【CEO×CTO対談】ハードとソフトが融合、マイクロモビリティサービスLUUP開発の裏側

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こんにちは!TECH Street編集部です。
TECH Streetコミュニティメンバーが気になるキーワード「モビリティ」「MaaS」に注目。

今回は、電動マイクロモビリティのシェアリング事業を行うスタートアップLuup社に注目。CEOとCTOに実際にお話を伺ってみました。

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    ▲株式会社Luup CTO岡田直道氏(左)、代表取締役社長兼CEO岡井大輝氏(右)

 

“人類を前進させるインフラを”という思いが結実したモビリティ事業

 

――本日はLuup社のCEOとCTOの対談ということで、まずはお二人が取り組まれている内容を知るために、事業概要を教えて下さい。ここはCEOの岡井さんからお願いできますでしょうか。

岡井氏:小型電動アシスト自転車を乗り物を街中の好きなポートから乗って好きな場所に返せる電動マイクロモビリティのシェアリングサービスを提供しています。

最大の特徴は、小型であること、そして、いわゆる一般的なシェアサイクルとは一線を画し、自転車はもちろん、電動キックボードなど小型の電動モビリティでしたらあらゆるものに対応していく点です。

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▲LUUPの小型電動アシスト自転車

さらに、“高密度で置く”ことを意識しています。既存のシェアサイクルの5~6倍、最終的には10倍の密度を狙っています。ユーザーが乗りたいと思った時に、基本的にすぐ近くに自転車があるようなサービスを目指しているので、様々な場所への設置が必要になります。

機体のサイズが小さいためポートのサイズも小さくすることができ、結果的にカフェの前の空きスペースなど他のシェアサイクルが設置できないような場所に展開することが可能です。

 

――ありがとうございます。では、お二人がLuup社を創業をされた経緯をお聞かせください。

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▲株式会社Luup代表取締役社長兼CEO岡井大輝氏

岡井氏:私たちは大学時代の同級生で、当時から、“人類を前進させるようなインフラ事業をやりたい”という思いを持っていました。

“あってもなくても良くない?”というものを作りたくはありません。30年後に振り返って、“あのサービスが出来ていなかったらまずかったよね”と言われる事業を作りたい。

国内において人類全体の前進に寄与するという視点から領域を選ぶと、自ずと医療、介護、街づくりなどいくつかの領域に限定されると特に当時は思っていました。

そういう思いを持ちながら、私たちは初め“社会人経験を積んでから大きく勝負をしよう”と考え、30歳までの間にそれぞれがスキルを磨いて、また集まろうと話をしていました。しかし、それほど待っていられなくなり(笑)、卒業後、2年でもう1度、こうして集まることにしました。

岡田氏:岡井は戦略コンサルティング・ファームに入り、様々な業界を見ていくうちに、やりたいことや各々の業界の課題が見えてきて、アイデアも生まれていました。

一方で私は大学院に在学中、エンジニアとしてスタートアップやベンチャーを何社か手伝い、様々なアプリケーションの開発経験を積みました。現時点の二人の力を合わせれば、30歳を待たずに最初の挑戦をすることがでいるのではないかと踏んで走り始めました。

重要なのは挑戦することで、失敗の中で学んでいける年齢だと考えを改め、25歳頃に事業に取り組みはじめました。今から2年半前のことです。10年後の約束が5年縮まったわけです。

岡井氏:創業当初は、サービスを作って検証しては、やめるということを繰り返していました。解決すべき課題がある市場はいくつもありましたが、その中で私たちがちゃんと事業を立ち上げていけるのか、その観点が重要ですよね。私たちが今の立場でちゃんとやれる領域、かつやりたい領域を探した結果、マイクロモビリティに行き着きました。

 

――御社が勝負されている、この「MaaS」という業界動向をお聞かせください。

岡井氏:“MaaSが実現することで、誰がどう得するか”をきちんと説明できる人は少ないと思います。パッと思い浮かぶのは、自動運転です。

しかし日本は鉄道社会の国です。都市部においては、それほど車は利用されないので、自動運転になって快適になっても、あるいはライドシェアを解禁しても、都市部人口のほとんどが鉄道に乗っている国の状況がそれだけで全て変わることはないと思います。

となると、このように鉄道社会が高度発展した国における「MaaS」とは何か?という議論になります。私たちは、この鉄道社会の日本における「MaaS」のひとつの答えとして、駅から降りた人がいかに駅から離れた場所へ移動できるかという問題を解決することを提起します。

この小型モビリティのシェアリングによって駅周辺への一極集中の構造を変えていくという大きなストーリーこそ、「MaaS」の中における自分たちの位置づけだと思っています。

 

――ありがとうございます。事業の概要について理解できました。では、LUUPの技術を担うCTOである岡田さんの観点から、このサービスに対する思いや可能性などをお聞かせください。

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▲株式会社Luup CTO岡田直道氏

岡田氏:インターネット上で完結するサービスは一通り出尽くしている現在の世の中で、ソフトウェアとハードウェアがどちらも絡むサービスはそう多くありません。

私たちがユーザーに対して提供できる価値を最大化するためには、現実世界に直接作用できるというハードウェアの強みを最大限に引き出しながら、同時に扱いづらいところや弱いところをソフトウェアの高い抽象度やスケーラビリティといった強みを生かして補うことが必要です。

ビジネスとしては社会的な価値を見出しつつ、ハードウェアとソフトウェアの融合を高度に実現する必要がある、技術的には難しくも面白いサービスだと捉えています。

 

――その価値を実現するための技術的な意思決定を行うのがCTOである岡田さんの役割ということなのですね。

岡井氏:そうですね。代わりに他のメンバーができない省庁対応、政治家との対話等を僕が担うことで、明確に分担しました。

岡田氏:ここの事情が当社の場合はけっこう特殊で、法改正と事業の展開が密接に絡んでいます。世間では「ロビイング」と呼ばれる岡井が担当している活動は、この事業の将来を決定すると言っても過言ではありません。

一般的にはスタートアップがロビイ活動まで行うのは珍しいと思いますが、そこに全力で投資することができるよう代表の岡井のケイパビリティを生かし、逆に開発の方は私が一手に引き受けることで、開発サイドの関心事、制約条件を気にせず圧倒的な速度で事業展開できるために力を尽くせるようカバーしています。

デバイスの機能による制限から“これしかできない”というのでなく、”日本の交通にとって、最適なことは何か?理想のモビリティとは何か?”という、大きなビジネスモデルを岡井が考え、それを私がどう実現していくかという分担になっています。

そのため、時には無茶ぶりがくるときにもありますが(笑)、それも含めて事業をどれだけ大きく前に進められるか、事業だけでなく日本の交通をどれだけ前に進められるか、をゼロベースで考えられるかを大事にしています。

その事業構想を実際に形にするために、ものづくりの観点から何ができるか、ハードウェアとソフトウェアの両方を見ながら作っていくというのが当初から自分が任されている役割です。

 

――理想的な関係ですね。実際にどのように開発を進めているのか、体制やこだわりを教えてください。

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岡田氏:開発メンバーの人数は1桁です。領域としては、iOSアプリの開発、Androidアプリの開発、それぞれのバックエンドの開発が挙げられます。加えて、ソフトウェアとハードウェアをつなぐIoTデバイスの動作検証や開発も必要です。

例えば自転車についているスマートロックのファームウェア、それを解錠するための通信プロトコルなどです。さらにデータ分析やデザインを担当するチームもあり、全部で6チームほどの体制で動いています。まだ人数は少なく、いわゆる少数精鋭で、それぞれがそれぞれの役割を補いながら横断的に開発を進めています。

先ほど横断的にと表現した通り、開発領域はチームごとにくっきりと分かれてはいません。うちの事業はそれだと動きにくいのです。

ユーザーにとって使いやすい機能要件を突き詰めるだけでなく、デザインの整った良質なUI/UXを追求するだけでもなく、ハードウェアデバイスの持つ制約条件をクリアすることも必要ですし、巡回によるメンテナンスや再配置等のオペレーションも考慮してサービスを設計する必要があるからです。

他にもポートを提供するオーナー向けの機能であったり、ロビイング上必要な実証実験の要件に至るまで、様々な領域の要件を踏まえ全体観を持ってプロダクトを持っていく必要があるので、各チームが独立に動いて局所最適していると良いプロダクトが出来上がりません。

なので、エンジニアも複数の領域にまたがってコードを書くことが多いです。例えばiOSエンジニアでも、iOS側に仕様変更があればそのコードを書きつつ、サーバーやデータベースにも影響がある場合その調査や手を動かして改修を行ったりしています。

場合によってはIoTデバイス関連の機能追加を行う際に、通信プロトコルの動作検証や改修を行いながらクライアントサイドの実装を進める場合もあります。

自分は◯◯エンジニアであるなどの考えに固執せず、サービスを作るために、事業を作るために何をするか、そういった視点で動いてもらう必要があります。実際に今Luupで働いてくれているソフトウェアエンジニアには、そういったマインドの方が多いですね。

 

――このプロダクト開発の技術的な魅力と問題領域の面白みを教えてください。

岡田氏:ソフトウェアだけ、ハードウェアだけでは成り立たないサービスであり、これら両者の挙動がどのように相互作用することで実世界における価値を生み出せるか考える必要があることです。

そこがこのプロダクトの難しくもあり、面白い部分でもあります。具体的な部分ではリアルサービスであるがゆえの現実世界で起こる様々なエラーをどう取り扱っていくか、抽象的にはインフラとして成り立たせるための安定性維持とスケーラビリティ確保のための標準化を強く推し進めていく開発、この2つが大きな特色としてあると思っており、ここが中々体験できない面白い問題領域だと考えています。


開発メンバーに求められる高く突き抜けたオーナーシップ

 

――岡田さんは、CTOとしての役割であったり、仕事の回し方、チームの構築の仕方などは、どこかから学び実行しているのか、教えてください。

岡田氏:LUUPの開発プロジェクトは、ソフトウェアとハードウェアが複合的に絡みあい、さらに、ハードウェアデバイスについては法務面、様々な申請や規格への適合など、広範囲に渡る知見が必要となります。

当然のことながら、後戻りのできないタイミングも多い中でこれらを全て実行するためには自分の経験だけでは不足する領域があるのは自覚しています。

これは、岡井が担当している省庁・自治体対応も同様です。岡井はその領域のプロとしてこの会社を創業したわけではありません。

そんな状況で私たちが意識しているのは、自分に知見の足りない領域実現したいことがあれば躊躇わずに他の人の力を借りるということです。

具体的には、各分野の専門家に技術アドバイザーや顧問の立場でジョインしていただくことをかなり多くの分野で行っています。

そういった方々のノウハウを生かし、各分野の知識をコーディネートして、どう事業を作っていくかという動きに主眼を置いています。岡井も“冷蔵庫の中に今ある具材だけで料理をしない”ということを比喩表現としてよく言いますが、それを意識しています。

 

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――その巻き込み力が凄いですね。

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岡井氏:ビジネスサイドも開発サイドも両方アドバイザーがたくさんいますので、本当に私たちは恵まれていると思います。

よく言っているのは、「応援してくれなければ遅れてしまいますよ」という話です。「日本が電動モビリティの業界において世界で出遅れてしまったら、罪悪感を感じてほしいです…!」とまで言い切ります。大変生意気ですね(笑)。

しかし、その結果として大先輩方の信用と時間をお借りするからには、人生をかけて社会実装する責任を負うと考えています。

実際問題、実証実験を実施してみて、もし日本では難しいという話になれば辞めるべきです。逆に受け入れられるのであれば、急ぎ社会実装するべきです。この答え合わせを遅らせるのがもっともよくないことです。

単純に、若者向けの自転車に代わる楽しいモビリティが現れましたということではなく、20年後にIoT化されていない自転車に乗っていると思いますか?という話です。あえて断言すると、絶対に乗っていないと思います。保険の観点でも、利便性の観点でも、管理の観点でもIoT化されていない訳がない。

世界の公道で初めて普及した電動マイクロモビリティが電動キックボードです。日本は、そこから2年遅れています。ヒュンダイもBMWもVWもベンツもキックボードを作っています。ところが日本のメーカーは作っていません。これは単純にキックボードに遅れているだけという話で済まされるのでしょうか?という話です。

岡田氏:そういう思いが伝わると、こんなに小さいスタートアップであっても、共感を持って手伝ってあげようと思ってくれる人が必ず現れます。我々の役割は、そういった各業界の知を集め、どういうプロダクトを作っていくかというところにあります。

 

――なるほど、面白いですね。とはいえ、社内だけでなく、外部の知も活用していくとなると、まずますCTOのかじ取りというか、手腕が問われるようになりますね。その難しい役回りをやり遂げるために、ご自身が大切にされている哲学があったら教えてください。

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岡田氏:インフラを作るためにはスケール性が重要です。今はエリアを限定して展開している状態ですが、それを全国で展開していくとなった時に、例えば、自転車のメンテナンスにおける最強の専門家が1人いて、彼がフィールドに毎回出向いていって直すという体制ではダメですよね。

メンテナンスだけでなく、ハードウェアのデバイスのIoT設計やソフトウェアの設計もそうです。現場のユースケースに合わせて仕様を個別最適化させず、なるべく平準化された設計をあらかじめ作っておく、オペレーションサイドもなるべく再現性を高めていく必要がありその手助けもソフトウェア・ハードウェア両面から行なっていきます。

ソフトウェアはそもそもハードウェアやオペレーションに比べてスケール性が高いものではありますが、常に先を見据え、ハードウェアデバイスの製造、保守まで含めたあらゆる業務を全国に展開するため何が必要かを意識しながら妥協せず開発しています。

例えば将来的に展開エリアが増えた時に、エリアごとの展開内容や、果てはサービスのモデルの違いまで取り込んだ上でスケールさせられるように、個別のモジュールを柔軟にスイッチ可能な形で作っておくなど、スケール後のサービスの姿を常に想像しながら細かく丁寧に展開の下地を仕込んでおくというのがLUUPの開発の哲学としてあります。

 

――そこには岡井さんの考え方も色濃く出ていると思います。最終的な世界観、達成すべき目標があり、そこに向かって着実に開発を進めているイメージですが、その世界観の共有は最初からお2人の中で意識されていたのでしょうか。

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岡井氏:明確に書き出して整理しているわけではありません。漠然とインフラで下から支え得るようなものというイメージをおぼろげながら持っているだけで、まだ明確に決まっていないという状態です。

なぜなら、最終的に日本に必要な電動小型モビリティの形のイメージがまたついていないのです。確実に電動で、小型で、1人乗りで、安価であり、シェアできる必要があると思います。それで若者も高齢者も乗れないと採算が合いません。

そういう要素は確定してきましたが、どんなモビリティかの具体要素はまだ分かっていません。やりながら分かってくるという感じです。

岡田氏:そこを地道に検証していくためにソフトウェア開発もハードウェア開発も、なるべく選択肢を広く持てるように作っていくことが大事です。

岡井氏:ビジネスサイドもそうですね。両方最善を尽くしたいですよね。元々は、本当に開発の初期ではビジネスサイドと開発を完全に分担していましたが、今となってはビジネスサイドの人間もLUUPがどうやって作られているのか知っているし、現状の規制検討に向けた国との対話の状況がどうなっているかもプロダクト開発に関わるメンバーが全員知っています。

そのくらい、全社的にミッションはもちろん、今後会社がどうなっていくのかを伝えています。

岡田氏:情報の透明性については、開発メンバーの間でも強く意識しています。高く突き抜けたオーナーシップをもってメンバーに自発的に動いてもらうためには、意識共有、目的共有は必要不可欠なことです。

この先の事業計画はどうなっていて、そのために今、何ができていて、何ができていないか、いつまでにこういった検証を完了させないと、弊社の事業は見込みがない、などの前提を理解しないままに、ただ何月までにこのKPIをクリアしろとだけしか伝えられている人には、ミッションに向けた自発的な動きはができません。

そこを含めて全部知っています、誰にでも情報がアクセスできますという状態を作ることは、会社全体の組織の作り方として意識しているところです。

 

――意識共有ができているからこそ少人数で、かつ最短距離で成果を出し続けていられるということですね。エンジニア目線からみた、“少人数だから作れる”モノとは?

岡田氏:ハードウェア開発を例にとると、デバイス側の開発要件は事業計画やロビイングのマイルストーンの変化を受けて常に複雑かつファジーに短期間で変化します。

それに対してハードウェア部署は長期間の開発期間を要する実際の機体を作って対応していかないとなりません。

一般的な自転車の車体の開発には半年以上かかりますが、規制検討という観点ですと、スピード感に追いつかなくなってしまいます。私たちは2、3カ月、1番早い時は2、3週間くらいで新しい機体のプロトタイプなどを生産しています。

今組んでいる工場に対して、細かい改善を何度もなるべくハイペースでお願いしています。それを実現するためにも少数精鋭のメンバーであることは重要です。

大きな組織では意思決定のプロセスがどうしても長くなってしまう思いますので、そこはLUUPでこそ実現できる事業展開速度だと思います。


――現時点におけるLuup社で働くことの醍醐味をぜひ、エンジニア目線でお聞かせください。

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岡田氏:やはりハードウェアデバイスを含めた開発をしないといけないという点が、ソフトウェアエンジニアにとって特殊で面白いところです。

それに加えて、ハードウェアデバイスが街中に点在しているわけですから、アプリ、ソフトウェア自体が高パフォーマンスで動くことを保証しつつ、デバイスの挙動が正しく担保されているかどうかを見ていかないといけません。

ハードウェアデバイスの挙動は再現性が無いことも多く、それをどうテスト・原因分析していくか、これを外部のメーカーともやりとりをしながら推進するのは、難易度が高い仕事だと思います。IoTデバイスのファームウェア以上のレイヤーのエラーだけでなく、バッテリーからの給電がうまくいっていない、配線が外れている、GPS情報のずれなど、机上では想定できないような様々な問題が生じます。

そういう現実世界での挙動も含めてデバッグを行うのはすごく難しいですが、ソフトウェアエンジニアとしてある程度スキルをつけ一通りアプリを作ることができるという自信がある方にとっては、一つ先の難度の領域としてすごく面白い問題設定になっていると思います。

エンジニアは、モノづくりが好き、そしてその過程における問題解決自体が好きという人が多いと思います。

特に問題解決という分野において、LUUPにはすごく難しいけれど面白い課題がたくさん転がっているので、レベルの高いエンジニアほどLUUPの開発は面白いと言ってくれます。逆に、まだ修業中というような方にとってはハードルは高いですが、サービスを実現する力はすごくつくと思います。

岡井氏:自分たちで作ったものを街で見ることができるという魅力があります。最近、LUUPが渋谷を走っているのをよく見かけます。しかもどんどん増えていて、気づいたら自分の家の下にもできています。

将来、自分に子どもが生まれたときなどに、自分が何も言わなくてもLUUPに乗っていて欲しいんですよね。。そういう意味で、自分たちが作ったものが、ちゃんと誰かの生活を支える実感を持てるのは大きな魅力だと思います。

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岡田氏:将来インフラを作っていくことを考えると、使ってくれている人を見つけて嬉しい!というフェーズはもう凄いスピードで通過していかないといけませんね。でもやっぱりユーザーを街中で見かけると嬉しいものです(笑)。

岡井氏:自分たちのプロダクトに対する自信と愛をしっかり持ちやすいですし、社員は皆LUUPを間違いなく便利で最高なサービスだと思っていて、その改善とスケールさせることに日々頭を悩ませています。やりがいはかなりあるのではないかなと思います。

岡田氏:限られたセグメントのユーザー向けのサービスだと、中々ユーザーに出会いにくいかもしれませんが、LUUPの場合、街中の誰もが使うようなサービスを目指していくので、その実感は得やすいですよね。


LUUPの目指すその先とは

 

――今後の展望について、それぞれお聞かせください。特に、会社としてのこれから、サービスとしてのこれから、組織としてのこれからと 3軸で教えて下さい。

岡井氏:電動マイクロモビリティのインフラを、最速でちゃんと作るということ。街づくりやモビリティで何かやろうとするならば、Luupしかないと本気で思っています。

岡田氏:現在、LUUP内でシェアリングサービスが利用できるのは小型電動アシスト自転車だけですが、電動キックボードもすでに公道実証をしている段階に入っています。

今はその2種類が使えるだけのアプリですが、今後LUUPから乗れるようになるモビリティの種類が増えていきます。明らかに需要があるものもいくつか分かっていますし、まだ形の見えていない新しいモビリティもあります。

これらに自由に乗れるようなサービスにしていくために、ソフトウェアも対応していかないとなりませんし、ハードウェア的にもスケールをするための標準化を意識しながら、製造フェーズにおける様々な課題を解決しつつ開発を進める必要があります。

そこにコミットできる優秀なソフトウェアエンジニア、ハードウェアエンジニア、それらのプロダクトの在り方を作っていくプロダクトマネージャーなど、更に抽象的で高度なサービスになっていくLUUPに協力してくれる強力な仲間をどんどん増やしていかなくてはなりません。

 

――ますますCTOのお役割も大きく、深く、強くなっていかれそうですね。

岡田氏:自分が今まで負ってきた役割は、LUUPがスピーディに今までどこの会社もやってこなかったことを実現するために、ソフトウェア、ハードウェアの開発要求をすばやく形にしていくというものでした。

今後、LUUPがより安定したサービスとなり、長期的なインフラになった後は、そのフェーズに最適な技術責任者の姿があると思います。ですから、いつか新しいCTOにLUUPの未来を託していきたいと思っていますし、そこに関してはフラットに考えています。

時代の変化の中で、Luupという会社のカタチに固執しなくていいと思いますし、CTOという役職に固執する必要もないと思っています。

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岡井氏:次の取材の時には、CEOもCTOも別の人間に変わっている可能性もありますよ(笑)。

ベンチャーの創業者がずっとCEOに居続けること自体、日本は特殊だと思います。GoogleやUberをはじめ、ほとんどの会社のCEOは創業者ではありません。私たちが社長とCTOで居続けるまあまあな会社と、とっくにクビになっているけれどもインフラとして機能している会社、どちらを作りたかったのか?という話です。明らかに後者だと思います。

岡田氏:個人的には、CTOという立場にはこだわりません。LUUPのミッションを実現するために最適な役割を全うできる場所であれば、どこでもいいので関わり続けたいですね。

例えば新規事業担当になって、LUUPが継続的に発展するためにCTOが別に存在するというケースもひとつの解だと思います。とにかく自分のやるべきこと、やれるところをやっていこうと思っています。どんな形であれ自分のキャリアの全てを懸けるほどの魅力がこのLUUPという事業にはあると思っています。 

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以上がLuup社CEO×CTOインタビューです。
岡井さん、岡田さん、ありがとうございました!

(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき / 編集:TECH Street編集部)