【イベントレポート】企業や組織において文化とは何なのか

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こんにちは!TECH Street編集部です!

今回は2021年3月25日(木)に開催した、 「企業や組織において文化とは何なのか ~エンジニア組織のあるべき姿/今本当に考えるべきこととは?~」のイベントレポートお届けいたします!

エンジニア組織として考えなければいけないことは何か、リモートワークにおける文化形成とはなど、パネラーにお話いただきました。

登壇者はこちらのお二人!

鈴木 逸平さん/クリエーションライン株式会社
清田 馨一郎さん/パーソルキャリア株式会社

今回は、まずおふたりから今回のテーマについてのプレゼンをしていただき、そのあとにディスカッションという流れでお送りいたしました。
記事後半では、当日回答しきれなかったご質問についても回答しておりますのでこちらもご覧ください♪

 

清田 馨一郎さんプレゼン

清田さんからは、組織文化について様々な文献を用いてご説明いただきました。

組織文化とは

各書における組織文化は下記のように定義されています。

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『エクセレント・カンパニー』:組織構成員がもつ共通の価値観
『シンボリック・マネージャー』:どのように行動すべきかを示す非公式な決まりの体系

さらに具体的に、E.H.シャインの『企業文化 ダイバーシティと文化の仕組み』においては、下記のように説明されています。

文化とは共有された暗黙の仮定のパターンである。
 暗黙の仮定とは、外部に適応したり、内部を調整したりといった問題を解決する際に、
 組織が学習した方法である。
 それらは組織によって承認され、新しいメンバーが組織に加わった際には、
 問題に気づき、考え、感じるための正しい方法として彼らに伝えられる

また、ここでいう“パターン”は組織によって異なります。

ベン・ホロウィッツの『Who You Are 君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームを作る』によると、“正しい答え”は組織によって違う、と説明されています。

例えば、下記のような疑問に対する“正しい答え”も組織により異なります。

・この電話は、今日折り返した方がいいほど緊急なものなのか?明日まで待っても大丈夫か?
・ライバル会社について、どのくらい必死に研究すればいいのだろう?
・勝つことは倫理よりも大切なのか? など

このような、“組織としての判断基準”や“組織としての正しい答え”を明確にしていくことが、組織文化につながっていきます。

なぜ今、改めて組織文化を見つめ直すのか

先述した、『エクセレント・カンパニー』の時代は、トップダウンで、上が決めたことに従えばどうにかなる世界でした。しかし、今は不確実性が高く、変化に強い組織や、コラボレーションとチームワークの経営が求められている時代となっています。

一人一人の組織メンバーが何かのルールにしたがって自主的に動いていくことが求められていますが、ある日突然与えられたルールは、なかなか浸透しません。そういった環境で、必要となってくるのが、組織文化なのだとか。

トヨタの生産方式などで知られる野中 郁次郎氏の著書、 『全員経営 ー自律分散イノベーション企業 成功の本質』には、下記のように記されています。

「何がよいことなのか」という価値基準をベースにしながら、その都度、状況に応じて最善の判断をする。もし、判断が結果的に間違っていたら、即フィードバックして修正し、次の目標に向けてフィードフォワードしていく。このサイクルを進めながら一歩一歩、自分たちの目指す「よいこと」に近づいていくのです。

強い組織文化を作り出すには

須田敏子氏の著書、『組織行動: 理論と実践』によると、強い組織文化を作り出す4つの源泉は以下のように説明されています。

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 ・理念(Inner Values)
 ・英雄(Heros)
 ・儀礼と儀式(Rites and Rituals)
 ・伝達(Communication)

しかし、やはり人間は新しいことを始めるときには抵抗を感じるもの。文化改革の阻害要因についても、以下のように説明されています。

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 ・未知に対する不安
 ・利害対立
 ・組織の構造的惰性

また、文化の継承も大切な要素となっています。新しいメンバーに対して、文化を理解してもらうプロセスを組織の社会化と言います。服部泰宏氏・鈴木竜太氏の著書『組織行動: 組織の中の人間行動を探る』では組織の社会化について、こう述べられています。

組織内での役割を遂行することと、組織のメンバーとして参加することにとって不可欠となる価値観、能力、期待される行動、社会的な知識などを正しく理解していくプロセス

組織の社会化で個人が理解していくものについては以下のようにカテゴライズされています。

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組織文化という文脈においては、まず自分たちの文化や判断基準を明確にし、新しいメンバーに対して上記の項目を既存のメンバーが伝えていくという活動が必要なのだそうです。
言われてみれば、なんとなく大切だと感じていたようなことも多いですが、明文化されるとよりわかりやすく、意識的に組織の課題に取り組んでいきやすくなりそうですね…◎

清田さん、様々な視点からの組織文化のご説明ありがとうございました!続いて、鈴木さんよりお話をいただきます。

 

鈴木 逸平さんプレゼン

鈴木さんからは、時代の変化のスピードが加速している環境の中で勝ち抜くための組織文化についてお話をいただきました。

リモートワークと企業の文化について

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Iometrics社とGlobal Workplace Analytics社が共同でコロナの影響を受けたテレワークの実態調査を実施したところ、自宅でやったほうがいい仕事と、オフィスでやったほうがいい仕事の種類が異なることが色濃く示されたそうです。

例えば、自宅の方が、良いパフォーマンスが出る仕事は、書き物などの長時間の集中が必要なものや、機密性の高いプライベートな会話、クリエイティブな業務など。このような業務は、自宅で、一人で取り組む方が、生産性が高いとされているようです。

一方で、オフィスの方が良いパフォーマンスが出る仕事としては、誰かの指導を受ける際や、チームの管理をする必要がある際の仕事、他人とのコラボレーションを必要とする仕事、組織の状況を把握しなければいけない仕事などがあげられるそうです。

このような特徴を、企業の文化として取り入れていく場合は、それぞれに適した仕事をハイブリットのような形で取り入れていく必要があり、今後はそのハイブリッド型が広まっていくのではないかと鈴木さんは語ります。

これからのリーダーシップについて

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次の事例は、第5次産業革命と呼ばれるもの。こちらは2019年のダボス会議で初めて出てきた言葉。今、私たちは第4次産業革命の真只中におり、その先に第5次産業革命があるのだとか。第4次産業革命によるDehumanizationは企業の文化喪失につながると懸念されており、その先の第5次産業革命があることが議論されているそうです。

また、このような時代の中でリーダーとしての資質も問われてきます。

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Menlo Innovations のCEOであるRichard Sheridan氏の著書、CHIEF JOY OFFICERによると、リーダーの3つの指針を以下のように説明しています。

 ・意味のある、持続可能で、ポジティブな影響力を想像し、人に届ける
 ・常に「誠実さ」と「真の自分」を発揮する
 ・「思いやり」「愛情」と「喜び」を常に表現しながら行動する

クリエーションライン社におけるリモートワークツール

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最後に、クリエーションラインで採用しているリモートワークツールについてのご紹介です。OKRの実施を強化したり、Google MeetやZoomなどのツールを使用したりするのに加え、oViceなど仮装のオフィスを使って会話をしているそうです。

また、OKRの手法としてウィークリーでチームリーダーミーティングや、全社で成功を共有し合うWinセッションを実施したり、パートナー企業とはリモートアジャイル開発に取り組まれたりもしているそうです。

また、それぞれのリーダーの強化には、Clifton StrengthsFinderを活用し、それぞれの強みを伸ばしていくような取り組みを実施しているのだとか。

クリエーションライン社の詳しい取り組みはこちらも参考にしてみてください◎
oViceをバーチャルオフィスにしてみた
OKR書籍についてのブログ

 

ここからは清田さん、鈴木さんお二人によるトークセッションです!

エンジニア組織の文化形成Talk

 

リモートワークにおける文化形成について

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清田氏:GitLabはリモートで有名な会社だと思いますが、今後リモートとオフラインのハイブリットが議論されていく中で、「文化形成」「組織としての良いこと、悪いこと」はどのように伝達されていくのでしょうか。GitLabのような組織で、文化形成のためにやっているようなことはあるのでしょうか?

鈴木氏:GitLab社が毎年出しているワークガイドThe Remote Playbookに書いてあることは、全ての会社にコピー&ペーストできるようなもの、というわけではないという前提ですが、2つの重要なポイントが提唱されています。

1つは、透明性を持たせること。社内のポジティブなこと、ネガティブなこといずれも共通して重要な要素です。誰かを褒めたり、叱ったり、何かを修正していくことは、できる限り透明性を持ってやっていくことを強い指針としています。例えばSlack上で、みんなで共有する。特に、ポジティブなことを言う場合はみんなに伝えたいと思いますが、ネガティブなことを伝える時もポジティブな要素を付け加えて言う訓練も兼ねて伝えていくことが大事です。

もう1つの重要なポイントは、ほぼ全てのものをドキュメント化することです。議事録は全てドキュメントにして残すことを強くルール化しています。これは、透明性を保つ上でも重要です。議事録を残すと言うことは、全員に、どんな仕事をしているかを共有する意味を持ちます。さらに言うと、文字を中心の議事録を作成することが重要です。意外と、ビデオは見られないし、スライドは誤解を生む要因にもなってしまう可能性があるので、文字にすることは重要です。

清田氏:文化を醸成するには、リーダーの力が大きいのかと思っています。社会組織化でいう「新しいパターン」が入ってきた時、メンバーが組織や会社の良し悪しを学ぶフェーズがありますが、そういったときに学ぶ方法は、文章だけではないと思っています。リモート環境において、新しいメンバーが入ってきたときに、うまく伝わっているかわからないと感じることもあると思いますが、そういう場合は文章以外の他の何かを使って伝えていくのかなと思うのですよね。

Menlo Innovationsでは、オフラインでのコミュニケーションをすごく重視されていたようだったのですが、現状はどうなっているかご存知ですか?

鈴木氏:2ヶ月くらい前に、さきほど登場したCEOのRichardと電話会議をしましたが、現在は完全リモートでオフィスには誰も出社していないそうです。リモートでやりながら、コミュニケーションを深めていくことの難しさは我々と同様に感じているようです。彼らの強みであるPaired Programming (エンジニアを2人1組にしてプログラミングをさせる)という技法はオンラインでも徹底してやっているようです。

それから、インフォーマルな議論もオンラインで強化しているそうですよ。しかしやはり、心の奥底をのぞいていくと、オフラインで集まるコミュニケーションのレベルはなかなか到達しにくいとおもっているようですね。特に、悩んでいるのは新しいメンバーにいかに会社の文化を知ってもらうか、ということですね。

清田氏:最近日本のwork engagementを調べている学者のレポートを見たのですが、週に何回リモートワークをしているかを調査したところ、回数が増えるほどengagementは下がるという結果がでているそうです。しかし、フルリモートにまで振り切ってしまうと逆に上がるのだとか。

中途半端にやってしまうということが逆にどっちつかずになってengegementを下げてしまうのかなと思うのですが、やはりハイブリッドでやったほうがいいのか、完全に振り切ったほうがいいのか、という点についてはどう感じますか?

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鈴木氏:そのジレンマはすごくよくわかります。我々も今200名の社員がいますが全てリモートで対応しています。なおかつ、アジャイル開発をお客様に対してやっていますので、全部リモートとする難しさはすごくありますね。もう一つわかったことが、リモートワークが得意な人、得意じゃない人がいるということです。リモートワークのスキルを統一させるためのトレーニングがあるわけじゃないので、苦しみながらやっています。

それから、新入社員のメンタリングについて。特にアジャイル開発は、得意な人と得意でない人がいますから、それぞれの役割分担とメンタリングをどうやってやるかは困っているところはありますね。なので、たまにこっそりリアルで集まって教えてあげるなど、ハイブリッド型を採用している状況ですね。逆に清田さんはどう思いますか?

清田氏:タスクが細分化されていて、ツールも全てオンライン上で使うことができるエンジニアとしてやっているぶんには完全にリモートでも大丈夫だと思っています。また、タスクが決まれば目的を持って話せるので、あまりインフォーマルなコミュニケーションは重要視されていないように感じます。一方で、ITプロジェクトに特化すると、そうではないかなと。ITプロジェクトのようにやることをこれから決めていくものに対しては、不向きだなと感じますね。 

逆に、生産性が上がっている要因として、移動などの余分な時間の削減ができるという理由があがっています。我々のような知識労働者は、時間を決めれば生産性が上がるというわけではなく、日常のなかで突然ハッとやりたいことが思い浮かんだり、アイデアが浮かんだりするので、時間を決められることで逆に生産性が下がるということもあると思います。

ただ、それを、リモートだからいつでもやって良いよ、とすることは知識労働者だと総合的に生産性は上がるかもしれませんが、常に仕事をしていろというわけでもなくて。仕事とプライベートの切り分けは難しいと感じている人が多いのではないかなと思います。

鈴木氏:すごくわかりますね。休息取れているのかな、と思う心配なメンバーがいることもあります。こういった部分のケアはHRの領域に入っていってしまいますが、やはりメンタル面で健全な気持ちで仕事ができているのかを評価する方法がないので、不安に感じることはありますね。

こういったリモートで働く環境は、ある意味では会社の文化を試されているものだと思いますね。文化があったのに、オフィスでは成り立つが自宅では成り立たないものだと、その文化は崩壊しやすくなってしまいます。それを解消する方法の一つが、リーダーシップです。

やはり、リーダーが強く牽引する力を持っていないと、組織は崩壊します。リーダーが率先して文化を実践する、それをみんなに行動を持って示すことがいかに重要かということはリモート勤務になって改めて噛み締めていますね。これはテクノロジーの話ではなく、まさに人と人とのコミュニケーションをどうしたら良いかというところになりますね。

清田氏:では、ここからは参加者の方々からのご質問を取り上げてみようと思います。

海外やベンチャーはリモートで生産性を上げているから、エンジニア部門はリモートにしましょうという話を上司にしても、前例がないしパフォーマンスが心配と言われます。企業文化を変えるのは難しいと感じていますが、上司に理解してもらえる何か良い事例ありませんか?

清田氏:どういうリーダーがマネジメントをするかが大事ですね。
パフォーマンスの成果について考えていないリーダーは常に見ていないと不安を感じることが多い。かといってそのリーダーを変えるのは難しい気がします。

可能性としては、リーダー(組織管理)とリーダーシップ(新しいことを率先する人)というのは違うので、メンバークラスであっても強みを活かして組織を変える手助けする体制づくりはできるのではないでしょうか。自らリーダーシップを張るのも方法論の一つかもしれないですね。

鈴木氏:一つ、スライドを紹介させてください。

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ビジネスを、飛行機を飛ばすことに例えると、色々なベクトルで動こうとする力が働きます。これに関して、明確なゴール設定によって、前に向かう力が必要であり、それを共有することも必要ですね。また前提としては、前進するときに引っ張る逆の力=恐れ、迷いが存在します。また、高く飛ぼうとしたときに、地面に引き戻す万有引力=政治、慣習も存在します。

リーダーは操縦席にいるべき存在です。4つの力が何なのかを書き出してチーム内で議論し、空へ飛び立つ意思を明確にして恐れなどを上手くかわしていくことが方法の一つなのではないでしょうか。

弊社ではそもそもこの文化の重要性について社員が意識していないように感じています。
ハイコンテクストな組織でありつつも、文化を言語化することについて価値を感じていないように思うのですが、この辺りはどのように変化させていくのが良いのでしょうか。

清田氏:“なぜこれをやっているのか?”という当たり前すぎて気づかないような問いかけをし、言語化することも、必要なのではないでしょうか。価値観、目標に対してルールベースでパターンを作っていくことが文化だと思います。目指す目的を変える必要があれば、文化を知る必要がありますし、変える必要がないのであれば、文化を言語化することは大事ですね。

鈴木氏:文化はすべての面において、ポジティブでなければいけないですね。ネガティブなこともポジティブにしていく必要があります。これは、リーダーが牽引する要素が必要ですね。一つ例を挙げると、ボス(=職制上の役職、強制的に指示する立場)とリーダーは違うということです。リーダーは、命令を出すのではなくやる気を出すために、空気を作る役割もあります。

ボスは職制上の役割ですが、リーダーは、職制上関係なく、素晴らしいリーダーになることができるのです。リーダーは全ての階層でいていいと思います。そのようなリーダーシップの価値や重要性を社内で啓発していくのはどうでしょうか。リーダーシップの定義は人によって違うので、それを揃えていくことも一つの方法だと思いますね。

清田氏:そうですね。僕も今、組織上のマネジメント(ボス)は別のものがやっていて、僕はボスがリソース的にできない部分をやったりしています。そのように、自由にリーダーシップをとっている状況をよしとすることも文化としてメンバーに見せることで、他のメンバーが「やりたい」を言える環境につながるのではないかと。いわゆる心理的安全性がないと文化を変えるのは難しいですね。

あとは、文化は部署やチームによって存在するので、まずは自分の見えるチーム内の文化を作っていくのも良いのかなと思います。

鈴木氏:一つエピソードを紹介させてください。ある会社の部長の話です。ある日、それぞれの子供を職場に連れてくる日があったのですが、その部長の娘が働いているお父さんの姿を見て、「お父さん偉い、みんなに命令をして、みんなに指図をしてかっこいい」といったらしいのです。

その部長は、ふとそこで立ち止まったそうです。自分の命令でみんなが動くという状況に娘が感心している事実から、チームのパフォーマンスが自分の決断に依存している状態になっていると気づいたのだそうです。言い換えると、チームのパフォーマンスは、自分の判断のスピードに依存しており、自分が働かないとパフォーマンスが落ちてしまう状況になっていたそうです。これは、ボスとしては良いのですが、リーダーシップとしては問題がある状況ですね。

清田氏:自己組織化というキーワードかなと思います。上が言ったことではなく、各自がルールに従って行動していく、ということが大事ですよね。他の質問も紹介します。

今の文化を保ち続けるところと、メンバーに合わせて変えていくところの判断はどうしたら良いでしょう?(例などあると嬉しいです)

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鈴木氏:“Purpose driven culture”というものがあります。目的主導の文化、と日本語では言います。やはり目的が明確でなければ、日々の仕事がルーティーンになってしまいます。企業やチームの文化は、メンバー全員で共有でき、かつ快く受け入れる事ができる事が条件になります。

また、ビジネス状況により変わっていくものでもありますので、どうすべきか、という判断はチーム内で議論をする事が大事だと思います。その際に議論はもちろんすると思いますが、最終的に行き着いた結論は、全員が合意、そして遂行するというコミットメントをする事がとても大事です。

個人の価値観とチームの価値観が合わない場合には、そのメンバーに対してどういうアプローチができるでしょうか?

鈴木氏:人間はそれぞれ違うので、企業やチームの文化に合わない、というケースもたくさんあると思います。チームが歩み寄る方法もあると思いますが、最も大事なのはその個人が企業の文化に合わせていく事ができるようになるのか、という事だと思います。もちろん、自分の信念とずれた文化に合わせていくのは難しいし、良いことでは無いと思いますので、その場合はチームから離れる、という選択もケースとしては当然あると思います。

もし、価値観が合わない、という事がわかったのであれば、具体的にどこが合わないのか、意識を変えて合わせる事が可能なのか、負担はないのか、などの議論を持つ事が大事だと思います。そして、それはできるだけ早い段階で見つけて、解決する事も大事だと思います。

清田氏:リーダーに依存してしまうのは問題なので、全員がリーダーシップをはれるかという点は大切ですね。パフォーマンスの良いチームでも、最初はリーダーに依存してしまいがちなのだとか。

鈴木氏:ある会社を訪問したときに、その会社のボスやヒーローを見つけるのは簡単ですが、リーダーを見つけるのは難しい。リーダーというのは意外と隠れていて、見つかりにくいですが、いかにリーダーをいっぱい作るかは企業文化として重要視されています。リーダーとヒーローというのは、意外と兼ね合いが難しかったりします。というか、リーダーはヒーローになりにくい。みんなを持ち上げて、チームを引っ張る牽引力となるのがリーダーだからです。

文化があることで嬉しい、嬉しくない、変わらない、人や組織の特徴がそれぞれあれば教えてほしいです。

鈴木氏:会社にも学校にもそれぞれの文化がありますよね。その文化が好きだからそこで働いている、という人もいますよね。文化が合わなくても給料が高いから働く、という人もいますが、長持ちしにくいですね。給料だけで惹きつける文化を持っている企業は厳しい坂道を登っていくような状況になると思います。ポジティブな文化を持っていれば、労働環境だけでなく、働いていてやりがいがあるような環境になります。そういう意味では、経営の立場からも文化は大事だと思いますね。

企業文化を広める役割の人=人をよく観察する人は、企業の文化を浸透する活動をする際に上手に進める事ができる、と考えられています。最初からドンピシャに企業文化に溶け込む事ができる人、というのはなかなかいないので、チームに新人が入ってきた時によくその人を観察して気がついた事を積極的に会話を持ちかける人はうまくいくと思います。

異なる企業文化に入った人=既成概念や過去の成功に囚われず、新しい事を学ぼうという姿勢を持つ人は、新組織に入った時にその文化を吸収する能力を発揮できるはずです。

客先に入って仕事するスタイルの企業はどういった文化を作っていくのが良いのでしょうか

鈴木氏:これは難しい課題です。お客様のサイトは独自に企業文化やルールが徹底されている世界ですので、言うまでもなくそれを壊すような行為はよくないです。よくMenlo Innovationsでやっているのは、逆にお客さんに会社に来てもらい、Menlo Innovationsの文化を体験してもらうようなイベントを開催します。プロジェクトステータス会議、等を通して、メンバーがどのようにコミュニケーションしているのかを可視化することで啓発する事ができるようです。

清田氏:場合によっては、チームではなく一人で客先に行く場合もあると思いますが、その場合は客先の文化に染まってくる人も多かったですね。あとは、一人で客先にいると、今いる会社にいる意味がわからなくなったりします。そういう意味で、戻りたくなるような、アットホームな文化を築いて行く必要が大事ですよね。

鈴木氏:どう文化面で生産性を上げられるかを説明するのがリーダーの仕事だと思います。

リモートにシフトした結果、残業が全体的に非常に増えています。やるべきことは減っていないのですが、メリハリがなくなっているのか、生産性が落ちているのかよくわからず原因としては何が考えられるのでしょうか。

清田氏:オフラインだと、終電があったりするので強制的に仕事をやめるタイミングがあるのですが、一人だとやめどきがわからなかったりしますよね。やはり、やめるべきポイントを自分で作ったりチームで作ったりしないと、ズルズルしてしまいますよね。

鈴木氏:インフォーマルな雑談をする機会やオンライン上の場所を用意することによって、従業員の間の会話が活性化させる事ができるようになります。オフィス環境と違って、オンラインはそういった1on1の会話が極端に減ってしまうため、意識的にそういう場を作ってあげる配慮が大きな効果を発揮します。会話の中から、従業員の意識をもっと拾い上げ、生産を落としている原因、ついつい残業を超過してしまう要因などを確認する事が大事なのでは、と思います。

清田氏:このあたりで時間になるのでそろそろ締めようと思いますが、やはりリーダーシップによって文化はどうにでもなるかなと思いました。

鈴木氏:リーダーシップの定義は様々ありますが、清田さんのいうとおりだと思います。
リモートの環境において何より大事なのは、ドキュメント化だと思います。色々な記録が残り、共有できるリソースができるので、あとあと役に立つと思いますね。そういったところを意識して仕組みを作ったら、うまく回って行くかと思いますね。

 

まとめ

エンジニア組織の文化形成Talkはいかがでしたでしょうか。
自組織に持ち帰ってポジティブな効果が1つでもあると嬉しいなと思います!

参加者の声

・とても本日の対談は参考になることが多々ありとても良いものでした。
・2人の熱いトーク、面白い内容でとても参考になりました ありがとうございました。 すぐに使いたい、取り組みたいワードが たくさん聞けて大変良かったです。
・ボスとリーダーの違いについての説明から、リモートワークでこそリーダーシップがどれほど重要であるかを認識しました。

登壇者と運営の集合写真

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次のページでは当日回答しきれなかった質問への回答を紹介します!

>>Q&A


 

参加者からのご質問

今日のお話は大変興味深く自部門にも活用したいと思っていますが、組織によってやり方は変わってくると思います。
組織での最適解を最初からメンバー皆で探した方がいいのか、文化をよく知っているリーダーが方向性を示す方が良いのか少し悩んでいます。今日のような話を組織でする時のお勧め進め方はあるのでしょうか?

鈴木氏:まずは企業のリーダーが自分の考え方やどのようにそれを実現しようとしているのかを明確にする事だと思います。特にゴールの設定、定量的な方法があればベストですが、そういう指針を出して、みんなでそのゴールを目指そう、という動きになればいいと思います。

より具体的にそれをどのように実現するかは、確かに組織やチームによってやり方は違ってくると思います。文化をよく知っているリーダーが各チームのプランを聞いてアドバイスできるような仕組みがあれば良いと思います。

よく、OKR手法を使います。チームごとに期毎/年度毎のOKRを設定して、それを期末に達成できたのかを振り返る習慣をつけるようにしています。

清田氏:組織メンバーにて対話(ダイアローグ)を重ね組織の文化を理解するのが良いと思います。

例えばなんですが、現在はコロナだからリモートしているというところが多いと思うのですが、コロナが完全収束したとした場合にリモートをやる目的とか理由とかって無いように思っています。そこらへん、どう思われますか?

鈴木氏:リモートでやる方が、生産性が上がる業務、というのがある事が割と明らかになっています。もちろん、組織によって異なりますが、よくでてくるのは、一人で邪魔されずに開発や執筆作業などをする時、機密性の高いプライベートな会話、クリエイティブな発想、必要な時だけ人と繋がるような仕事、等です。

オフィスに戻ることによって、これらの作業の生産性が下がるのはもったいないので、うまくリモートとオフィス勤務のバランスを取りながら運営していくのがよいのでは、という提案は多いようです。

清田氏:リモートワークにより職場、通勤による場所、時間の制約が少なくなります。
今まで場所の制約によって一緒に仕事をすることが難しかった地方、海外の方との協業がし易くなります。育児や介護で時間的制約がある方の活躍も見込めます。
また、通勤で使っていた時間を家庭・趣味・学習などに充てることも可能になります。

リーダー、ボス、マネージャー、ファシリテーターなどみんな違いますね。

鈴木氏:それぞれ、職制上の役割と、チームビルディング上の役割がありますので、社内でこういった役割の違いについて理解できるような啓蒙活動ができるよう良いと思います。

複数の部門が関わるPJで、かつ、部門によって文化が異なる場合、現状、部門間の文化の違いはクッション役を立てて対応しておりますが。ほかに対応策などございますか。

鈴木氏:それぞれの部門のリーダーが一緒になって協業のやり方を決めていく必要性はあると思います。間に両組織の違いを知る調整役を入れるのは非常に有効な方法だと思います。プロジェクト自体の共通の視点というかゴール、があるはずで、そこを各チームが共有した上で具体的な進め方を決めていく事が重要だと思います。
共通のゴールは、大方はお客様の視点からみたプロジェクトへの期待で、お客様の最終的な満足度を定量的に計測する方法を決め、それを達成/超える事を各部門の目標として文化を見直す事が有効かと思います。

清田氏:組織文化は組織の目的、目標に異なります。つまり組織の目的・目標を知らないと、何故その組織がそのような行動を取るのかが理解できません。まずは、関わる部署の目的、目標を知り、何を重視して、どのような思考・行動をとるのかを知ります。その後、対話・議論を重ね、落とし所を探るのが良いと思います。

イベントレポートは以上となります◎今回も盛りだくさんの内容となりました!ご登壇してくださった清田さん・鈴木さん、ご参加頂きました皆様、ありがとうございました。
次回のイベントもお楽しみに♪