【イベントレポート】“攻めと守りのIT企画”大規模組織のITプロジェクト推進トーク

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こんにちは!TECH Street編集部です。

“攻めと守りのIT企画”大規模組織のITプロジェクト推進トーク ~社員のはたらく環境を支える組織の挑戦~」イベントレポートをお届けします!

今回は、大規模組織のIT企画人材が、本音をぶっちゃけた白熱のライブトークを余すことなく再現。楽しいお話も苦労話もすべて大公開しちゃいます◎

ご登壇いただいたのは、この3名。

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パネラー
・藤倉 成太さん/Sansan株式会社
・廣 泰介さん/パーソルキャリア株式会社

モデレーター
・斉藤孝章さん/パーソルキャリア株式会社

各々の会社で、大型ITプロジェクトを推進する方々の“生々しい”お話に期待が寄せられます。モデレーターの斎藤さんが、お二人が関わってきたプロジェクトの中から、印象的かつ選りすぐりの体験談をリクエストし、トークがスタート。

 

攻めと守りのプロジェクトについて

 

Sansanの守りのプロジェクト

個人情報を扱うため、高度なセキュリティは必須。2015年より、CSIRTと呼ばれる情報セキュリティの専門部隊を立ち上げ、セキュリティの観点に特化したアラ―ティングや、アラートが上がってきたときの迅速な対応、分析が実施できる体制を構築したこと。

パーソルキャリアの重要なインフラを整備した事例

今年の2月、Microsoft Teamsを全社導入。ちょうどコロナ禍直前に完了していたので、その後、ビデオ会議へとスムーズに移行できた。さらに不足していたVPNを突貫で開通。現在は安定稼働している。


既存ビジネスに直結しないITプロジェクトの企画推進や予算調整をする上での勘所

 

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斉藤氏:既存のビジネスに直結しないITプロジェクトの企画推進は、ROIなどが提示できず予算調整が難しい。社内で実施するには様々な課題があると思っています。そこでお二人に、企画推進の勘所やコツ、押さえていると意識しているポイントを教えてください。

要するに、どうやって上の方々を説得するか。めちゃくちゃ興味がある話です!

Sansan藤倉さんの事例

藤倉さんは、ご自身が発案された「バーチャルオフィス導入」を例にとって説明。

藤倉氏:コロナ禍によってリモートワークになり、同じ空間を共有することが減っていく中で、“何かが失われるのではないか”というある種の恐怖心がありました。

投資効果を考えるとき、帰属意識や企業としてのカルチャーやフィロソフィーの浸透が目的ではあまりに定性的過ぎて、ROIが何なんだという話になってしまいますよね。

僕自身、データをベースに判断を下すタイプなので、じゃあ帰属意識とか文化・フィロソフィーの浸透が欠如していったら、エンジニアの生産性が落ちるかもしれないと仮説を置くわけです。

次にエンジニアの生産性をどう図るか?を考えるのですが、そもそもエンジニアの生産性とかクリエイティビティを測るのは難しいのですが、開発時間とITシステムの資産性をパラメータにしてデータを取得し、一定の仮説とそれに対するエビデンスとしての数字論拠みたいなものを伝えました。

実際には方針転換があり、バーチャルオフィスの導入には至らなかったんですが、人を納得させるためには、定性的な感覚だけではなくて一定の数字を拠り所にすることが必要だと思います。

パーソルキャリア廣さんの事例

廣さんからは、“アカウンタビリティの発揮”を意識しているというお話を伺いました。

具体的に何をしているのかというと、

①まず、IT専用の予算のハコを作って可視化する。
②月次で経営に対して進捗レポートを細かいレベルで発信。投資したお金はこれぐらいで、今、利益としてこれだけ還元できているとグラフで表現して経営陣に報告する。

→経営陣の信頼も既存のビジネスと直結しない新技術検証の予算も取れているという現状に!

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この廣さんの話に藤倉さんが“すごく共感する”と反応。

藤倉氏:コストや売上、利益のような税務会計的な数字だけでなく、自分たちのこの営みの効果をどんな数字で表現するのか、その数字はいったい何を表現したいのかみたいなことを経営としっかりと握っておくことは重要ですよね。

しっかりと効果が出ているのか、いないのかということを同じ数字をベースに、同じ概念で語り合えるようになります。

数字的には問題ないのに、感覚として“おかしいな”と思ったら、いったん立ち止まって、“何かがうまくいっていない”と考え、数字の設計自体を見直す必要もあります。

廣氏:確かに、感覚に頼って指摘する場面はあります。エンタープライズITをリリースしたら、数か月後、数年後にそのKPIが達成されているか振り返って経営に報告するではないですか。

元々は、半年後に振り返りを設定していたのですが、それだとちょっと期間が空き過ぎるなと、ある時気がつきまして。もうリリースしたら即1カ月後を目途に投資の振り返りをするようにしました。

何か黄色信号が灯っていれば、“計画上、たぶん問題なくいきそうなのだけど、何か怪しいぞ”みたいな。僕らIT側で、そういった気づきもあります。

藤倉氏:廣さんのおっしゃっていることにすごく共感します。IT企画もやっていることってやはりビジネス。投資とその効果リターンでしか語れない。それで語れないものってたぶん事業じゃないですから。

企画側もそうですし、エンジニアもその感覚がそもそもないとビジネスパーソンとしての成果は出ないのではないかなと、僕はわりと持論として持っていますね。

 

投資対効果と定性的な効果

 

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ここで廣さんから藤倉さんに疑問を投げかけます。

廣氏:投資対効果を出してなんぼだという話はおっしゃる通りですが、そうは言っても定性的な効果しか出せないケースもあります。ひねり出しているみたいなこともあるかと。そういうときって、どうやっているんだろう?

藤倉氏:いや、まさにそこってすごく難しいではないですか。“投資対効果とかKPIを設定しましょう”みたいに軽やかに言っていますが、一個一個を決めるのってむちゃくちゃ大変ですよっていうのはなんか前提としてお伝えしたいなって気持ちになりますよね(笑)

トークイベントならではの対談が盛り上がってきましたね。

藤倉氏:こうやったらいいのではないかとか夜寝る前とかにふとアイデアが浮かんだり、これだったらいけるかもと、急いでメモしながら寝るとか言うこともあります。おっしゃる通りすごく大変なことだと思います。

廣氏:公式的なものがあるわけではなく、それに向き合うことこそが本質なので、みんな頑張って向き合ってくださいということなのですかね…。

藤倉氏:そう思いますね。もうこれ絶対やるべきだよなというスタート地点は感覚とか定性的なものだったりするので。でも、何かやったほうがいいよなとか、やるべきだよなと思っているということは多分、それは何らかの形で測れるはずだと僕は信じていますね。

逆にどうにも測れないのであれば、もうそれはやるべきじゃないと。測り方が分からないから断念するのではなくて、やっぱり自分の感覚は大切にしたいと思っています。その違和感を捨てるということがあまりできないので、数字をどうにかひねり出すみたいなことはしますね。

斉藤氏:その“絞り出す”という話で、どういうインプットをしながらロジックとして考えるのでしょうか?

藤倉氏:自分の持てる情報の解像度をどこまで上げられるか。定量と定性のつなぎの部分での話になるが、解像度の低い情報や勝手な想像、イメージで“こうなんじゃないか”というのは危険だと思います。

例えば、事業のトップラインを伸ばすといった文脈の中で、その会社内で過ごした時間が長い人ほど、“なんとなくこうしよう”となると指摘。

「それが何か本当に自分の目で見て、自分が解釈した数字をベースに、自分がそうしようと言っているのか。それこそ経営やビジネスサイドから“こうしましょう”と言われたのを、ただ鵜呑みにしているのかによって全然違います」と言います。

だから、色々な場に顔を出して話を聞いて、自分のイメージや情報を厚くすることは意識しています。

廣氏:今のお話を聞いていて、“自分も解像度を上げられていないときがあった”ことを思い出しました!

解像度を上げるという話、弊社では“意志を持つ”という言葉に置き換えられるかなと。そのプロダクトだったり企画だったり、プロジェクトだったりを進める意思を持つことが重要だと。

ツール導入みたいな施策を並べてしまって、それで満足している時代があったなというのを今思い出しまして、それって目的と手段が完全に入れ替わるような形になって、何のためにやるのかということだったり、そのツールを入れるということに対する意志が、どこにあるのかみたいなことが結構ぼやけてしまったり…

今でいうと、オンラインでコミュニケーションを活性化しましょうみたいな戦略でやったり、もうちょっと進むとデジタルワークスペースみたいなことを追求するみたいな話になってくると思うので、そういった意思の込め方みたいなことをしているなと思い出しました。


ITプロジェクトの失敗エピソード

 

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ここで、モデレーター斉藤さんが仕切りを入れます。続いて「失敗エピソード」をお聞きしますが、リアルな話が聞けそう…。

さっそく藤倉さんから名言が!

「すべてがすべて成功しているわけではありませんが、うまくいかなかったものを失敗と呼ぶかどうかというのは、ちょっと疑問があります。それこそ想定した結果が出なかったこと、すなわち成功しなかったとなりますが、何らかの学びがあったからいいじゃないと言ったりしますね」

素敵!藤倉さんが上司だったら、めちゃくちゃ頑張れそう!

そんな前提で、お話しいただいたのが、社内のコミュニケーションプラットフォームの乗り換えプロジェクトの事例。

Sansan藤倉さんの失敗エピソード

新しいツールに乗り換えようとしたのですが、結果として“もどしたほうがいいのではないか?”という話に。まあ、いわゆる成功ではないですよね。

とはいえ、それもある種のリスクとして予見はしていたので、損害はまったくなく。でもそのリスクが顕在化する確率が低かろうという判断でGOをかけた結果ですから、起こりうるリスクを洗い出しきれてなかったということですね。

失敗エピソードは続きます。今度は、廣さんが告白!

パーソルキャリア廣さんの失敗エピソード

コミュニケーションプラットフォームの話で失敗談があります。あるソリューションの導入を進めたのですが、結果的にうまくいかず…。フィジビリティまで走ったのですけれど、社内的には流行らずに終わるという。

僕たちIT部門も事業部門も導入したいと思ったのですが、結局、どうして入れるのか?を定性的な部分でしか語れず、ちょっと強引にフィージビリティを始めてしまったのですよね。

 

新しいツール導入に対する現場の抵抗をどうするか問題


ここで、再びモデレーターの斉藤さんが質問。IT企画あるある話で、「新しいツール導入に対する現場の抵抗をどうするか問題」の対応について、パネラーのお二人に直球質問を投げかけます。

藤倉氏:そこは、我々は自分たちがSaaSプロバイダーとして提案をしていく立場であるわけですし、お客様に『あなたたちは変わらなければなりません』と言っている人間なので、“変わらない”という選択をすることは果たして善なのか?という話で。

全社をしっかり巻き込んで、みんなが納得感を持って『リスクもあるけれども、みんな前を向いてやっていこうよ』と説明する力も必要ですね。

もちろん、場合によっては、社長から説明してもらうなど、上の人間を上手に使うことも必要。

廣氏:現場の抵抗はあまり感じたことはないという前提で、まずは正攻法で説明して、それでも納得いただけない場合だったり、難しい場合には、ちょっと上からだったり、横からみたいな政治的アプローチをしてなんとか進めたなというケースもありました。

 

最後に、これからについて

 

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お二人の生々しい体験談に対して、モデレーターの斉藤さんも感激。心の底から感謝の意を表しながら「お二人の話を聞きながら、やっぱり定性やアカウンタビリティの重要性を再認識しました」とコメントを加えつつ、お二方に締めのメッセージを求めます。

藤倉氏:今回のイベントでは、割と時間も限られていたので、紆余曲折であったり、悩み苦しみみたいな話は省いて、“こうやってうまくいった”という成功パターンを中心にご紹介しました。

しかし、とはいえ、この結論に至るまですごく大変。そんなに簡単にできることではなかったりしますよね。これって、僕なりの仮説があって、一昔前に比べてテクノロジーが解決してくれることが、単なるコスト削減から、事業をどう伸ばすかという方向に、どんどん活用が進んだからなのだろうなと思っています。コストカットできますよという話は、割と説明が簡単だったはずなのですよ。

でも、それだけでは済まない世の中になってきていると思います。今日、このイベントの中でお話ししたような数字やエビデンスをベースにしながら、いかに不確実で不確かな未来を現実のものにするかということに向き合っていかなければいけないのでしょうね。

廣氏:まさに僕も同じようなことを考えていました。やはり色々なところで言われているように、コロナで世の中変わってしまい、不確実性がより高まっているのは確かです。

でも、不確実な世の中でも、読めるものは読めると思っていて、いかにその1~2年先といった短い期間でしっかり予測しつつ、戦略を立てて遂行していくかということと、5年後、10年後はどうなるんだろうという長期予測を両立させていく必要があると、めちゃめちゃ抽象度高いこと言っていますけど(笑)。

今、弊社で課題になっているセキュリティについても、足元で必要とされているリモートワークを阻んだりもします。そういった状況に対しても、僕らIT企画が意思を持って、足元を固めながら、ちょっと目線を上げて、不確実だという前提で、先を読みながら取り組んでいきたいです。



まとめ

 

大規模組織のITプロジェクト推進トークはいかがでしたか?本当に本当に、現場で頑張っている方々にとっては、大変参考になる話ではなかったでしょうか。今後も、今回のような現場の生の声をお届けしていければと思っています。

参加者の声

・それぞれの会社の考え方が聞けて参考になったし、その考えで自分たちの取り組みについても励まされた気がした。

・初めて参加させていただきました。 地方ですが、オンラインのお陰で参加できて有意義でした。

・普段伺う事のない苦労されたお話だけでなく、IT企画推進において想いを込めるといった事を伺えたため

登壇者と運営の集合写真

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最後に、今回ご登壇頂いた藤倉さん、廣さん、斉藤さん、参加者の皆さま、ありがとうございました!以上で今回のイベントレポートは以上となります♪

また、次回は【内製開発エンジニア勉強会】を開催!

同じように内製開発に携わっている・これから携わる可能性があるので実態を学びたい!と思っているITエンジニアや関連IT部門の方にとって、他社の取り組みや知⾒を通して学びや気付きになるような会をお届けします^^

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