自分にぴったり合った商品を見つけるということでしたが、当時はそういうことを考えている会社は他にありませんでした。より効率的にその人に合った商品を提案できるのではないかというところで、生産にまつわるテクノロジーの進化があります。

もうひとつは、似合う服を見つけることです。洋服は世の中に膨大な数ほどありますが、自分に本当に似合っている洋服はどれか、誰も分かっていません。なんとなくの好みで、自分に似合っているかも?と思えるような洋服を選んでいる人がほとんどです。しかし、これはもっとサイエンスできる領域だと思っていました。極めて定性的で感性的な領域に対してテクノロジーで切り込んでいき、本当に似合う洋服を見つけることができれば、それは技術的な投資をする価値があると思います。

当時はリアルで確認したいという欲求が大きく、ファッションのEC化は遅れていましたが、最近はコロナの影響により、ネットで購入する機会が爆発的に増えています。ファッションはまだまだテクノロジーで進化していく業界だと思っています。

 

――現在、在籍されているBuySell Technologiesは、リユース業界に属しています。どうして、そこまで意欲的に取り組んでこられたファッション業界とは別な領域にチャレンジすることになったのでしょうか。

今村氏:もともとZOZOを辞めるつもりはありませんでしたが、偶然、知り合いのCTOから「手伝ってほしい会社がある」と声をかけられ、人を紹介されました。その方がBuySell Technologies(以下、バイセル)の会長である吉村さんでした。そして「これから先、会社を伸ばしていくためにはテクノロジーが必要だと分かっている。しかしそれを推進出来る人がいないので手伝ってほしい」と相談を受けました。

私自身もヤフーの頃からずっと「ファッション×テクノロジー」の世界で生きてきたので、違う領域も見てみようと思い、お手伝いを始めました。そこでバイセルの扱うリユース業界も会社自体も、私自身が貢献できることがあると思い、思い切ってジョインすることにしました。

 

――バイセルに魅力やポテンシャルを感じたのは、ファッションとリユースに共通項を見出したのか、それとも全く違うけれども、自分は価値提供が出来ると感じたのか、どちらでしょうか。

今村氏:業界が違ったとしても、企業を成長させる仕組み自体は同じだと考えています。

実際にZOZOにいた3年間で行ったことは、もともとスタートアップでやっていたエンジニアの採用や良いプロダクト作りについての仕組みを大企業にカスタマイズするというものでした。それが後に見るとDXなのですが、やらないといけない部分はほとんど同じだと思います。難易度や文化が違うだけで、本質的には同じで再現性があると思います。

歴史があり、かつ業界のトップを走っているようなZOZOで、ある程度実現ができたということは、おそらく全く違う業界に行っても、仕組み化や本質的な企業変革に必要なものは変わらないと確信しました。
それもあってこれまでの経験を全く別の業界で試してみたいという思いはありましたね。

 

――これまでの経験を他業界で試したいと思う一方で、おそらくバイセルの可能性や面白味も見出していたと思います。入る前はどのように感じていて、実際に身を置いた後はどのように確信できたのでしょうか。

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今村氏:私自身、リユース業界の知識が全く無い状態で話を伺っていましたが、よく聞くメルカリやヤフオク、街のリユースショップ以外にも、出張訪問買取など多様な企業があり、非常に大きなマーケットがあることを知りました。
そのマーケットに対してバイセルはロジカルに攻めていると感じましたね。

入る前は、“営業が強くて仕組み化されている組織で、メルカリやヤフオクが狙っていないところを狙っている会社”だというイメージでしたが、実際に入ってみると営業力や仕組み化に関しては想定以上に素晴らしいと思いましたし、この会社はテクノロジーでまだまだ伸ばせると入社前から感じていた部分も入社後に確信に変わりました。自社だけでなく、業界全体を伸ばしていくことができるとも確信しましたね。

 

――リユース業界って、かなり裾野が広いということですね。

今村氏:そうですね。 リユース業界だけを見ると約2.5兆円、そして、家の中にあり1年以上使っていない“かくれ資産”と呼ばれるものは、総額で37兆円以上あると言われています。コロナ禍での断捨離需要などもあり、リユース業界はさらに伸びる可能性があると考えられます。

とくにバイセルはシニア層のお客様からのご依頼を多く頂いています。これから絶対的に少子高齢化が進んでいくなかで、モノの二次流通は誰かが解決しなければならないことだと思います。モノは増えていますし、リユースのニーズが高まっているけれども、みんながデジタルを使いこなして個人で販売できるわけではないので、よりシニア層の役に立つものをテクノロジーの力で作っていければ、それはとても意義のあることだと思っています。

 

――テクノロジーの活用がそこまで浸透していないけれども、ビジネススタイルが確立されていて、しかも伸びている会社というのは、反対にシステム化やテクノロジー化が難しいのではないかという印象があります。今村さんは、どのようにDX化を進めようと考えているのでしょうか。

今村氏:前提として、テクノロジーは掛け算だと考えます。0に何を掛けても0なので、もとのビジネスモデルがかなりしっかりしていなければ、そこに対してテクノロジーのレバレッジは効かせられないと思います。

多くの経営者は、すごい技術があることや優秀なCTOが来ることで、良い事業が成り立つのでは?と考えますが、実際は違います。今ある既存のビジネスの主要なKPIに対して、レバレッジをかけるような仕組みをつくるということがDXの本質だと思っています。

そういう意味でバイセルは、例えば訪問数や1訪問当たりの査定時間、1訪問当たりの平均単価といったビジネスKPIがいくつもあります。それを会社全体でしっかりと理解をして追っているというベースがあります。

もちろん素地が整っているバイセルにも、やり方=発想を変えなければならない部分はあります。今の仕組みの延長線上ではなく、点と点で繋がっているような業務を俯瞰的に見て、スムーズに繋がるような仕組みを考えなければなりません。それを解決するアプローチ方法を見つければ、会社を変えていくことができると感じています。

 

――今村さんのその考え方や哲学はどこで醸成されたのでしょうか。

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今村氏:ZOZOでの経験が大きいと思います。点と点で散っているようなシステムやデータを俯瞰して見て繋げて、スムーズな流れを作ることによって業務効率の改善施策が打てるということを、実際に3年やって良い成果を出したという経験があります。バイセルに入ったときも、ZOZOと同じく点で散ったデータがある状態だったので、 仕組みを作り直すことによって劇的に成長する可能性があると感じました。

 

――まずは、どういったことから取り組むべきだと考えているのでしょうか。

今村氏:まずは、プロダクトを作るためのエンジニアの組織づくりです。今は40名ほどのエンジニア組織をこれから100名まで拡大していきます。
どのような媒体に求人を出すのか、どのような人材が欲しいのかなどといった、採用にまつわる全てのことを仕組み化していき、運用を回せる状態にできるように人事と連携してやっていきます。合わせて、エンジニアを成長させるための評価制度や給与条件の仕組みも作っています。

エンジニアが応募したいと思うためには、 “転職したい”と考えたときに思い浮かぶ会社のラインナップの中にバイセルが入らなければなりません。そのためには会社を知ってもらい、エンジニアの世界でのプレゼンスを高めていく活動を地道に続けていきたいと思っています。

次に、組織を大きくして行いたいことは、 買取から販売まで一気通貫できるプラットフォームの構築です。現在は買取と販売が独立して存在しているので、システム的な繋がりが不十分な状態です。単純に内製システムを作るのではなく、リユースのプラットフォーマーを目指して、査定や値付け、在庫管理などリユースに必要な全ての機能を乗せようと考えています。

我々はどのような課題を解決するために何を作っているのか、今あるプロダクトのロードマップをどうするかという大きな絵を書いて発信していこうと思います。

 

――エンジニアが、このフェーズでバイセルにジョインすることの価値や魅力はどのようなものでしょう。

今村氏:まだ上場したばかりなので、ある意味、ベンチャー企業だと思っています。エンジニアの視点から見れば、組織的にもプロダクト的にも、とても伸びしろのあるフェーズだと思っているので、プロダクトと組織の成長を肌で感じることができると思います。これは持論ですが、エンジニアの成長に不可欠な要素です。

また、リユース業界という目線で見ると、まだ完全な勝者が存在していません。バイセルはそこを狙える位置にいるので、大きな目標に向かっているという感覚が持てるのは、やりがいに繋がるはずです。

 

――拡大フェーズにある組織では、どのような技術やマインドを持ったエンジニアを求めているのでしょうか。

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今村氏:変化に柔軟に対応できる人が求められると思います。これから先も成長していく中で、例えば急に方針が変わるなど様々なことが起きると思います。そういう意味でも、どのような環境変化に対してもポジティブに、前向きにやっていこうと思える人が一番良いのではないでしょうか。

また、ソフトウェアの世界で完結してしまい、 オペレーションを実際に見たことのないエンジニアも多いです。リアルな世界では思っているようには行きません。「押してくれるだろう」と思って作っても、実際には押されない、ということもあり得るので、課題をヒアリングしてコミュニケーションをとり、現場に寄り添ってシステムを開発できるエンジニアは重宝されます。

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――今村さんの肌感覚では、今の働き盛りのエンジニアの志向として、成長目的で飛び込んでくるエンジニアの割合は多いのでしょうか。

今村氏:層によって違うと思います。ある一定の技術力を持っているシニアの人たちは、昔よりも挑戦の場を求めているという感覚があります。それは、各会社がきちんとした給料を出せるようになってきたので、例えばベンチャー企業に転職をしても、ガクッと給料が下がるということは減ってきています。しかも手に職があるので絶対に困らないということを考えると、技術力がある人ほど、より経験を積む機会を探しているように感じています。反対に技術が発展途上のエンジニアは、成長よりも安定を求めている部分があるような感覚です。

 

――では、日本全体のDXについて、CTO協会理事という立場で思うことを教えてください。

今村氏:日本のDXを進めていく上で重要な要素になるのは、やはりその会社における技術責任者だと思います。しかしそういう人たち全員が、企業を変革させるような経験を持っているわけではありません。

しかし私自身手探りで行って、ある程度再現性のあるような要素があるということです。こういったノウハウや経験というものを共有することによって、彼らの能力を伸ばして、より様々な業界や企業のDXに役立てられるのではないかと考えています。それがCTO協会の理事に就任した理由のひとつです。

もうひとつは、子どもに「お父さん、なんの仕事をしているの?」と聞かれたときに、「CTO」と答えても絶対に通じません 。しかし「社長」と言われれば分かりやすいですよね。それだけ世間に対してまだまだエンジニアの価値や重要性、仕事の面白さを提供できていないということです。エンジニアは世の中を変えていけるカッコいい職業として憧れられるためには、企業でのトップであるCTOたちが様々な場所で活躍してもらうことが必要だと思いました。CTO達が活躍できる世界を作るということも実現させたいです。

 

――実は今回、岩田CEOから下記メッセージを頂いております。どのように応えていきたいか、ぜひおしえてください。

テクノロジーの力が事業や産業の成長・発展にドライブをかけることは明白だが、
当社バイセルテクノロジーズとリユース業界におけるその改善幅は他業界に比べて殊更に大きいように思っています。
今村のジョインにより、機械(人工知能)ができることは機械にやらせ経営の効率化を図るという初歩的なことだけではなく、テクノロジーの活用により消費者の大きなベネフィットに繋がる付加価値を生み出せるようになると確信しています

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今村氏:岩田さん、ありがとうございます!私がなぜバイセルにジョインしたかというと、この業界は他の業界に比べてテクノロジーの活用価値があると確信したからです。 出張買取でナンバーワンを走っているバイセルでさえ、まだまだテクノロジーの活用が出来ていない状態なので、これをきちんと活用できる状態にしたら、もっと伸びるだろうと思っています。

データを使うだけではなく、買取から販売までをよりスムーズに出来るようなプラットフォームを作ることによって、バイセルがリユース業界のDXを進めることができると考えています。

いらないものを第三者に売るとなると、やはり面倒くさいですよね。その面倒くさい部分をもっと楽にできたらいいなと思っています。いらないものを、自分の納得できる価格で必要な人にスムーズに渡せる世界を、テクノロジーで後押しして作っていきたいです。 世の中でモノが右から左に流れていくときには、大体バイセルのプラットフォームを通過しているというところまでいきたいですね。

 

――ありがとうございます!最後に、読者の方々へメッセージをお願いします。

今村氏:世間でDXという単語が出てきて、デジタル庁ができたこともあり、より良くしようという空気感が出てき始めていると思います。その追い風はエンジニアにとってはとてもプラスなことで、自分の力を発揮できる最高なタイミングが、ここから先たくさんあると思います。昔であれば大人の事情で出来ないことがたくさんあったと思いますが、今ではその大人たちが「やらなければならない」と変わってきたというのは、エンジニアにとっては最高のタイミングだと私は考えています。

例えばハンコ文化は絶対に無くならないと思っていましたが、実際に今は無くなりつつあります。それくらい常識を疑って、あるべき世界を作っていくという流れの真ん中に身を置いています。

いろいろなところに成長する機会が転がっています。常識を疑い、あるべき姿に自分の力で持って行こうという思いは持っていてほしいです。私としては、それをするためにエンジニアになったと思います。今はそれが出来る世の中の強力なバックアップがあるので、いろいろなところで課題を解決するというマインドを持って活躍してほしいと思います。

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インタビューは以上となります。今村さん、ありがとうございました!
TECH Streetでは、コミュニティメンバーが気になる「人」「組織」「プロジェクト」を独自取材しています。ぜひ皆さんの気になる人・組織・プロジェクトを教えて下さい^^

(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき / 編集:TECH Street編集部)