【連載#6】“技術で世の中を良くする”、メルペイVPoE木村氏のキャリアと組織論

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こんにちは!TECH Street編集部です。
前回、TECH Street会員が気になるヒト、大見周平氏にインタビューをしましたが、今回は連載企画「ストリートインタビュー」の第6弾をお届けします。

「ストリートインタビュー」とは

TECH Street会員が“今、気になるヒト”をリレー形式でつなぐインタビュー企画です。
企画ルール:

・インタビュー対象は必ず次のインタビュー対象を指定していただきます。
・指定するインタビュー対象は以下の2つの条件のうちどちらかを満たしている方です。

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▼第5弾はこちら

www.tech-street.jp

“今気になるヒト”大見氏からのバトンを受け取ったのは、木村秀夫(@hidek)氏。

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1996年に interQ(現GMOインターネット株式会社)に入社。独立起業、株式会社KDDIウェブコミュニケーションズを経て、2009年に株式会社ディー・エヌ・エーに参画。2013年には同社執行役員に就任。2018年5月、株式会社メルペイ執行役員 VP of Engineering に就任。
Twitterアカウント:https://twitter.com/hidek

 

――ご紹介をいただいた大見さんから『「ビジネス」「技術」「組織」を、高いレベルで紐付けられる方。』とお聞きしました。その原体験などをお聞かせください。

木村氏:大見さんが私のことをどのように見ていらっしゃるかわかりませんが、
自分自身は決して「ビジネス」に明るいと思ってはいません。

元々、エンジニアなので、「技術」についてはある程度理解しているつもりですが、「組織」については、40歳を過ぎたあたりから興味が湧いたというレベルなので、大見さんの推挙のお言葉は、少し大げさに感じますが(笑)、そういっていただけるのはうれしいですね。

原体験ということなので、簡単にこれまでのキャリアについてご紹介しますね。

社会人としてのスタートは、今のGMOが、まだ20人くらいの小さな組織だった頃にエンジニアとして入社。それから紆余曲折あり、起業したり、大手通信会社に入社したりしましたが、節目節目でマネジメントを任せられる、期待される場面が多くありました。

でも、正直、当時はまだ、マネジメントには興味がなく、手を動かすことへの思いが強くあって、そこで自分の価値を発揮したいと考えていました。

2009年、39歳の時にDeNAにエンジニアとして転職。
だいたいプログラマーの募集年齢は35歳くらいなのですが、39歳で入社するといきなり新しいプロジェクトを任せられるのですね。

初めはメンバーが1人のチームから始まって、3人、20人、50人と拡大するにつれ、自分が手を動かすよりも、自分が声をかけて集めたコミュニティの優秀な方たちが力を発揮できる場を提供できたらいいなと思うようになります。そこでマネジメントの面白さを感じ、組織に興味を持ち始めました。 

 

――木村さんはエンジニアとして、どのような場所を求めてこられたのでしょうか。木村さんの哲学として、“求める職場の在り方”みたいなものがありましたら教えてください。

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木村氏:学生の頃にインターネットが商業化されて普及していった段階で、さらにその流れを拡大していきたい、その過程を当事者として目撃していきたいという思いからGMOに就職したのですが、その考え方は今も変わりありません。技術で世の中を良くしたい、便利にしたいということですね。

基本的はそういった軸で職場を選んできたつもりですが、
ただDeNAの入社動機は少し違っていて、そこでは完全にエンタメをやりたいという気持ちがありました。要するにインターネットサービスをto Bではなく、to Cに届けたいと思ったのですね。本音としては当時、法人向けのシステム営業チームマネージャー業に飽きてしまっていた、というのもありますが…

 

――先ほどの大見さんのお話からビジネスの目線で、「バランスがいい」という評価がありました。ビジネスの感覚はどのように身につけてこられたのでしょうか。 

木村氏:正直、ビジネスの素養があるかどうかは疑問ですが、興味を持ったのはDeNAでモバゲーのオープンプラットフォーム化開発を経験した時です。

そのプロジェクト自体が当時のCOOの肝煎りで、経営トップと仕事を通じて接する機会が多くありました。それまではエンジニアとして、技術的に正しいことだけを突き詰めていたのですが、それだけではなく、ビジネスの基本、例えば「time to market」という考え方に触れることになります。

技術的にはしんどいけれど、今このタイミングでリリースしないと意味がない、使われなければビジネスとして成立しない、ということを徹底的にたたき込まれました。

DeNAも経営陣に技術者が少なかったということもあり、執行役員を増やしていこうという話の中で白羽の矢が立ったのですね。

私はあまり物事に動じないで発言するタイプなので、経営者と対等に話をする姿を大見さんが見ていて、ビジネスの素養があるように思ったのかもしれませんね。

DeNAの経営陣には、エンジニアに対するリスペクト、声を聞いてくれる姿勢がありました。

技術を持って、ビジネスをいかに成功に導くか、それは私たちエンジニアではないとわからないと思うのです。そういった目線で、対等といってはおこがましいのですが、話をさせていただいていましたね。とにかくそこで経営トップと仕事をしたことが大きな転機になったとは思います。

 

――経営陣に物を言うエンジニアに見えた、インパクトがあったのだと思います。世の中の多くのエンジニアは木村さんのようになりたくても、ちょっと遠慮してしまいますよね。

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木村氏:確かに、それはあります。正直なところ、それは僕の元来の性格によるものだとは思いますね(笑)。 

 

――では、現在所属されているメルペイの入社のきっかけをお聞かせいただければと思います。 

木村氏:まず、メルペイというサービスの特性に魅力を感じたというのがひとつ。他のスマホ決済サービスはウォレットに銀行などからチャージする必要があります。すなわち、その原資となるのは、基本的にはお給料などのお金ですよね。

一方のメルペイは、メルカリというサービスを利用して、お客様がものを売って得たお金がウォレットにチャージすることもできるシステムです。そういった他サービスとは違うメルペイのユニークさに可能性を感じました。

さらに、メルカリのデータや開発技術といったシナジーが活かせることも魅力的に映りました。メルカリの利用者の中には売る人もいれば、買う人もいて、双方向で利用者の信用情報が貯まっていきます。その信用情報をもとに、例えばお金を貸す、支払いを後にするといったカタチでサービスを広げていくことができます。

世の中には、他にも多くの信用情報はありますが、大体、給料をいくらもらっていて、どういう会社に何年勤務されている、といった情報だけで、その方の信用度が決まっています。しかしそれって、非常に不確かなものですよね。

売買の際にうまれる「約束をきちんと守る」などの信用をテコに、新しい信用ビジネスをソウゾウできる。そんな土壌があると感じました。

 

――それはエンジニア目線ではなく、ビジネスパーソンとして、このメルペイに可能性を感じたということでしょうか。

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木村氏:両方の目線があります。

2018年、DeNAを去り、次にどういうところに行くかを考えた時に、候補としてあったのがフィンテックとヘルステックでした。その二つの分野は人々に価値を届けるという点で、“世の中を技術でよくしたい”という自分の思想にマッチしていると感じました。

DeNA時代、ある新規事業に取り組んでいたときに、関係当局や古い規制、既存業者との調整が必要となり、そういった壁にぶち当たりながら“これがなければ、もっと世の中が良くなるのに”と常々思っていました。

その時に、フィンテックとヘルステックは大きく世の中を変える影響力を持っているし、実際に変わりそうな予感と余地があるように思っていました。そんな中で、フィンテック事業としてユニークだったメルペイに惹かれた、これはビジネスの目線ですね。

また、オファーのあった仕事が「VP of Engineering」、つまりエンジニアの組織を作ると職種だった点も大きいです。これはエンジニアの目線かもしれません。 

 

――「VP of Engineering」は、木村さんの感覚として、どういう役割を持っていると思われますか。 

木村氏:「VP of Engineering」と言われ始めたのは、この5年くらいだと思いますが、一応、エンジニアリングを組織の方からリードする立場と定義しています。

すなわち、組織規模が小さければCTOが1人で組織を見ながら技術的なビジョンを掲げ、プロダクトを作っていくことは可能だと思いますが、人数規模が100人を越えてくると難しいですよね。

どうしても組織マネジメントと、技術的なイノベーションを探りながら新しいチャレンジ、モノづくりをしていく役割は分担せざるを得ない。それで新しく登場したのが「VP of Engineering」というポストです。

 

――「VP of Engineering」という職務には、どのようなスキルが求められるのでしょうか。 

木村氏:1つは、エンジニアリングマネージャーの育成だと捉えています。自分で手を動かしてアウトプットするよりも、組織でアウトプットを最大化する方に興味を持つことができる、もしくは持てる人が向いていると思います。

ただし、そのためにはエンジニアを採用、評価、育成をする必要があるので、エンジニアとしてのバックグラウンドがないとできませんよね。 

また、色々な現場、プロジェクトを経験することで、こういう人であればこうする、こういうプロジェクトであれば、こういう進め方にするといったような引き出しが増えると思いますが、その引き出しが多いことが望ましいですね。さらに人が好きであるという点も重要だと思っています。

 

――木村さんは、「VP of Engineering」という役職でメルペイからオファーをもらったときに、興味を持った最大のポイントはなんだったのでしょうか。

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木村氏:自分は0→1で物を作る人間ではないと自覚していて、あるものをよりエンハンスさせるような思考の方が向いています。

そもそも自分のキャリアも最初ISP、よりコンシューマー向けに広げていくプラットフォーム、DeNAでのゲームのプラットフォームなど、コア技術を作るより、その一部をエンハンスさせるような経験を重ねてきましたし、10→100みたいなフェーズで力を発揮できると思っていました。それは、プロダクトもそうです。そういったことが求められたのが、メルペイだったわけです。

 

――それは、ご自身のどういう力が発揮できるというご判断があったのでしょうか。

木村氏:そうですね。0→1のフェーズにおいては、CTOやエンジニアリングリーダーがその役割を担えば良いですが、「VP of Engineering」は、10→100のフェーズで必要になる立場ですよね。自分のキャリアの中での経験や組織設計の引き出しが、ちょうどそのフェーズにマッチしていたということです。

 

――0から10人くらいまでの組織を作るときよりも、10から100人になるフェーズのほうが、一気にハードルがあがるような気がしますが、そんなことはないのでしょうか。 

木村氏:それは採用基準を絶対に下げないことと、メンバーに対してミッション・バリューへの共感を求めることで回避できる問題だと思います。

エンジニアは、一緒に働く人がとても重要で、優秀でセンスがある人がいる職場に入れば、自分の技術力を磨いていきたいと思うものです。そういった意味でも採用はとても重要です。 

組織を好循環させるには、まず採用があって、その人たちを育成して、正しく評価する仕組みをセットで渡すことが重要ですよね。そして、彼らがリテンションしていって、そのアウトプットをPRとして結び付けていき、次の採用に結びつけるサイクルを回すことが非常に重要です。  

 

――選ばれるエンジニア、生き残るエンジニアであるためには、どのような技術力やマインドが必要だと思われますか。

木村氏:技術力があることは当然ですが、技術力を伸ばすことに対して受け身である人は難しいですね。

自分からコミュニティに参加して、カンファレンスに行く、技術書を普段から読み込むなど、新しい技術を普段からキャップアップするような人でないと生き残れないと思いますよ。

 

――こういう不安定な時代に長期的なキャリアプランを考えるのは、非常に難しいですよね。何かヒントみたいなモノがあったらご教示ください。

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木村氏:振り返ってみると、これまで自分はちゃんとキャリアを考えてきたかというと、実はそうではありません。

どちらかというと行き当たりばったりであったとは思います。ただ、色々とやってみるというのは非常に重要なことで、それは技術領域だけでなく、ビジネスのドメイン、例えばフィンテック、エンターテイメントなどもそう。

それぞれ求められるクオリティも方向性も違うがゆえに、食わず嫌いをせず多様性を許容しながら引き出しを増やしていくことが重要だと思います

意識しているのは、半年くらい先くらいは見ておくべきだと、節目節目には思っていました。

10年先をみたところで、コロナの例もそうですが、何が起こるかわからないですからね。長期的に考えることは無駄なことだとは言いませんが、半年先、1年先を考えることの積み重ねが大切だと思います。

その時に、色々な方向にチャレンジしてもいいのかなと、軌道修正しながら進んでいく方が、結果的に豊かなキャリアが生まれるのではないかと思います。 

DeNAの執行役員をしていて、50歳になる手前で転職した時に、周囲からは「何で?」「もったいない」と言われました。

でも、そこで躊躇すると楽しくないですよね。だって私はインターネットで世の中を良くしていきたいという抽象的な思いを抱きながら生きてきているし、その技術は移ろいやすく、ターゲットにしていた領域も変わります。だからこそ必然的に“このタイミングしかない”という意識は働きます。

 

――木村さんの個人的なビジョンを教えてください。

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木村氏:今はとにかく、スマホ決済サービスが乱立する難しい時代ですが、まずはメルペイを成功させたいです。本当に半年先のことくらいしか考えていないですね(笑)。

半年後、withコロナ、after コロナ、働き方は大きく変わっていきますよね。例えば、リモートワークに適合できない会社は淘汰されていくでしょうね。

どこでも働けるという話は、グローバルカンパニーでは既に当たり前の話で、これがもう一歩進むと世界に広がるわけですが、そうなると“どこでも”から、“いつでも”働けることが求められるようになります。

そうなると、時差の問題も出てくるし、法律も変えなくてはなりませんし、企業の働き方も改革する必要があります。そしてグローバルに広がると、当然言葉の壁、文化の壁が出てきます。グローバルカンパニーではスタンダードなことですが、日本においてもこれから求められてくるとは思います。 

withコロナは制限の中での働き方になりますが、after コロナは選択肢が増えていくと思います。

リモートワークができること、きちんと生産性を上げていけることが証明されると選択肢が増えていくので、多様性を受け入れていくことが大切になります。

組織も人材も、エンジニアもそうです。エンジニアは技術の好き嫌いをしないで、色々な技術に触れて引き出しを増やしていくと、何か潮目が変わるときに必要とされる人材になると思うので、その多様性を受け入れられるマインドを育んでいただきたいものですね。

 

――ありがとうございます。最後に次回のインタビュー対象をご指定いただけますでしょうか。

木村氏:ラクスルのCTO泉雄介さんにつなぎます。

前職で一緒に仕事をした仲で、ロジカルシンキングだけにだけにとどまらず、ロジカルにコミュニケーションをして伝えることができる能力を持っていらっしゃる方です。

また、音楽大学出身だったり金融業界を経験していたり多様な経歴をお持ちの方です。バイリンガルということもあり、今後グローバル化、ダイバーシティが求められていく中で求められていく人材だと思います。

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以上が第6回のストリートインタビューです。

木村さん、ご協力いただきありがとうございました。最後に、恒例のバトンショットをどうぞ!

次回はラクスル株式会社取締役CTO泉雄介氏にバトンタッチ。今後のストリートインタビューもお楽しみに。

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( 取材:伊藤秋廣氏(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき氏 / 編集:TECH Street編集部)