【連載#4】メルカリ樫田光氏が語る、求められる人材に必要なWhatとHowとは

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こんにちは!TECH Street編集部です。
前回、TECH Street会員が気になるヒト、スマートニュース株式会社森山大朗氏にインタビューをしましたが、今回は連載企画「ストリートインタビュー」の第4弾をお届けします。

「ストリートインタビュー」とは

TECH Street会員が“今、気になるヒト”をリレー形式でつなぐインタビュー企画です。
企画ルール:

・インタビュー対象は必ず次のインタビュー対象を指定していただきます。
・指定するインタビュー対象は以下の2つの条件のうちどちらかを満たしている方です。

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▼第3弾はこちら

www.tech-street.jp

“今気になるヒト”森山氏からのバトンを受け取ったのは、株式会社メルカリでデータアナリストを務めながら株式会社ピースオブケイクにてnoteのグロース戦略顧問なども務める樫田光氏。

f:id:pcads_media:20200408170207j:plain早稲田大学理工学研究科卒業。外資系コンサルティングファームやスタートアップ企業の取締役を経たのちに2016年に株式会社メルカリに参画、データアナリストチームのヘッドとして分析チームの立ち上げ、メルカリ/メルペイ事業のデータ分析・成長戦略の立案業務を行う。note株式会社(旧株式会社ピースオブケイク)のGrowth Strategy Advisor。
Twitterアカウント:https://twitter.com/hik0107

 

――ご紹介をいただいた森山様から、「今、一番新しい働き方をしている人だ」とご推薦がありました。ご自身はどのように自覚していらっしゃいますか。

樫田氏:森山さんの意図ははっきりとはわかってませんが、察するに2つの意味があるのではないかとは思います。

ひとつは僕が社外で複数の副業をしているということ。メルカリは副業推奨を標榜する会社なので、自分の副業活動についても周囲にはオープンにしています。そのようなパラレルワークについて新しいと言われているのかもしれませんね。もう1点は、僕はデータアナリストの肩書で仕事をしていますが、その働き方が面白いと思っていただけたのかもしれません。

 

――パラレルワークをはじめたきっかけはなんでしょうか。

樫田氏:正直に言えば、自分の意思で始めたり増やしているということではなく、自然と増えていったという印象です。

ここ1〜2年、自分の広報活動になるような行動を多くとっていたので、今年に入って社外からも非常に多くのお声がけをいただいていて、それに応えていった結果だと思っています。

社外活動をはじめるきっかけですが、その前の年にチームのマネージャーになり、チームを立ち上げるロールを任されたので、採用のために会社やチームのブランディングと広報に力を入れる必要があり仕方なく、という感じでした。もともとメディアに出るのは好きではありませんが、やらざるを得ませんでした。

それで言えば、マネージャというロールも自分から積極的に選んだことではありませんでした。マネジメントにあまり興味がもてない床分だったのですが、上司から“やった方がいい”と声がかかり、しばらくは断っていましたが、最終的には受けることにしたという流れでした。

決断の経緯としては、「人をマネジメントする」という仕事は、この長い人生の中で、必ずいつかはすることになるのだろうとは思ってはいました。

どうせいつかはやるのであれば、メルカリの中でやるのは良い機会だろうと捉えました。メルカリはイケてる会社だし、社員も優秀な人が多く、またマネージャからまたプレイヤーに戻る、などのキャリアパスも認めてくれる環境にあると思えたからです。

意外に思われることが多いのですが、僕は比較的何かのチャンスに対しては、積極的というよりは受け身な方なのかもしれません。

周囲から求められることと自分がやりたいことの間には常にギャップがあると思います。だた、そこで求められた機会に対して、自分で考えた上で意思決定をして、引き受けたことはしっかりやり遂げる。

さらにさかのぼって話してしまうと、メルカリに入るきっかけも最初は自分の意思ではありませんでした。前職の会社がとても気に入っていて、そこに3年間はコミットすると宣言していましたが、色々な方からメルカリに来て欲しいと声をかけていただいたので、結局はコミットを撤回して1年半ほどでメルカリに転職をしました。

転職にはとても迷いましたが、メルカリはどの視点から見てもとても魅力的な会社でしたし、今後数年で他にメルカリのような会社が出てくる可能性はとても低いとも思いました。

僕は自分からどんどんと新しい変化をしようと求めるタイプではありませんが、何か強いモーメントがあったときに、それが自分の1年や2年のスパンの中で重要な意思決定の何かかもしれないと思ったときは、きっちり考えた上でリスクをとるようにしています。

 

――キャリアプランを持って、それに沿ってキャリアを重ねていこうとする人もいますが、樫田さんはそういうタイプの方ではなかったのですね。

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樫田氏:これだけ変化の激しい時代にプランを持つことは、はっきり言えばナンセンスだと思ってます。

少なくとも、僕はこの5年に自分の人生に起きたことを5年前には全くと言っていいほど予見できませんでした。

たとえばメルカリに入社をする5年前には、まだメルカリは存在すらしていませんでした。データアナリストという仕事も5年前にはまったくクールな仕事ではなかったので、選択肢にすら入っていませんでした。また、社外に自分を広報していくなんてことも自分の人生で考えたこともありませんでした。

僕はいま36歳ですが、今後のキャリアについて聞かれても、この先、何が起きるか分からないので、プランは特ないというのが答えです。日本にいるかどうかもわからないし、そもそも働いているかどうかと言われるとそれも自信がありません。

必要なのは、何かが起きたときにチャンスを掴めるような直感力と、求めらたことに答えられる力があるかどうか。唯一、僕の人生のプランとしてあるのは、40歳になったときに格好良い自分になっているか、くらいかなと思っています。ある意味、気楽に捉えていますね。

 

――樫田さんは仕事のパフォーマンスが高い社会人だと言えると思いますが、それは社会で求められるために自分で努力を重ねてきたという感覚でしょうか。

樫田氏:それはあります。自分なりの努力の方向性としては、スポーツで例えれば筋力や反射神経は磨いていますが、バスケットボールに特化した磨き方はしていない、という感覚です。

バスケットボールの選手やサッカー選手になろうと決めている人はいると思いますが、先程話したとおり僕はその時々の機会に応じて意思決定していくタイプなので、そのような考え方は自分には合わないと思っています。。

なぜかといえば、途中でサッカーの面白いコーチに出会うかもしれないし、「スラムダンク」に感動して急にバスケットボールを始めるかもしれません。サッカーやバスケットボールに特化するのではなく、もっとベースに近いスキルを重要視しています。

 

――では、現在のデータアナリストという仕事にたどり着いたきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

樫田氏:20代の頃に、“これからはITの時代だ”と思いました。いろいろな情報に触れているうちに、テクノロジー業界は面白そうだし優秀な人もたくさんいる、そして動きも早いので、飽きっぽい自分にはぴったりだと感じました。

テクノロジー業界がわからなかったら、人生がどんどん沈んでしまうという感覚を強く持っていました。反対にIT業界で食べていけるようになれば、今後数十年は自分の人生をコントロールできそうだとも思いました。

自分はそれまでのバックグラウンドから、エンジニア系よりもビジネス系の職種が向いていると考えていました。

しかし、GoogleなどのIT企業の採用ページを見ていると、純粋なビジネス職よりはエンジニア系職種のほうが脚光を浴びているように見えました。僕は20代に戦略コンサルティングファームにいたので財務や経営企画職などのビジネス職も考えたのですが、それよりはコンサルタント時代に好きだったデータ分析のスキルを活かして、ビジネス職とエンジニア職の間のような仕事であるデータアナリストを目指そうと考え、データ分析の専門会社に入社しました。。

2012年当時は、まだデータアナリストを名乗っている人も少なかったように記憶しています。ちなみに「データサイエンティスト」と「データアナリスト」は混同されがちですが、実際に仕事をしている立場から言えば、だいぶ違う職種です。

例えるとしたらデータアナリストは料理を作るシェフで、データサイエンティストは電子レンジを作る機械技師、それくらいに違いがあります。

この例えで言うと、データアナリストもデータサイエンティストも、食材を扱うという点では同じですが、それ以外には共通点はなく、期待されることも求められるスキルも全く違います。両者にはデータを扱うという以外の共通点は実は少ないです。

最初は僕もあまりわかっていなかったので、データサイエンティストになろうとしていました。

しかし、やっていくうちに、「自分は電子レンジを作りたかったのか?」と疑問に思うようになりました。データを扱うことは好きですが、どちらかというと「人に何を食べてもらうか」を決めるような仕事の方が自分にとっては楽しいのではないかという結論に至りました。ビジネスのおいては意思決定のための分析などが該当しますね。

お客様と話をして、どうやって料理を効率よく作るかよりも、そもそも何を食べるかを考えている時間が面白く感じる、そんな人間なんだと思います。データアナリストの仕事はそういった意味でも自分に向いていると思いました。ただ、データアナリストというラベル自体に特にこだわりも執着もありませんけどね。

 

――その後メルカリに入社されますが、自分自身の判断で人生をドライブするために、企業を選んでいるという感覚なのでしょうか。とはいえ、やはり相手から求められる人材になっていなければなりませんよね。秘訣みたいなものはございますか。

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樫田氏:僕の考えでは、企業が社員に「スキル」を求めていたことは、いまだかつてになかったと思っていますし、恐らくこの先もないでしょう。企業が社員に求めることは“何とかする”ことではないでしょうか。

それはマネジメントという言葉に表れていますが、日本でマネジメントというと「管理」という意味に捉えられがちですが、マネージという言葉は本来【何とかする・何とか扱えるようにする】という意味です。

企業はスキルを求めているのではなく、社内に存在する無数の課題を“なんとかして欲しい”と思っており、スキルは“何とかする”ためのひとつの手段でしかありません。

組織は、必ずしも「何をどうすればいいのか?」を理解している状態にあるわけではありません。それを解決するために、WhatとHowに分けて考えるべきです。

つまり、どうにかする「何」を決めるべき部分=Whatと、何とかすべきことを何とかする=Howの分解です。なので、料理で例えて言うと、上手にパスタを作るスキルだけでは不十分で、「そもそもその人は何を食べたいのか?」ということを考えることから始める必要があります。

パスタを作るスキルとはそのHowの中のひとつの具現化でしかありません。企業が最終的に欲しいのはWhatとHowの両方を使って、課題を何とかする力です。

求められるマインドという点でいうと、世の中の人の多くはHowに関して力を磨こうとしていますが、Whatの力を磨かなければ広い意味では生き残れないと思っています。企業活動では、常に解くべき課題が明確ではないという状態にあるため、Whatの力を突き詰めることはとても重要で、僕はこの能力をとても重視していますし、高い方だと自負しています。

 

――メルカリでは、チームマネジメントにも注力をされてきたかと思います。先ほどは「マネジメントなんてまったく好きではない」とおっしゃっていましたが…。組織づくりのこだわりについて教えてください。

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樫田氏:きちんと定義をして話すと、僕は「組織づくり」は比較的得意で、「組織整頓」は苦手だということのが自分の中での結論です。

「組織整頓」とはなにかというと、あるチームで、別のチームからヘッドがやってきてそのチームをマネジメントするといったパターンが当てはまります。チームメンバーなどは与えられたものありきで、その中でどうするか、という話ですね。「組織づくり」はそうではなく、まだ形がきちんとない中からチームを作ることを指し、僕はメルカリでそれを行ってきたのかもしれません。

僕は自分にとっては組織づくりのほうが簡単だと思っています。自分で好きな人間や理想とする人間を採用できるので、入った後のことを深く考える必要がありません。その場合に気をつけることは、自分が一緒に働きたい人間をきちんと定義すること、それを貫き通すこと、そして自社に興味を持ってくれる人や自分が良いと思った人を諦めずに追いかけることです。

それが重要だと思ったので、僕は組織づくりの際に、自分たちに興味を持ってくれる人を増やすため、嫌々ながらツイッターやメディア露出などの社外広報を始めました。

良いメンバーさえ集めることができれば、そのチームはそのあとは、苦労せずにドライブしていきます。

大きな石は壺の中に入れると取り出せなくなりますが、小さな石は後から自分で取り出すことができます。ですから、当然のことながらまずは大きな石から壺の中に入れていきます。チーム作りにおける大きな石というのはメンバーの採用そのものを指します。そのあとに入れる中くらいの石が何かと聞かれたら、アサイメントと評価だと答えます。どこに配置するかというアサイメントは明確に重要で、すでにアサイメントされている人がよりチャレンジングな環境を求めている場合は、その機会を創出して与えるのは他でもないマネージャである僕の仕事です。

チームのコミュニケーションのベースは『個別化』だと思います。一人ひとり違うものを求めていて、ベストなコミュニケーションの取り方があるので、各々に合わせて変えていく必要があるというのが、僕の考える良いコミュニケーションの前提です。

もちろんシチュエーションによっても正解は異なるのですが、原則としてコミュニケーションの最上の状態は、「言わずとも相手が理解してくれること」だと思います。実のところ、今の世の中において相手が何を望んでいるのか、を理解するためのヒントとなる情報が溢れています。

メルカリのように社内の情報を極限までIT化している会社においては、みんなslack上で会話をしていますし、カレンダーや作った資料などもすべて共有されているので、僕はメンバーに関してかなりの情報を手に入れることができます。

それらの情報から推測して先回りして必要な助言やアサインをするなどは、第六感や特別なセンスなどがなくても、時間を掛けて情報さえ集めればすぐにできることです。マネージャとしてメンバーと良いコミュニケーションを取れるように努力する、というのはそういうことです。

メルカリにはメンバーが自分の上司をスコアリングする制度がありましたが、当時社内に数十名いたマネージャーの中で、僕がもっとも高いスコアでした。

当時はピンと来ていませんでしたが、それは、僕が良い上司ということではなくて、「何とかする」ことができる上司だったからではないかと思っています。特に部下に優しく接していませんしたが、先程話したように自分なりの最上のコミュニケーションを心がけていました。。

パフォーマンスを上げて何とかすることだけを考えてはきました。なぜなら僕がマネージャだからです。

 

――本来のマネージャーの役割を理解している人は少ないような気がします…。

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樫田氏:そうかもしれません。IT業界、特に技術系職種では特に少ないような気がします。どちらかと言えば自分指向でHowにこだわる人が多いのですが、僕の考えでは「他人指向」の「What」が重要です。

その感覚で考えれば、なんとかする=マネジメントなので、管理するということではなく、会社や組織が困っていることを見つけ出して、何とかしようという考えになると思います。全員がそのタイプの人である必然性はありませんが、その必要性は最低限理解していないと「今一番にすべきこと=What」を見つけることの重要性が分からずに組織内でパフォーマンスを出すことが難しくなると思います。

 

――これからの時代、エンジニアはどういったスタンスで働いていくべきか、ご提言いただけますでしょうか。

樫田氏:これまで話したように、WhatとHowを理解することがベースにあると思います。

Howにこだわるのが悪いことではありませんが、WhatとHowがあるということを理解したうえで、自分がどちらにいくかを明確にして、その選択肢がどのような意味を持つのかということをきっちり考える必要があると思います。

組織というのは「何とかする」ための機関であり、その上位にある「何とかするべきことを見つける」こともできる人間をより評価する構造が強いので、Howだけでいくというのは、実は周囲からの評価や待遇にアッパーがつくことを許容する道に繋がりやすくなります。

「自分の技術力が高いのに年収が上がらないのはなぜか」と嘆いたりするのは、世の中の仕組みを理解していないからです。それを理解したうえでHowを突き詰めるのは良いことだと思いますし素晴らしいと思います。世の中の動き方や求められているものの意味というのをきちんと理解したうえで、自分の戦略はどちらなのかと選ぶのが重要だと思います。

Howを突き詰めて技術力だけをひたすら上げていったとしても、普通の会社では給料は上がりづらい。またHowだけの人は基本的には一定の組織構造の中でしか働けないと思います。Whatを明確に定義してくれる人がいないと、Howの人は活躍できないからです。

Whatができる人というのは、出店する場所によってテイストなどを考えて変えられるシェフのようなもので、自分で店を構えることが比較的しやすい。しかしHowだけの人はそれが出来ません。

そういったことを理解したうえで自分はどのような選択をするのかというのは必要だと思います。

 

――ありがとうございます。最後に次回のインタビュー対象をご指定いただけますでしょうか。

樫田氏:Chompy(チョンピー)という国内発の新しいフードデリバリーサービスを立ち上げた大見周平さんを紹介いたします。

とにかく彼はものすごい起業家です。賢くかつ豪快で人心掌握力もあり、心技体を兼ね備えているので、稀代の起業家になるのではないかと勝手に楽しみにしています。

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以上が第4回のストリートインタビューです。樫田さん、ご協力いただきありがとうございました。リレーインタビューということでバトンをお渡ししたところ、こんなサービスショットもいただきました…!

次回は、株式会社シンでフードデリバリーサービスChompyを立ち上げたCEO大見周平氏にバトンタッチ。今後のストリートインタビューもお楽しみに。

▼過去の連載はこちら

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www.tech-street.jp(取材:伊藤秋廣氏(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき氏 / 編集:TECH Street編集部)